《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》

コウたちが作戦のブリーフィングを行っている同時刻、メタルアイリスは軽い混の中にあった。

「ブルー! ブルゥー」

リックとの通信を切ったジェニーは即座にブルーの回線を呼び出した。

「どうしたんですかジェニー。泣きそうな顔をして」

「今回の作戦目標がわかったよ! 封印されたアシアの一部を解放」

「――え?」

目を丸くしたブルーが思わず聞き返す。ジェニーが何を言ったか理解できなかったのだ。

「だよねー? そういう反応になるよねー!」

「ちょっと待ってください。アシアに関しては長年、封印領域も解放手段も不明だったはずじゃないですか」

「封印領域は作戦指定場所でねー。解放手段はコウ君が接すればいいらしーよー! シルエット越しでもいいってさ!」

「……本當、待ってください。々追いつけません」

ブルーが真顔で額を押さえている。

人類とストーンズの戦闘が始まって以來、突如として封印されたらしい星管理AI【アシア】。

オケアノスはどちらかというと膨大なデータベースと世界の管理などの役割であり、個を持って人間に寄り添う行を見せるのはアシアだったのだ。

ネレイスを創造したのはソピアーだが、実質的な生産を管理していたのは各星の管理コンピューター。ブルーは母親がネレイスであり、星アシア出だ。アシアを想う気持ちは変わらない。

解放はネレイスにとっても悲願。そんな話がいきなり転がりこんでくるなど、信じがたいことであった。

「私もそんなかんじ!」

明らかにジェニーはテンパってる。

パニックになっている者がいると冷靜になるものだ。ブルーも我に返る。

「私、ファミリアが絶句するの初めてみたかも。あ、ブルーが絶句するのも珍しいよね」

「私のことはどうでもいいです。そもそもそんな作戦なら、もっと大きな傭兵組織がいいのかもしれません」

「それはダメらしいよ。大きな組織がいたら最悪アシアごと破されちゃうかも。この數は最適だってストームハウンドが心していた」

「誰かコウの裏にいるっぽいですね」

「明らかにね! 本人、失敗したら即座に撤退とかいってたけど、撤退できるわけないじゃない!」

相手に気取られずにアシアを奪回する部隊を展開する。

確かにこんな機會は二度とないだろう。

「ストームハウンドのリックから作戦ファイル屆いた。アシア救出作戦だって。えい、うちのメンバーにも転送ゥ。いえーい!」

「自棄にならないでください。そんな作戦名、混しますよ、間違いなく」

「きっとやる気になってくれるはず。私はチームを信じてる!」

「お願いだから落ち著いて、ジェニー。でないと怒りますよ?」

冷ややかなブルーの聲に、ジェニーもようやく落ち著きを取り戻す。

ブルーが怒ったらとても怖いのだ。

「……はあ。ブルーに聞いてもらって楽になった。ありがとね」

「混する気持ちはわかります。ですが送信ボタンを押す前に一拍置きましょう」

「あ、やべ。みんなから鬼のように通信が」

「ほら、そうなる」

呆れたようにブルーが指摘する。

「これでストーンズの初期攻略目的の謎も解けたってことか。アシアを封印するための主要要塞エリア同時攻略作戦だったと」

「アシアはこの星に偏在しているとまで言われた存在ですからね。徐々に力を制限されていったのも、ストーンズが要塞エリアを占拠していったからということだったと」

人類に寄り添い、発展を見守ってきた星管理AIのアシア。正や所在は人類にも不明だった。

転移者の召喚は、彼の最後の力を振り絞ったものと言われている。

ストーンズとの戦爭発後、人類との連絡を絶ったアシア。ファミリアやセリアンスロープ、ネレイス種がサポートしなければ人類は既に敗北していただろう。

「この依頼、否問わず大騒ぎになるね」

「それは間違いなく。失敗したときのことは考えたくもないですが」

「はは。本當にね」

二人は作戦ファイルを確認し、表を引き締める。

「ジェニー。変更後の作戦容の確認を。ストームハウンドも総攻撃の決意をしたようですね。大願就のため、と記載されています」

「待って待って。え…… 何これ」

「これは彼らも本気です。全滅後の私たちへの指示もっています。こんな展開を考慮するとか普通はありえません」

「私達に全力でコウの支援に回れってこと? この容だと」

「書いてませんが、察しろということでしょう。彼らはコントロールセンター制圧、Aカーバンクル奪取に全力。本気の攻略そのものがとは思わないでしょうから」

「彼らならそれだけの戦力もある、か。通常の防衛部隊なら、攻略可能かも。通常なら、ね」

メタルアイリスとストームハウンドの戦力を比較すると、ストームハウンドが高くなる。

陸戦の覇者戦車はシルエットが存在するこの時代でも頭一つ飛び抜けている。

火力、裝甲、機力。これらの総合力はシルエットでは敵わない。

戦車を運用する傭兵組織がないことには理由がある。シルエットより戦車のほうが遙かに高価格帯の兵である、ということに盡きる。単純に製造施設が極めて限られているので高くなるのだ。

戦車を多數保有するストームハウンドの戦力は極めて高い。

しかし戦車の天敵もまたシルエットなのである。

戦車の弱點は薄の接近戦であり、巨兵は天敵だ。機力で比較すると接近されやすく、格闘兵裝が富という特も持つ。

中距離の戦車、近距離のシルエットといえるかもしれない。

航空戦力も同様だ。攻撃ヘリや攻撃機などは戦車の數倍の価格である。航空兵はレールガンや軽ガス式のライフルによって優位はかなり減しており、運用する狀況は希だ。ネメシス戦域は兵は傭兵の個人所有でもある。

制空権を取ることは大事だが、取ったところで地上から撃墜されては意味がない。無人兵はコントロールを奪われる恐れがある。戦闘機も攻撃機も姿を消した理由もシルエットによる対空兵の充実だった。

「これは…… リックに提案書を送付します。歩兵たるシルエットがなすぎる。こちらに戦車か裝甲車を回してもらいましょう。私達の誰かが援護に。さすがに彼らだけに一番危険な任務を任せるわけにもいきません」

「おっけ。頼んだよ。私と、何人か連れていくね」

「私が行きますよ?」

「あなたはコウのサポートをお願い。私メールもらってないし?」

「ジェニー! こんなときに!」

「はは。野外戦のほうがいいの、私は。そっちは閉所の戦闘が予想される。任せたから」

コウの目的地は閉所になると予想される。

ジェニーは機戦を好む。主戦場となると思われるコントロールセンター攻略に行くと決めた。

ブルーは悩みながらも、兵裝の構変更の検討にった。

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