《【最終章開始!】 ベイビーアサルト ~撃墜王の僕と、醫見習いの君と、空飛ぶ戦艦の醫務室。僕ら中學生16人が「救國の英雄 栄のラポルト16」と呼ばれるまで~》第30話 大車①
明くる朝、僕は醫務室で目が覚めた。あのまま寢てしまったか。
依(えい)は、自室に戻ってるのかな? 姿が見えない。
ふと時計を見ると7時45分だった。誰も居ないしやる事も無いしなあ、と、が回復してるか確かめてみた。
回復はイマイチだった。腕とかまだ十分にはかないし、痛みも殘る。そう言えば依が、「今回の戦闘はMK(マジカルカレント)たくさん使った? 酸値が高いよ?」と言っていたな。
大へのリベンジだったからそうかもしれない。
と、いうことは、院もいつもより長いってこと?
「オオ~~ッス。暖斗(はると)くん」
醫務室の自ドアが開いて、麻妃(マッキ)が勢いよくってきた。僕は、ドッキリで騙されたお笑い蕓人みたいなをする。
「生きてるか~~」
何? 死んでは無いけれども。なんで麻妃が。
あ、いや、そういえば。
「とりあえずウチが當番で來たよ。聞いてるよね」
今回の戦闘から、桃山さん達がパイロットになって、メディカルチェックをする依の仕事が増した。
なので、僕の介助は、2日目以降は誰か手の空いている子がやる、って事になったんだっけ。それで先ずは、僕と馴染みで付き合いが一番長い麻妃が來たという訳だ。
僕にも子にも一番負擔がないチョイスだ。
「さ、暖斗くん。これから毎回違う娘がれ替わりで來るよ~。 大車(ガチャ)のはじまりはじまり~♪」
「――って」
「コラ。引くな」
「わざと能天気にやってんでしょ。まあ麻妃はもともと能天気だけれども」
「で、ウチは何すればいいの? ミルク飲むのかいベイビィ!」
「もうそのノリやめろって。普通でいいから。まだかないから、普通の食事持ってきて。何とか自分で食べるけど、ある程度は手伝って」
「り」
麻妃は、朝食を取りにバックヤードに消えるが、聲だけ聞こえてきた。
「お、ここに依のメモってある。ほほう。何したらいいか全部書いてある。メールでいいのにね。このきれいな字で手書きってトコが男子にモテる訣だろか~」
麻妃はバックヤードから顔だけ出して、ね? どう思う? と訊いてきた。
麻妃の魂膽はもう判ってるけど、正直「依はモテる」というワードが気になって、いに乗っかってしまった。
「麻妃、今、『依はモテる』って言った?」
「言ったけど? 暖斗くん。いつの間に依を『下の名前』で呼ぶ関係(カンケイ)に?」
「麻妃の『依はモテる』をトレースしただけだけど」
「‥‥ふ~ん。そうきたか」
麻妃はそう言い放つと食事を取りに行った。
僕の用意された朝食が來た。グラノーラだ。そもそも複雑なきがまだ出來ないから、そのリハビリも兼ねて、食べやすいを仲谷さんに用意してもらってる。
「麻妃。グラノーラに牛れて。たぶん僕やるとこぼすから」
「ほ~い。れますとも。でも、スプーンで『ハイ、あ~ん』とかも出來るけど?」
「見ての通り。不自由ながらなんとか食べれるのでご心配無く」
僕は痛む腕でグラノーラをザクザクと口に運んだ。
「実は依にやってもらったことあったりして」
麻妃は、機に頬杖をつきながら、僕をななめに見ている。
実は、依には何度かやってもらってるし、コイツも知ってたハズだ。
がかないんだからしょうがないじゃんか! と言いたいが、なるべく他の子には知られたくない。麻妃にも。
後は、麻妃がはぐらかした話を元に戻して、と。
「で、逢初さんてモテるんだ?」
「そんな事言いましたっけ」
「言った。俺は別に興味無いけど? 麻妃があんまり話したそうだったから、一応訊いといてやるよ」
「ま~た。めんどくさいな。暖斗くんは」
麻妃は、そう言いながら両手でびをした。わかってる。麻妃がこういう『ネタのチラ見せ』をしてくる時は、すごい報持ってる時だ。でも、こっちもいい加減このやりとりに飽きてきた所だ。
僕は半笑いで麻妃を睨みつけた。
「‥‥‥‥麻妃(マッキ)。教えなよ。これ以上不な會話をしてると‥‥!」
「わかった。ゴメン! ゴメンて。ぬっくん!」
麻妃は、やっと依の事を話し出した。
ふたりは「友達」と聞いている。
僕は、クラスメイトながら彼の事をほぼほぼ知らない。――さて。
「依は、うちの中學の3年生と付き合ってる」
「‥‥‥‥‥‥‥‥ぶほあ!」
「‥‥‥という‥‥ブハッ、ウワサだよ」
麻妃は腹をかかえて笑い出して、僕は吹き出したグラノーラをダスターで拭った。
「アッハッハ~。いいリアクション頂きました。思わず言い終わる前にウチも吹き出しちゃったよ。‥‥そっか。あの娘の事が気になるか~」
「グホ。変なとこでセリフ切って。ああ、逢初さんが誰かと付き合ってても、別に変な事じゃあないし」
「大丈夫だよ。暖斗くん。依は1年前までキャだったし、男っ気は無いよ。むしろ、『わたしは結婚しない』とか言って、勉學に勵んでおる」
「それ言ってた。経済的な自立、とかなんとか」
麻妃はさらに僕をななめに見た。僕が話に食いついてきたのが楽しいんだろう。
「依ってさ、校テストでいつも學年10位くらいでしょ?」
すごい。そうなんだ。
「違うんだな。これが。依は目立つのが嫌で、ワザと10位で調整してる説、ってのがあってね」
「何それ、そのマンガみたいな話」
「で、不審に思った先生方が、『わチャ験』けたいって言う依に、『それなら君の実力を知らなければ』とか何とか言って、わざと醫學部系のすごい難しい問題混ぜて解かせたんだって」
「で?」
「‥‥‥‥全問正解したって。そりゃ『わチャ験』もかるわな」
「それマ? ‥‥っていうか、先生方のそんな話、なんで麻妃が」
「それはね」
麻妃は頬杖を外してを乗り出してきた。
「擔任から聞いた。『岸尾、お前知ってたのか?』って。逆にその時の顛末全部教わった。しかも、それなら、と、依を飛び級で3年に上げようとしたんだけど、それは本人が固く拒んで立ち消えとなり、なぜか代わりにこの験乗艦が決まった」
「やばい。なんか鳥立ってきた」
「なんか、軍の偉い人が、依のバイト先に現れた、とか。イチ中學生にだよ?」
ちょっと天然だけど賢い娘だなあ、って思ってたけど、そんなにすごいのか。なんかちょっと、手の屆かない所にいるが出てきちゃった。まだモテるとかの話もこれからだろうし。
「で、依が3年生と付き合っている、っていうウワサなんだけど」
キタ。ちょっとドキドキする。僕もを乗り出す。
「ふむふむ」
「お、暖斗くんも興味津々か。持つべきは異の報通の馴染み、と。じゃ、どうすっかな。まず、ファンクラブから話すか。みなと一中(いっちゅう)の1年と3年に依のファンクラブあったのは知ってる?」
「!? あった?‥‥‥‥知らない」
「ま、暖斗くんならそうだろうね。1年の、5月くらいには出來てた。」
「中學ってすぐじゃん? 早くない?」
「あーそれな。依は長キャラだから、下の面倒見がいい。小學校からの流れで、『お世話になった依お姉さんが、中學でセーラー著たらメッチャキレイになった件』って、ウチらのいっこ下が騒いだんよ。だから、今の1年の依ファンクラブは子中心」
「面倒見。確かにいいね」
僕は、依が僕のためにやってくれた、あれこれを思い出す。
「で、逆に3年生は男子オンリー。その3年のファンクラブを立ち上げた人が、今年の7月あたまくらいに、1年と3年のファンクラブをひとつに統合したのさ。だから過去形」
「なるほど。7月なんてこの験乗艦の準備ばっかで、そんな事あったなんて知らなかったよ」
「まあね。そうじゃなくても暖斗くんとその周りの男子は、部活とマンガとゲームの話ばっかだしね」
痛い所を突かれた。どうせ僕はおこちゃまだよ。
だけど、ここで麻妃が、腕を組んで考え込んでしまった。
――――しばしの沈黙。
「う~ん。この先の話はどうしよっかな? 別に依に口止めされては無いけど」
こんな事を言いながら、頭をかいている。どした?
「麻妃、ここまで話してそれはないよ。ま、話せない事なら無理にとは言わないけど」
僕はそう言いながらも。
気になってしょうがなかった。
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- 連載中205 章
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