《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》27話 拳銃の顛末とこれからのこと

拳銃の顛末とこれからのこと

俺は避難所に向かって車を走らせていた。

死んだ警・・・高山さんの拳銃を宮田さんに屆けるためだ。

柄にもなくセンチメンタルな気分になってるな。

俺はもちろん善人ではない。

相手が失禮な奴ならぶちのめすし、その結果死んでも何とも思わないだろう。

今までの相手は運が良かっただけだ。

もう一度來るなら遠慮なくぶち殺せる。

だが、あの書や寫真を見てしまった以上屆けないわけにはいかないもんなあ。

関わってしまったからには最後までとはいわないが、せめて品くらいは警察に渡したい。

同じことができるともやるとも言わないが、彼の生き様は尊敬に値する。

彼は失禮なわけでもゾンビなわけでもないからだ。

せめて、その立派な最後を知らしめておきたいじゃないか。

生きていたら娘さんにも、『お父さんは立派だったんだぞ』って教えてあげたいぐらいだ。

・・・いや、父親の死にざまなんて教えないほうがいいかな・・・?

そこらへんは宮田さんと話し合おう。

避難所に到著。

ここに來るのもすっかり慣れたものだ。

門番が寄ってくる。

森山くんじゃないな。

まあ彼も一日中門番をしているわけではあるまい。

・・・神崎さんに四六時中引っ付いていなければいいが。

森山くん、いくら好きでも過ぎた好意は逆効果だよ?

なんと顔パスでれてくれた。

信頼が怖い。

駐車場に車を停めて校る。

廊下にいた警察に宮田さんの居場所を聞いて、職員室へ向かう。

「失禮します、田中野です。宮田さんは・・・」

「いますよ、田中野さん。」

中には何人かの警察もいる。

その中で、宮田さんはおそらく管理職だろう立派な機にいた。

休憩しているようだ。

向かいの席を進められたので座る。

「それで、今日はどうされました?」

「・・・実は宮田さんにというか、警察に渡したいものがありまして・・・」

「ほう?」

俺は宮田さんの機の上にポケットから拳銃を出す。

ごとり、と音を立てて目の前に置かれた拳銃に目を見開く宮田さん。

「こちらも。」

その橫に、銃弾もじゃらりと置いた。

「これは・・・これを、どこで?」

「今日、近所の番に行ったときに見つけました。これと一緒に。」

最後に警察手帳を宮田さんに渡す。

中にはあの書と寫真を挾んでおいた。

「亡くなった警が握っていたものです。」

「!そう、ですか・・・」

「これは、俺が持っていていいものではないので。」

宮田さんは一瞬息を吸い、警察手帳を開く。

そこにあった顔寫真を見て、息を呑んだ。

「高山、先輩・・・!」

「・・・お知り合いですか?」

「同じ高校の先輩だった方です。警になってからも、よくしてもらいました・・・」

なんと、世間は狹いもんだな。

ここに持ってきてよかった。

「連絡が取れず、心配していたのですが・・・そうですか、お亡くなりに・・・」

そう言いながら宮田さんは書を開く。

一字一字、確かめるように読んでいるようだ。

眉間にしわを寄せて読み終えた後、高山さんと娘さんの寫真をじっと見ている。

微かに手が震えているのが見えた。

しばらくして、宮田さんは顔をうつむかせて重い溜息を吐いた。

その後、椅子の背もたれに重をあずけて天井をしばし見上げ、顔を正面に戻した。

よほど仲がよかったんだろうな、ここまで辛そうな顔は初めて見た。

「・・・先輩は、どんな様子でしたか?」

番の奧の部屋で、拳銃を握って亡くなっていました。首筋には噛み跡があり、意識があるうちに自殺されたようです。」

「・・・」

「そのままだと略奪されるかと思って、拳銃と手帳などを回収して、ご番の裏に埋葬させてもらいました。」

途中のアホ3人組の話は関係ないしカットした。

俺も思い出したくないし。

「田中野さん、高山先輩を見つけてくれたのがあなたでよかった・・・本當に、ありがとうございます。」

「俺も、あの人の知り合いにこれを屆けられてよかったと思います。」

手を差し出してきた宮田さんと握手をわす。

この人に預けておけば、高山さんの拳銃はきっと誰かの役に立つだろう。

あっそうだ、もう一つ聞きたいことがあったんだった。

「あの、そこに寫っている娘さんは今どこに?」

「・・・あきらちゃんですか。」

やっぱり娘の名前があきらだったか。

「彼はたしか、龍宮市の神楽高校に通っていたはずですが・・・」

龍宮市はわが県の県庁所在地だ。

この詩谷市の北に位置している。

神楽高校は俺も知っている。

私立の全寮制子高だ。

ここの高校と同じくらい校則が厳しく、偏差値が高いので有名だった。

警備もしっかりしているようで、學園祭に忍び込もうとした友人が一瞬で屈強な警備員に取り囲まれて捕まったことがある。

ちなみに今更だが、避難所になってるここは『私立友高等學校』だ。

避難所としか呼んでないからすっかり忘れていた。

しかし神楽高校ね・・・子高としてはかなり規模がデカいし、ここみたいにぐるりと壁で囲まれていたような気がする。

もしかしたら避難所になってるかもしれない。

「ちなみに、そこは避難所になってるんですか?」

「立地といい、外壁の堅牢さといい、そうなっているだろうとは思うのですが。連絡が取れていないので現狀ではなんとも・・・」

「そうですか・・・」

まあ、あそこなら大丈夫だとは思うがなあ。

この前ここで出たアホみたいなのがいなければ。

あんなアホがそこら中にいるわけないので安心か。

・・・意外と出會う気がするのは気のせいだな。うん。

拳銃は、宮田さんが責任を持って保管するということで落ち著いた。

これで一段落ってとこだな。

娘さんのことは気になるが、俺がどうこうできる問題じゃないし。

宮田さんと別れた後、許可をもらって校庭の隅でベンチに腰掛けて一服。

重い荷を手放したおかげで、いつも通り煙草が上手い!

吸いながら、ボケっと周囲を観察する。

・・・校庭のあちらこちらに土を盛られ、畑になっている。

近くの畑から土を持ってきたのかな?

何人か作業をしている方々の姿がある。

避難民の人數が多いので人手もあるのだろう、なかなかのデカさだ。

面積としては校庭の半分程度だろうか。

人が多いと食料の調達も大変だなあ。

野菜もいいけど、新鮮なが食いたいなあ・・・

會社の倉庫とかも電気が止まって大分経つから、全滅しているだろうなあ。

野鳥を狩るのはダニとかのリスクが高いし、弓なりパチンコなりを用意する必要もある。

ボウガンなんて売ってるとこ見たことないし。

それに、わざわざ苦労して鳥を食おうとしなくても食糧事はあまりひっ迫していないのだ。

そう考えると、調達の手軽さからやっぱり魚に軍配があがるんだよなあ・・・

よし、拳銃の問題も片付いたしそろそろ釣りに行くかな。

今のシーズンならギリギリ鯵の季節だ。

この時期の鯵ならルアーでも釣れるしな。

新鮮な鯵か・・・よし。

「なめろうだ!是非なめろうにしよう!!!」

「おいしいですよね。」

「ウワーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!!!!!?!?!?!?!?!」

ベンチから前方に飛び込み、その勢いのまま前転して姿勢を低くしながら態勢を整えつつ、後方を振り返る。

そこには神崎さんが目を丸くして立っていた。

驚きすぎて咄嗟に戦闘ムーブをとってしまった。

すごく恥ずかしい!!

「・・・お見事です。」

「す、すいませんビックリしたもんで・・・」

土埃をはたきながら立ち上がって返す。

全く気配が読めなかった・・・

やはり神崎さんはニンジャ・・・???

あと評価ポイントがおかしい。

「釣りに行かれるのですか?」

「ええ、まあ・・・魚が食いたくなりましてね。」

「いいですね。」

そのまま何事もなかったこのように歓談する。

なんかこの人ほんといいキャラしてるな。

「それは、棒手裏剣ですか?」

即座に左手にマウントしている手裏剣を発見される。

好きだけあって目ざといな!

「ええ、ホームセンターの材料を使ってでっち上げた素人仕事ですが。」

「さすが南雲流といったところですね。」

「いやいや、そんなにいいものでは・・・」

目がキラキラしとるぞ神崎さん。

ほんとに武が好きなんだな。

あと近い!距離が近い!!若い娘さんがそんなに薄しちゃいけません!!!

俺が男子中學生だったら勘違いして即日プロポーズしちゃうでしょ!!!!!!

結局、神崎さんにせがまれてそこら辺にあった板を標的にいくつか技を見せることになってしまった。

校舎の中にいた避難民の子供たちまでワラワラ寄ってきて、結構な人だかりに。

流れでいくつか基本的な居合も披したら大層喜ばれた。

・・・某忍者村のアトラクションかな?

まあ、子供たちも喜んでいたしいいだろう。

・・・神崎さんも子供と同じくらい目がキラキラしてたのは見なかったことにしよう。

なお、離れた校舎の影からこっちをじっと見つめていた森山くんも同じく見なかったことにした。

コワイ!!!

こっち來ればいいじゃん森山くんさあ!!

大丈夫だから!神崎さんは武が好きなだけで俺が好きなわけじゃないから!!

・・・まあ君もたぶん好かれていないだろうけども。

アプローチがことごとく裏目に出とるぞ。

拳銃という重荷をなくしたが、若干森山くんのせいで覚えた疲れを認識しながら避難所を後にした。

さて、近いうちに釣りに行くぞ!!

まずは釣屋の探索だな!

    人が読んでいる<【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】>
      クローズメッセージ
      あなたも好きかも
      以下のインストール済みアプリから「楽しむ小説」にアクセスできます
      サインアップのための5800コイン、毎日580コイン。
      最もホットな小説を時間内に更新してください! プッシュして読むために購読してください! 大規模な図書館からの正確な推薦!
      2 次にタップします【ホーム画面に追加】
      1クリックしてください