《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》地下闘技場〔パライストラ〕
コウと兵衛はバルドの案で地下闘技場〔パライストラ〕に到著した。
IDで手続きを済ませ、室する。
「なんでもあり、というイメージのパライストラだが、やっちゃいけねえこともある。一つは降參したヤツへの攻撃。もう一つは他言無用ということで俺やヴァーシャの旦那にだけ通達されたらしいが…… プロメテウスの火は止だとさ」
「前者はわかるが、後者はダメなのか」
「生命保護の観點からじゃないらしい。リミッター解除の類いはとにかく後出し有利。睨み合いに繋がるから面白くないってことらしいぜ。失敗して自終了は観客も興ざめだろうとも言っていたな。同意はするがプロメテウスの火に関して俺達以外で知っているなんざバーンの野郎、何者なんだろうな」
「まだ俺は聞いていないな。まああんな仕様を無闇に拡散されても困るわな」
コウも同意する。ヘスティアの慎重さに舌を巻く。ルールとして広報したならばプロメテウスの火はあっという間に広まるだろう。そして各地で自という慘劇が起きるに違いない。十秒は制できる時間ではないのだ。
約束なので口には出さない。下手な相槌ですら、バルドに察知される怖れがあるからだ。
「他にも結構細かなルールが多くてな。機やMCSから算出した実績で、シルエットに応じた階級が提案される。お前たちは否応もなく無差別級行きだな」
「それはむところだが、闇試合なのに階級があるのか」
「一方的はつまらんし、死人が無意味に増えても評判を落とすだけ、という説明をけた。つくづく理詰めで運営されているよ。このパライストラは」
「さらりといってのけているが、MCSから算出した実績という點が恐ろしいやな」
兵衛の意見に二人も同様の印象をけていたらしい。
MCSはブラックボックスの塊。それを外部からある程度解析可能であることは、既存の技を遙かに上回るものを持っているということだ。
「死人ってのもめったにでやしねえ。それは試合を見たらわかる。時間帯によって三種類に分かれているんだよ。練習時間、一般試合、選考試合。三人チーム形式は選考試合だな。今から見學するやつは一般試合だ」
「タイムアウトはあるのか?」
「20分だな。決勝試合は無制限が多い。もしくは降參するか。強いやつ相手には早めに降參するのも低ランクの心得だぜ」
「考えてあるなあ。シルエットでそういう競技をやるってのは配慮も必要だろうからな」
兵衛が変なところで心する。闇試合というからには問答無用で殺し合いする場所と思っていたようだ。
「アンフィシアターは武制限がある場合もあるが、パライストラは持ち込んだ武が基本だ。そろそろ始まるな」
「階級はどんな分け方なんだ?」
「コストクラスという獨自の階級制を採用している。〔ライト〕から始まって〔ミドル〕、〔ヘビー〕、〔スーパーヘビー〕、そして無差別の〔アブソリュート〕、可変機用の〔フライ〕と〔フェザー〕という分類だ。レスリングに似ているな。しかしシルエットにさして重量は関係ねえ。機価格が基準になる」
「機価格か」
「フライとフェザーにいたっては、可変機用のレギュレーションだ。フライがSS型でフェザーがSSS型ってな。飛び回ってうざいところなんざぴったりだ。笑えねえ」
「可変機(シェイプシフター)はそんなにねえだろうが」
「當然。めったに試合も立しねえから、無理矢理他の階級でやることになる。可変機の機価格からすればヘビーかスーパーヘビー、アブソリュートだな」
「へえ。機から駆け引きが始まるのか。おそらくフライとフェザーは救済措置の一環だったんだろうが、參加者がないから機能していないんだろうな。シルエットの能は同価格帯より落ちる。飛べるという要素も閉所じゃあまり意味がねえか」
可変機の特徴は飛行機形態による機力。パライストラが直徑10キロあると仮定しても、天井がある以上はその利點は大きく損なう。
シルエットとしては重量が増加し構造強度を損なう可変機構そのものが弱點となる。
「とくに層が厚いクラスはライトとミドルだ。金屬水素生爐採用機は問答無用でスーパーヘビー行きとなる。ここまできたらアブソリュートに行くヤツも多くなるな」
ブザーが鳴り響く。
「そろそろ試合だな。まあ見とけ」
「そうする」
シルエット同士の模擬戦なら、十分過ぎるほどの機能を持っている。
あえて命のやりとりをさせることで、臨場が比較にならないものを演出しているのだ。
コウも兵衛も初めて見る闇試合に興を隠しきれなかった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
何もない円形狀の広場。
演算されるかのようにホログラフが走ったかと思うと、次の瞬間には地形が出場する。
それぞれのシルエットがクォータービューのカメラ映像で表示される。
右側のモニタにはベアが、左側のモニタにはバイソンが映し出されている。両機とも追加裝甲まで完備。
兵裝は事前に確認できないようにされていた。
「ベアとバイソンか。バイソンが相當有利か?」
コウが呟く。兵裝が見えないが、バイソンはベアの上位互換。機能はあらゆる點でバイソンが有利だ。
「そうでもないぜ。オッズはベアが1.6。バイソンが2.2ぐらいか。現時點では機とパイロットネーム、まあリングネームみたいな偽名だな。そいつしかわからん」
「ということは賭けるほうも定期的には試合を確認しておかないといけないわけか」
「常連ほど有利ってわけかぁ。こりゃ配信スタートすると盛り上がりそうだわな」
「そういうことだな。武裝は試合開始後に公表される。――まあ見ておきな」
ネタバレはしないバルドがにやりと笑う。コウは頷いて畫面を見る。
甲高い音が響き渡る。
試合開始の合図であった。
バイソンは60ミリライフルを構え、ローラーダッシュで距離を詰める。武裝はこのライフルと高周波ブレード。
ベアはかず、武を構える。それは90ミリ口徑の攜行レールガンと予備弾倉。他の武裝は背後に取り付けられた対戦車ミサイル。そして銃剣だ。
「そういうことか。こりゃバイソンはきついな」
ライフルとレールガンでは程は桁違い。
停止しながら両手構えで反を抑え、撃に移行するベア。
「レールガンはきついな。はじめてやりあったときはマンティス型のレールガンだったもんなあ」
コウは最初のケーレス戦を思い出す。レールガン対策のため、わざわざパワーパックが生きているベアを使って楯にしたのだ。
コウの予想通りバイソンは被弾し、転倒しそうになる。
バイソンはかろうじてバランスを整え踏みとどまり、歩行に切り替えるが、追撃により瞬く間に裝甲が削られていく。しかし、バイソンを倒しきれるほどではない。
バイソンも相手がレールガンと知り、慎重なきとなった。地形を利用した戦に移行する。
「あのベアもかなり馴れているな。バイソンが地形を利用し始めた隙にすかさず弾倉を換している」
「あいつぁ、ひょっとしてアンフィシアター用の機にベアを使っているんじゃねえかな……」
「正解だ兵衛。そういう戦もありってことだな」
「コストを抑えた機に、武を火力に振ったレールガンを使っているということか。それならベテランでもライトかミドル行きになる、と」
「あたったヤツは不幸だがね? そういう意味でもなんでもありの地下試合。一般試合は生活型の試合ともいうべき形式だな。日銭を稼ぐための試合ともいえる」
きの細やかさでベテランかどうかは判明する。ベアのパイロットは無駄がない。
ベアは後退しているように見せかけ、確実にバイソンを追い込んでいく。
バイソンが追加裝甲をパージし、素の機に戻る。機力を上げ、勝負に出た。
観客もまた固唾を飲んで見守っていた。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
地下闘技場〔パライストラ〕が登場しました! 今後も使い勝手良さそうな場所でもあります!
ベアなどの中古市場が高まったら間違いなくこの場所のせいです。とはいっても同時試合やら人數制限を考えると、星アシアの流通に影響するほどではないかな?
オッズ計算はブックメーカー式を參照。階級分けは古いレスリングを參考に。
作者、ちょっとだけ競艇新聞の製作経験あるのですが、巻くってとか差してとか大外とかそんな言葉を並べて記事を書いていた記憶。
競馬とほとんど用語は同じかな?
腳質などはありませんのでボートの調整合は記者さんたちが選手に確認していましたね。
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Re:legend
いつも通りの生活をしていた主人公涼宮竜何故かしらんが変なやつらに異世界に召喚されたあげくわけのわからないことに付き合わされる… 何故召喚されたのが僕だったんだろう… 感想等お待ちしてます。書いてくださると嬉しいです。
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