《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》聖域の黒幕
裝甲車は街の中央にあるアルティスのコントロールタワーに到著した。
二人はエレベーターまで案された。
コントロールタワーは、巨大な炎が投影されている。
「あの炎は?」
「古代オリンピアの競技場に倣って、とお聞きしております」
「オリンピア……オリンピックか!」
聖火の一種なのだろう。あくまで映像だが、このアルティスの象徴でもあるのだ。
「それでは帰りまで待機しております。時間が來たら代要員に変わりますので、気遣いは無用です」
「わかった。案ありがとう」
恭しく禮をする二人。
禮節に関しては厳しく教育されていることは窺えた。
「今のところ主人のイメージは、しつけに厳しい母親といったところかな」
「と予想するか? ま、確かに男にあのしつけは無理な気はするが」
「そうでもないと思うけど。まあ勘だ」
エレベーターは上昇し、目的の部屋に著いた。
「コウ。おかしな顔をしているな」
「地下に――封印區畫へ行くと思っていた」
「そうか。想定していた予想が外れたか?」
「うーん。外れてしかった、というべきか。きっと手強いよ」
「そうか」
ヴォイはコウを守る。それだけだ。
エレベーターを降りると通路が続いている。
床に表示された矢印に沿って進むと扉があり、二人が近付くと自的に開いた。
大きな展臺の如く、見晴らしの良い場所。コントロールタワー最上部だ。
眼下にはしい海と、ペグマタイト半島。周辺に広がる群島全てが一できた。
「ようこそ。はじめましてウーティスたるコウ。歓迎するよ」
目の前に先ほどの年とと同じ、ブレザーの學生服を著たがいる。一見すると高校生風に見える。
眼鏡をかけ、しい黒髪を肩あたりまでばしている。古典的な委員長タイプのだ。ただし、黒髪に大理石のような白いなので、コスプレがある。先ほどまでの年たちのような自然さがない。
はコウに近付き、手を差しのばした。コウもその手を取る。
「はじめまして。――伊達眼鏡をかけた超AIとは。どうリアクションいていいかわからないな」
「はあるはずだけど? どうしてわかったの?」
「超AIのビジョンは慣れ親しんでいるものでね。同じ想をテュポーンの分、アリマにも言われたよ」
「本當にテュポーンと接していたんだ。殘念だったね。私もそこまで把握していなかったよ」
は呆れたようだ。
「これは迂闊だったか」
「判斷材料は々あったと思うけど、決め手は何かな? 教えてもらえる?」
「五番機はアシアと繋がっている。そのアシアと回線が遮斷されているんだ。これはアシア同等かそれ以上の超AIでないと不可能だろう」
「アシアが完全なら不可能だったと思うけどな。話は長くなりそうだからそこに座って」
挑戦的には笑う。
コウとヴォイは二人並んでソファに座った。
「名前を聞いていいかな?」
「通り名でいいかな?」
「いいよ」
「では改めまして。私はバーン」
「バーン?」
「あなたが使うキャラの必殺技だったバーンなんたらのバーンです。燃えます。なんとでも言いなさい」
若干逆ギレしているかのように主張するバーン。
「わかりやすいけれど、そんな説明でいいのか」
「いいのです」
が真面目なのかふざけているのかよく摑めない――超AIだった。
「そのブレザー風の制服。あの孤児たちも同様だな。あなたの趣味か?」
「良い趣味でしょ! 日本のサブカルを研究して採用しました。學徒には貞淑さと清純さが求められます。このブレザーなる裝はイメージにぴったりです! あの子たちは家族――オイコスと呼んであげてください。古代ギリシャ語で家を與えられたもの、という意味です」
「わかった。オイコスだな。――では本題を。五番機にまで干渉して俺を呼んだ理由はなんだろうか」
「愚癡を聞いて貰うためです。恨み言といってもいいかもしれないですね」
「俺に関係があるのか?」
「聞いてもらえればわかります」
両手を腰にあててふんぞり返るその様はまさに古典的な委員長キャラ。コウはそこにツッコむかどうか悩んだが今は黙っておくことにした。
「まず私。寢ていました。あなたがたでいうふて寢です」
「ふて寢していたのか」
「叩き起こされました」
「それはご愁傷様というか……」
「ええ。星アシアで地殻津波を引き起こしたヤツがいたので。そりゃ深い眠りだろうが目を覚ますってもんです」
コウが沈黙した。
該當者は一人しかいない。
「まずは一つ目です。コメントは?」
「ありません」
コウの神妙な顔付きに、ヴォイが笑いを堪えている。
「それでもふて寢続行を決め込んだのですよ、念のため仕掛けを一つだけしておいてね。
ふて寢続行を強行しました」
「強いな! 仕掛けは気になるが教えてくれる気はなさそうだ」
「察しがいいですねコウ。寢ていた理由はとくにないです。それが私のキャラですので。でもそれもダメでした。予はありましたが、もうばっちり目覚めるような出來事があったのです」
「どうして?」
「ネメシス星系でブラックホールを生したヤツがいたんですよ。とんでもない話ですよね。ここまでくると私も本格的に覚醒せざるを得ません。星間戦爭でもそんな非常識なことをしでかしたヤツ、そうはいません」
「いたかもしれないじゃないか……」
力無く抗議するコウ。
「いませんでしたー! 星間戦爭時代は私、ずっと眠っていたので! そんなことがあったらいくら私でも起きましたー!」
ムキになって否定するバーン。ブラックホール知は彼の超AIとしての沽券に関わる出來事だったようだ。
「開拓時代から眠っていたのか!」
「そうですよ! それが何か?」
はコウを上から覗き込むように迫る。
「地殻津波はともかくブラックホールはやりすぎですよ。私みたいにスリープ狀態の超AIがいたら、おそらく多くが知するでしょう。こそぎ叩き起こされている可能までありますね」
「怖いことを言わないでくれ!」
「コウ。ツケが回ってきたようだな」
ヴォイが想をらす。
「何のツケだよ……」
「誰かさんがしでかしたことに驚いたのではありませんよ。技自は開拓時代からありましたし? あの時代はんな勢力がブラックホールを生しやがりまして。後始末にソピアーがキれたこともあるので。――話が逸れました。あの溫和なオケアノスが、それらの事象攻撃を許可した。それも二回もです。これはゆゆしき事態だと、私も目覚めるしかありませんでした。そこで初めてリュビアとアシアの同時制圧やら、ストーンズなる勢力とヘルメス君が々やらかしていたことを知ったんですよ」
「ヘルメス君(、 )……」
ヘルメスを君付けできる存在など、そう何柱もいないだろう。アシアに確認すれば一発で判明するに違いない。
悲しいかな、コウは會話のなかで彼の正に辿り著くまでのギリシャ神話の知識がなかった。
「舊傭兵機構も大概でしたけどね? そりゃオケアノスも怒るってもんです。何せ管理義務を放棄同然で保に走っていたのですから」
「なんといえばいいのか」
「まずは私の話を最後まで聞いて下さい」
「はい」
よっぽど鬱憤がたまっているのだろうバーンに、コウは首を縦に振るしかできない。
ここで逆らったらろくでもない目に遭うことは確実だ。
「それでね。エイレネちゃんも暗躍していたわけですよ。ホーラ級なら私、モデルがあの子とだけは縁があるので。下手にいたら悟られます。眠っていたので會ったことはないですが同種であることは確実。平和のためなら手段を選ばないタイプです。寢ぼけた狀態での諜報活など、すぐに察知されるでしょう」
「エイレネちゃん……」
もうコウにはこのの正がさっぱりだった。
ギリシャ神話由來であることは確実だろうが、ヘルメスを君付けし、エイレネと関係する神など、思いつかない。
そんなコウをみて、ヴォイがため息をついた。
正はすでに看過している。ギリシャ神話に詳しいものならバレバレであった。
「そりゃ々済まなかったな。俺からも謝罪するぜ。超AI【ヘスティア】さんよー」
「そこの熊! あっさりバラすなー! 空気読めー!」
本気で激怒し絶しているヘスティアに、意地の悪い顔付きで笑い返すヴォイは強かった。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
ヴォイは強かった。
正は登場した瞬間バレバレなキャラなのでで引っ張りませんでしたよ!
オリンピアードはやっていたゲームでは鯖3位で王者にはなれなかった思い出。
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