《兄と妹とVRMMOゲームと》第四十三話 星空のプラネット⑧

『創世のアクリア』で突如、起きたーーシステム上の不合による帰還不能狀態。

『創世のアクリア』の開発會社は、この件をけて、運営そのものを別の會社に委託してサービスそのものを移行した。

だが、公式がリニューアルされたとはいえ、帰還不能に陥ったゲームを再び、始めるのは厳しかったのだろう。

だからこそ、せめて、彼が良いマスターに巡り會えるように、と彼のマスターは別れ際に言付けを殘した。

『マスターは、プラネット自で見極めてから決めなさい』

不意に、の脳裏に、プラネットのマスターが、プラネットを叱咤激勵する様子が思い浮かぶ。

プラネットのことを想って告げた別れの言葉ーー。

そのおかげで、プラネットは自で判斷して、ギルドを選ぶことができたんだよな。

そして、俺達と巡り合った。

が思案するように顎に手を當てていると、花音は興味津々な様子でプラネットを見た。

「ねえ、お兄ちゃん、くん。この子、どうするの?」

「それはーー」

「妹よ、仲間にするつもりだ」

答える前に先んじて言葉が飛んできて、どうするのか躊躇っていたは口にしかけた言葉を呑み込む。

首を一度橫に振ると、代わりには不思議そうに有に訊いた。

「仲間にするのか?」

「恐らく、これを逃したら、自律型AIを持つNPCを仲間にするチャンスは二度とないだろう。基本、NPCは運営側の管理か、高位ギルドが管理しているからな」

「確かにな」

に任せて言い募る有に、先程、遭遇したニコットのことを思い出しながらは言った。

「じゃあ、プラネットちゃんはレアなんだね」

「そうですね」

花音とプラネットはお互い示し合わせたように、顔を見合わせて苦笑する。

「まあ、確かにこのまま、放っておけないしな」

「マスター、ありがとうございます」

は吹っ切れたように、プラネットの申し出を承諾した。

は居住まいを正すと、改めて、自己紹介する。

「俺は。よろしくな」

「プラネットよ。俺は『キャスケット』のギルドマスター、西村有だ」

「私は西村花音。よろしくね」

「巖波奏良だ」

「私は自律型AIを持つNPC、プラネットです。では、契約に従い、『キャスケット』に所屬します。皆さん、これから、よろしくお願い致します」

達の懇意にれて、プラネットは一禮すると穏やかな表で下ろしたのだった。

「皆さん、ご迷をおかけしてしまってすみません」

達の仲間になった後、プラネットは酒場にいるプレイヤー達へと視線を向けた。

プラネットが丁重に頭を下げてきたので、酒場にいたプレイヤー達は虛を突かれたように目を瞬かせてしまう。

「いえいえ、ご無事で何よりです。先程の方々は、こちらで運営に報告しておきますね」

プラネットの謝罪に、NPCの店員も前に進み出て深々と頭を下げる。

「同じNPC同士、この世界で頑張って生きていきましょう」

「はい、ありがとうございます」

ほんわかな笑みを浮かべて言うプラネットを見て、NPCの店員も笑顔を返す。

その様子を傍目に、有の父親は早々に切り出した。

「有、これからどうするんだ?」

「新しい仲間は見つかったからな。ひとまず、ギルドに戻るつもりだ」

「えっー! お兄ちゃん、新しいクエストの注はしないの?」

有の思わぬ方針転換に、花音はをかけて揺した。

花音が意味を計りかねて有を見ると、有は意を決したように続ける。

「心配するな、妹よ。ギルドを任せているペンギン男爵から、クエストの報を聞き出せばいい」

「すごーい! ペンギン男爵さんって報通なんだね!」

「……多分、違うと思うな」

両手を握りしめて言い募る花音に熱い心意気をじて、し困ったように頬をでてみせた。

「よし、、奏良、父さん、母さん、プラネット、そして妹よ、戻るぞ! ギルドへ!」

「ああ」

「うん!」

「まあ、目的はほぼ果たしたからな」

有の指示に、と花音が頷き、奏良は渋い顔で承諾した。

達が転送アイテムを掲げた有の傍に立つと、地面にうっすらと円の模様が刻まれる。

達が気づいた時には視界が切り替わり、達のギルドがある湖畔の街、マスカットの前にいた。

「わーい! マスカットに戻ってきたよ!」

湖畔の街、マスカットに戻ってきていることを確認すると、花音は嬉しそうにはにかんだ。

プラネットは居住まいを正して、真剣な表で尋ねる。

「マスター、この街にマスターのギルドがあるのですか?」

「……あ、ああ」

「うん」

が言い繕うのを見て、花音は追隨するようにこくりと首を縦に振った。

有達のギルド『キャスケット』がある、湖畔の街、マスカットの街並み自は、今朝とさほど変わらない。

大勢の人で賑わい、プレイヤー達の行き來も激しかった。

モンスターの報や、新しいクエストについての噂、ダンジョンで手にれた武の自慢、あるいは現実での話を持ち込み、會話に花を咲かせている。

「この街には、他にギルドはないのでしょうか?」

「うん。今は、私達のギルドだけなの。前はあったんだけど、他のギルドは公式リニューアル前に辭めたり、利便を考えて別の街に移転したんだよ」

プラネットの問いに、花音は人懐っこそうな笑みを浮かべて答えた。

「妹よ。プラネットの能力を把握しておきたいし、そろそろギルドに戻るぞ」

「うん」

有が咄嗟にそう言って表を切り替えると、花音は嬉しそうに応じる。

達は街の雑踏をかき分けて、ギルドへと足を運ぶ。

「ただいま、ペンギン男爵さん!」

「お帰りなさいませ」

花音が喜満面でギルドにると、奧に控えていたペンギン男爵は恭しく禮をする。

アンティークな雑貨の數々と、有の母親の火の魔のスキルでらせている燈は、ギルドに幻想的な雰囲気を醸し出していた。

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