《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》真相に近付いた男
「なんだ、あの地底戦車は!」
X463要塞エリアのコントロールセンターの一室。
構築技士であるアルベルト・クナップは絶した。
「あんなのはアリなのか。ええい、こたえよ。開発局よ!」
コントロールセンターの、兵開発AIを呼び出す。
『アリかナシかで言えばナシです』
開発局AIの答えは素っ気ない。
「星間戦爭時代の兵か、あれは」
『違います。構築技士の手によるものだと思われます』
「私にもあれを作ることは可能か?」
『困難かと思われます。アルベルトの権限の構造材で作られていますが、AIによる高度なサポートか、相當なな発想が必要です』
「A級か。クソ」
『A級構築技士でもあの兵を作することは困難です』
「はあ? A級以上が存在しているというのか」
ネメシス戦域に六人いると言われているA級構築技士。
彼と同じB級さえ、天才と呼ばれるほどの資格だ。
A級以上の構築技士がいるとは考えもつかなかった。
『その質問に答える権限はありません』
「いるということよな! その答えは!」
『その質問にお答えはしません』
「天才か、いるかどうかもわからないA級以上ということなのか。クソ。どっちにしてもふざけている!」
彼が見ている前で、超重戦車のMCSが引っこ抜かれる。放棄されるのだ。
「待て。天才かA級以上かはしらんが、何故このX463要塞エリアに侵攻する? さして興味もなかったが、封印區畫に何かあるのか? バルドを出せ!」
封印區畫に向かったバルドはE級の構築技士だ。修理設備程度の無人施設はかせるが、大がかりな施設は無理だ。
そもそも封印區畫は構築技士か、それに匹敵する資格がないと立ちることさえできない。ストーンズの無人兵や、ストーンズの監視も不可能だ。
星間戦爭か、それ以前――星開拓時代の施設と思われる場所なのだ。
『バルドは敵シルエットに撃破されました。生存確率は85%です』
「ふざけるな。あいつを倒しただと? 私がいくら掛けてあのファルコを手にれてやったと思ってる! いや、そうじゃない。ファルコに乗ったあいつを倒せるなど…… それこそ鷹羽か? しかし、あいつはA級……」
當たり前だが、ストーンズ側に付いている以上、人類側の兵手は困難だ。闇市場に出回っている最新鋭機を手にれるのは非常に困難だ。
それでも彼に頼まれ、相場の五倍以上出して購したのがTSF-R10ファルコだった。
『敵パイロット詳細は不明。シルエットはTSW-R1ラニウスです』
「誰か助けにいってやれ」
『該當區畫に場権限を持つ存在は、現在あなただけです』
「侵者と戦うことなんぞ、無理だぞ私には」
『侵者はすでに封印區畫から離しています』
「私に出ろと。くそ、傭兵の拭いとは。――恩は著せておくか。仕方ない」
バルドは役に立つ。それは確かだ。
多戦闘狂のきらいはあるが、人間的に壊れているわけでもない。確保しておいたほうがいいだろう。
そして不意に気付く。
「ちょっと待て。ラニウスのパイロットは構築技士か。そうだよな。封印區畫にれるわけないもんな」
『その通りです』
コントロールセンターのAIは、噓は付かない。答えることが困難な場合はその旨を連絡してくる。
悪魔的な閃きが走る。この男も、天才の一種なのだ。
「その構築技士は目的を達したのか」
『侵者の意図は分かりかねます。目的を達したのか不明です』
「封印區畫で何をした? その侵者は」
構築技士しかれない封印區畫。アルベルトはわずかな報だけで真相に近付こうとしていた。
「その質問に答える権限はありません」
きた。それはA級構築技士よりも上の資格を持つ者だけが行えること。何かをしたのだ。
X463要塞エリアはいまだ自していない。失敗したのか? バルドを倒せるほどの実力の持ち主が失敗したなどと考える方が不自然だ。何らかの偽裝を施したとみるべきだろう。
確証を得るため、最後の質問を行う。
「その男は構築技士はAか? Bか? それだけでも教えろ」
『その質問に答える権限はありません』
心から湧き上がる、笑み。邪悪そのものだった。
予想通りだ。敵の構築技士はA以上。C級であのドリル戦車は作れるか? 不可能だ。AとBの権限差は大きいと言われている。AIのサポートが違うのだ。彼らはA級相手には親になって接すると言われている。
そしてBとCの権限差もAIのサポート範囲の差と言われているのだ。
AでもBでもない構築技士。そして質問に答えない兵開発局AI。相手は天才じゃない。S級かEX級とでもいうべき、構築技士。
この報は莫大な価値になる。
オケアノス経由で行われた兵オークション。その報元を、ネメシス戦域全域の兵産業関係者、そして要塞エリア施政者が眼になって探している。
探し當てたという話は聞かない。
知っているのは現在、彼だけだ。接する企業も選び放題だ。
敵のアンダーグラウンドフォースの正は後日勝手に知れるだろう。その報を組み合わせれば、自ずと答えが出てくるに違いない。
そして最大の疑問。構築技士の目的は何だったのか。
その答えも今日の襲撃者の向を追えば自ずとわかるだろう。その確信があった。
この報はストーンズ相手にも重要な切り札となる。
「ふん。超AIのサポートで至れり盡くせりの兵開発か。結構なご分だ。そしてあんなドリル戦車などと…… 羨ましいっ! ドリルはないだろう、ドリルは。あんな兵、自分が作りたかった!」
誰もいない部屋で絶するアルベルト。
「ドリルいいな-! その発想はなかった! 認めよう。名も知れぬ構築技士よ。貴様は私を超える発想の持ち主だ!」
超重戦車を作るような馬鹿を超える大馬鹿者がいたのだ。変人を自認していたアルベルトのプライドを酷く傷付けたのである。
天才と言われた男は発想で負けた事実を認める。完敗だ。
「ズルい…… ズルいぞ! おのれぃ! 次こそみておれ! 構築技士としての挑戦狀、確かにけ取った!」
コウが聞いたら困しかねない宣言を発して、アルベルトは歯軋りした。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
コウたちはバリーたちと合流した。
バリーたちはケーレスと死闘をくぐり抜け、第一陣の敵襲は掃討が完了したところだった。
「さすがだな、コウ。あのバルドまで倒しちまうとは」
「あのおっさん、やっぱり有名人なんだ」
初見殺しの戦でなければ、勝ち目はなかったかもしれない。
デトネーションエンジンを搭載した新型スラスターが無ければ、とても相手にはならなかっただろう。
「勝ち方に納得がいってないようです」
ブルーは若干辛辣だ。コウを心配しているからこその辛辣さなのだが、なかなか伝わらない。
先ほど通信で、エメがこっそり、ブルーはあなたを心配しています、と教えてくれた程だ。
「贅沢な奴だな。勝ちは勝ちだぞ」
「ああ。わかってる」
「目標も達したしな。すぐに戻ろう。帰りも厳しいぞ」
「侵経路はバレてるのでは」
「俺たちを排除しにきた連中を全滅させ、こちらから反撃にいている。侵経路まで警戒する戦力が殘っているかは不明だな」
バリーは攻勢にでることによって、敵にトンネル位置探索よりも迎撃優先制を取らせたのだ。
そこまで考えての移とは、コウは心頭が下がる思いだ。
彼らは侵したトンネルの場所まで移する。
「は塞がれている、か」
「いえいえ。私が」
フユキがシルエットを作し、地面を引っ張った。
メタマテリアルによる量子ステルスシート。學迷彩の一種だった。
「ジライヤ……」
「それは言わないお約束。敵の第二波が近付いています。行きましょう」
「了解だ。帰りはウィスが通ってないから非常に脆い。気をつけてくれ」
侵する際はヴォイの掘削裝甲車からウィスを流してあったので非常に強固だった。今は普通の構造材でしかない。
「殿は私が。敵もきたようです。はやく!」
コウを先頭に次々と簡易トンネルにっていく。フユキが一番最後だった。
幸いトンネルは崩れることも無く、次々と出する。
無事野外に出ることができた。野外にも敵はいない。
「フユキさん?」
フユキの出を確認したコウは、フユキのシルエットが何やら作業しているのが見えた。
「お時間取らせました。さあ、行きましょう」
五機は本隊と合流するため移を開始する。
メタルアイリス側もコウたちの要塞エリア出を確認。回収部隊の迎えを出すようだ。
進んだところで、背後から巨大な発音と火柱が上がる。
離れた場所にいる、彼らの周囲にある木々が揺らめくほどの威力だ。
「うぉ。びっくりした。フユキか!」
マイクが背後の火柱を見て言った。
「蟻の巣に水を流しただけですよ」
敵のアント型ケーレスを、トンネルに仕掛けた薬で一掃したフユキだった。
後続がいたとしても地面の中に埋もれるだろう。
火柱を背に、彼らは退卻に功した。
- 連載中73 章
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