《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第25話 相MAX①
同刻。ミーティングルームには子(こごい)莉、渚葵(ひなた)、紅葉ヶ丘澪の「附屬中3人娘」が集まっていた。
そこへ岸尾麻妃が室してきてひと言。
「やっぱり七道さんは來れないって。DMT(デアメーテル)の覚の校正(キャリブレーション)が押しちゃって」
そしてるなり驚く。
「うわ。紅葉ヶ丘さん居んじゃん。レアだね。って言うか、それだけ深刻な事態?」
岸尾の言葉に紅葉ヶ丘が思いっきり眉をしかめた。
「子學生に引っ張り出されたよ。このままじゃ本當に引きこもり認定されるぞ、ってね」
紅葉ヶ丘澪は、ブリッジ奧の電脳戦闘室から滅多に出てこない。風呂やトイレの目撃報がない事から、もっぱら子の間でも、不在説、バーチャル説が出てくる程だった。
紅葉ヶ丘は、PCの畫面から目を離さずに、
「今回の件は私のしくじり、解析遅れが原因の一端なんだ。まさか大型Bot、しかもあんなゴリゴリの戦闘特化仕様が出るとか、予想しえなかった。『手』を2つも帯同してるとか――ね。善後策を練るためには対面で話すのが効率的だから」
麻妃は思う。なんだ意外に素直な子じゃないか、と。
渚が付け加える。
「そうなのよ。紅葉ヶ丘學生だけじゃない。私達附屬中3人のミスなの。それぞれが役割を100%こなしていたら、こんな事にならなかったのに。前線に立つ人に負擔をかけちゃった。ごめんなさいね。岸尾さん、暖斗(はると)くんにも」
「本當に申し訳無い」
続いて子が頭を下げた。
「それで、暖斗くんの様子はどうかな。落ち込んでないといいけど」
岸尾は頭をかきながら答える。
「う~んどうかな。依(えい)もいることだし」
「何なら、私や渚學生が今回の経緯を彼に説明してもいいけど」
「ああ、それはどうかな。暖斗くんにはそれは逆効果かも。『気を使われた』、とか考えるから。まあ、暖斗くんのメンタルに関しては、依が何とかするんじゃないかな? メンタル弱いもん同士で」
麻妃は苦笑する。
「そう。わかったわ」
子はそう言うと、全員に向かって言った。
「七道さんからも、DMTのダメージは微だって報告もらったわ。あとはバックアップのパイロットを用意して、大型Botにリベンジよ!」
「間に合うのかしら? 子學生」
「そだよ。あれだけの火力差を見せつけたから、あっちからラポルトに仕掛けてくる事はまず無い。けど、大型Botは片付けないと、この艦も先に進めない」
と、渚と紅葉ヶ丘が言った。
「大丈夫よ。ふたりとも。メンバーにはもともと訓練すすめてもらってるし、暖斗くんが回復次第、共同訓練にってもらいます。何せ『彼』は、『彼との相がMAX』だから。きっと上手くいくわ」
「相MAXか‥‥」
岸尾はつぶやいた。この戦艦ラポルトの験乗船には、事前に格診斷のペーパーテストをけている。「相MAX」というのは、そのテストの結果を指しているから、一定の客観はあるのだが。
「元特別枠のアイツが來てたら、面白かったんだけどな~。ま、選考落ちちゃったんだから、しょうがないか」
岸尾の獨り言に、渚が反応する。
「元、特別枠? ああ、知ってるわ。あのキレイな子」
「それ、ウチの友達(ツレ)だったんだけど。やっぱ附屬中の人は知ってたか」
「殘念だったね。確か直前で別の人、仲谷さんが選ばれちゃったのよね」
麻妃は天井を仰いでため息をついた。
「あ~あ。今頃アイツへこんでんだろうなー。でもメールとか屆かないし」
「ところで」
子が麻妃に話かけた。
「『ぬっくん』って何? たまに岸尾さんが暖斗くんをそう呼んでるよね?」
「ああ~。それは」
岸尾は、「大した話じゃないよ」と前置きした上で。
「小屋敷小時代に暖斗くんについたあだ名だよ。『暖』は『ぬくい』とも読めるから、それで『ぬくとくん → ぬっくん』。ああそうだ。そのあだ名を付けたものも、アイツ、その元特別枠の子だよ。あと、中學生になってからは、その子以外が『ぬっくん』って呼ぶと暖斗くんムッとするからね。例えウチでも。子供っぽいのが嫌なんだろうね」
「なるほど、小學生時代のあだ名ね」
子は納得の表を浮かべ、麻妃は、両手を突き上げて背びをした。
「でもさあ、ウチもテンパるとつい昔のクセで『ぬっくん』って呼んじゃうんだよなあ」
*****
「あれ、もう10時か‥‥‥‥」
僕は目覚めた。見慣れた醫務室の天井だ。なんか、自室よりここにいる方が多い気がするけど。そっか、あれから朝ご飯も摂らずに眠り続けたんだ。こんなの風邪で寢込んだ時以來だ。
「あ、起きた? おはよう。暖斗くん」
逢初さんは側にいた。
僕を見て小首をかしげると、目を合わせて微笑んだ。洗濯をたたんでいたようだ。
何だろう。昨日あんな事があったのに、心が軽い。よく眠れた気がする。
いや、実際にも軽い、けそう。MK後癥も殘ってなさそうだ。
いつもより大分早くないか?
「それはね、時間経過よりも、就寢時間が関係してるから、じゃないかな? わたしも興味あるよ。MKの回復データはあればあるだけしいからね、軍も」
逢初さんは僕の疑問にそう答えた。確かにそうかも知れない。
でも、そうじゃない。それだけじゃ、ない。
「逢初さん」
僕は彼に、ベッドの側まで來てもらった。
「依、って、よんでいい?」
「え?」
僕は、斷りをれてから、彼の両手を軽くにぎらせてもらう。
「僕からあらためてお願いするよ。寢てる間、ずっと君が側にいてくれた気がして。実際そうだったんでしょ? 回復が早いのは、君のおかげだと、僕は思うんだ。――――だから」
僕に両手を摑まれて逃げられない恰好の彼は、はにかんでをよじった。
「え? だって。‥‥‥わたしからお願いしてたことだから、‥‥‥あの」
「ありがとう。逢初さんが醫療擔當でいてくれてよかったよ」
「‥‥‥‥今さっそく『逢初』って言ってる」
「あ、つい。だって下の名前で呼ぶなんて恥ずかしいじゃんか」
僕らは聲を出して笑いあった。
笑いながら、彼の顔がみるみる赤らむのがわかった。
「両手捕まってるから、バックヤードに逃げられない」
彼はもう一度初々しく、はにかんでをよじった。
※「うんうん。初々しいのはいい事だ。でも周りにこんな娘いね~よな」という そこのアナタ!!
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