《兄と妹とVRMMOゲームと》第四十一話 星空のプラネット⑥ ☆

「いらっしゃいませ」

宿屋にった達を、NPCの店員が応対する。

王都、『アルティス』の宿屋は盛況で、多種多様な裝備を著込んだプレイヤー達が気盛んに話し合っていた。

が所屬するギルドや街中にある宿屋などは、絶対不可侵のエリアだ。

街中やフィールド上と違って、安全が保証されている。

一階は宿屋の付と酒場で、二階以降は宿屋の部屋になっていた。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

達が席に著いてしばらくメニューを見ていると、NPCの店員が注文を聞いてくる。

「どうするかな」

が思い悩んでいると、腕を組んだ有はとんでもないことを口にした。

「よし、ケーキ全種類制覇するぞ!」

「お兄ちゃん、私もケーキ全種類制覇するー!」

「ケーキ全種類制覇!?」

有と花音の突拍子のない注文を聞いて、は呆気に取られてしまう。

「お待たせ致しました」

「お兄ちゃん、すごく味しそうだよ!」

やがて、注文したケーキが全て並べられると、花音が両手を前に出して、水を得た魚のように目を輝かせる。

その様子を傍目に、有の父親は早々に切り出した。

「有、これからどうするんだ?」

「ここなら、他のプレイヤー達の噂話や報がってくるからな。新しいクエストの噂、そして仲間に出來そうなプレイヤーを探ってみるつもりだ」

有の父親の疑問に、有は淡々と答える。

「カリリア跡の件、聞いたか?」

「ああ。特殊スキルの使い手がいる上位ギルドが、昨日のカリリア跡の限定クエストを達したんだよな」

達が耳を傾けると、周囲のプレイヤー達がグループごとにテーブルを囲み、雑談に興じていた。

モンスターの報や、昨日のカリリア跡のクエストについての噂、ダンジョンで手にれた武の自慢、あるいは現実での話を持ち込み、會話に花を咲かせている。

「何だか、俺達、すごい有名人になったみたいだな」

「特殊スキルの使い手の存在は、いろいろな意味で周囲の意識を引き付けているからね。それにカリリア跡のボスを倒したギルドは、高位ギルド以外では『キャスケット』だけだから、余計に注目されているんだろうね」

が顔を片手で覆い、深いため息を吐くのを見て、有の母親は気遣うように聲をかける。

「『星詠みの剣』、しかったなー」

「伝説の武、どこのギルドが手にれたんだったっけ?」

「高位ギルド、『レギオン』だよ」

「なっーー」

プレイヤー達の予想外な議論に、は耳を疑った。

は思わず、そのまま、立ち上がりそうになって、自分で自分の手を摑むことで抑え込む。

は驚いた様子で、有に疑問を投げかけた。

「有。伝説の武は、『レギオン』が手にれたのか?」

「お兄ちゃん。伝説の武は、ニコットちゃん達が手にれたの?」

「ああ、、妹よ。クエスト達の報告をした際に、運営に確かめたから間違いない」

相を変えて聞いてきたと花音の姿に、有は不快を隠すことなく眉をひそめる。

「奏良は、あの時、徹と會っていたんだよな」

「……ふん」

が軽い調子で訊くと、奏良は不満そうに目を逸らした。

「僕の行き先に、あいつがいただけだ」

奏良は素っ気なく答えると、苦悶の表を浮かべる。

「高位ギルド、『レギオン』か……」

「はあはあ……。安全領域、到達!」

達が更なる報を探っていると、突如、が宿屋に駆け込んできた。

ぱっちりとした青水晶のような瞳に、がある白い

そして、絹のような亜栗の長髪の頭上に、ケモミミを生やしている。

見た目は、どこにでもいるような普通のだった。

だが、ニコットと同じように、彼の頭上に生えたアンテナのような不可思議なものを前にして、達は確かな違和を覚えたのだった。

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