《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》人間の心では耐えられない形狀

「もらったァ!」

バルドのボガディーリ・コロヴァトが刀のない剣を振るう。目標はいまだ健在な雷神トライの腳部だった。

金屬剣だった。相手に読ませないという武では、彼の奧の手でもある。

予想通り、流金屬が刃と化し、腳の一本を斬り飛ばす。

勢を崩す風神トライは、予想外の行に出た。

「なにぃ!」

斬り飛ばした腳部が再び生えたのだ。

今度は腕部のようなワイヤーがボガディーリ・コロヴァトを締め上げる。

すかさず五番機がワイヤーを斬り飛ばしてバルドを機ごと助け出す。

「助かったぜ! しかしなんだありゃ。びる腳か?」

「素材だけは最先端なのだろう。さよりも弾力と延を重視して、おそらく自在だな」

「本気で車両なのか何なのかわけわかんねえ兵だなぁ」

兵衛も未知の兵にうんざりする。ただの車両ならやりようもあるが、そうではないようだ。

「本來なら空を飛ぶ兵だったんだと思うが、飛べないんだろうな」

「あれが空を飛ぶのか?」

見た目からは戦闘機のようには見えないファイティングマシンの対処に苦悩するバルド。

「以前聞いたことがある。星間戦爭時代に戦闘機兼戦車みたいな兵があったと。こいつらはその改悪版なのだろう。頭部や腳部は後付けだな。創意工夫の結果だと思うが……」

コウも自らの推測に自信がない。

こんな改造をするとは思えないからだ。

「工夫の方向が間違ってやがる!」

「近付いてしまえば、きが制限された車両だ。一気にカタを付けるぞ!」

思い悩んでいても仕方がないと判斷したコウはスラスターを全開にして急上昇する。不規則にくとはいえ、近付いてしまえば圧倒的に機は五番機が上回るからだ。

ふらふらとかし、照準をずらす雷神トライに対し、五番機は上空から見據える。これなら前後左右にくだけの的。時速二百キロメートルもない程度の速度しか出ていない。

五番機は當たりするかの如く降下し、に孤月を突き刺した。

雷神トライは貫通と同時に大きく揺れ、即座に停止した。

きが停止したな。リアクターを貫通したか」

五番機を乗せたまま、ファイティングマシンは地面に落下した。地面に著地してもくことはなかった。

「あとは風神トライのみだ。バルド君。いくぞ!」

「おう!」

兵衛のラニウスとバルドのボガディーリ・コロヴァトが二手に分かれ、半壊狀態の風神トライに接近する。

抗う気力がないようにさえ見える風神トライだったが、格納されていたレーザービームで反撃を試みた。

回避不可能な近距離レーザー攻撃だが、1メガジュール程度の威力に過ぎない。二機の裝甲を貫通することはなかった。

今の風神トライは歩兵に守られていない戦車のようなもの。

空中からバルドが剣を上段に構え、一気に振り下ろす。

後部には兵衛が迫り、上部から突き刺す。

風神トライもまたきを停止し、地面に崩れ落ちた。

『勝負あり! 挑戦者チームの優勝です!』

謎兵のふがいなさにふざけるなという怒聲も聞こえてくる。

『表彰式を行います。三機とも、中央にいてください』

ピンクのワーカーが數機、並んでいる。彼らによって表彰されるのだろう。

しかし表彰式よりも、破壊されたファイティングマシンを凝視する三人であった。

「ヒョウエ。こいつは……」

「ああ。思ったよりやべえな」

風神トライに止めを刺した二人の様子がおかしい。思わずコウが聲をかける。

「どうしたんですか?」

「よくみろよ、コウ。こいつは……」

不可解な現象に口ごもる。

兵衛が言葉を引き継いだ。

「パイロットが乗るスペースはねえ。つまり無人機だな」

「え?」

あれほど複雑な挙をする無人機とは――

コウも予想外の事態に絶句した。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

「なんだこりゃ」

あまりにあっさりとした展開に、ケリーが不満の聲をらす。

『ヘスティアが通信を遮斷しています。連攜を取れないのならあんなものでしょう。ライプラスは自作でいてます』

「AIか。AIだろうが…… ここはアストライアに解説してもらいたいものだな!」

ケリーもファイティングマシンへの興味が盡きないようだ。

『現行でも無人兵は存在しますよ。ストーンズのマーダーにマーリンシステムを搭載したパンジャンドラムがあります』

マーダーの設計は自したアストライア本によるものだ。現行のマーダーは簡易生産型に過ぎない。

マーリンシステムを搭載していないパンジャンドラムは、AIのようなものは一切搭載されていない。

「マーリンシステムとはいうがパンジャンドラムがAI管理下だとしても転がるぐらいしかできないだろ?」

『その通りです』

アストライアは指摘を肯定する。マーリンシステムを搭載しているものはエイレネのみが管理可能だ。アストライアで生産したものがあれば可能かもしれないが、必要じていない。

「そしてマーダー、主にケーレスは蟲の群、いわば超個を模したもの。テルキネスは例外だったが、あまりにも反応が悪かった!」

『テルキネスは歩兵がいないマーダーたちにとって、最大限の技で造られた模造兵。爬蟲類とヒトを組み合わせた、無理がある構造です』

「よくもまあそんなことが出來たな」

『ですから単純な行しか取れないのです。処理限界が低いのですね。半神半人はコストが悪く、人間のパイロットを搭載させるにはシルエットの能が低かった時代ならではの産です』

「あのファイティングマシンもそうなんだろうか」

『おそらくは――ライプラスに機械化脳を搭載しているかもしれません』

「なんだと?」

『生脳から機械化した脳は不可能ですよ? そのうえ三本腳手狀の移など、人間の心では耐えられない形狀です。星アシアにおいてテレマAIを搭載しているファミリアの生産を超AIアシアが一元管理しているようです。今の星エウロパにファミリアはいないでしょう。バルバロイの機械化脳を量産し、中――生脳をインプットしなかったものを使用していると思われます』

「つまり空容を高能CPU代わりに応用しているってことか」

『ライプラスをにするなど脳も魂も耐えられませんよ。テウタテスにあった四本腕の制も機械化脳に相當な負荷がかかっているはずです』

「それもそうか。ではあの奇妙な三腳はまっさらな機械化脳を用いたAIということだな」

ケリーがようやく謎兵の制系に納得がいったようだった。

「あまりにも弱すぎましたね」

クルトが正直な想をらす。謎兵に期待が高すぎたのだ。

『ええ。今までは』

「というと?」

ウンランが意味ありげなアストライアに問いただす。

『彼らをここに連れてきた者がいる。それが問題なのです』

「待てアストライア。奴らが星アシアの解放された技を用いる可能ということか!」

『半神半人の多くは構築技士。そうならない理由はありません。ヘスティアが通信を遮斷している理由こそ、外部へ戦闘データをらさないためでしょう。彼らの連攜さえ許さないほどの制限をかけています。LI908要塞エリアは超AIアシア間との同調さえ遮斷可能なのですよ? 理由の一つと推測されます』

「こいつらはあくまでデータ採取用か!」

『この場所にあるバルバロイが全てだとは言えません。――ヘスティアの真意はここにあるのでしょう』

アストライアの恐るべき予言に、A級構築技士たちは戦慄を隠しきれなかった。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

コウたちの優勝。しかし盛り上がる気配はありません。謎マシンの謎は深まるばかり。

人間の脳を機械化したものをライプラスに導したところで、永遠に停止してしまうのです。

次回あたりから展開に異変が……?! というわけでご期待ください。

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