《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》決勝トーナメント8チーム制
2022/05/20 ぎゃあ! 決勝リーグ間違えている……ということで修正しました! 本當にごめんなさい!
アストライアの一室。
神妙な顔付きの鷹羽兵衛がいた。モニタの前で正座している。
「會長。今回のことは本當に反省してくださいよ」
「わかったよ。反省しているっての」
幾度となくやりとりされた問答。
TAKABA社長川影に説教をける兵衛だった。
「ええ。これ以上、私からは申し上げません」
「本當かい!」
兵衛が顔を上げ、喜を浮かべる。
川影にしては珍しい短さの説教である。
「はい。それはもう」
川影がにっこり笑う。
「私以上に申し上げたい方々がいらっしゃいますからね!」
扉が開いた。
兵衛の顔がひきつる。
「よぅ! ヒョウエ! 無茶してんな!」
「さて、何から話しましょうかね? で、いつ私と試合します?」
ケリーとクルトが先陣を切る。
「キヌカワ氏からも伝言というか、お小言があるからね」
ウンランが苦笑しながら宣告した。
「では私はこれで」
川影が無にも通信を切る。
「て、てめえ! なんだこれは!」
「なんだではありませんよ。一人で勝手にこんな場所に飛び込んでおいて。ああ、彼も連れてきました」
クルトの視線の先ににゃん汰とアキに連行されてきたコウがいた。悲しそうな瞳で兵衛に視線を飛ばすコウ。
背後にはジェニーがいる。
「トライレーム幹部として私が出席ね」
アストライアたちとは別系統の事案ということであろう。幹部二人無斷外出、失蹤は重大案件だ。方や組織トップ、方やA級構築技士なのだ。
立場をわきまえさせるべく、一同が集結したといっても過言ではない。
「お二人にはたっぷりと自覚してもらわないとね」
法廷の裁判はクルトであった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
數時間にも及ぶ説教の後、二人はようやく解放された。
ジェニーと三人の構築技士は兵衛の柄に関して協議する
結局のところ兵衛はアストライア預かりということで落ち著いた。罪人のような扱いであるが、神妙にする兵衛。この上エイレネにまで連行されたら針のむしろである。
「だ、誰だ。こんな恐ろしいどっきりを仕掛けやがったのは……!」
思わずぼやく兵衛。どっきりというところが加齢をじさせる。
心臓に悪いどころではなかった。
『アベルとエイレネです』
モニタにアストライアが現れ斷言する。
「相変わらず容赦ないな! あの二人!」
コウが唸る。あの二人なら然もあらんとは理解するが、本當に効果的なサプライズを仕掛けてくる。
『バーンの結界で良かったですね。本來ならバリーとリックが參加するところです』
「そ、それは……」
「アストライア。結局のところバーンの正に関してはヘスティアということでいいのだろうか?」
『そうだよ姉さん。接したんでしょ?』
『そうですね』
アストライアは何かを諦念したかのように宣言した。
『皆さんの背後にいますよ。本人が』
一同がびっくりして振り返ると、伊達眼鏡にブレザー姿のヘスティアがそこにいた。
奇妙な出で立ち、そしてまさかの本人登場に一同が直する。
「皆様おいでませ! 高名なA級構築技士を私どもは歓迎いたします! 私がバーンことヘスティアです。以後お見知りおきを!」
唖然とする一同に、正を知っているコウとジェニーは苦笑するだけだった。
「遂に我々がオリンポス十二神レベルと接することになるとはね」
慨にふけるウンラン。ネメシス星系のり立ちに関わる存在が、彼らの眼前に姿を現した意味は大きい。
「元(、 )なのでお気になさらず。エイレネちゃん、こっちにいらっしゃーい」
「私、なんでビジョンで呼ばれてるのかな?」
ヘスティアの隣にエイレネがビジョンで出現した。
「ヘスティアとエイレネ、ウェスタとパクスはいわばセットのようなもの。いわばバディですね! 初対面ですが!」
「勝手にバディにしないでね?」
阿吽の呼吸とはまさにこのこと。二人の息はぴったりだと思う一同。
「まずは皆様とはご歓談をば。エイレネちゃん、サポートよろしくね!」
「一方的な報共有はやめてね、ヘスティア!」
どうやら今までの経緯を無理矢理流し込まれたらしいエイレネ。
処理能力ではまったく敵わない。
「平和に関することだし? 確かに悪い超AI(ヒト)ではないから協力はするけどね。サプライズ大好きみたいだし」
『あなたたち、本當に似たもの同士です』
うんざりした顔を隠そうともしないアストライア。
「とりま、現狀をお話しましょう!」
ヘスティアとエイレネの超AIによる構築技士への経緯の説明が始まった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
ヘスティアの説明が終わり、彼は忽然と消え失せた。
事前にアシアのエメやアストライアと話したことが中心であったが、新たな報もあった。
「これからヒョウエたちはヘスティアの用意した試練と戦うことになる、と」
ヘスティアからもたらされた新たな報とは、コウたちが參加する闇試合に関してだった。
「本決勝トーナメント進出5チームと、ヘスティアが用意した兵との対決をしてもらい、決勝トーナメントの8人チーム制。ごく普通のルールではあるんだが……」
コウもその容に困した。
「俺達は一回戦を勝ち抜き、他チームが全員あのワーカーに敗北しちまったらしいからな」
本來なら八チームが優勝を目指してトーナメント式に勝ち進む形式。
ベスト4にでも進出すれば莫大な賞金が貰えるはずであったが、開拓時代のワーカーに対抗できるチームはいなかったようだ。
「最初の試練であのワーカーですか。ならばトーナメント上位には何がでるやら」
「オレはてめえらに賭けるからな。負けるんじゃねえぞ!」
ウンランが唸り、ケリーがコウにハッパをかける。
「一點張りはよくないですよ」
コウは苦笑するしかない。機もそのまま。あとは相手の対応次第だ。
「しかしおかしな話だ。バルドによると前回まではバーンが用意した機は三回戦以降という話だぜ。棄権して確実に賞金を取るヤツもいたらしいからな。今回は俺たちだけ同じ予選通過同士の対戦。異例盡くしだし、何より容赦がねえ」
「參加チームのほとんどが一回戦敗北など、興行的には盛り上がらないでしょうね」
ヒョウエがバルドからの報を話し、ウンランも興行的に奇妙な點に気付く。アシアのエメも同意した。
「あれほど興行を盛り上げることに命を賭けているバーンが、あえてコウたちのチームだけを戦うようにしたのかな。構築技士招待も合わせて、その可能は高いね」
『ヘスティアが構築技士たちに見せたいものこそ、地下闘技場の結果、その先にあるのでしょう。私達も観戦ではなく、より詳細な分析を行う必要がありますね』
「見せたいものって何だろうね。開拓時代のものまで引っぱり出して」
『そこは元十二神。単なる余興の類いではないことは確かです。バルドも構築技士。彼を含め構築技士チームに、トライレームのA級構築技士が勢揃いの狀況を作り出したのです。何らかの意図が隠されていると思って良いでしょう』
「俺達が組むことになった経緯は本當に偶然でヘスティアから文句を言われたんだが。その偶然さえも仕組まれていた可能も?」
『ないとは言い切れません。そしてあのワーカー対策ですよコウ』
「そこは抜かりない」
コウが斷言する。アストライアは満足そうに頷き、それ以上言葉はなかった。
「なんでぇ。コウ君。俺は聞いてねえぞ!」
「あとで話しますよ」
兵衛が口を尖らせるなか、コウは苦笑して返すのみだった。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
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