《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》デビュー試合

五番機はアンフィシアターと直通の格納庫にいた。

ネームはエンプティ。アンフィシアター用のカラーリングは白一だ。イメージが大切らしい。

は孤月のみ。追加裝甲はA1偽裝型。敵シルエットは不明。ヘスティアからの注文は圧勝と一言だけあった。

『いよいよ両者の場です!』

五番機は歩行し、アンフィシアターのなかにる。

巨大な円形劇場。天井はない。遙か上空に要塞エリアのシェルターが見えた。

地形としてはアンフィシアターのほうが遙かに狹い。パライストラと違い地形演出もないようだ。

『それでは今回のスペシャルゲスト! あのアシア大戦を終結に導いたと言われるメタルアイリス所屬謎のエースパイロット。エンプティ!』

遠く聞こえる聲は他人事のように思える。聲の主は主催者バーン。ヘスティアが聲をかえて実況しているのだろう。

コウは苦笑を隠しきれない。畫面にはメタルアイリスのエースパイロット、エンプティ(本)と表示されている。

その表記を信じる観客もどうかと思うが、どうやらバーンの発言は一定の信用があるようだ。

『対するものは、このパイロットの素を知ってなお參戦したルーキー、傭兵ランドン!』

畫面にシルエットが映し出される。見覚えがある形狀だった。

雙方指定位置まで歩行で進む。

「あれはカザーク。アルゴナウタイ系の傭兵か」

レートが表示される。1:100というあり得ない數字が浮かんでいた。むろんコウが1だ。

『ハンデとして、エンプティは撃武なし。雙方、MCSがある部への意図的な攻撃と腳部への直接攻撃は止とさせていただきます。それでもレートが立しないので、主催者特権! 100倍です!』

観客は歓聲を上げているようだ。MCSのスピーカーから流れてくる。サービスらしいので遮斷も可能と説明をけていた。

「レートが橫暴だな。しかし部と腳部攻撃止とは地下試合と違って甘いな」

地下試合ではMCSがある部への攻撃條項など一切なかった。これがヘスティアが目指す古代ギリシャ式闘技ということなのだろう。

ゴングのような効果音とともに試合が開始される。

相手との相対距離は六キロほど。お互い両端。おそらく會場は直徑七キロ程度だろう。

「――ッ」

五番機は加速を開始。弧を描くように前進。

カザークのパイロットはレールガンを使い五番機を攻撃。細かくフェイントをいれるかのようにスラロームする五番機を捕捉できない。

「早い! 音速に近い…… 超えているのか?!」

驚愕するカザークのランドン。カザークの由來は知っている。TAKABAのラニウス後継機アクシピターを解析し開発されたという。

いわばラニウスは舊式機。金屬水素生爐を搭載していたとして、己の乗機を元にC型の能を測ってしまった。

「至近距離まで30秒だとぅ? ありえるのか」

アンフィシアターでは姿を隠すことはできない。ここでは機能、機力、位置取り。実力差がはっきりと出る。

パライストラとは違い、こちらは不確定要素を殺しているのだ。

「違うッ。あれは最大加速じゃないのか!」

二キロまできたところで、姿を消す五番機。見失ったのだ。

左右を見ると、一瞬だけ五番機の姿を捕捉するが、すぐ見失う。高速で大きくサイドにスラスター移しているのだろう。

「ここまでだ」

「え? なんで……」

五番機が背後にいて、孤月を背部に當てている。どのようにも攻撃可能だろう。

背面を取る。それは圧倒的な実力差が無ければ不可能だ。

実戦なら即死。

『勝負あり! エンプティの完勝です! まさかの雙方ノーダメージ。まさに王者の風格!』

煽りすぎだと心苦々しく思うコウ。

とりあえず指示された通り、闘技場の壁際を一周し、格納庫に戻る五番機。

戦場と違う意味で張したが、ひとまずは初試合を終えたのだ。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「また変な偽名が増えたね。コウ」

「そうですね」

アシアとブルーが試合放送を見ながら呟いた。

謎の主催者バーンから、ユースティティアに映像が送信されていたのだ。

「どんな刑に処そうかな」

グラビア撮影が確定したブルーの表は昏く、不気味に笑っている。

「お手らかにね、ブルー。多分バーンって人の興行に利用されているんだよ」

「飛び込んでいったコウですし自業自得です。むしろ巻き込まれた私は……」

バーンから送られた撮影地とスケジュールを端末で確認し、虛ろな瞳になっているブルー。

バーンがジェニーと連絡を取り所々の條件を確認。〔カメラマンは型のみ。スタッフも可能な限りファミリア〕、〔青と白のパターン背景は止〕など、撮影注意事項がずらりと並んでいる。

I908要塞エリアにはファミリアがほとんどいない。彼の知らないところでマネージャーのジェニーを通して著々と段取りが進んでいたことに驚愕した。

解決策としてジェニーが型ファミリアやセリアンスロープやネレイスで編した撮影スタッフを引き連れて現地合流となったのだ。

「あれはいいのでしょうか」

「もう知らんにゃ」

巻き込まれたアキとにゃん汰の二人の表も虛ろであった。にゃん汰も匙を投げている。

「バリーが休暇がてらにいってこいとハッパをかけたそうよ。當然ジェニーも撮影にはノリノリ。絶対楽しんでいるわあの二人」

「ジェニーとバーン、かなり気があったみたいね。ジェニーの勘だとおそらくだそうだよ。バーンって人」

エメがぽつりと呟く。アシアも対処しているが、やはりI908要塞エリアには干渉できないそうだ。

「やっぱり超AIなのかな」

『ジェニーが言うには、あれは人間だと思うけどなあ、らしいよ。権利関係がやたら細かくて驚いたそう』

アシアも會話に參加する。

「ほぼ人間な超AI、しかもアシア並みの能ってどれぐらいいるんだろう?」

『何柱もいないはず。リュビアはあの狀態。エウロパは眠っているはずだし。フェンネルOSのデータを解析し、私の干渉をシャットアウトできる存在なんてそういないわ』

「だよね」

『人間らしい格の超AIはいくらでもいたけどね。私達ギリシャ神話モチーフだし。――しいていうならバーンは偽名だとして、火関連の超AIかなあ』

「火? プロメテウスは除いてもいるかな」

『火の持ち主だったヘパイトスも當然いない。あとは太神のヘリオスやアポロン。爐床の神ヘスティアを模した超AIね。どれも星開拓時代には消失しているわ』

「神様かぁ」

アシアが急に表を変えた。みるみる険しくなる。

『――続報よ。トライレーム絡みね。先ほどの映像はトライレーム所屬の構築技士たちにも提供されていたみたい。そしてバーンに招待された』

「ええ!」

エメにとっては頭の痛い事態になった。あの人たちは、I908要塞エリアに集結する。そういう人たちだ。

ただ人類の叡智を一網打盡する機會にもなりかねない。バリーも同様に頭を抱えていることだろう。

『大論爭が始まっているわ。どうやら各社のフラグシップを展示したいので招待したいと、そういう名目。キヌカワがリュビアに同行したので今回は譲りますと早々にお留守番を決めてくれたから良かったけど。ジェニー含めてエイレネで行くことになりそうで、警護部隊含めてバリーが慌てて編ったわ』

構築技士が総出で遠征となると、それ相応の部隊が必要だろう。しかも、今までにない催し。兵による競技などあろうものなら目がない人種である。実際兵衛は理的に飛んでいった。

「そんな得の知れない場所に構築技士が大勢押し寄せて何かあったら目も當てられないもんね。でも構築技士なら、おそらく見學したいはず。エウノミアは改裝中。アストライアはあえてかさないか」

『キヌカワなら當然です。コウもしはその思慮深さを見習ってしいものです』

「本當にね……」

今回ばかりはアストライアに心底同意するエメであった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

遂にデビュー試合です!

あっさり目ですが今やエース格のコウが同型の標準機に苦戦するはずもなく。

冗談のようなレートですがここまでくると寶くじ覚で買う人もいるでしょう。

またシルエットはたびたび言及されているように追加裝甲次第で能や質まで変わります。でもまあ空飛ぶベアを作るならもっとよい機はありますしね。ネ○に裝備可能なGデ○ェンサーですが実際の映像がないようなものです。

西側兵で東側がコピーしたものは多く戦略撃機B-29はTuー4、WWⅡの技供與で立した戦車T-54/55。とくに東側では同陣営の兵をコピーし獨自発展した例もあります。

その時その時によって必要なものが量産されたということでしょうか。

ユースティティアもついに合流間近!

構築技士も一同に集結し、大波の予もします。コウ、最大のピンチ到來?!(兵衛とバルドの三人で地下試合を満喫しつつ)。

相手はし可哀想? 迫り來るブルー! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!

    人が読んでいる<ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください