《「気がれている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~》カミヤ
全長十數メートルもあろうかという巨は、爬蟲類のそれとよく似た姿であったが……。
いっそ気品すらじられる各部の勇壯さは、単なるトカゲには決して宿らぬものである。
これなる魔とトカゲを分かつ最大の差異はといえば、背部に備わったコウモリのごとき翼であろう。
どこまでも、雄々しく……。
それはゆったりと羽ばたき、理法則も航空力學も無視して巨を飛翔させていた。
――竜。
この世界で、最大の巨とそれにふさわしき戦闘能力を備えた最強の魔である。
長き……あまりに長き眠りから覚めた竜は今、燃え盛るような闘爭本能をに宿してそこへ急行していた。
ここから西、天へそびえる絶壁のごとき山脈の中で……。
この竜は本來ならば、もうしの間は眠っているはずだった。
それを妨げたのは――不吉な予。
もはや予知能力じみた直は、竜の脳裏に警鐘(けいしょう)を鳴らし……この場へ馳せ參じることを強要したのである。
「――――――――――ッ!」
心弱き者ならば聞くだけで息絶えるであろう咆哮を放ち、ただひたすらに翼を打ち放つ。
眼下の森で矮小な魔やエルフらが繰り広げる闘爭も、奇妙な臺座へ乗って空中へ浮いている者共も眼中にはない。
竜が見據えるのは――虛空!
いかなる手段によってかそこに溶け込み、潛んでいるであろう……この世界で生きる全ての存在にとっての大敵であった。
果たして、竜の怒號に呼応したのだろうか……。
それが、隠形(おんぎょう)の力を解除し……ついにその姿を現す。
己すら、はるかにしのぐほどの超巨……。
一見すれば鳥類のようにも見えるが、全を覆う金屬は生であることを否定している。
己が休眠する以上の長きに渡り、どこぞの地中深くで眠っていたはずの存在……。
それが、目覚めた。
目覚めたばかりではない……。
この世界にもたらされてはならなかったはずの力を解き放ち、まき散らしつつある……。
――阻止せよ!
――斷固として阻止せよ!
脳裏に響く聲ならぬ聲に従い、さらに力強く翼を羽ばたかせた!
それに対し、忌の存在は己に匹敵するであろう巨大なのを生み出してきたのである……。
--
「あれは……」
俺の隣で上空を見上げていたエンテが、ぼう然とした聲を上げる。
おそらくは、ザンロの大山脈辺りから飛來したのであろう竜種……。
俺もこの目で見るのは初めてであり、ただ視界に収めるだけでも恐怖で心臓を押しつぶされそうな迫力をじるが……。
エルフが驚いたのは、それに対してではなかった。
俺のコールに応じ、學迷彩を解除して空中に姿を現した『マミヤ』……。
そこから発進した存在を見て、立ち盡くしていたのである。
全長は、およそ九メートルあまり……。
キートンと同様、そのを金屬で構された鋼鉄の巨人だ。
長痩軀(ちょうしんそうく)のシルエットなのは共通しているが、それ以外の點ではだいぶ異なる見た目をしている。
まず、派手だ。
こんなド派手なスーツを著ている俺が言うのもなんだが……とにかく、派手なカラーリングである。
全の裝甲は赤を基調としており、各部に白と黃が配されていた。
もはや稽(こっけい)とすら言えるほどに格好良さを追求したその配は、見ようによっては宮廷の道化師がごときである。
頭部は、亀の甲羅を思わせる配置で各種センサーが裝備されており、頭頂部からは巨大な二本の角が突き出ていた。
背部からは、マントのごとき裝甲が突き出しており、これが他の追隨を許さぬほどの空間機能力を彼にもたらしているのだ。
「紹介するよ、エンテ。
あいつこそ、俺に仕える三の忠臣が一人……。
ウチュウ開発用自立式人型モジュール『カミヤ』だ」
「カミヤ……」
その名を反芻(はんすう)したエンテの目が、上空へ釘付けとなる。
竜とロボット……。
魔と俺、互いが誇る最強の戦力が今、ぶつかり合おうとしていた。
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『とう!』
『マミヤ』から転送発進すると同時……。
カミヤは背部のウィングマントを起させ、空中で仁王立ちするように靜止した。
その眼前に迫りくるのは――竜。
まるで、古代地球文明の幻想小説から飛び出してきたかのような……。
圧倒的な迫力を誇る魔である。
だが、恐れるには値しない……。
かつての昔、自分はこの星へ植民を決意した人々を守るため、何度となくこれらを撃退してきたのだから……。
『新たなマスターを得たと思ったら……。
最初の仕事が航空寫真撮影で、次の仕事がドラゴン退治とはな!
俺の本分は宇宙開発だってのに……星の海がなつかしいぜ!』
言葉が通じないとは分かっているが……。
愚癡(ぐち)る相手に飢えていたこともあり、自分と同じように滯空する竜種へ指差しながらそう告げる。
……と、そんな風にしているカミヤの人工頭脳へ、仲間からの通信がった。
『――ん?
『お前は出番がきてるだけマシだ』って?
文句言うなよ、『トク』!
マスターの大事業を思えば、そのうちお前も出ずっぱりになるさ!』
自分と同じ三大人型モジュールの一人……。
『海』をつかさどる兄弟機に対し、そのような軽口をらす。
それが、竜種の目にはスキとして映ったのだろう。
「――――――――――ッ!」
全を覆うレゾニウム製の裝甲など、意に介さないのか……。
咆哮と共に大きく翼を羽ばたかせた竜種が、その牙でもって噛みつこうと突進してきた!
『うおっ!?』
だが、そのように単調な攻撃をむざむざとくらうカミヤではない。
背部のウィングマントを巧みにり、鮮やかな空中機でこれを回避した。
『危ないな!
裝甲に傷が付いたらどうするつもりだ!?』
振り返りざまに、またも指さしながら文句を告げる。
しかし、そんな問答につき合う竜種ではない。
今度はその口を大きく開き、竜種最大のサイキック能力――火炎放を吐き出そうとしてきたのだ!
『はっ! 何回やったって俺には當たらな――あ、マスター?
ええ、はい……そっすね……よけたら森に引火しちゃいますよね?
……すいません、なんとかします』
またもをひるがえそうとしたカミヤであったが、攜帯端末を通じての猛烈なクレームにそのきをギクリと止める。
それは――致命的なスキ!
「――――――――――ッ!」
『ううおっ!?』
勝利の雄びと共に放たれた火炎放が、カミヤに直撃する!
巨が盾となり、眼下の森に火の手が及ぶことはなかったが……。
それは、二萬度以上もの超高熱炎(えん)をまともにけたことをも意味していた。
火炎放は十數秒にも及び、カミヤの全を火だるまにし……。
やがてそれが、止まった。
「――――――――――ッ!?」
攻撃を止めた竜種の瞳が、驚愕(きょうがく)に見開かれる!
『――はっ!
効かないね!』
果たして、そこには……。
全にまとわりついていた炎を振り払い、焦げ跡一つない姿で空中に仁王立ちするカミヤの姿があったのである。
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