《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》地下闘技場決勝戦
「ほい。これでおしめぇだ。お疲れさん。よく耐えたな」
兵衛の指導に二人とも四つん這いになっていた。息を吸うのが一杯で、返事もろくにできない。
「ありがとうございました」
ドリオスが正座して、ふかぶかと頭を下げる。もはや執念ともいえる領域だと関心する兵衛。
「おう。おめえさん素質あるよ。孫の修司にそっくりだ。その振り方がな」
兵衛はにこりともせずに言う。白髪の紅眼の青年は修司には似ても似つかない。せいぜい背丈ぐらいだ。
「栄です」
「わかっていると思うが、その素質をどう征かすかはお前さん次第だ。武蕓も蕓のうちってな。自ら研鑽し、磨き上げるか。戦場で実用に耐えるもんにするかだ」
「後者ならあなたには勝てないでしょう?」
「おそらくな」
初めて兵衛は嬉しそうに笑った。
「研鑽しますよ。バルド様に鍛えて貰います」
「とうにバルド君を超えていると思うがね? まあいい。そろそろオイコスの迎えがくる。邪魔したな」
それだけいって、兵衛はバルドが借りている宿舎から姿を消した。
「そののこと…… ばれなかったんですかねえ」
バルドには不明だ。そんなことを考える余地すら與えられなかった稽古だったからだ。
「何を見ていたんですか? バレバレですよ。おそらく。だからこのから修司という人間の技を引き出すように指導してくれたんだ。人間は何を考えているかさっぱりわからないね」
ドリオス――ヘルメスが苦笑した。掛け値無しに真摯な指導だった。それはもう拉致して連れて帰りたいほどに。
「うへえ。俺たちは敵なのにな。お人好しなのか」
「わからないね。修司という人間が培ったものが喪失することを恐れたかもしれないし、孫への未練かもしれない。しかしボクにとってこれは貴重な財産だ。これほどまでに繊細なものがあるとは心が躍るね」
「ヘルメス様らしいや」
「ドリオスだよバルド様」
邪悪に笑うヘルメス。
「へえ! すまねえドリオス!」
これぐらいで殺されたりはしないが、やはりヘルメスは恐ろしい。
「それでいいですよバルド様。油斷は。常在戦場ですから」
手を振ってバルドを許すヘルメス。
「これからバルド様には転移者の剣士も探してもらわねばなりませんし。しばらく戻って來ないのでしょう?」
「へい。わかりました!」
それぐらいならましな條件だろう。トライレームから剣士を探して引き抜いて來いと言われたらどうしようか本気で恐れていたバルドだった。
「さてこの培った技をどうシルエットに反映させるか。ヴァーシャとの構築談義も盛り上がりそうだ。音楽よりよっぽどね」
ヘルメスは愉悅を隠そうともせずに、笑った。
直後、腹筋が吊って無言になり、のたうち回る。というものはどうにもままならないものだと実するヘルメスだった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
決勝が始まろうとしていた。
コウは五番機に搭乗しパライストラの控え室に赴くと、すでに兵衛とバルドが到著していた。
「バルド。戦えるか?」
心配はしていないがコンディションは確認するコウ。
剣の稽古、それも激しいものなら二の腕や腹筋、腰に來る者が多いことは知っている。
コウも兵衛たちとたびたび特訓することになっているので、その點を心配した。
「死んでるが、戦わないと殺されるからな」
ぶっきらぼうに答えるバルド。當然相手はヴァーシャやヘルメスだ。不戦敗など許されるはずもない。
「弟子が筋痛でのたうち回っている。俺ァなんとかなっているが」
「そりゃ歳だってことだよバルド君。明後日ぐらいにけなくなるな」
にやりと笑う兵衛。ヘルメスのはしばらく過酷な稽古などしていないに違いない。さぞや筋痛だろう。
バルドの筋痛は後からくるタイプだ。社會人を指導しているとよくあることだった。
「カストルのしごきに耐えたそうだからなバルド君は。いうほど辛くはないだろうさ」
「カストルのしごきより、別の意味で辛かったからな!」
兵衛の指導は、細かかった。本人に最適とする所作ができるまで、何度も反復練習がひたすら繰り返される。
カストルは打ち合いによる実戦形式だった。打ち所が悪くて死亡者は多數だったが、どちらがましだったかバルドにはわからない。
「ん? お前ら裝備を変えたか?」
「ちょいと調整しただけだ。兵衛さんはフラフナグズ用裝備に換裝している」
「以前は使えなかったんだがなあ。コウ君がラニウスを調整してくれてな」
「お前らの母艦は移する工廠だっけか。便利だな……」
武者修行中のバルドには當然ながらヴァーシャの支援はない。
ボガディーリ・コロヴァトを供與してもらっている分贅沢はいえない。十分優遇されているといっても過言ではないだろう。
「決勝相手は風神雷神に謎兵か。なんだよ謎兵って」
文中にしかない兵の存在に、バルドは苛立ちを隠せない。
「猟犬の名前を冠せられていることぐらいしかわからなかったな」
「猟犬たぁ厄介だな。風神雷神も裝備を変えてくるんだろ? 前回と同じようにはいかねえな」
前回は超反応の特を利用した初見殺しに近い。
バルバロイも対策を練ってくるだろう。
『今回は賭けになる報がないと多數クレームがきたので、場したあと五分経過してからのスタートとなります。変更もけ付けます』
「そりゃそうだろうな。謎マシーンってだけの兵に金なんざ張れるかよ」
バルドがギャンブラーの聲を代弁する。これだけの字面でギャンブルしろというほうが無茶だ。
三機は控え室から地下闘技場に進む。
敵チームの姿も現した。
碧緑の風神、白の雷神が修理を終えて再び彼らの前に立ちはだかる。
コウが目視したところの分析では追加腕部の兵裝が変更されているようだ。風神は追加両腕部とも剣と槍を裝備しており、大口徑バトルライフルを裝備していた。雷神は同様に追加腕部は二刀流で、大型のレールガンランチャーらしきものを攜行している。
「まずます仏像めいてきやがったな。接近戦を意識してやがる」
兵衛が笑ってしまうほどである。暗が通用しなかったことはバルバロイにとっても衝撃的な出來事だったのだろう。
「仕込み武は捨て、攜行武の単の威力を上げてきたな。暗を捨てて斬撃も速くなっている」
「はん。あの程度の口徑だと裝甲筋相手には通じねえ」
三機は飛び道に強いという特徴を持つ裝甲筋採用機である。
『いよいよ謎兵の登場です!』
風神雷神の背後から、謎兵が二機、姿を現した。風神と雷神同様のカラーリングだった。
一見車両に見えるが位置は高く、大型のテウタテスよりもさらに高い位置にある。
その車下部から、紐狀のものがびていた。
「手か?」
漠然と手を連想するバルド。
「いや。トライポッド……三腳型だな。ありゃ」
會場にバーンの解説が鳴り響く。
『風神雷神に加えて、初登場するこの兵こそ星エウロパの猟犬【ライプラス】! 兵種は 【ファイティングマシン】です! 賭けのけ付けを五分だけ延長します!』
いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!
兵衛とヘルメスの化かし合いも無事終了しました。バルドは完全に巻き添え事故です。
そして謎兵! 詳細は次回!
それだけなら不親切なので、オマージュ元は「宇宙戦爭」という古典SFの火星人が搭乗したメカです。
今回搭乗した謎兵はより腳が直立っぽく、なおかつが車両や飛行機よりですね。
『このライトノベルがすごい!2023」の投票が開始されました。
今回はいずみノベルズも參考レーベルに掲載されており、「ネメシス戦域の強襲巨兵」もノミネートされています!
一人五作品まで投票できるので、選考する際れていただければ幸いです! よろしくお願いします!
腹筋吊ると本気で辛い?! エウロパ人はセンスもない!? 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。
大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!
【完結】処刑された聖女は死霊となって舞い戻る【書籍化】
完結!!『一言あらすじ』王子に処刑された聖女は気づいたら霊魂になっていたので、聖女の力も使って進化しながら死霊生活を満喫します!まずは人型になって喋りたい。 『ちゃんとしたあらすじ』 「聖女を詐稱し王子を誑かした偽聖女を死刑に処する!!」 元孤児でありながら聖女として王宮で暮らす主人公を疎ましく思った、王子とその愛人の子爵令嬢。 彼らは聖女の立場を奪い、罪をでっち上げて主人公を処刑してしまった。 聖女の結界がなくなり、魔物の侵攻を防ぐ術を失うとは知らずに……。 一方、処刑された聖女は、気が付いたら薄暗い洞窟にいた。 しかし、身體の感覚がない。そう、彼女は淡く光る半透明の球體――ヒトダマになっていた! 魔物の一種であり、霊魂だけの存在になった彼女は、持ち前の能天気さで生き抜いていく。 魔物はレベルを上げ進化條件を満たすと違う種族に進化することができる。 「とりあえず人型になって喋れるようになりたい!」 聖女は生まれ育った孤児院に戻るため、人型を目指すことを決意。 このままでは國が魔物に滅ぼされてしまう。王子や貴族はどうでもいいけど、家族は助けたい。 自分を処刑した王子には報いを、孤児院の家族には救いを與えるため、死霊となった聖女は舞い戻る! 一二三書房サーガフォレストより一、二巻。 コミックは一巻が発売中!
8 188【二章開始】騎士好き聖女は今日も幸せ【書籍化・コミカライズ決定】
【第二章開始!】 ※タイトル変更しました。舊タイトル「真の聖女らしい義妹をいじめたという罪で婚約破棄されて辺境の地に追放された騎士好き聖女は、憧れだった騎士団の寮で働けて今日も幸せ。」 私ではなく、義理の妹が真の聖女であるらしい。 そんな妹をいじめたとして、私は王子に婚約破棄され、魔物が猛威を振るう辺境の地を守る第一騎士団の寮で働くことになった。 ……なんて素晴らしいのかしら! 今まで誰にも言えなかったのだけど、実は私、男らしく鍛えられた騎士が大好きなの! 王子はひょろひょろで全然魅力的じゃなかったし、継母にも虐げられているし、この地に未練はまったくない! 喜んで行きます、辺境の地!第一騎士団の寮! 今日もご飯が美味しいし、騎士様は優しくて格好よくて素敵だし、私は幸せ。 だけど不思議。私が來てから、魔物が大人しくなったらしい。 それに私が作った料理を食べたら皆元気になるみたい。 ……復讐ですか?必要ありませんよ。 だって私は今とっても幸せなのだから! 騎士が大好きなのに騎士団長からの好意になかなか気づかない幸せなのほほん聖女と、勘違いしながらも一途にヒロインを想う騎士団長のラブコメ。 ※設定ゆるめ。軽い気持ちでお読みください。 ※ヒロインは騎士が好きすぎて興奮しすぎたりちょっと変態ちっくなところがあります。苦手な方はご注意ください!あたたかい目で見守ってくれると嬉しいです。 ◆5/6日間総合、5/9~12週間総合、6/1~4月間ジャンル別1位になれました!ありがとうございます!(*´˘`*) ◆皆様の応援のおかげで書籍化・コミカライズが決定しました!本當にありがとうございます!
8 119私は、海軍最強航空隊のパイロットだった
初陣の真珠灣攻撃を皮切りに、各戦線で勝利を挙げていた、帝國海軍最新鋭の空母「瑞鶴」(ずいかく)。 世界最高の艦、航空機、搭乗員を集めた「瑞鶴」は向かう所敵なしであった。 しかし、次に補充されてきた搭乗員は、とんでもない「ド素人」だった! これは、世界最強の戦闘機に命をかけて戦った少年少女たちの物語である。 本作は小説家になろうでも公開しています。
8 105異世界召喚!?ゲーム気分で目指すはスローライフ~加減知らずと幼馴染の異世界生活~
森谷悠人は幼馴染の上川舞香と共にクラスごと異世界に召喚されてしまう。 召喚された異世界で勇者として魔王を討伐することを依頼されるがひっそりと王城を抜け出し、固有能力と恩恵《ギフト》を使って異世界でスローライフをおくることを決意する。 「気の赴くままに生きていきたい」 しかし、そんな彼の願いは通じず面倒事に巻き込まれていく。 「せめて異世界くらい自由にさせてくれ!!」 12月、1月は不定期更新となりますが、週に1回更新はするつもりです。 現在改稿中なので、書き方が所々変わっています。ご了承ください。 サブタイトル付けました。
8 143やっと封印が解けた大魔神は、正體を隠さずに凡人たちに力の差を見せつけます ~目覚めた世界はザコしかいない~
【主人公最強・ハーレム・チートスキル・異世界】 この作品には以上の要素がありますが、主人公が苦戦したり、キャラクターが死亡したりと、テンプレにはあまりない展開もございます。ご注意下さい。 それゆえの熱い物語を書く予定であります。 世界はまもなく、激動する―― 大魔神たる僕が、封印から目覚めたことによって。 魔王ワイズ率いる、魔物界。 國王ナイゼル率いる、人間界。 両者の存在によって、世界は危うくも均衡を保てていた。どこかで小規模な爭いはあっても、本格的な戦爭になることはなかった。 僕――大魔神エルガーが封印から目覚めることで、その均衡はちょっとずつ崩れていく。 なぜ僕は封印されていたのか。 失われた記憶にはなにが隠されていたのか。 それらすべての謎が解き明かされたとき、世界は激動する…… けど、僕は大魔神だ。 いくらスケールのでかい事件だって、神にかかれば解決できるはず。 ――面倒だけど、なんとかしてみよう。
8 139問題が発生したため【人生】を強制終了します。 → 『精霊使いで再起動しました。』
女性だけしかなれない精霊使い達の物語--- ――その國の王となるには、次期王候補者と精霊使いは、四つの屬性の大精霊と大竜神の祝福を受けなければならない。 『ニュースです。昨夜、銀座のビルのテナントの一室で起きた爆発事故で、連絡が取れなくなっていた従業員とみられる男女四人の遺體が発見されました。』 女子大生のハルナはMMORPGにどっぷり浸かった生活を送っていたが、PCパーツ貧乏となり親族のお手伝いで夜のアルバイトへ。不慮の事故により異世界へ転生し、精霊と出會う。 ハルナは失蹤した精霊使いの少女と似ていたため、この世界の事情に取り込まれていくことになる。
8 198