《地球連邦軍様、異世界へようこそ 〜破天荒皇は殺そうとしてきた兄への復讐のため、來訪者である地球連邦軍と手を結び、さらに帝國を手にれるべく暗躍する! 〜》第6話 演習と試験
解説とお休みを頂き申し訳ありません。
今回試しにあとがきに解説をれてみました。
想などあればお気軽にどうぞ。
見た事のないほど広い草原に一木は立っていた。
青臭い匂いの風の中、周囲にはΑ連隊を基幹としたアミ戦闘団が展開して、敵を待ち構えている。
敵。星ガーナレスのサディ王國軍の六萬人にも及ぶ大軍だ。
一木がモノアイを最大遠モードにすると、中國とヨーロッパの鎧を混ぜたようなデザインの、大層な金屬鎧にを包んだ將軍と思しき男が見えた。
(三國志のゲームに出てきそうだ…)
ぼんやりと生の頃の記憶に思いをはせる一木。すると、隣にいた小柄な佐が近づいてきた。
「狙撃しますか?」
「いや、いい」
連隊長のアミ中佐が聞いてくるが、一木は止めた。
「それよりも戦闘団の車両を奴らの正面、もっと見えるように集結させるんだ。囮にする。歩兵は下車させて車両の左右でを低くして待機。突撃兵は車載の機関銃を取り外して機関銃班に再編」
指示を出しながら遠モードを解くと、すでにアミ中佐は連隊への指示を終えていた。
指揮型、歩兵型を含むすべてのSSには、量子通信機能はなくとも高度な無線通信システムが蔵されている。
アミ中佐から出された通信は各大隊長へ、各大隊長から各中隊長と言った合に、部隊全に瞬時にリンクされ、同時に連隊參謀から上位の參謀へ、そして參謀から航宙戦力を含む機艦隊全域へと瞬時にデータリンクされる。
結果、師団長や艦隊司令の手元には常にシミュレーションゲームさながらの報が提供されることになる。
今も一木の下には、AからDまでの基幹連隊の配置、狀態。軌道上の航宙艦、補給資の量や集積場への到著時間まで、ありとあらゆる報がリアルタイムで提供されていた。
しかもわからない部分は各參謀を通じて問い合わせることで、即座に狀況説明を得られる。下手なゲームよりよほど指揮しやすいと言える狀況だった。
そんな多數の報の中から、一木は視界の隅に映るCGで作された戦場のマッピングを見る。
そして部隊が指示通りにいている事を確認した。
そろそろ現場視點での指示は切り上げるべきだろう。
そこまで考えたころには、背後の戦車や歩兵戦闘車は、搭載されたSAによる機で見事な隊列を組み、展開を終えていた。
車両からは砲塔上部に搭載されたRM2重機関銃が取り外され、神輿の擔ぎ棒のようなハンドルのついた三腳に取り付けられ、小柄なSSが二人がかりで素早く運搬していった。
ふと、一木はあることに気が付いたが、ここではれなかった。
あとで艦隊參謀の誰かに聞こう。
一木は気持ちを切り替え、連隊長にこの後の指示を出す。
「この後使者が來て、開戦の儀式をするはずだ。連隊長はそれに適當に付き合え。開戦後は指示あるまでΑ連隊はここで待機」
「了解」
ここでの指示は終わり、一木はこの場から引き上げることにした。
「VRモード解除、連隊參謀ご苦労」
その言葉と共に、視界が元々いた場所。
仮想空間演習室の指揮所に戻っていた。両脇には副のマナ大尉と、作戦參謀のジーク大佐が佇んでいた。
先程までの景は全て仮想空間での演習のであり、當然サディ王國軍もAIによる再現だった。
本の王國軍は二十年前に壊滅している。
先ほどまで視界を借りていた連隊參謀の小さな長はどうにも落ち著かず、強化機兵の視界に戻ると一木はホッとした。よもやこのにここまで馴染むとは……。
「指揮を狙撃しなかった理由は?」
気を抜いた一木に、隣に控えていた作戦參謀のジークが問いかける。
短く切りそろえた黒髪。し日焼けしたようなの、歩兵型より小さい150センチ程の小柄な參謀型だった。
一見活発な年のようだが、ダグラス首席參謀によると型らしい。
パチリとした瞳がジッと一木を値踏みするように見ていた。
突然の問いかけ。要は試験中、と言うわけだ。
著任したあと、艦隊參謀達に師団の連中と馴染むのは演習が一番と言われ、翌日にはここに連れてこられていた。
現在幹部以外はボディを輸送艦の格納庫にしまい込み、仮想空間で休眠中の四四師団。それを指揮しての演習。
ダグラス首席參謀に馴染む、と言われたので、てっきりあいさつ代わりの軽めの訓練なのかと思いきや、演習容は異世界派遣軍の過去の戦場の再現。しかも作戦參謀の厳しい質問が飛んでくる試験會場だっだ。
結果、一木はキリキリしながら學校と実習の知識をフル員して師団の指揮をしている。
目の前にのんびり集結した敵軍の指揮を狙撃しない理由……文化參謀からのレポートをタブレットに表示させながら、一木は答えた。
「ここで指揮を狙撃することで、確かに眼前の敵集団を無力化、ないし弱化させることが可能だと思われます。しかし王國軍の文化や指揮をする貴族階級の意識を考えるに、開戦の儀式前の攻撃は”卑怯”と見なされ、この戦闘が終了した後にも戦を継続する意識を殘すことにつながります。『敵の卑怯な攻撃で負けた。正々堂々やれば勝てる』といった合に。なので、敵の戦爭習慣に可能な限り合わせた上で、適度に痛めつけます」
一木は合っているか心ひやひやしながら答えた。するとジークは相変わらずの無表のまま評価を下した。
「そう、その通り。これは異世界派遣軍が戦う上で基本的な考えになる。つまりは敵の抵抗の意思をくじく。これを最優先にする」
そういうとジークは目の前の空中投影モニターに様々な報を映し出した。
「強派貴族の暗殺、移中の軍勢を軌道上から砲撃、主要貴族の家族を人質にして脅す。戦闘前からして取れる手段は山ほどある」
「そうですね。この戦場にしても、こんな見える距離で、しかも遮蔽の無い草原で向かい合ってるんです。アミ戦闘団の火力だけで容易に殲滅できるはず……ようはプロレスって事ですか」
「いい例えだ。もうし近代的な文明だとまた違うし、敵の脅威度にもよる。けれども僕たち派遣軍の戦闘は基本的に相手に”分かるように勝つ”ことだ。軌道上からの砲撃や遠距離からの一方的な銃撃では”実”がわかないんだよ。僕たちは分かり易く強くなければいけないんだ」
強大な戦力で死力を盡くすような戦闘を、実習時の経験からも意識していた一木としては、拍子抜けする言葉だった。果たして部下達は”あいつら”と出會っても同じように戦えるだろうか。
「……けれども、自分たちへの対策を十分に練った相手や、”魔法”使い相手にはどうです?」
「ああ、君の実習先はあそこか……確かに僕らが不期遭遇戦に弱いことは否定しないよ。ただ、僕らはそもそもそういう存在さ。未知の脅威ををもって探る、異世界派遣軍自が地球文明の強行偵察部隊みたいなものだからね」
異世界派遣軍の目的はあいまいだと言われて久しいが、異世界派遣の賛否にかかわらずで言われていることがあった。
異世界派遣軍とは、地球の脅威に対しその力と存在を持って相手の力量を探るための存在だということだ。ジークの言う通り、”勝てる相手”に対応する裝備を中心とすることからもそういった思想の下創設されたことは否めない。
連邦宇宙軍が地球の総力をもって敵にあたる軍隊だといわれることを考えると、鬱屈とした思いをじる派遣軍の軍人も多くいる。自分たちは捨て石なのだと。
一木は実習先でそういった出來事の一端に出會った。
そして一木自が大きな存在を失ったのだ。
「俺のような……新米でもいつかこういった流れを変えられるでしょうか……」
一木の呟きを聞くと、ジーク作戦參謀は笑みを浮かべた。
笑うと意外とかわいい。
その表の可さは、思わずジークの反対側にたたずむマナに、モノアイがジークの顔を凝視する音が聞こえないか心配になるほどだった。
「君ならやれるさ。みんな君には期待しているんだよ。さあ、王國の將軍様が來たよ、次はどうする?」
お喋りは終わり。一木は意識をモニターに移した。
「カタクラフト上空待機、敵が突撃制を見せたら出式フェンスをジグザグに出。フェンスに合わせて歩兵及び車両部隊は展開、敵を撃滅せよ」
一木はいろいろな思いを吹っ切るように指示を出していく。これなら高評価間違いない。
そう思ったとき、敵の三國志じみた將軍が、バイクで出て行ったアミ中佐に激昂して弓矢でった。
矢はかすりもしなかったものの、敵はいきり立って突撃制をとった。
「あ……」
「アミ中佐よりも、強化機兵でも出した方がよかったね。彼らの文化だと儀式に子供を出したら怒り狂うよ。減點一」
一木弘和。一人前の指揮への道は遠い。
戦闘団
異世界派遣軍の師団にはAからDまでの四つの基幹連隊という部隊がある。狀況に応じてこの基幹連隊に師団傘下の他の部隊や艦隊直屬の部隊を組み合わせ、戦闘団と呼ばれる部隊を編して敵に対処する。編された戦闘団は基幹連隊の連隊長の名前を付けて、○○戦闘団と呼ばれる。
突撃兵
足首まである熱學迷彩コートを著込み、見えない歩兵として敵陣に突撃するSS。主にサブマシンガンやショットガンを裝備するため、今回は草原での撃に不向きと判斷。各班から出されて臨時の機関銃班を編した。最初からボディに學迷彩を仕込んだ新型が登場しているが、學迷彩使用前に服をいで全になる必要があるため、一部で議をかもしている。
指揮型
レオタード、ハイレグと呼ばれ、の大半を裝甲化する歩兵型と違い、通信能力を強化したうえで人間と変わりない見た目で製造されたタイプのSS。
戦車
異世界派遣軍のMBT。SAによって制されるため、人間の乗るスペースが存在しない。そのため、重量20トンクラスに軽量化したタイプと、重量50から60トンクラスで火力と裝甲を追求したタイプに二極化している。重量化タイプは二十一世紀現在の戦車と比べて隔絶した超能を誇るが、異世界相手には過剰スペックのためほとんどの部隊では軽量化タイプが用いられている。
歩兵戦闘車
歩兵型SSを搭乗させ、さらに砲塔に重火を搭載した裝甲車両。戦車同様にSA制によって縦人員を無くしている。無人化のリソースを裝甲と火力に割り振っているため、正面裝甲で120mmクラスの戦車砲に耐える能がある。
カタクラフト
FSJ-45カタクラフト。異世界派遣軍の採用したティルトジェット攻撃機(エンジンの角度を変える事で垂直離著陸を可能にした航空機)。カブトガニのような形狀の重裝甲ボディに、大出力エンジンを本後部と両翼に搭載。とにかく積載量と頑丈さを重視した設計のため、制空から対地、輸送から兵員降下とあらゆる作戦に使用される。機正面とエンジン部分は四十ミリ機関砲に耐え、全周囲九十ミリクラスの高砲の炸裂にも耐えうる裝甲は伊達ではない。
欠點は燃費の悪さ。軌道空母から発艦すると、基地、もしくは空中給油しない限り帰還できない。
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