《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》ブリコラージュ
本日二回目の更新となります。
アストライアに到著してから三日経過した。
端末を使い開発ツリーとにらめっこしていたコウに連絡がる。
醫療カプセルのが目を覚ますらしい。コウは念のため用意していたものをポケットにれ、醫務室に向かった。
カプセルの側にはにゃん汰とアキがいた。ヴォイはアストライア外の施設に向かっていた。
コウが到著してほどなく、カプセルのカバーがせり上がる。
はまったくの無表だった。
「はじめまして。俺はモズヤ・コウ。わかるかな?」
「わかる、コウ。私は…… 名前が思い出せない」
は小さな聲だが、はっきりと答えた。
「そっか。無理に思い出さなくていいよ」
千年以上の冷凍睡眠は記憶に多くのダメージを與える。師匠は新たな人格を造った方が早い。しかし、それはしたくはないとも言っていた。
「あ、そうだ。これを。ちょっとだけ我慢してくれよな」
コウはポケットから取り出したメタルアイリスの帽子を、にかぶせた。
はきょとんと帽子にれる。
「アキ。にゃん汰。醫療用のウィッグはあるかな? あと、この子におしゃれを。俺、そういうのわかんないからさ」
の子だ。年端もいかない娘でも、頭髪はやはり気にすると思ったのだ。
「お任せを!」
「付いてくるにゃ」
二人はを連れ別室に行き、しばらくして戻ってきた。
金髪のウィッグがよく似合う。コウの服に似たジャケットスタイルだ。コウの帽子はまだ被っていた。將來は絶対人になると確信させるしさを持っている。
「コウみたいなラフっぽいのが希にゃ」
「何著せても似合うんですけどね」
二人は姉のように接している。セリアンスロープの本領発揮だ。
「アストライアに名前付けてもらった。エメです。よろしくです、コウ」
相変わらず抑揚をじさせない聲だが、一杯喋っていることがわかる。
「エメっていうんだね。よろしくな」
コウは笑いかけた。エメは最初、戸っていたが、やがておずおずと切り出した。
「この帽子もらっていい? コウ」
「いいよ。気にいったなら良かった」
エメはこくんと頷いた。
「私は貓のミー……師匠の記憶をけ継いでいる。コウ。あなたの助けができたらいいと思う」
師匠の名前はミーだったのか。今更ながらコウは知った。
「ありがとう。これからもよろしくな」
エメはこくんと頷いた。
「あとは師匠…… お願い」
「ん?」
「コウ。わかるか。私だ」
口調ががらりと変わった。師匠、と直した。聲はエメそのままだが、元々中的な聲だったせいか思ったほど違和はない。
「師匠?!」
「ああ。彼の記憶容量が大きく、積極的にけれてくれたおかげで魂とでもいうのか。私の意思もまたそのまま彼の側にある。時間は殘された」
「時間って?」
「彼の人格を今は私がサポートしている。彼のや人格が一定の回復をした時、私は消えるだろう。だが、本來はないはずの時間だ。エメのサポートを含め、これは僥倖だ」
「そっか。良かった、のかな」
「良かったとも。私が表に出ることはほとんどないが、安心できるだろ?」
「ああ!」
コウは破顔した。師匠の意思がそこにある。それだけで十分だ、
「だが、のんびりはできないぞ?」
相変わらずの師匠にコウは苦笑した。それでも師匠と再會ができた。それが本當に嬉しかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
コウは戦闘指揮所の端末で様々なデータを閲覧する。
五番機強化にどのような報が必要かをまず知る必要があるのだ。
「難しく考える必要はない。構築技士の資格を持つ者は、研究者や開発者ではないのだから」
エメのなかの師匠が告げる。
「どんなものがしいのかイメージし、それが出來るように部品を取り繕う(ブリコラージユ)。そして古くて新しい兵を作る。それが君のできること」
「専門的な知識があまり必要ないのは助かるよ。部品の選択、か」
「モノを設計する存在がアーキテクトなら、ブリコルールはあるモノを使って新しいを作る存在だからね」
「楽そうで難しいな。新しいか」
膨大なパーツを組み合わせて新しい兵を作る。楽しそうな作業だが、何から手を付けていいか分からない。
「とびっきりの超AIが開発した無數の部品を選び出す作業はコツがいるかもね」
「素人ができるかな」
「だから素人の日曜大工、なんだろうな」
「気楽にできるって意味か。馬鹿にできないという意味か……」
オケアノスと対話型で調べていく。ネット検索している気分だ。
「最終製品の要求能をまとめる作業だね。コンセプトを決めて、こんな能がしい、と」
「部品屋にはあまり縁が無い言葉。非現実的なものはダメだよな」
「あえて要求してみるのもありだ。思いがけない組み合わせができるかもしれないよ。あくまでオケアノスは提案するだけ。実際組み合わせるのは君だ」
「矛盾する要求出してしまいそうで怖いな」
「矛盾、いや相反する過剰要求なんて當然だ。兵に限らず乗りは、安くて軽くて防力が高くメンテナンスの高さが求められた上、衝突安全まで要求されるだろ?」
「プレス加工の人や板金屋さんが泣いてたな」
自車は軽量化の波で高張力鋼のボディが増えていた。プレス加工はライン化されているが、それでも軌道に乗るまでは相當な苦労があったと聞く。
また鋼板と違って超高張力鋼の修理は難作業。嫌がる板金屋も多くて當然だ。事故でそのまま廃車になるケースは多い。
「要求するコツがあるのさ。軽い、は何トンまでか。防力が高い、は度だけの話ではない。メンテナンスにも々ある。そこを絞っていけばいい」
「戦車が何トンとか戦闘機が何トンとか考えたこともなかった」
「コウは自分の自車の自重やパワーウェイトレシオは気にしたことあるだろ? それに車の居住や燃費だって能だ」
「あるな。そいうことか」
自分のいた時代の戦車や戦闘機のことからまず理解しないといけないことが面倒ではあったが、確かに二十一世紀基準で考えたほうが要求はしやすい。
オケアノスから引き出せる報が増えていくのは楽しかった。
「コウ。慌てなくていいから」
今度はエメが心配してくれている。
「ありがとう。エメ」
エメもまたコウの隣で検索作業をしている。コウにも理解できる報を選択して教えてくれるのだ。
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