《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》あなたの未來とともにまっすぐ進む

『L451防衛ドームの皆様! はじめまして。ダスクバスターの時間です。パーソナリティは私、ブルーがお送りいたします!』

突如L451防衛ドームのユースティティアからフェアリー・ブルーによるラジオ放送が始まった。き通るような高い聲はラジオからでもよく伝わる。

驚愕する住人たち。そして近隣の防衛ドームは相當の衝撃をけた。

はアーテーを一撃で破壊したともいわれる狙撃手。アルゴフォースのスナイパー部隊をラジオ放送中に単機で退けた逸話もある。

その儚げな容姿からフェアリー・ブルーといわれているのだ。

そんな彼がこんな僻地の、しかも小さな防衛ドームにいる。

パイロクロア大陸に激震が走ったことはいうまでもない。

『L451防衛ドームの皆様、リクエストをお待ちしております。最初のナンバーは~』

噂は瞬く間に広がり、傍できる回線を慌てて開く者が続出した。

L451防衛ドームでは放送室の景がユースティティアによって空間投影されている。

サポートはにゃん汰であった。

『二曲目の前にここで皆様にお知らせとCMです。トライレームはL451防衛ドームに流通拠點を配置します! トライレームに所屬する転移者企業のシルエットをはじめとする各種兵はL451防衛ドームからでも手できるようになります』

一曲目に長めの曲をれ、二曲目の前に宣伝する。これはフユキの考えた放送プログラムだ。

『皆様が聞いていただいているラジオスポンサーをご紹介いたします。クルト・マシネンバウ社、スカンク・テクノロジー、統重工業、王城工業集団公司、TAKABA、ゼネラルアームズ、五行重工業、BAS……』

トライレームの主要企業の名をテンポよく読み上げるブルー。抜群の舌の良さである。

つまり、L451防衛ドームではこのスポンサー企業の商品を購できるということが、おのずと知れ渡るのだ。

ラジオ放送中にスポンサー企業を読み上げることは不自然ではない。

『それでは二曲目にります。リクエストはL451防衛ドームにお住まいのラジオネーム〔ダブルチーズバーガーパティ抜きで〕さんから。そのダブルに意味はあるのでしょうか! それでは……』

ユースティティアが出発準備にる。

ブルーがラジオ放送を開始した報はあっという間に広っているだろう。アルゴアーミーのきを攪するためだ。

『リクエストは付中です。私が乗っている艦は今からL451防衛ドームを出発しますが、放送は継続。今日は三時間スペシャルでお送りいたします! アシスタントのにゃん汰さん、何ですか?』

『アシスタントのにゃん汰です。皆様よろしくお願いします。リクエストにフェアリー・ブルーの生歌が殺到していますので、リスナーの皆様に報告します』

『歌いませんからね!』

『ラストまで聴いて下さいということですね? ではリクエストを読み上げます。L451防衛ドームお住まいのラジオネーム〔フェアリー・ブルーのグラビアはいつですか?〕さんより。――フェアリー・ブルー。グラビア撮影はどの時期に?』

ぐいぐいと絡みをれるにゃん汰、本気のアシスタントであった。

『グラビアはしません! ……たぶん、きっと……』

『今日はそこらの事をわたくし、アシスタントのにゃん汰が真相解明に迫りたいと思います! マネージャーのジェニー様よりコメントを貰っていますので――』

『何してんの! まじで!』

ブルーが悲鳴に近いび聲をあげ、にゃん汰が不敵に笑い応戦するラジオトークが始まろうとしていた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

『グラビアは本気で困りますから。えっとCMいったんります! 艦が全速移するとのことなので! しばしお待ちを!』

無慈悲にCMにるブルー。明らかにハプニング狀態であった。

來月撮影の準備にりたいというジェニーのコメントが寄せられたことが原因だ。

「ノリノリだな。にゃん汰」

コウとフユキが今後の方針について話している最中であった。

ユースティティアは偽りなく全速離する。ラジオではスポンサーCMが流れ始めた。

『――あなたの未來とともにまっすぐ進む夢の雷。大陸橫斷パンジャンドラム〔メロス〕はBAS社より……』

そのCMを聴いていたコウとフユキがげんなりする。

「何故パンジャンドラムをCMするんだ、BAS社は…… いや、それよりもメロス市販してたのか。雷だから市販していてもおかしくはないが……」

「BAS社でアピールするならバザードなりラモラックだと思うんですけどね。ハードばかりみるのではなく、消耗品の利益も大事です。そこを狙ったのでしょう。ラジオ広告はほら、CM料も安いのです」

「メロスはまっすぐに進むし、いいか」

「そういう問題ではないと思いますが。BAS社の各種パンジャンドラムはアルゴナウタイ用にそこそこ売れてるみたいですよ」

「嫌がらせにしかならないと思う。いや、それでいいのか。うーん……」

コウは適當な相槌を打ちながら、フユキからけ取った報告書を目に通している。

「手続きミスによる始末書の可否? ……ふーん」

コウはその部分を消去した。

「必要ないよ」

「しかしそこは私の発言が原因でして。書類は現のやりとりよりも時には重要。報告は必要です」

「破壊したアルゴアーミーの部品をL451防衛ドームに全て置いてきた、という件についてかな。俺も似たようなことを考えてたし、問題ない」

「そういっていただけると助かります」

コウがふっと笑った。フユキの狙いはわかりやすい。

鹵獲兵に詳しく、査しないと伝わらないものだろう。

「捕獲した殘骸のなかにあった、金屬水素生爐搭載の可変機バイヴォーイ・オホートニク。こいつはMCSを抜いただけでパワーパックは無傷。鹵獲兵を一つ一つ殘骸を査して譲渡となるとさすがにストップになるよな」

「そうですね」

「――つまりL451防衛ドームは無限の金屬水素供給裝置を一つ手にれたことになる。戦闘工兵が縁の下の力持ちってのは理解するけど、嫌われ者にまでなる必要はないよ。俺の権限で許可、L451防衛ドームに使い方を指示する」

すっかり考えを見抜かれたフユキは満足げに笑う。小規模な油田を一つ譲渡するに等しい行為だからだ。

そこまでやった甲斐があったというものだ。

「ありがとうございます。當面、金屬水素供給需要可能施設になるだけでも、結構な利益になるでしょう。ですが一機分のパワーパックでは大部隊の運用までは無理。これを足がかりにどう長するかは彼ら次第です」

「そうだな。今できることはこれぐらいだ。それでも十分だろう。六番機なりのA1やB型になっていく様は個人的に楽しみだしね」

L451防衛ドームがかになれば、その分敵に狙われやすくもなる。

しかし六番機の強化に繋がるのだ。彼はいずれ自力でB型やC型に辿り著くだろう。その時こそ彼なりの六番機に応じたスタイルの追加裝甲を用意したいと思う。

その日が來ることを心待ちにするコウだった。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

フユキとの話も終わったコウは五番機に戻り、五番機の調整と六番機の戦闘データを確認していた。

さきほどの戦闘での損傷はすでに整備終了している。マールとフラックは手際が良い。

「六番機の戦闘記録をみると、虎のような戦い方だな。貓か。を潛めて尾を振りながらタイミングを見計らう。そんな貓だ」

コウは昔飼っていた貓を思い出し、苦笑する。貓のようなだと思った。

「さすがに剣や剣道を教えるのは可哀想だからな。今のフランにあわせた強化プランを練らないと。うん。六番機の強化は本當に俺の趣味だな」

一人呟きながら作業をると、フランから禮のメールがっていた。

「はは。律儀だなあ」

樸念仁っぷりを発揮し、簡素な短文で返信をするコウ。

「ん? 送信者不明のメールだ。五番機のIDをピンポイントでわかるヤツなんてそういないだろう……」

そのメールをみたコウの顔が見る見る真顔になる。

「ヴォイー! おい。ヴォイ。ちょっときてくれ!」

「どうしたコウ。珍しい。何があった!」

のそのそと五番機に近付くヴォイ。コウは五番機から慌てて降りると、ヴォイに話を始めるのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

ラジオCMの広告費は安いらしいですね。その手法はTVと違い、リスナーに対し短いフレーズで考えさせることが重要とのこと。映像のインパクトはありませんからね。

まっすぐ進むパンジャンドラム! これはリスナーは考えるだろう! ということで。

作者もオールナイトニッポンやらやってやるぜ報局など聞いていました。古いかな……

いよいよフェアリー・ブルーも追い詰められてきました!

【國家形戦爭時代の幕開け】章の本編は終了。

次回、ヘルメス視點の斷章を挾んで新章に移行します。

星リュビア編の閑話の続き、そしてアンフィシアターの事前報を補完する重要回です!

フランは素っ気ないけど懐くとデれる貓系? 次回ヘルメス君はアンニュイなじ?! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!

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