《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》ギリシャ神話における『矛盾』

「コウ。嬉しいけどここにいていいの? 兵衛はどうしたのかな」

アシアのエメとアストライアの三人で話し合いが行われた。アストライアはモニタから參加だ。

決勝相手が発表されたのだ。非公開で行くかと思ったが、ヘスティアにいわせると賭が立しないらしい。

「バルドとその弟子との稽古中だな。今晩でラストらしい」

『敵は準決勝の二機に、新たに謎兵が登場します』

「謎兵って自分で書いているねヘスティア…… でもないんだ」

アシアのエメとアストライアが呆れている。

謎兵とだけ一言書かれているのだ。

「風神雷神の名稱は継続のようだね。同型機かな?」

決勝は風神雷神の二機だ。三人が名付けた仮稱だったが、バーンによって制式名稱となった。

「バルバロイも修理して使うといっていたな。同型機だろう」

「サイボーグって悲慘だね」

「完全に機械扱いだからな」

まだユースティティア艦にいるポン子のほうが人間扱いされているだろう。

「アストライア。テウタテスのデータがあって助かった。兵裝は構築しないが予定していた改修を前倒しにする」

『戦闘データの解析は終了済みです。予想よりく、思ったより運は低かったというべきでしょうか。はありませんが作は俊敏ですね』

「參考に、兵衛さんのラニウスも五番機と同じ改修を施した」

『五番機もここで改修が必要になるとは。ヒョウエなら使いこなせるでしょう』

五番機も様々な戦闘を経験してデータを蓄積している。コウはフッケバイン系統のような裝甲筋を増強するのではなく、別方向での強化を模索していた。

『しかし、この謎兵の名稱が気になります。【ライラプス】とは』

「なんだ。それ。知らないな……」

「ヘスティアをしらないウーティスが知るわけないですよー」

ヘスティアがいつものブレザー姿で突然出現し、即座に消えた。

「よほどに持たれているな!」

「うん。これはコウが悪い。私やアストライアにきた恨み言、凄かったんだから。逆鱗にれたってヤツだよ」

ヘスティアの執念深い恨み節。あまりのしつこさにくコウ。

アシアのエメやからもフォローはない。

「なぜ……」

『アイデンティティに関わるレベルですからね。ヘスティアの気持ちは理解できますよ。超有名人なのに知らないといわれたら誰だって傷つきます』

アストライアもヘスティアへの理解を示していた。

「事実でも言葉にしてはならないことがあるんだな……」

「そういうとこだよコウ! これ以上ヘスティアを刺激しないで!」

アシアのエメが薄気味悪い視線をじて思わずんだ。もはや悲壯さえ漂い始めている。彼のプライドを思ってだ。

「うぅ。気を付ける。本題に戻そう。教えてくれアストライア。ライラプスとは何だろう?」

あまりの気まずさに話題を強引に切り替えるコウだった。

『ギリシャ神話でエウロパが飼っていた猟犬です。ゼウスの贈りですね。コウの國でたとえると中國のことわざ【矛盾】の故事と同等の意味を持ちます』

「矛盾? どんなものでも貫く矛と、いかなるものも防ぐ盾ってやつか」

『その矛盾です。ライラプスはどんなものでも捕まえることができる猟犬。そこで狐の怪であるテウメソスの狐を退治するために貸し出されましたが、この狐はいかなるものにも捕まえることが不可能な狐だったのです』

「どんなものでも捕まえる猟犬と、いかなるものにも捕まらない狐の戦いか!」

『矛盾と同様、パラドックスを現す代表的なものですね。伝統的論理學の領域です』

「結果はあるんだろう? 中國の故事だとツッコミをけた商人が黙り込んだというが……」

『相反する質が存在することは主神ゼウスにとっても問題がありました。――そこで二匹を石にして大空に放り投げて星座にしてしまったのです』

「ギリシャ神話ってやらかした案件をすぐに星座にしていないか?」

『そういうものです。否定はしません』

「その二匹がおおいぬ座とこいぬ座になったともいわれているね。一つの星座には逸話が複數あるから、おおいぬ座はオリオンの猟犬とも、こいぬ座は非業の死を遂げたイーカリオスの飼い犬マイラともいわれているわ」

「イヌ科分類か」

星リュビアの幻想兵を思い出すコウ。アキが痛切にイヌ科の幻想兵を要し、火車のネコ科分類ににゃん汰が強い不満を示していた。

『イーカリオスがうしかい座。その娘がおとめ座ともいわれていますね』

おとめ座もまたアストライアのアイデンティティの一つ。説明は避けて通れなかった。

「星座まで調べないといけないのか…… そういえば主神クラスは星座がないな」

『神々は星座を創造する側ですからね。星座に関しては私達が詳細を説明しますので大丈夫です。――問題はこんなご大層な名稱を付ける兵の正です』

星エウロパ、本當に獨自進化しているからね。私たち三星は今代ではまったく接もなかったし」

「問題は、だ」

コウが渋々と、ライプラスへの想を述べた。

「どんな兵かさっぱりわからない。キャッチコピーからヒントを考えよう。謎兵、だ。最強兵でも無敵兵でもない」

ライプラスの名稱と由來が記載されているだけの報だった。

殘りは前回の風神雷神がバージョンアップしたらしいという記述のみ。

「テウタテスがエウロパからの刺客だったからね…… ヘスティアのセンスも疑うよ」

思わず失言しはっと辺りを見回すアシアのエメだったが、ヘスティアが登場する気配がなくほっとする。

『コウたちによる実績とテウタテス戦からの推測で賭は立するのでしょうが…… レート的には恣意的な運用ですね』

「前回はテウタテスもシルエットではないとバーン自ら解説したからな。同様の人型兵? ではないだろうな。猟犬の名がつくぐらいだ」

「おそらくクアトロ・シルエットのようなものでもないね。四腳歩行戦車なんて作るかなぁ…… エウロパ人も謎なセンスしているんだよね」

『四腳戦車はないでしょう。兵として考えるなら安定は優れますが、腳部一本失っただけのデメリットが大きすぎることはクアトロ・シルエットでも証明しています』

「戦闘機なら鳥に関する神話から取るだろうしなあ。星間戦爭時代の兵かな」

「それはないかな。オケアノスの技制限はかなりきつい。星管理超AIでないと解除申請出せないし」

『アンティーク・シルエットでも上位中位と下位では能がまったく違いますしね。エンジェルは高能の現行シルエットに優れる部分はすくないですし』

「本當に謎兵だな。謎解きをしているようだ」

『どんな獲も捕まえるという逸話からして、機力には自信があるということでしょうね』

「こちらにも狐の援軍がしいぐらいだな」

「ずっと逃げてても勝てないよ?」

「そうか…… そうだな」

アシアのエメによる正論にコウも言葉がなくなる。コウとしても矛と盾どちらがしいと言われればやはり矛だろう。

「機力が高い兵といえば戦闘機か。しかしいくら広いとはいえ、地下闘技場に持ち込みはしないだろう」

「攻撃ヘリやティルトローラー機みたいな可能はあるね」

「それなら猟犬の名に相応しいな。裝甲はそうだ」

攻撃ヘリやティルトローラー機相手なら撃墜しやすい。ウィスを通した高次元投材と電磁裝甲があってもDライフル砲弾には相が悪すぎる構造だ。

『ライプラスはギリシャ神話でも最強の猟犬、という形容詞は付きません。勝てない相手ではないとも読み取れますね』

「あくまで特か。風神雷神もいる。厄介だな」

「専用裝備を構築する? ここなら試合時間までに間に合うと思うけど」

「いや、それだと意味が無い気がするんだ。星エウロパの兵と模擬戦。それがヘスティアの狙いだと思っている」

『テウタテスと同様でしょう。しかし全能を把握するためにも是が非でも勝利してしいところです』

「當然だアストライア。全力は盡くすさ」

コウは請け負う。今もなお修行中のバルドもいる。負ける気はなかった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

今回は矛盾のお話です。

立しない二つの事柄、倫理學でもお馴染み。

☆矢の話はしない! 無限力でもない限り矛が強いよねと思ってしまってはいけないエピソードです。力が有限なら盾が粘り勝ちしそうな気もしますが、古代や西洋の倫理學ではさんざん討議されたのでしょうね!

中國の故事では就任がツッコミをけて固まって終わりましたが、ギリシャ神話はさすがです。こんな相反した存在が立してはいけないと危懼したゼウスが、追う猟犬と逃げるキツネを星座に放り投げました。

オオイヌ座とコイヌ座ってイヌ科のサイズによる大小ってこと?! と別の衝撃をけた作者です。

オリオンやヘラクレスや蛇使い座のアスクレピオスのような人間や半神半人は星座に祀られてますよね……

謎兵は近々登場です! とある兵のオマージュでしょうか?

テウタテスとの戦闘で五番機や兵衛のラニウスもアップデートされることに!

『このライトノベルがすごい!2023」の投票が開始されました。

今回はいずみノベルズも參考レーベルに掲載されており、「ネメシス戦域の強襲巨兵」もノミネートされています!

一人五作品まで投票できるので、選考する際れていただければ幸いです! よろしくお願いします!

やめてコウ、ヘスティアのプライドはズタボロだよ?! エウロパ人はセンスもない!? 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!

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