ホームセンター探索のこと

不死鳥のマークで全國的に有名なホームセンター『キョーナン』

俺はそのり口に立っていた。

今のところ周囲に俺以外の生きた人間はいない。

北區でも電気が切れているようで、中は薄暗い。

無理やりヘルメットにガムテープで固定したライトを點けるが、外からではあまり狀況がわからない。

余裕があれば明るいライトも頂いておきたいところだ。

自宅周辺で拾った石を思い切り投げ込む。

石は奧まで飛んでいき、結構な音を立てた。

耳をすますと、奧からゾンビの騒ぐ聲が聞こえた。

2・・・いや３かな。

それから様々な方向に石を投げた結果、この店にはなくとも７から8前後のゾンビが潛んでいると分かった。

・・・結構多いな。

いや、店の規模から考えるとないのかもしれない。

可能な限り見つからないようにしながらこう。

石を投げた方向をおおまかに覚え、音をたてないように店に侵した。

周囲を確認しながらする。

まずはり口付近の充電コーナーだ。

ここらには音に対する反応がなかった。

おお、あるある！大容量のモバイルバッテリーやソーラー充電！

まずはこれからだな。

ベストのポケットに詰め込んでいく。

ついでに隣の電池コーナーから各種乾電池もいただく。

充電式のものは殘らず確保だ。

家に充電があるからね。

反対の通路を見ると大きなポスターが見えた。

不死鳥を中途半端に擬人化したキャラクターがんでいる。

『災害用品フェア！』

なんともタイムリーな！

乾パン、水をぶち込めば食えるアルファ米、缶詰、カロリーバーに長期保存パン！

詰め込めるだけリュックに詰め込んでいこう！

ウッキウキで近付くと何かに足を摑まれた。

そこには下半が欠損した若い店員らしきゾンビ。

「オアアアアアアアアアアアアアアアア！」

「うおっ！？」

ッヤバイ！ばれたしんでしまった！

店の暗がりから呼応するように聞こえる奴らのび聲！

畜生！り口でこれかよォ！！

「オラぁッ！！！！」

腰から引き抜いた木刀で半ゾンビの脳天をぶん毆る。

手の力が緩んだ！

もう一回毆るとリュックをかっさらってり口までダッシュ！！

後ろからダバダバと足音が聞こえる。

そのままり口を通過して駐車場に出る。

振り返る。

追いかけてくるゾンビは3。

俺は足元にリュックを投げ、息を整えながら1目を待つ。

右肩に木刀を乗せるように構える。

「らッ！！」

飛び込んでくるゾンビを迎え撃つように、足を踏み出しながら振り下ろす。

狙い通り、そいつの額が大きく陥沒するほどの打撃を與えた。

1目が倒れ込む。

2目が迫る。

振り返ってまた走る。

１０メートル程走って、振り向いてまた構える。

「オォッ！！」

タイミングが早かった！

2目の鼻を砕いた木刀を無理やり反転させ、下段から顎を跳ね上げる。

3目もすぐそこだ。

「・・・ッのォ！！」

ふらつく2目を蹴り飛ばす。

3目を巻き込んで倒れた。

すかさず距離を詰め、倒れたゾンビ2の頭に振り下ろす。

奴らは直視したくない何かをばら撒いて靜かになった。

俺は止めていた息を吐き、回復に努めながら周囲を見渡す。

・・・くものはなし。

一時はどうなるかと思ったが、このやり方が通用してよかった。

人呼んで『幕末の志士戦法』

とにかく逃げ、追いついてきた奴から1人ずつ処理をしていくってやつだ。

學生時代に大いにハマった漫畫から拝借した。

ありがとう人斬りの人。

しかし疲れるなあこれ。

それから俺はり口に戻り、この戦法を駆使して殘りのゾンビを釣り出して処理していった。

疲れたら駐車場の車の屋に飛び乗って休憩。

ちょっと高い車なら奴らは登ってこれないみたいだ。

ゾンビが頭までゾンビで助かったでござるな。

死ぬほど疲れたけど。

家から持ってきたペットボトルりの井戸水を飲み、煙草に火をつけ一服。

目の前には駐車場に転がるゾンビたち。

・・・全部で9もいやがった。

いや、最初の半野郎みたいなのがまだいる可能もあるから安心はできないが。

まあ移能力は低いし、慌てず頭を潰せばいいだけの話である。

ここ何日かですっかりたくましくなった頭で考えつつ、再度侵する。

・・・まずはライトの確保だな。

懐中電燈コーナーで高能のヘルメットマウントライトを手にれたので、早速裝著。

おお、明るい。文明のだ。

これで隅々まで見渡せるぞ！

うわぁ・・・床が散らばったや人間のパーツですっごいグロい。

よく見えるぅ。

世の中には見えなくてもいいものがあるのだなあ。

保存食や卓上ガスコンロのガスなどの細々したものをリュックに詰め込み、いったん車に戻る。

リュックの中を荷臺に開けて、またホームセンターへ。

何往復か繰り返して食料品をかなり手にれた。

最後はり口に置いてある臺車を押しながら、店で今回の探索一番の大、発電機を探す。

しかしここは驚くほど手つかずだな。

ゾンビがいっぱいいたので見逃されていたのかもしれない。

となると、俺がゾンビを全滅させたことに他の誰かが気付くと危ないな。

次に來た時に無くなることも考えて、今日は軽トラ満載に資を持って帰ろう。

発電機は軽油でくものを選んだ。

軽量で音が小さいと値札に書いてあったのが決め手になった。

當たり前だが電気式は論外だ。

無事に確保できたので、その他に役に立ちそうなものをする。

軽油をれるポリ缶、各種電気ケーブル、手ごろな大きさの鉄パイプ。

家の側から打ち付ける板もしいが、早々なくなるもんでもないから後日にする。

園蕓コーナーで野菜の種を見つけた。

栄養が偏らないためにも野菜は必要だしな。

電気が死んでいる今、スーパーの野菜は食えないだろうし。

試しに庭にあるおふくろの園蕓スペースに植えてみよう。

ダメだったら郊外の畑に行って引っこ抜いてくればいいだけの話だ。

我ながら蠻族みたいな考え方だな。

カー用品コーナーで適當なサイドミラーを見つけたので、これも持っていく。

小さいカーナビがあるじゃないか！軽トラにはないからこれも拝借っと。

おっ釘打ち機売ってる。

でも日本で流通しているものは、銃みたいに使えないように安全対策が何重にもかけてあるらしいし、武としては使えないな。

今日のところは卻下だ。

今回の探索はこんなもんか。

発電機もあったし、保存食その他も大量に手にった。

足りないものは後日取りにこよう。

ゾンビが長距離移するかしないかはその時の狀況でわかるはずだ。

俺は重くなった臺車を押しながら駐車場へ帰還した。