《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》四臂たる理由
控え室代わりのガレージでコウと兵衛は考え事をしているようだ。
互いに何かを模索していることに気付き、確認し合うことにした。
「コウ君は何が気がかりなんだ?」
「俺は――通常の規格のシルエットではないことが気がかりです。今まで幻想兵を含めてシルエット規格の延長、拡張という範囲でした」
「ふむ」
「幻想兵もフェンネルOSを改造したシルフィウムOSでMCSでしたが、テウタテスは違う。フェンネルOSとシルエットを模倣した紛い。いわばまったくの別なんです。加えてバルバロイは人間ではなくサイボーグ。人間であると考えてはいけない」
「どこが違うんだろうな。俺たちとよ」
「問題はそこなんです。バルバロイは脳まで機械化されているそうです。それは半神半人とも異なります。石ころは人間のを得ることによって個差はあれど人間という規格。想像できる範囲の存在なんです」
「俺もそれは考えて居た。カストルにしろ、他の半神半人にしろ、な。カストル以上の剣士がそういるとは思えねえ」
「ええ。半神半人ならそうでしょう。しかし脳まで機械化したサイボーグは、人間の限界をどこまで超えているのかな、と。付け加えて非フェンネルOSの兵は実質初ではないかと思います」
戦車から戦闘機までフェンネルでいている。幻想兵とてフェンネルOSを改変したものであるシルフィウムOSだった。
どのような挙をするか未知の兵であるともいえるのだ。
「そうか。コウ君の懸念はそこか」
兵衛が唸るように確認する。
どうやらコウとは別方面からみていたようだ。
「兵衛さんの懸念は違うんですか?」
「俺ァあのテウタテスというシルエットもどきが気になるんだ。四臂なんだぜ。なぜ腕が四本必要なんだ? メリットは? デメリットは? 腕が増えたら強くなるわけじゃねえ。剣でもな」
「そういうものか? 腕がある分強いようにじたぜ」
バルドも気になる話題だったので會話に參加する。
このメンバーで唯一テウタテスとの戦闘経験がある男だ。
「それよ。俺が數人いるぐらいの強さとじたんだろ? てことは説明しにくいんだが……パイロットであるバルバロイの脳が人間と本的に違うんだ。人間は左右同時に腕を作するのだって苦労するんだぜ」
「あー。そういうことか。兵衛さんは二刀を遣うから」
「二刀と四本腕、関係があるのか?」
「大いにあるさ。剣道の試合は知っているな。バルド君」
「當然だ。俺は竹刀で訓練をけたからな」
今思い出してもぞっとするカストルの猛特訓である。
遠慮無く竹刀でぶたれたものだ。
兵衛は一刀流と二刀遣いの二天一流を修める。
二刀の観點からテウタテスのコンセプトを見極めようとしているのだ。
「地球においても剣道の試合では二刀はありだったんだが優勝者はない。竹刀を左右でかすということは意識が分散すること。そして何より片手打ちでは斬り込みが淺い。一本ではなくせいぜい有効にしかならないわけさ。両手と片手、それだけ違ってくる」
「竹刀だからだろう。真剣なられれば斬れるんじゃねえか? シルエットならなおさらだ」
「真剣でも同じさ。いや、それ以上に差がつくだろう。何せ竹刀と刀、重さが違う。両手で保持したほうが威力は違うさ。刀が重くなればその差が広がる。暗殺みたいに首だけを狙うってのはありだが、それなら二刀である必要もねえ。有効だったにしろ、それは一回こっきりの奇襲に過ぎん」
「なるほど。俺にもなんとなくわかってきたぜ」
「接近戦に限ったことじゃねえって話よ。拳銃だってそうだ。片手での撃と両手でホールドした撃。命中度が違うだろう? シルエットは金屬の腕だが、武によってかかる反も違う。剣もそうだ。四本剣なんざ一撃は淺いし、四本ライフルなんざ同時に制できるもんかなってね」
「同時に制しているようには見えたぜ」
「だからそこがフェンネルOSと人間パイロットの違いなんだろうさ。つまり――」
兵衛は一つの結論を導き出す。
「テウタテスは人間を拡張するフェンネルとシルエットの基本設計から大きく乖離した兵なんだ。おそらくだが一種の制圧兵なんだろうな」
「制圧兵? 一機のシルエットで多數の敵と対時する前提といいたいのか?」
「どうしてそうなったかはわからねえ。星エウロパの特なのか。あの星で何があったのか。それはわからんが今現在の報だと個対多數の制圧兵。そうとしか思えねえんだよな」
「ん…… そうなると」
「コウ君。何か気付いたことがあるかい?」
「ランチェスターの方式でも數が劣勢の場合、関わる要素は兵の質です。――本來はマーダー相手の兵だったのではないかと」
「マーダーか! 確かにストーンズはマーダーしかもってねえ。広域に広がるケーレスの群れを仕留めるためか」
「バルバロイたちサイボーグは數がない。なくとも星アシアの人類とは比較にならないほど。技制限はすり抜けたとはいえ、規制で製造不可能な技もあったはず。サイボーグのにシルエットもどきの兵を運用するはめになった」
「そう考えたら自然か。テウタテスが複數揃ったら巨大マーダー相手にも通用するだろうしな」
「三人一気に仕掛けても対応される可能もある。それが二機もいるんです」
バルドがうんざりするかのように口を挾む。
テウタテスの脅威はをもって知っているからだ。
「どう対策するんだよ?」
「いったろ。意識が分散すると。機械でいうならマルチタスク処理中ってことだ。ならこちらはよりシングルタスクに特化した技をぶつけるしかあるめえ。俺たち三人で三コアだな、相手はワンパッケージのマルチタスク。処理能力は読めねえ」
「相手は超優秀なCPUっぽいですね。しかも相手も二機です」
コウもどう対応するか、脳でシミュレーションを重ねる。
接近戦が通じるかどうかも相手の技量と反応速度次第だろう。
「今までの話も予想にしか過ぎん。サイボーグがそれほど優秀なら何故アシア人はサイボーグにならなかったか? そういう疑問も生まれてくるからな」
「そうだな。何かしら欠點はあるんだろう。痛覚はなさそうだな」
「最悪思考があるだけで意識はないかもしれん」
「テレマAIには意識がある。単純なAIと変わらない報処理機械なら、厄介ですね」
「なるようにしかならんだろ。お前さんの報告によるとエウロパに人間はいない、だからな。オケアノスすら人間にカウントしていないんだ。何かしら人間を喪っている事実は変わらん」
兵衛はそういって話を切り上げる。
あとは実戦で確認するのみであった。
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
バルバロイと四本腕シルエットに、星アシアの構築技士たちを悩ませます。
MCSさえ使っていない兵は理解の範疇外。MCSに頼りすぎたデメリットが急激に押し寄せているともいえます。とはいってもMCSがなければ星アシアでは満足にヘリも飛ばせなかったでしょう。
能力を解明するかのような戦いを迫られる三人。いよいよ星エウロパの勢力と星アシアの兵が初対決です!
星エウロパの技水準はいかに! 腕が四本あるなら強いに決まっている?! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!
- 連載中118 章
継続は魔力なり《無能魔法が便利魔法に》
☆TOブックス様にて書籍版が発売されてます☆ ☆ニコニコ靜畫にて漫畫版が公開されています☆ ☆四巻12/10発売☆ 「この世界には魔法がある。しかし、魔法を使うためには何かしらの適性魔法と魔法が使えるだけの魔力が必要だ」 これを俺は、転生して數ヶ月で知った。しかし、まだ赤ん坊の俺は適性魔法を知ることは出來ない.... 「なら、知ることが出來るまで魔力を鍛えればいいじゃん」 それから毎日、魔力を黙々と鍛え続けた。そして時が経ち、適性魔法が『創造魔法』である事を知る。俺は、創造魔法と知ると「これは當たりだ」と思い、喜んだ。しかし、周りの大人は創造魔法と知ると喜ぶどころか悲しんでいた...「創造魔法は珍しいが、簡単な物も作ることの出來ない無能魔法なんだよ」これが、悲しむ理由だった。その後、実際に創造魔法を使ってみるが、本當に何も造ることは出來なかった。「これは無能魔法と言われても仕方ないか...」しかし、俺はある創造魔法の秘密を見つけた。そして、今まで鍛えてきた魔力のおかげで無能魔法が便利魔法に変わっていく.... ※小説家になろうで投稿してから修正が終わった話を載せています。
8 88 - 連載中118 章
BLOOD HERO'S
聖暦2500年 対異能力人対策組織『スフィア』 彼らは『 Bl:SEED(ブラッド・シード)』と呼ばれている特殊な血液を體內に取り入れ得ている特別な力を使って異能力者と日々闘っている。 主人公の黒崎 炎美(くろさき えんみ)は記憶喪失で自分の名前とスフィアの一員になる事以外何も覚えていなかった。 だが彼は血液を取り入れず Bl:SEEDの能力を使う事が出來た。 一體、彼は何者なのか?何故、能力を使えるのか? 炎美とスフィアのメンバーは異能力者と闘いながら記憶を取り戻す為に古今奮闘する物語!
8 190 - 連載中11 章
骸街SS
ーーこれは復習だ、手段を選ぶ理由は無い。ーー ○概要 "骸街SS(ムクロマチエスエス)"、略して"むくえす"は、歪められた近未來の日本を舞臺として、終わらない少年青年達の悲劇と戦いと成長、それの原動力である苦悩と決斷と復讐心、そしてその向こうにある虛構と現実、それら描かれた作者オリジナル世界観ダークファンタジーです。 ※小説としては処女作なので、もしも設定の矛盾や面白さの不足などを発見しても、どうか溫かい目で見てください。設定の矛盾やアドバイスなどがあれば、コメント欄で教えていただけると嬉しいです。 ※なろう・アルファポリスでも投稿しています! ○あらすじ それは日本から三権分立が廃止された2005年から150年後の話。政府や日本國軍に対する復讐を「生きる意味」と考える少年・隅川孤白や、人身売買サイトに売られていた記憶喪失の少年・松江織、スラム街に1人彷徨っていたステルス少女・谷川獨歌などの人生を中心としてストーリーが進んでいく、長編パラレルワールドダークファンタジー!
8 55 - 連載中13 章
ダンジョン潛って1000年、LVの限界を越えちゃいました
世界樹ユグドラシルの加護により、13歳で肉體の壽命が無くなってしまった変異型エルフの少年‘‘キリガ,,は、自由を求め最難関と言われるダンジョン、『ミスクリア』に挑む。 彼はそこで死闘を繰り返し、気が付くと神が決めたLVの限界を越えていたーーーー もう千年か……よし、地上に戻ろっかな!
8 142 - 連載中4 章
何もできない貴方が大好き。
なーんにもできなくていい。 すごく弱蟲でいい。 何も守れなくていい。 私の前では隠さなくていいんだよ? そのままの君でいいの。 何もできない貴方のことが好き。 こうしていつまでも閉じ込めておきたい。 私だけは、貴方を愛するから。 『…ふふっ 寢顔かーわい』 純粋な愛のはずだった。 しかしある日を境に、少女の愛は狂気へと変わっていく。
8 173 - 連載中861 章
じゃあ俺、死霊術《ネクロマンス》で世界の第三勢力になるわ。
「お前は勇者に相応しくない」 勇者として異世界に召喚された俺は、即行で処刑されることになった。 理由は、俺が「死霊術師/ネクロマンサー」だから…… 冗談じゃない!この能力を使って、誰にも負けない第三勢力を作ってやる!! ==================== 主人公『桜下』は十四歳。突如として異世界に召喚されてしまった、ごく普通の少年だ。いや、”だった”。 彼が目を覚ました時、そこには見知らぬ國、見知らぬ人、見知らぬ大地が広がっていた。 人々は、彼をこう呼んだ。”勇者様”と。 狀況を受け入れられない彼をよそに、人々はにわかに騒ぎ始める。 「こやつは、ネクロマンサーだ!」 次の瞬間、彼の肩書は”勇者”から”罪人”へと書き換わった。 牢獄にぶち込まれ、死を待つだけの存在となった桜下。 何もかもが彼を蚊帳の外に放置したまま、刻一刻と死が迫る。絶望する桜下。 そんな彼に、聲が掛けられる。「このまま死を待つおつもりか?」……だが牢獄には、彼以外は誰もいないはずだった。 そこに立っていたのは、一體の骸骨。かつて桜下と同じように死を遂げた、過去の勇者の成れの果てだった。 「そなたが望むのならば、手を貸そう」 桜下は悩んだ末に、骨だけとなった手を取った。 そして桜下は、決意する。復讐?否。報復?否、否。 勇者として戦いに身を投じる気も、魔王に寢返って人類を殺戮して回る気も、彼には無かった。 若干十四歳の少年には、復讐の蜜の味も、血を見て興奮する性癖も分からないのだ。 故に彼が望むのは、ただ一つ。 「俺はこの世界で、自由に生きてやる!」 ==================== そして彼は出會うことになる。 呪いの森をさ迷い続ける、ゾンビの少女に。 自らの葬儀で涙を流す、幽霊のシスターに。 主なき城を守り続ける、首なし騎士に。 そして彼は知ることになる。 この世界の文化と人々の暮らし、獨自の生態系と環境を。 この世界において、『勇者』がどのような役割を持つのかを。 『勇者』とは何か?そして、『魔王』とはどんな存在なのか?……その、答えを。 これは、十四歳の少年が、誰にも負けない第三勢力を作るまでの物語。 ==================== ※毎週月~土曜日の、0時更新です。 ※時々挿絵がつきます(筆者ツイッターで見ていただく形になります)。 ※アンデッドが登場する都合、死亡などの殘酷な描寫を含みます。ご了承ください。
8 105