《兄と妹とVRMMOゲームと》第三十九話 星空のプラネット④

「だけど、ここじゃ目立つから、詳しい話はギルドの中で聞くからな」

「ああ」

徹の提案に、有は得心いったように頷いた。

徹に案されて、達は早速、白亜の塔へと向かう。

しい外見と同様に、ギルドの中も荘厳な作りとなっていた。

床は磨き上げられた大理石のように、綺麗で埃ひとつない。

窓や壁も強襲に備えて、強度も高そうだった。

「徹様、お帰りなさいませ」

塔の口に控えていたプレイヤー達が、一斉に恭しく禮をする。

「これから、上位ギルドの『キャスケット』と重要な話をする。紘の話では、『レギオン』の襲撃があったみたいだから、警戒を怠らないようにな」

「承知致しました」

徹の指示に、『アルティメット・ハーヴェスト』のメンバー達は丁重に一禮した。

徹達はギルドホームの二階に上がると、會議に使う一室へとる。

テーブルには人數分の紅茶が並べられており、中央には三段重ねのスタンドが置かれ、スイーツが載っていた。

「わーい! すごく味しそうだよ!」

豪華なスイーツを前にして、花音は屈託のない笑顔で歓聲を上げた。

達がそれぞれ席に座ると、徹が率先して紅茶とスイーツを口に運ぶ。

それに倣って、達もカップを持つ。

「ゲームで、ここまでスイーツと紅茶の味を再現できるのはすごいよ!」

高価な嗜好品であるスイーツーーそのままの味にした花音が、両手を広げて喜び勇んだ。

ログアウトが出來なかった頃、有があらかじめギルド専用の避難拠點を用意していたため、達は食料などの資に困ることはなかった。

ゲームで食べても意味はないが、それでも食事を堪能することができるというシステムは、プレイヤー達にとって魅力をじる事柄だった。

しかも、『アルティメット・ハーヴェスト』で味わったスイーツと紅茶は、現実のものとさほど変わらないほどの再現度である。

カップを置いた徹は、心を落ち著けるように話を切り出した。

「何が聞きたいんだ?」

れ替わった際における梨の一時的なギルドの兼任の要請をしたい。そして、先程、を襲ってきたについてだ」

梨の一時的なギルドの兼任の要請は、運営から話を聞いているよ。別に問題ないからな」

有の要求に、徹は素っ気なく答える。

「そして、を襲ったは、高位ギルド『レギオン』に所屬する自律型AIを持つNPCだ。ここからは重要な話になるからーー『我が聲に従え、シルフィ!』」

徹はそこまで告げると、自が契約している霊を呼び出した。

主である徹の意思を汲んだように、周囲の音がぴたりと遮斷される。

外に音がれないように、室に見えない壁を張ったのだ。

周囲の音が聞こえなくなったことを確認すると、徹は仕切り直して続けた。

「高位ギルド、『レギオン』。特殊スキルの使い手を狙っているギルドの一つだ」

「『レギオン』?」

は不思議そうに、徹の真偽を確かめる。

「機械都市、『グランティア』の一角にギルドホームを構える高位ギルドで、參謀の手嶋賢が実質、実権を握っているんだ」

「ギルドマスターはいないのか?」

「……いるにはいるけれど、梨のデータの集合をギルドマスターとして讃えている危険なギルドなんだよ」

有の疑問に、徹は吐き捨てるような呪詛のような言葉を返した。

高位ギルド『レギオン』は、梨のデータの集合である羅の覚醒を企む不気味な集団である。

データの集合である羅の覚醒そのものが、実際にはあり得ない出來事だ。

しかし、『レギオン』は、それができると信じて邁進している。

梨の……?」

が口元に手を當てて考えると、徹は厳かな口調で続けた。

「『レギオン』は、梨のデータの集合である羅の覚醒のために、特殊スキルの使い手達を狙っているんだ」

「ーーっ」

驚愕する達をよそに、徹は一呼吸置いて続ける。

「『羅の覚醒』というーー神にも等しい存在を、自らの手で創り出すためにな」

梨のデータの集合を、神として崇めているギルドか。どこまで信憑のある話なのか判斷がつかんな」

徹の説明に、奏良は背もたれに背を預けて、疲れたように大きく息を吐いた。

「その話が事実なら、梨は確かにログインさせない方がいいな」

奏良は紘が告げた言葉を思い返して、渋い顔をする。

「俺が語れるのはここまでだ」

徹は考え込む素振りをしてから、改めて達を見據えた。

「鶫原徹よ。手間を取らせてしまってすまない」

「ああ」

有の謝の言葉に、徹は照れくさそうに答える。

一通りの話が終わったところで、達は『アルティメット・ハーヴェスト』のギルドを出たのだった。

    人が読んでいる<兄と妹とVRMMOゲームと>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください