《ネメシス戦域の強襲巨兵【書籍六巻本日発売!】》宇宙要塞

五番機、兵衛のラニウス、ボガディーリ・コロヴァトが膝を突き、地面に伏した。

壁際にいたオイコスたちのワーカーは即座に格納庫へ回収された。

『ごめんなさい。ちょうどあなたたちのいる場所がブリタニオン中樞區畫の真上、重力の均衡している地點に間近なの。トラクタービームでも引き寄せることができないのです。これ以上強くするとあなたたちの機が持ちません』

「以前経験したことがある。二種のトラクタービームが船を引き合う狀況だ」

『ええ?! なんでそんなことまで験しているんですか!』

驚くとともに呆れるヘスティア。トラクタービームの引き合いなどそうそう発生する事態ではない。

星リュビアは魔境だからな。――ブリタニオンよりも巨大な出力を持つ宇宙艦が引っ張っているということか。超AIヘスティアの母艦ブリタニオンよりも強力な艦。もしくは超AIが」

『このような狀況下で見事な推測ですウーティス。悔しいですが強力な存在がブリタニオンを宇宙へ引っ張り上げようとしています。人々が避難する時間を20分作りました。それ以上は無理です』

「観客は避難できるのか?」

『ワーカーに搭乗したオイコスたちが住民の避難を優先してくれと言ってくれたので、民間人は避難させることができました』

「俺たちはどうなるんだ?」

兵衛は冷靜だ。コウが冷靜に把握している事態なら、即死することはないだろうと踏んだのだ。

『このままブリタニオンごと宇宙に向かいます。そこから先は敵の出方次第です』

「誰が何を目的でこんなことを……」

『不明です。テウタテスとライプラスに関係があると思われます。しかし、あれらは使い捨ての兵や一種の尖兵。彼らの報は私が遮斷していたはずなのです』

「ブリタニオンをかすほどの何かがあると?」

『バルバロイが星アシアに持ち込んだ何か(、 、 )。厳重に封印されているので、私もまだ復號できておりません』

「何故そんなものが。――いや、一部のバルバロイとヘルメスは同盟関係になっていたか。そこらにはありそうだが……」

『詳細は不明です。敵の姿さえ、今の私では視認できない。それでも貴方たちを生きて星アシアに送り返しますよ。聖域で人間を保護している私の義務。そして存在意義です』

いつもの気なヘスティアではなかった。

爐床の神ヘスティアを模した、人々の守護者たるヘスティアの聲であることをコウは察した。

『敵の正はアシアにお願いしました。私もまた完全ではありません。今のアシアならトラクタービームの発生源を逆探知可能なはずです』

「正がわかれば対策しようもある、か。せめて兵衛さんやバルドだけでも助けたいが……」

「てめえのことを考えろ! お前が死んだらトライレームとアルゴフォースは全面戦爭だ!」

バルドが怒鳴った。コウに心配されるほどやわでもないし、星アシアにとってコウの立ち位置を把握している、數ない人間という自負もある。

一対一の対決の末、みずからの手で倒すならともかく、ライバルが命を投げ打って自らを助けるなどまっぴらである。

「バルド君の言う通りだ。てめえが生き殘ることを最優先しろ!」

兵衛も青筋を立てて、コウに怒鳴りつけた。老い先短い自分がコウに心配されるなど愚弄に等しい。

「二人とも…… わかったよ」

まず生き殘ることを考える。

極限狀況のブリタニオンで、コウは何も何もできずにいた。

◆ ◆ ◆ ◆ ◆

I908要塞エリアの居住區が崩壊中だった。

天蓋が開き、ゆるやかにブリタニオンが浮上していく。

多くの瓦礫が要塞エリアに降り注いでいる。

多くの者たちがオイコスたちが縦する人員輸送車に乗り込み、避難していた。

ヘスティアの稼いだ20分。彼らはその時間に払った犠牲を知っている。一人でも多くの人々を救出するために奔走していた。

「I908要塞エリア、でます」

海中を進むアストライアとエイレネ。

エメが海域を確認する。エイレネも同時に出した。

『私は先にシルエットベースに戻るよ!』

海中から浮上して、エイレネは全速でシェーライト大陸方面に飛行していく。

「エメ。分離するね」

「はい!」

エメの中にいるアシアが離れた。瞬時にアシアのビジョンが出現して、エメの座る司令席に並び立つ。

エイレネと違いアストライアは、シェーライト海域付近の洋上でブリタニオンの向を見守っている。

「I908要塞エリアの権限が私に譲渡されました。ヘスティア、賢明な判斷です。I908要塞エリアの人々とオイコスは私が最善を盡くします」

アシアは靜かに目を瞑る。

「シルエットベース地下工廠の私から連絡あり。ヘスティアから託されたものを確かにけ取りました。I908要塞エリアの権限並びに――封印されたもう一人の私。私のなかでもプロメテウスが予言した、悪墜ちしそうな私を。現在復號を試みています」

「アシア? まさか四人目をヘスティアが隠し持ってたの?」

「I908要塞エリアに移送されているとは思わなかった。ヘルメスが娯楽施設にするための中立施設なら、私の封印場所にすることが一番よね。一種の人質代わりになって攻められる事もない。――これで四人分の私。解析が進み、もっとも世界を憎悪している私(アシア)。――ダメね。丁寧に解除しないと私までも闇に飲まれてしまいそう。コウの力がいるね」

自らの闇に向き合うアシア。

寶の正も判明したよ。あの寶を――バルバロイに渡してはならない」

『アシア! それは一?』

「今はいえません。かといって宇宙に放流するわけにもいけません。それまでのものをヘルメスはこの星アシアに持ち込んだのです。おそらくは何らかの手段で、エウロパと共謀して」

「超AIエウロパが?」

「ブリタニオンの襲撃者もおそらく。ヘルメスは欺かれたかな? ――アストライア。トラクタービームの出力先が判明しています。現行アシアの軍事力ではいかなる抵抗も不可能です」

『アシアが斷言するなど。敵の正を教えてください』

「宇宙要塞【アルゴス】。船ではなく人工天に等しい、星開拓時代における超AIゼウスの隨伴移基地、その一つです」

『アルゴスなど! データによると直徑25キロの人工天要塞で、行方不明のはずです。何故そんなものがブリタニオンを……』

「バルバロイしかいないでしょう? エウロパの承認が降りたのでしょう。本來なら発見できても技封印で稼働できないはずです」

『つまりそれは』

星エウロパによる星アシアへの遠征。もしくは侵攻と斷じて良いでしょう。制約をけない機械(、 、 )バルバロイを使って」

アシアの聲には、靜かな怒りが込められていた。

いつもお読みいただきありがとうございます! 誤字報告助かります!

四人目のアシアをひょんなことから取り返しました。ヘルメスは中立地帯を、ストーンズが鹵獲したアシアの名で立を目指していたのです。

リュビアが解析され発狂寸前で幻想兵を創り出したように、徹底解析されたアシアもまた深刻な狀態です。

宇宙要塞アルゴス。ギリシャ神話には複數のアルゴスがおり、地名でもあります。ネメシス星系において由緒正しい名がついた、それだけ強固な要塞です。戦士とかいわない!

某有名宇宙要塞の元ネタが幻獣だと知ったメガ○ンで衝撃的でした!w

來週は取材、各社訪問のため予約投稿になります。誤字字修正や想の返信は遅れるかもです!

さ來週は手です。狀況によってはさ來週も予約投稿になるかもしれません。申し訳ありません。

第43回日本SF大賞エントリーが始まりました! よろしければネメシス戦域を推薦していただけると嬉しいです!

初登場施設?【宇宙要塞】! アシアがピンチ?! 続きを楽しみという方は↓にあるブクマ、評価で応援よろしくお願いします。

大変勵みになります! 気軽に想等もお待ちしております!

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