《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》パワーカッター
2022/05/06 バルドはワーカーと対戦経験がありますので唖然としません。修正いたしました。
地下闘技場にシルエットによる試合開始の合図が鳴り響く。
予選を勝ち抜いたカザークにシュライク。そして超高能量産機であるレイヴン。
対するはイェルドが搭乗する橙のワーカー。
「え?」
試合が始まった瞬間、飛行したワーカーが荷電粒子砲によってシュライクを撃破した。
初めて見る観客も多く、絶句する。
バルドのような常連はにやりと笑うだけだった。
「シルエットサイズの荷電粒子砲かよ。アンティーク・シルエットか。あのワーカーは」
兵衛もまじまじと見ている。荷電粒子砲搭載のアンティーク・シルエットとは戦った経験はあるが、目の前のライフルほどコンパクトではなかった。
「あれはワーカーが裝備していい武じゃねえな」
バルドも同意する。作業機を超える戦闘力だ。
彼らの眼前でカザークさえも幾度か被弾したのち、荷電粒子ビームに撃ち抜かれて撃墜されている。
殘るはレイヴンのみ。荷電粒子砲の直撃をけても耐えていた。
「レイヴンは耐えるぜ。裝甲筋採用機は耐弾能が桁違いだからな。まあ當然だ」
かつてレイヴンの上位機であるコルバスを用していたバルドがつまらなさそうに呟いた。
會場の観客は、その突出した防力にざわめきたつ。
「さすがに荷電粒子砲でもあの裝甲は抜けないか。電磁裝甲と裝甲筋による合わせ技。裝甲筋は対撃用の防力向上効果を見込んでのことだからな」
レイヴンとほぼ同型機であるヤタガラスをTAKABAも生産している。當時機能不全に陥っていたクルト・マシネンバウ社の代替生産に近い。
「シルエット用の裝甲筋を考案した奴はさぞかし學兵が嫌いなんだろうよ」
コウが考案したとはいえない兵衛が思わず苦笑いを浮かべる。
「荷電粒子砲ってのは水鉄砲に例えられる。粒子による運エネルギーと超高溫が合わさった兵だからな。威力も桁違いだ。電磁裝甲と裝甲筋は、沸騰した湯船みたいなもんでな。側に行く圧力をプラズマによって拡散させるって寸法だ」
「俺もあのワーカーにあうまでは荷電粒子砲をけたことはなかったぜ。財布が痛かった。それまでに稼いだ賞金が飛んだからな」
「非公開の新型シルエットを修理できるってのがバーンの恐ろしいところだな」
「何者なんだろうな。俺達の間でも噂で持ちきりだ」
俺達とはアルゴフォース部の話である。ヘルメスですら正を摑めていない。
「レイヴンが仕掛けたか」
レイヴンがサーベルに持ち替え、突進する。ワーカーは冷靜に距離を取り、迎撃態勢に移っている。
勝負はまだわからない。レイヴンは高能機たる面目躍如だった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
アストライアの戦闘指揮所で、クルーは試合を見守っている。
「アナザーレベル・シルエットではないと思うが、構造的には近いのかな」
『開拓時代の技で製造されたワーカーですから。あの飛行も重力を軽減し、わずかな推力で飛べるようになっています。木星型星対策の裝備ですね』
アストライアが解説する。
『私は関與したことがないシルエットですか、星間戦爭時代にも極數のワーカーは殘っていました。アストライア本が裝甲などの強度を下げ、生産を高めました。コスト重視のワーカーに設計を重ねていって現在に至るのです』
「作業用には過度な戦闘力。木星型星に行く必要もない、か」
『ワーカーが荷電粒子砲を持つ必要なんてありませんからね。護用といえど過剰な威力です。當然開拓時代にはあの程度の威力は最低限必要だったのでしょう』
コウは思わず唸る。
三十五世紀水準の科學は想像がつかない。人間同然の超AIだってそうだ。
「裝甲はアナザーレベル・シルエットほどではないだろうな」
『そこは間違いありませんね。當時水準の作業用外裝に過ぎません』
コウが畫面をみて、口元が緩む。
「どうしたのコウ? 楽しそう」
「ワーカーのパイロットがね。おそらくオイコスだと思うんだが、訓練されたきだなと」
「そういえばそうだね。距離も適正に取っているし、焦って無駄弾を撃つこともない」
「ヘスティアのためなんだろうな、と思ってね」
「一種のカリスマなのかしら? ――でも私にだってアシアの騎士がいるし!」
自慢げに笑うアシアのエメ。
「なんで対抗するんだ!」
「パイロクロア大陸にきてから、あちこちでアシアに見捨てられただの、誰も私達を助けてくれないとか聞いてたらね! 私だってしは落ち込むんだよ……」
「救われることを願う、か……」
アシア人の姿勢には疑問を抱いているコウ。ただ強大な暴力の前には為すもない。
人はアシアに祈り、絶していったのだ。彼たちが神話の神々をモチーフにした存在がゆえに。
「ヘスティアは強い。大人は自分でなんとかしろ。弱者から救っていくと斷言した。何かを選び取るために迷いがない」
「そうなんだろう、な……」
アイデースに聞いたヘスティアの過去を思う。
彼は強い意志で事を為そうとしていることがはっきりとわかる。
『ヘスティアの許可を貰いました。現在の宿舎を引き払い、コウとヒョウエのラニウスはこちらで整備することになります』
「助かる」
『自由気ままな単赴任は終了ということです』
「どこでそんな言葉を覚えたんだ! アストライアは!」
言葉に若干批判めいた辛辣さがあることは否めない。
多くの人間がコウのを案じていたのだ。
「そろそろ決著がつきそうだよ!」
アシアのエメがコウへ、試合に注視するように促す。
「次の対戦相手はどちらか……」
格闘特化のレイヴンと星開拓時代の超技によって開発されたワーカーの、近接戦闘が始まった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
サーベルを構え突進するレイヴン。相當の被弾はしたが裝甲は抜かれておらず、作に問題はない。
対するワーカーも、近接武を展開した。
その武に、バルド以外のものが唖然とする。
「は?」
兵衛が唖然とした。バルドは一度対戦しているので、その(、 、 )武を知っている。
兵衛にも見覚えがある不思議な形狀をしている、平べったい板狀のもの。
チェーンソーに似ているのだ。
「ありゃなんだ。電ノコ……高周波パワーカッターか!」
見覚えのある形狀。持ち運び式の充電式ノコギリに近い。鋼材用のパワーカッターは高周波を用いる工も存在していた。
電ノコを構える姿はさながらホラー映畫の主人公を連想させる。
「高周波ブレードの一種だな。作業用だろうが……」
「間違いねえな。作業用の力工だろうな。何せワーカーだ」
「シルエット用の高周波ブレードはけには使えないってのにな。脆くてすぐに刀が逝っちまう」
「開拓時代の現場作業用ならレーザーでの溶斷も難しいだろう。見た目はチェーンソーでも構する材質の次元がまったく違うんだろうな」
加速し振り下ろされるサーベル。パワーカッターでけ止めるワーカーはそのまま刀を切斷した。
「バカが。刃を重ねちゃいけねえのは剣士の基本だろうが」
「本當にな。俺の部下なら一喝してらぁ」
刃と刃を撃ち合わせるという愚行に憤る二人。
防で刀を使う時はあるが、け止める時も刃ではなく刀を橫に寢かした狀態である平地(ひらじ)――鎬地(しのぎじ)を用いる。刀を用いたけ流しで鎬が削れるほどの激しい戦いという意味で、しのぎを削るという言葉が発生したのだ。
勝負は決した。
無造作に振り下ろされパワーカッターが、思わず耳を塞ぎたくなるような不愉快な金屬音を場に響かせる。あっという間にレイヴンの肩から右腕部を奪い去った。
止めを刺すべく流れるような作でパワーカッターを振り上げるワーカー。
試合終了の合図が鳴り、レイヴンはトラクタービームによって場外へ消えていった。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
ワーカーの脅威が周知されました。次回はいよいよ構築技士たちがワーカーの持ち主に接します!
パワーカッターはあれですね。DIY用の丸鋸ではなく、やはりジェイソンのチェーンソータイプが武ならいいですよね!
サーベルもけ流し系の技は多彩とは聞いているのですが、護拳も使うのかな? そこは詳しくないんですよね。護拳でけ止め失敗したら腕が飛びそうだし。
しかし刃を打ち鳴らすという景は映像(え)にはなりますw 刃をれるなと言及していた娯楽作品で印象深い作品は○魂でしたね。
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詳細は活報告に掲載しています!
チェーンソーの音は不気味! け流し系の技は重要! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!
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