《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》オーバー・ウォッチ――監視隊形

「全部隊出撃!」

リックの號令の元、戦車部隊が疾駆し始めた。

廃墟となった防衛ドーム跡地から、次々と車両部隊が発進し、後続に裝甲車やシルエットが続く。

後続の裝甲車の連なりは移速度の遅いシルエットを牽引し、移をサポートしているのだ。

最後尾にはそれぞれのハンガーキャリアーが六両疾走している。コウたちのものが一両、メタルアイリスが三両、ストームハウンドが二両だ。

これだけの部隊の侵攻はめったなことではない。人類は常に防戦を強いられていた。

「偵察部隊からの報告あり。敵防衛部隊はまだいておりません」

「そうか。指定通りのルートで侵攻を開始」

頼れる大型犬型指揮の的確な指示により、アンダーグラウンドフォースの連合軍は進軍する。

丘陵地帯を這うように移し出來うることならばハルダウンが行える場所に陣取りたい。ハルダウンは斜面や丘の起伏を利用し砲塔以外を隠し、車を防する戦

有利な地形を確保し、侵攻を行いたいところだ。

「先導部隊と後続部隊、オーバー・ウォッチで行くよ、ジェニー」

「了解!」

オーバー・ウォッチ――監視だ。

戦車隊を先導部隊と後続部隊にわけ、部隊を相互監視狀態におくオーバー・ウォッチ隊形を取る。

相互の周辺を互いに監視することによって死角を無くし、奇襲を防ぐのだ。

彼らは攻者だ。奇襲に対する備えはいくら念りに行っても十分ではない。

目標地點はX463要塞エリア跡地

かつて宇宙から飛來したエニュオやマーダーの侵攻軍に即日占拠された要塞エリアの一つ。

そして、ストーンズ勢力の前線基地ともいえる役割を擔っている重要拠點だった。

「コウ。ちょっといい?」

五番機に搭乗しているコウに、ジェニーが聲をかけてくる。

「なんだい?」

昨日から様子がおかしいジェニー。どうやら隠し事があるようだが、それが何かは教えてくれない。

アシアに関することだろう、とは察しがついた。

「今から向かう場所はね。ストーンズ兵だけじゃないの。アンダーグラウンドフォースも、いる」

「ストーンズ側についているっていう?」

「ええ。平和な國からきた貴方には辛い戦いになる可能が高い」

コウはし考えた。

「……ありがとう。だけど、きっと大丈夫。ストーンズ側にファミリアはいないっていうし」

「ファミリア重視なのね! でも無理はしないで。あなたはアシア救出だけを考えてくれたらいいから」

「無理そうなら戦闘はお願いするよ」

「ええ。ではがんばりましょ!」

ジェニーは最後だけ、ことさら明るく告げて通信を切った。

人間と戦うことについては思うところはある。

もちろん恐怖や後悔はある。だけど、そこはシルエットの補完機能に期待したいところだ。

殺せるかな、と自問する。

殺せるだろう、と思う。

絶対來ないと思っていたこの日のために、刀を振っていたのだから。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「偵察部隊より連絡あり。マーダー発見とのこと。當然だが気付かれてはいるみたいだね」

「防衛部隊も本格的にくね」

「レーダーが使いにならないのはお互い様だ。敵戦力も不明なまま遭遇戦で毆り合いするようなものだ」

リックとジェニーが確認する。

「作戦は変わらない。迂回路を進行しつつ、敵要塞エリアに接近。籠城する都市攻略を行う」

「これだけの戦車部隊はそうみないから、敵のアンダーグラウンドフォースも焦ってくれるといいんだけど」

「そうだと嬉しいがね。アシアがいるとなると守りも堅いだろうさ」

「だよねー」

「悪い知らせが一つ。攻略時にエニュオが破壊したシェルターは完全に復元されているみたいだな」

「あれを直したの? 本格的に重要拠點ってことね」

「コウの目的地は要塞エリアの中だ。予想していたとはいえ、し面倒だね」

星間戦爭時代や星開拓時代に作られた要塞エリアを保護するシェルターを破壊した場合、復元には莫大な労力がかかる。

一部分破損しているだけのような狀態なら、ストーンズ勢力はその區畫だけ使わないだけで済むのだ。

要塞エリアは半徑數十キロにも及ぶ。

彼らは破壊された部分のデータは持っていた。だが、修理されているとなると、完全閉狀態の要塞だ。

経路として使えることを期待してはいたが、その淡い希は砕かれた。

「工兵部隊に頑張ってもらうしかないか」

Aカーバンクルから投されるウィスで強化された外壁は、シルエットや車両と比較にならない強度だ。

何せ巨大隕石対策から生まれたものなのだ。

工兵機能を持ったシルエットはもちろん準備してある。

どんなに強化され、厚いとはいっても、いていない構造である。時間さえかければ十分にシルエットの通り道ぐらい確保できる。

もちろんジェニーも対策を怠ってはいない。コウを侵させるための工兵部隊はすでに先行させている。

「そちらは任せていいかな? 主戦場は任せてくれたまえ」

「もちろん!」

部隊の裝備は多岐に渡る。

戦車、裝甲車、シルエットのほかにも工兵機、橋梁を搭載した強襲突破車や弾薬を搭載した裝甲トレーラー。

必然的に様々な兵科を組み合わせた諸兵科連合編となる。

シルエットという人型の巨人は、労働力の軽減には確実に貢獻している。

「そういえばコウ君も潛する手段を、念のため用意はしてあるって言ってたっけ」

ジェニーは思いだし、コウへ再度連絡を取ることにした。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「ヴォイ、出番があるかもだぞ。シェルターは修理済みだったらしい」

「よっしゃ! でるぞ」

ジェニーから通信を切ったコウは、ヴォイにひとまず連絡した。

ヴォイはハンガーキャリアーにいる。

五番機はすでに、ジェニーたちと同行している。シルエット部隊だ。

「俺は反対なんだけどな」

「コウは俺たちに気を遣いすぎだ」

「ジェニーの工兵部隊もく。彼らのきをみてからだな」

「おうよ! ま、コウが最初に作った試作兵がアレだとは、思われたくないのはわかるが、あの兵は足が遅い。同時進行でいくぞ」

「わかった」

「ヴォイ、めちゃくちゃ張り切ってるにゃ……」

ヴォイの興合に、にゃん汰が呆れている。ヴォイは戦場に出たいタイプなのだ。

今回の試作機はコウと一緒に作った、ということもある。

「羨ましいですね。私がシルエットに載れるなら後部座席でサポートできるのに」

「私、できる」

「ダメだってば」

羨むアキと、後部座席に載りたがるエメをたしなめるコウ。

「ヴォイがいなくなるから俺と五番機のお世話を頼むよ」

「はい。コウのお世話は譲りませんよ!」

犬耳をぴょこぴょこかしながらアキは気合いをれる。

「エメもサポートを頼む」

「はい」

エメは素直に頷いた。

ヴォイは喜びを隠さず、ハンガーキャリアーの後部に匿されている、あやしい乗りに乗り込んでいった。

「さあ。行こう。今日中には戦開始だ」

コウたちもまた、決意を新たに気を引き締めた。

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