《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第25話 相MAX②
「暖斗くん。考え事してたでしょ?」
明るい聲と共に、の子のが僕の視界にって來た。
桃山 詩(うため)さんだ。
うっかり、醫務室での依を思い出してしまっていた。
「く・ん・れ・ん・中ですよ~」
ポニーテールをピンクのリボンでまとめ、白いブラウスに黒い合服のワンピース――さいはて中の制服――を著ている。彼は笑うと大きな瞳が全部隠れて、目を閉じたみたいになる、そんな笑顔が印象のの子だ。
前に浜さんと一緒に食堂で話しかけられてから、割と気さくに接してくれている。
「じゃ、暖斗くん。もっかい模擬戦やりましょう。今度は集中しないとダメですよ~」
「うん。わかったよ」
今、僕らは2人で合同訓練中。あれからすぐ退院して、そのまま訓練にったよ。なかなかに忙しいけど、大型Botの件があるからのんびりとはしてられないんだよね。
訓練室の縦席を模した椅子に座って、艦のホストCPが作った仮想空間で敵を倒す練習――ゲームセンターで筐に座って、オンライン対戦をするのとほぼほぼ同じ――をしている。
僕はモニターを注視した。モニターって言っても、本の縦席と同じ作りで、僕の視界は全部外の景が映し出される180度モニターなんだけど。
DMTが森を進んでいくと、數機の小型Botが現れた。
「來たね。じゃ、僕は左はじからいくよ」
「了解です。5機、確認です」
「みたいだ‥‥‥ね!!」
僕は一番左はじのBotに近接するとサリッサを繰り出す。そのBotに有効打がったけれど、他の4機が僕を囲みにくる。
その時、僕の背後に回ろうとしたBotが火花を出して地に落ちた。
ガギィィィィン!!
重い金屬音がスピーカーから聞こえて。
「‥‥殘心」
桃山さんの聲がインカムからった。
僕は超信地旋回して、彼が當てたBotに確キルとなる追撃をれる。
殘り3機のBotは、それを見て僕らから距離を取った。
僕はその3機に突撃(アサルト)をする。
また、「‥‥殘心」って桃山さんの凜とした聲が聞こえて、先頭のBotが火を噴いた。隊列のれたBot群を、僕のサリッサが確実に削っていく。1機、2機目を仕留めた。
殘り1機は――。
「‥‥殘心」
最後のBotは、桃山さんの聲と共に、火花を上げて墜落した。
桃山さんは狙撃手。
同じ中型DMTだけど、長距離仕様の武で、離れた場所から僕を援護する役目だよ。
「すごいね。3発目はクリティカルだったんじゃない?」
模擬戦が終わるごとに、2人で容を確認する。
「僕が敵に突っ込んで、浮いた駒を桃山さんがドカン。僕が引き気味にいて、追いかけて來た敵をドカン。う~ん。全然問題ないよねー」
「ありがとうございます。でも、実戦だと多分めっちゃ張しますよ? わたし。――だって有質量弾使うじゃないですか。萬が一味方に當たったら‥‥って、プレッシャーヤバイです。あ~」
「そう? ちゃんと呼吸を合わせれば大丈夫じゃない? あと、あの『殘心』って何あれ。なんかかっこいいし」
「あ、あれですか」
桃山さんは、ちょっと自分語りになる、と前置きして。
「私、弓道部なんですよ。弓道には『遠的』って競技があって、すっごい遠くの的をるんです。私それが得意なんです。同じ放線(パラボレー)ショットなんで。たぶんそれでこの験乗艦にも選ばれて、準パイロットでDMTにも乗れたみたいです」
桃山さんは耳前の髪、「覚」にきれいな指を通しながら。
「で、弓とライフルは違うんだけど、弓道って、る時に『弓道八節』っていう8段階の所作があるんです。その最後が『殘心』。矢弦から手を離して、矢が飛んで行った後の姿勢。た後も、心をそのに殘せって訓えが好きで。だから、DMTでレールガン撃ってても、同じ様につい口にしてしまうんです」
「ああ、なんかすごく武道、ぽいね。ウチの中學の軍隊格闘(コマンドアーツ)の先生も、古武道がバックボーンみたいで、『殘心』って言ってたな。髪のモジャモジャで、熊みたいな先生」
「あ、もしかして『モジャ沢』先生じゃないですか? 去年度まで さいはて中に居た?」
「そうかも。新しい先生かも」
「その先生。スゴイ男っぽいじゃないですか? ウチが子ばっかなんでやりにくそうで。あはは。それで転任願だしたってウワサですよ」
「あ~ね。そうかも。なんかいっつも男子ばっかに話しかけるってじ。子だと どもるんだよ」
「そうそうそうそう!」
――――雑談で盛り上がりすぎてしまった。
「‥‥暖斗くん。ちょっと、模擬戦進めないとヤバいですね。さすがにそろそろ‥‥‥‥」
「ゴメン。つい話しこんじゃったね。えっ‥‥と、次は」
「もうし私が遠距離にいる設定で狙撃(スナイプ)するヤツですね」
「で、その後、桃山さんが狙われた時に僕がフォローにる設定の、だね」
「よろしくお願いしま~す」
訓練後の晝食。あの後も結局、「想戦」で雑談モードになってしまうので、一端模擬戦に集中して、晝食時にでも雑談しよう、という流れになった。なので、著席した僕の目の前には桃山さんがいる。彼に、「いちこ」――浜さんのことをこう呼んでいる――も呼んでいいですか? と聞かれてOKしたが、結局まだ來れないらしい。
「遠的が得意って言ってたけど、やっぱ賞とか取ってるの?」
「市の大會で何度か、くらいですよ? 私は。それ言うなら、県大會優勝のあの2人の方が全然スゴイですよね」
「あの2人、って、初島(はつしま)さんと來宮(きのみや)さん? 周防(すおう)中の」
「そうです。周防中學、通稱『スポ中』。特進クラスもあるスポーツガチ勢です」
そうなんだ。自分が特にスポーツとかに打ち込んでる訳じゃないから、そういうので活躍してる人達ってなんか眩しいよね。ちゃんと青春してるじ。
そう言えばこの2人、初島さんと來宮さん、と、今話してる桃山さんと友達の浜さん、あと僕にわき腹をらせようとした折越さんの5人は「菜摘班」なんだよね。初陣の時から、僕が隔壁縦席(ヒステリコス)からけなくなると、醫務室まで運んでくれるメンバーだよ。
それから、桃山さんとはんな話題になった。たまに彼は浜さんがまだ來ないのを気にしてたけど。
「やっぱ弓道って武道なんだね。でもその武道を桃山さんがやってるのも、ミスマッチ、というか何か意外なじだね」
「でも弓道部って、子率高いですよ。ウチは當然100%として、他の中學でも」
「なんでだろ」
桃山さんは両手をの前で合わせて、祈るような仕草をしながら。
「私の場合は、がぶつかる様なハードなスポーツじゃないのと、神面が鍛えられるのと、あと‥‥やっぱり袴姿がカッコイイ! あれ著たかったからですかね」
「そこからったと。映(ば)えるユニフォームは大事だよね」
「王子様。この凜々しい袴姿の私を早く見つけて、と。でもまあ見つけても何も、ウチの中學男子ゼロなんですけどね」
「あはははは!」
僕はお腹を抱えて笑った。そう言えば、この験乗船で笑するって、あまり無かったかも知れない。
そうだ、彼にあの事も聞いておこう。
「ね、桃山さんのDMT見せてよ。その重力子(グラビトン)レールガンもさ。あ、そっか。模擬戦(シミュレーション)だったら、僕がそっちの機に乗ってもいいんだ」
「ちょっと暖斗くん。完全に友達とゲームやってるノリですよ。あ、そうだ。‥‥‥でも」
桃山さんはさすがに苦笑して、でも何か思いついた表をした。
「なになに?」
僕が聞き返すと、桃山さんは、席を立つとわざわざ僕の側に近づいてきて、顔を寄せた。
自然と、僕の背中に右手を置きながら。
「このあと午後、お時間あります?」
※「弓道子いいよな~。てか、逢初さんとの好度がカンストしたから他の子出してきやがったな!? このクソ作者!」とお怒りの そこのアナタ!!
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