《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》超重戦車

進軍するメタルアイリス連合部隊に対し、敵の防衛網にってから攻撃が始まった。

目標の要塞エリアから五十キロほどの距離。

進路を塞ぐように衝撃波と砂塵が舞い上がった。

地形がえぐられている。

「これは?! 戦車砲ではなく星間戦爭時代の戦艦クラスだとっ。全軍散開っ!」

リックが迫した聲をあげる。

まとまって行軍していた彼らは、當初決められた部隊編ごとに別れることになる。

ここからは部隊長の指揮下となるのだ。

散開といっても、ある程度はまとまってくことになる。

戦力を分散するという意味ではない。各部隊ごと、行指針に沿って、最適化された行を行うということだ。

レーダーは封じられ索敵範囲は非常に短い。長距離通信もままならぬネメシス戦域ではひどく原始的な戦闘を強いられる。個々の判斷は重要だ。

「ここは陸地。ひょっとして宇宙戦艦とか宇宙空母持ち?」

「宇宙空母ならばこの地點からで目視できるはずだ」

その間も砲撃が続く。

能力はないようだ。

リックの部隊はもっとも最短距離に近い経路で迂回し、進軍する。

再び先行した偵察部隊が、謎の砲撃手をついに捉える。

「ジェニー。わかったぞ、敵の正が。あれは――超重戦車だ」

「え?」

「あの形狀、間違いない。どこぞの構築技士(ブリコルール)が突拍子もない珍兵を作ったということだろうなっ!」

敵の正が判明し、リックは吐き捨てる。

「積んでいる砲は、星間戦爭時代初期の艦船用中口徑レールガンを大雑把に乗せただ。155ミリレールガン。戦車でも一撃だろう」

「まずい狀況ね」

「機力はほとんど死んでいる。艦載砲はさほど連もできない。あんな機甲の黒歴史、私が葬ってみせる」

かつて地球では計畫されては潰えた、超重戦車。

自重で地面に沈んで使いにならず、舗裝道路は破壊してしまう機甲の鬼子。

履帯が四本見える。二本では厳しかったのだろう。

ネメシス星系での技、そしてウィスによる道路補強が、超重戦車が生まれる余地を生み出してしまったのだ。

「砲口徑は思ったより大きくはない。砲撃から著弾時間を計測しても、二分程度。出力不足だ。張りぼてとみるべきだろう」

リックは分析する。155ミリは星間戦爭時代の艦載用としては中口徑だが、超重戦車ならばもっと大きな砲が搭載可能なはずだ。

問題は弾頭と撃ち出すためのエネルギーなのだ。あれ以上大きな砲では補給も大がかりになるだろう。弾數を稼ぐためとリックは判斷する。

あの戦車の役割は壁なのだ。継戦能力重視とみるべきだろう。

「中味ぎっしり詰まってたら張りぼてっていわなくない?」

「意外とつまっていないかもしれないぞ。シルエットの楯代わりかもな」

「それならわかる。じゃあ今の攻撃は牽制ってとこかな」

「間違いないな。ジェニーは飛ぶんじゃないぞ。空中のシルエットなどレールガンの的だ」

「わかってる。ここはじりじりと近付いていくしかないね。攻撃側ってあまり経験ないのが辛いところ」

「それは私たちストームハウンドも同じさ」

要塞エリアや防衛ドームを守るための傭兵だ。攻勢に回る経験を持つアンダーグラウンドフォースは珍しい。

「まずは距離を詰める。牽制とはいえ、一方的に砲撃をけるのは面白くない。敵防衛戦力は超重戦車を中心とした、通常の主力戦車を編した機甲部隊。護衛にシルエットがいる。先行隊としてマーダーが我らの殲滅にくるだろう」

「マーダーは駆逐するとして。シルエットの払いは私達ね」

「メタルアイリスと、我らの支援車両で歩兵代わりの護衛を蹴散らしつつ、あの防衛網を突破する」

思わぬ敵戦力の登場にも、彼らはすかさず作戦の修正を行う。

現在は時間稼ぎであろうケーレスがこちらに向かっていた。

「蟲型マーダーの機影発見。ケーレス多數確認! アント型総勢三十、マンティス型一、戦距離にりました!」

通信車より迫した聲が全軍に流れる。

「蟻とカマキリが群れてきた。戦車隊、前へ! 支援車両は迂回を心がけよ!」

リックの號令とともに、ケーレスとの戦闘が始まった。

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