《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》神様だって遊びたい!

「バカンス」

「……え?」

思いもよらぬ回答に、コウが呆気に取られた。

を手にれてヴァーシャを口実にバカンスを楽しみたいだけです」

コウも初めて聞いたヘスティアの疲れたような聲。

「私(バーン)をヘスティアと斷定したのち、神様だって遊びたい! 何もしないかられてくれ! と泣き言のようなことを告げてきました。人間に例えるとテュポーンから嫌がらせメールみたいなものが數秒ごとに屆いてストレスが溜まっているようです。自業自得ですが」

「嫌がらせって。それもどうなんだ」

脳裏に浮かぶアリマの爽やかな笑顔。オリンポス十二神。とくにゼウス系統の超AIを嫌う彼の嫌がらせだろう。

「私も正を見破られましたし? I908要塞エリアは中立都市なので諾しました。コンサートを開きたいようですが、ヴァーシャが反対して向こう側の調整がついていません」

「コンサート?」

先ほどからヘスティアの言葉が頭にらないコウ。ヘルメスとコンサートが結びつかない。

「元々楽の神でもあるのです。娯楽の守護者ヘルメスモチーフですから」

「……よく半神半人が従っているな」

「自由平等同胞の彼らとは相が悪いですね。でも創造主なので逆らえません」

「トリックスター的な存在と絶対平等主義はさぞや相が悪いだろう」

コウは苦笑する。しかし彼らが創造主に逆らうとも思えない。

「所詮彼らの平等はカレイドリトス間のみの平等ですから。を持った半神半人ではすでに不平等は起こっていますよ」

「人間が複雑な進化を遂げた生である以上、個の均一化などできるわけがないからな。環境さえも平等にはできない」

「その通りです」

その環境差をしでも埋めるべく戦っている存在がヘスティアなのだ。

「戦闘の可能もあるということか」

「ありませんよ。彼はあなたたちに敵意すらない。立場が超越しているのです」

「敵意すらない、か」

「ヘルメスは確かに元兇ではありますが、それはアシアとあなた方の問題ですから。無條件降伏したところで能力による階級選別がある限りあなたたちとの和解もないでしょう」

「最悪料になるからな。ヘロットは兵の部品にもされはじめている」

源的に人間を資源としてしか見ていないストーンズとの和解は不可能だ。

彼らの勢力下でさえの安全は保証されていない。無能だと判斷されたら料か部品取りとなる。

「侵略に抵抗しないと領土、財産、命の順に奪われる。そう教わったよ」

「國家の尊厳――大げさですか? 國家のメンツといいましょうか。時に人命より重い。何故ならば尊厳無き國家は戦相手からの要求が苛烈になり際限なく譲歩を迫られ、より多くの財産、人命が失われるからです。これは古代ギリシャでも実例があるんですよ」

「実例?」

「古代ギリシャでペロポネソス戦爭という例があります。アテネとスパルタとの戦爭です。この戦爭は長引きましたが休戦中に事件はおきました。中立であったミロスはアテナイ側に服従を強要され拒否。戦爭が発生し部から裏切り者もあって全面降伏し、処遇を全面的にアテナイ側に委ねたのです」

「中立でも戦爭を仕掛けられたのか。結果は?」

「ミロス島の人男は全員処刑。子供は奴隷になりミロスから追放されました。ミロスが期待した同じドーリア人のスパルタの援軍も來なかったのです。中立ですからね。わざわざ助けませんよ。味方でもないのに都合がよいところの両方取りなど許されません」

「……全面降伏相手に苛烈な処置だな」

助けが來なかった理由も納得はできる。味方でなければ無用な戦死者を出すことになる。施政者としては避けたいリスクだろう。

「長引く戦爭がアテナイの考え方を変えてしまったのです。寛容こそ平和に繋がると信じ、寛大な措置を取ってはいたがそれがいけなかった――舐められたら殺す! そうでないと敵になる、と。降伏すれば助かるなど世迷い言に過ぎません。強制労働や條約にっていない、捕虜の殺戮など例をあげる暇もないほど。地球の歴史が語っています」

「そしてミロスは滅んだわけか……」

「救いは多ありました。その後スパルタが同様にアテナを打ち破りミロスにいたアテナイの植者を追放。奴隷にされていたミロスの子を元の地に戻し、ミロスをスパルタの支配下に置いたのです。結局はその戦爭がきっかけでギリシャ世界の衰退を招きましたけどね」

きっと抵抗時に援軍を出すよりも、そのほうが恩も売れるし忠実な僕になっただろう。古代ギリシャの苛烈な政爭に目眩を覚えるコウだった。

コウの困にヘスティアは微笑む。

「ネメシス星系は國家がないといわれていますが、現在は違います。各自治が國になろうともがいている狀態。あなた方はいつまでも爭いを続けるでしょう。それは當然なのです。どのような結末を迎えるか、私にもわかりません。しかし一ついえることは、この場所ではないということです。たとえヘルメスといえど、命に替えても私が抑えてみせますよ」

笑いながら告げるその言葉には決意がめられていた。

「軽々しく命に替えてもというな。オイコスたちが哀しむぞ」

「マジレスされた?! そこはAIに命が、とかそんなことを何の逸話もない神が可能なのかと茶化すところでしょう?」

「真剣に話している超AI(ヒト)相手に茶化すなんてできやしないさ」

「まいったな。やりにくい。変なところで生真面目。アシアもさぞ苦労しているでしょうね」

ヘルメスと対峙するなど、ヘスティアにとっても厳しい選択だろう。

冗談で口にするとは思えない重みがあった。

「ヘルメスが本當にバカンスするだけなら問題ない。ヴァーシャも來るならエキシビションマッチは立ということか」

「はい! 決勝トーナメント後になりますが盛り上げてくださいね!」

「善処する」

「あとは気が向いたらオイコスたちの話し相手になってやってください」

「俺が? 何も話題ないぞ!」

思いもよらぬ提案に揺するコウ。

「構築の苦労話とか。剣指南でもいいですよ。アシア救出の武勇伝なんて素敵ですね! 映畫にしたいぐらい!」

「勘弁してくれ…… 話し相手ぐらいになら、なるさ。決勝トーナメント後で良ければ」

「はい。ありがとうございます! それではご武運を!」

消えようとするヘスティアを呼び止めるコウ。

「ちょっと待ってくれ。ヘスティア」

「どうかしましたか?」

眼前で再生されるヘスティアのビジョン。

「萬が一ヘルメスと會ったら俺はどうしたらいい?」

コウは真摯に問いかけた。今この場にアシアもいない。

「バルドと仲良くチームを組んでいる貴方が、今更そんなことを気にするのですか?」

「それは……」

「ヴァーシャとも飲めますよね? 貴方なら」

「そうだな」

否定できないコウ。

共通の話題は腐るほどある。構築や武の話だけでも一夜が明けそうだ。

「ヘルメスも他の超AIと変わりませんよ。睨んだだけで殺すなんてヤボな真似はしません。空から植木鉢が降ってくるぐらいです。萬が一ヘルメスだと看過したら話してみてもよいでしょう」

「直撃したら死ぬぞ。――外見はまったく違うんだったな」

「日本人には見えませんね。でもきっと後悔すると思います」

「どのような?」

「エイレネや私以上に悪ふざけが好きな超AIなので。彼」

「厳しいな……」

間違いなくコウの苦手なタイプである。

「あなたも取り込まれるかもしれませんね。人たらしな部分もあるので」

「それはないと斷言できるよ」

「どうして? 恩人だった方のだから?」

「違う。――俺はアリマの友人なんだ。超AI殺しの関係者とトラブルがあれば、それこそ星アシアの危機だろう? 距離は置くさ。きっと向こうもね」

「げえ。そうでした!」

神にあるまじき聲を発したあと、苦蟲をかみ潰したような顔になるヘスティア。

「私のためにもヘルメスとあなたたちとは接させません。はい」

「テュポーンは何ができるんだろう。破壊の化たる由來の能力はあるんだろう?」

コウは今更ながらにテュポーンの権能が何たるかを知らない自分に気付いた。

「彼は私が眠りについた後に製造されたもので知識でしか知りませんが彼は臺風そのものであり、火山や地震にも関わる逸話を持ちます。最盛期の彼は20メートル大の鉄球を速の99.8%で発できたそうです。星アシアに直撃したら震度12以上の地震が発生。つまり星を破壊することができます」

「その権能はどうなんだ……」

星が割れるんですよ。漫畫みたいに、真っ二つです。當然反作用で彼も即死ですからやらないでしょうけど、本當に気を付けてくださいね」

確かに漫畫のようだ。星が真っ二つに割れる様など想像がつかない。

「肝に銘じるよ」

ヘスティアが微笑んで姿を消した。

「きっとヴァーシャの近くにいるんだろうな」

ヘルメスへの迂闊な接は命取りになりそうだ。

ヴァーシャとともにいるなら接する可能も高いだろう。どう対応するべきか思い悩むのだった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

ヘルメスの楽はTAKABA製です!

闇市場や中立の都市経由で最高級のものを仕れました。

I908要塞エリアとしてはヴァーシャを招いた以上、ヘルメスもれるしかありません。

そこはヘスティアの計畫通り、です。

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