「実はすでに見繕ってる」

殺大佐はそう言ってにやりと笑った。

そして投影された畫面を切り替える。そこには質素な白いローブにを包んだが映っていた。

「一木代將は初めてか？　妹で諜報課課長の貓(ミャオ)佐だ。今帝都に潛中、この映像はリアルタイムだ」

一木は殺大佐の言葉に引っ掛かりを覚えた。

（妹？　）

ミャオと呼ばれたは、ぺこりと頭を下げた。薄汚れた格好で、かつ過ぎない、程よい見た目に抑えられていた。なるほど、これならアンドロイドだとは誰も思わないだろう。

「どうも、貓佐です。一木代將。いつも妹の殺大佐がお世話になっています」

「いも、え？　」

こちらも殺大佐を妹呼び。混する一木に、ジーク大佐が無線通話で教えてくれた。

『殺大佐と貓佐は仲が良くて、製造時期がほぼ同じなので姉妹を名乗っているんだけど、どっちが姉なのか未だにめているんだ。それでどっちも相手を妹と紹介しているんだけど、基本無視していいよ』

「んでだ。貓よ、例の奴は今見れるか？　」

「殺、大丈夫。さっき鶏宿にった」

耳慣れない言葉が出てきた。現地獨特の概念に関しては翻訳裝置が自的に地球の似通った概念に訳してくれるはずだが、まだ若干度が甘いようだ。

「その、鶏宿っていうのは？　」

貓佐が薄暗い路地にあるレンガ造りの建を見せた。

正面から調理場の様子が見られるようになっていて、鶏ほどの大きさの、やたらと気味悪い顔をした鳥を丸焼きにしていた。

「鶏宿っていうのは、ああやってを焼いてくれる宿。室すると焼き始めて、だいたい三時間くらいで焼けるように調節してくれる。焼けるまでのあいだ、宿にった人間は奧の部屋で休んで、帰り際にを持ち帰る」

「よく用途の分からない宿だな」

「宿には基本二人でる。大は男」

「ん？　ああ、つまり……」

「いわゆる連れ込み宿、ラブホテル」

の焼ける間の待ち時間をそういう言い訳に使っているとは、一木は妙に心した。

「今から宿にって例の人を見せる」

そう言って貓佐はフードをかぶった。撮影していると思しきＳＳも歩き出す。

「ばれないのか？」

一木が聞くと、貓佐は自信ありげに答えた。

「今撮影しているゴンゾはどう見ても太った中年にしか見えない生型ＳＳのベテラン。私と二人でればい娼婦と客のおっさんにしか見えない。ばれる道理はない」

そう言って貓佐とゴンゾという諜報課の職員は鶏宿に向かっていく。

一木は道行く人々や建を見た。

さすがにファンタジー漫畫のようにとはいかず、白一の地味な服裝の人が多い。

しかし人々は思ったよりこぎれいな格好をしていた。溫暖な気候を反映してか薄著が多く、男は中東のようなゆったりとした服裝や、古代ギリシャのような右肩を出した服を著ていた。は出度が高く、下はだぼだぼのズボンやぴっちりとしたハーフパンツ、上半は元だけを隠した服裝や、元に布を巻いただけの、腹を出した服裝が多かった。

建の細工は見事で、街並みは非常にしかった。

一木の印象でヨーロッパ的な見た目の建築が多く、カラフルに裝飾されているが窓ガラスはほとんど無い。全的に小奇麗な建で、きれいに區切られた區畫と相まって緻さをじた。

そんなことを一木が考えていると、貓佐はゴンゾと鶏宿にたどりついていた。

なるほど、飯屋にしてはっぽいつくりをしている、ような気がする。

一木そんな想を抱いている間に、二人は手をつなぐと扉をくぐった。客を裝っているのだ。

宿にると、二人は一瞬宿を見渡し、無線通信であのです、と會議室の面々に伝えた。

そのは鶏宿の食堂部分の奧に座っていた。

上流階級なのか、白い服裝の多い中にあっては目立つ、黒い布の服を著ていた。質もよく、他の人々は多ゴワゴワとした布を用いた服が多い中、薄くらかでぴったりとした服を著込み、ほとんど起伏の無い上半の形が丸わかりになっていた。他の同様腹が出しており、あまりくびれの無い腰がよく見えた。その上から何やら裝飾の施された上質な黒いマントを著込んだ姿は、一木が生の頃見たゴスロリ服を連想させた。

髪型はショートカットだった。他のがのっぺりした髪型なのとは違い、フワフワしたその髪は、やはりそのが上流階級であることをじさせた。

すると、貓佐が気を利かせて集音マイクを向けてくれる。

「するとやはり、不作の南部から娘達が？　」

どうやら、橫に座る男と何やら喋っているようだ。

「へえ、稅の代わりに娼館に売られてきてるんでさ……まだ十にもなっていない娘まで……」

「それは見過ごせんな……ん？　言っているそばから……」

そういうと、その黒い服を著たが立ち上がり、ゴンゾのところにやってきた。

「おいお前。わらわの目の前で子を鶏宿に連れ込むとはいい度だな」

その言葉にゴンゾ、そして貓佐が目に見えて焦る。

トラブルだ。

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