《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》アルゴフォースの新型
2022/03/25 ボガディーリの表記ですが発音に近いボガティーリに変更いたしました。
ボガトゥーリか悩んだのですがボガティーリ表記も多かったのでこれで。
ロシア語の発音難しいですね!
コウたちはシードにより予選決勝試合からの出場となっている。
五番機と兵衛のラニウスC型は人工島エリスに移し、パライストラのシルエット用格納庫で待機していた。
バルドのシルエットが先に到著し、待機中である。コウと兵衛が初めて見るシルエットがそこにあった。
鎧のような裝甲をまとった外観は裝甲筋採用機。日本刀を模したコールドブレードと特徴的なライフルを裝備している。
「ほう。見かけねえ機だな。いや、見覚えがあるような、ないような。見た目的には裝甲筋採用機のようだが……」
「何か面影がある…… ボガティーリか!」
直接対峙したことがない兵衛はうろ覚えだったが、コウはよく覚えている。
ヴァーシャが苦心して構築した筋裝甲採用機であり可変機でもあるシルエットだった。
「アルゴフォースの新型かよ!」
思わず兵衛もまじまじと見る。コルバスはフッケバイン系統に屬する機。
この機は紛れもなくヴァーシャ製の新型機。間近でみるまたとない機會でもある。
「お前さんはヴァーシャの旦那と戦ったことがあるんだったな? コウとの敗戦を機にヴァーシャはいくつかのボガディーリバリエーションを作ってな。その一機を融通してもらったのさ」
「そうきたか」
あのヴァーシャがコウに敗北を喫したままで終わるはずがない。當然改良を加えていると思っていたが、複數のバリエーションまで制作するとは思わなかった。
おそらくいくつか構築し、自分にもっとも相が良いものを採用して機を改造するのだろう。
「こいつはボガディーリ・コロヴァト。変形機構を廃し、加速力と飛行能力を獲得したタイプだ」
一見ボガティーリに似ているが、背面には大型スラスター三発と可変翼機構を持つ主翼を二機搭載している。
コンセプトはラニウスC強襲飛行型と近いのだろう。追加裝甲の類いではなく、素の能を向上させているコンセプトに違いがある。
「ヴァーシャはまた違うボガティーリなんだな」
「ボガティーリもお前たちのラニウス同様日々進化しているからな。今頃とんでもない能になっていそうだ」
「へへ。面白えなコウ」
「怖いですが、面白いですね。自分の機は可変機か? それとも可変機並みの機力を持つボガディーリになるか……」
ヴァーシャもコウを打倒するべく、日々研鑽を重ねているのだ。
コウも危機を覚えずにはいられなかった。
「とはいっても目新しいもんはねえよ。コルバスと比較すると運能は劣っているが機は向上した。それぐらいの違いだな」
「コルバスに機まであったらほぼ弱點はないんじゃないか」
「てめえらのラニウスだってアップデートし続けてるだろうが。俺が最初やりあったラニウスとは比較にならんぞ」
「はは。違えねえなコウ」
確かにラニウスは五番機とともにアップデートし続けている。
そして他機と比較にならないもの。それは実戦経験だ。アナザーレベル・シルエットとまでやりあった現行シルエットは他に存在しないといってもいいだろう。
「しかしこの三機で対戦する相手がちと可哀想だがな」
「珍しく同するんだな」
「そらおめえ。どうやら相手は好きな武裝貸し出しという破格の優遇措置があるそうだぜ。だが荷電粒子砲対策さえされている俺達の機に、どうやって勝つんだよ?」
「ワーカーが持っている荷電粒子砲は現行シルエットでは扱えないだろう。レールガンをもらっても照準できるかどうか。確かに勝ち筋はみえないな」
アンチフォートレスライフルはさすがに用意しないと踏むコウ。Dライフルの簡易型がようやくトライレームに普及しつつあるぐらいだ。裝甲筋はDライフル砲弾に対しても有効といえる。
「可能がある兵か…… 超高速ミサイルか」
コウが口にだす。シルエットの兵裝とは限らないという結論に至ったからだ。
となれば超高速ミサイルであろう。迎撃に失敗すればいくら裝甲筋採用機でも耐えることは厳しい。
「んなもんプラズマバリアで十分だろう」
「いや、シルエット以上の大きさのヤツだ」
「対艦用か! なんでもありといっていたからな。あり得るな……」
コウの言葉にはっとするバルド。
「オッズを立させるためならバーンは何を仕掛けるかわからねえからな」
「対艦用ミサイルなんて裝備できねえだろうが」
「シルエット一機が一発背負うなら可能ですよ。そういうベア用の追加裝甲もあったはずです」
「んなもんあったなあ……」
「アルゴフォースにもあるぜ。何せこっちはファミリアがいないからな」
「可能は除外できないということか。面制圧兵なら助かるが……」
その面から離すればいいだけだ。小型ロケット弾を數発けたところで破壊される裝甲ではない。風も同様だ。
「ま、どんな兵裝でこようが本のシルエットさえ倒せばいいんだろ」
「それもそうだな。俺達は機を変えるわけでもない」
バルドの余裕の発言に、コウも事も無げに応えた。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
パライストラの地下闘技場に、二機のラニウスとボガディーリ・コロヴァトが姿を現す。
想像以上の大歓聲だ。
「さあて鬼がでるか蛇がでるかってな」
「何が出ても斬り倒すだけだろうが」
兵衛とバルドは嘯いているが、コウは比較的冷靜だ。
五番機と兵衛のラニウスはDライフル。バルドのボガディーリ・コロヴァトはETCライフルを裝備している。
「いつもより狹い地形だな。俺達に有利過ぎないか」
「そういやそうだな。敵の武裝が閉所に強いってことか」
コウの指摘にバルドもようやくいつもと違う闘技場に気付いた。
おそらくいつもの試合より三分の一程度の大きさしかない。
「トラップもありか?」
「普通に考えたらなしだが、ここはわからんな」
狹い闘技場は明らかに何らかの意図がある。
そして敵チームも場した。
「あれは……!」
五番機が相手チームのシルエットを捉えた。
敵は三機ともカザーク。アルゴナウタイの傭兵か走兵だろう。
彼らは左右の腕部にそれぞれテザーを繋げていた。
その先にはシルエットと同等の大きさを持つ――巨大な糸車。
「あれも二刀流の一種か? 二丁雷か……」
あまりに理解できない景にコウが絶句する。
バルドの額がぴくぴくと怒りで震える。P336地下通路における屈辱はもはやトラウマだ。
先ほどの同めいたセリフはどこにいったのか。――青筋を浮かべながらバルドが宣言した。
「殺してやる。必ずだ!」
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
ヘスティアについて熱く執筆したので箸休め回。というかこちらが主題。
ボガティーリの新型です。
フッケバイン系統とその派生機は近接最強ですが撃武の制限も厳しく、融通が利かないある種戦略兵めいたものでもあります。
ボガディーリをフッケバインやラニウスに寄せることでヴァーシャは能向上を図りました。バルドに與えられた機は試作機の一つですが、彼の活躍次第では量産されるでしょう。
そもヴァーシャの格上、いつまでも他人の、しかも敵が構築した機のコピー機が自軍の最上位機に位置するなど耐えられるはずもありません!
そしてコウに襲いかかる恐怖。這い寄るものが!
バルドまじキレ! 結果は見に見えています! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!
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