《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》39話 詩谷市民會館偵察のこと(※いつもより殘酷な描寫アリ)

詩谷市民會館偵察のこと

ほのぼのと過ごした翌日。

昨日までの豪雨がウソのように晴れ上がったので、近隣最後の避難所へ偵察に向かう。

詩谷市民會館。

以前は、ちょっとしたコンサートや催しなんかをやっていたイベントホールだ。

ここも堅牢な作りなので避難所に選ばれたが、避難民を収容したかしないかのタイミングで音信不通に。

なので何人ほど避難民がいるか、どれくらいの警がいるかなど、すべての報が不明だ。

宮田さんは、パンデミック初期に壊滅したと考えている。

市民會館は市中心部にほど近いビル群の中にある。

パンデミックが平日に発生したので、かなりゾンビの數が多いと考えられる。

ノコノコ車で乗り付けたら、どこぞのサンバカーニバルみたいになってあっという間にお陀仏だ。

ということで、目的地の500メートルほど手前にある有料駐車場に軽トラを停める。

ここ、以前は1時間200円上限なしという超絶高額駐車場なので全く利用していなかったが、今となっては関係ない。

パンデミック様々ってのはさすがに不謹慎だな。

周囲を確認しながらビル街にる。

靜かだ。

というか、靜かすぎるな?

ここら辺は市でもかなり大きいオフィス街だったはずだ。

働いていた人はどうなったんだ?

「・・・ここまで人の気配がないってのは、なんかおかしくないですか?」

「そうですね。まとまってどこかに避難しているか、それとも・・・」

ゾンビになったか死んだか。

がらんとしたビル街を進む。

左右のビルを眺めているうちに、神崎さんがあることに気付いた。

「いますね、ゾンビ・・・」

「えっどこに・・・うわぁ。」

ビルの窓からチラホラとゾンビが見える。

例によって、影の部分にぼうっとたたずんでいるようだ。

なるほど、出社してからゾンビになったタイプが多いのか。

ああなっちゃうと知能は以下になるので、電子ロックや鍵を開けられずそのまま中に取り殘されたと。

ゾンビがアホでほんとに助かった・・・

しかしまあ、死んで?からも會社から帰れないとは哀れであるなあ。

無職でよかった!!

・・・負け惜しみではないぞ。

まあそれでも奴らは力は強いし直線のスピードは速い。

捕捉されれば數の暴力で追い回されるし、おそらく疲れ知らずなので逃げ続けるとこっちが先に疲れる。

某アクション映畫の筋サイボーグみたいに、でっかいミニガンでも持ってりゃいくらでも相手してやるが、いかんせん俺の裝備では何とも心許ない。

見つからないに越したことはないのだ。

周囲のビルの窓から適度に距離を取りつつ進んでいくと、前方にお目當ての市民會館が見えてきた。

このまま向かってもいいが、以前の偽裝避難所事件のことがあるので気を付けることにする。

會館の真正面には、道を挾んで4階建ての立駐車場がある。

コンサートやなんかの時は、みんなここに自転車や車を停めて向かう。

懐かしいなあ、高校の時初めてできた彼とコンサートに來たっけ。

いい思い出だ。

・・・いや、よく考えたらコンサートの帰りに振られたんだった。

嫌な思い出だ。

「何故振られたんですか?」

ヒエッ!?

心を読まれた!?

「いえ、普通に聲に出してらっしゃいましたが。」

ああそうなの。

「いや、別につまらん話なんですがね・・・」

駐車場の階段を上りつつ説明した。

なんのことはない。

コンサートの帰り道に、いわゆる不良に絡まれたのだ。

は結構な人だったし、相手の不良は彼馴染だったらしい。

前から彼が好きだったのかなんだったのか、しつこくそいつは絡んできた。

今の俺なら適當にあしらえると思う・・・思うが、當時の俺は気盛んな年ごろだった。

顔を小突かれてよろけた俺を心配した彼を、そいつは突き飛ばして転ばせた。

それを見てカッとなってしまい、そいつをボッコボコにしたのだ。

の前だったからついついいいところを見せようとしてしまった結果だ。

『暴力を振るう人は嫌い。』

はそう言って俺の頬を平手で打ち、そのまま帰ってしまった。

すぐに追いかければよかったのかもしれないが、思わず

『オイオイ、じゃあ今振るったのは???』

そう言ってしまったのだ。

は顔を真っ赤にして雑踏に紛れてしまい、その後電話で別れを告げられた、というこお話。

「なんというか・・・一言余計でしたね。気持ちはわかりますが。」

「いやあ・・・若気の至りです。」

「その後、そのとは?」

「學校でもずうっと無視されてましたからねえ・・・それっきりです。」

その後、DV男などというも葉もない噂がどこからともなく流され、それを真にけた男どもに絡まれたこともあったなあ。

どれだけ事実無だと言っても信じてくれないので、申し訳ないが5人ほど病院送りにした記憶がある。

あの子、モテたもんなあ・・・今となっては苦い思い出だ。

しかし、今もあの子は元気にしているのだろうか。

・・・特に気にならないな。

っていうかあの噂明らかにアイツ由來だろ、今でもそう思う。

いつか生きて會えたらスナップを効かせた平手っていうか掌底を顎先にくれてやる。

「・・・良くないことを考えていませんか?」

「ナンノコトデスカナ?」

なんてことを話しながら、最上階まで到達。

そこにいた2のゾンビをサクっと処理し、市民會館を偵察する。

正面ゲートは閉じられ、中に人影がいくつか見える。

お、警が普通にいるじゃないか!

ざっと見ただけで6人もいる。

施設の中、事務所のような場所にも2人ほど確認できる。

ここの避難所は大丈夫なようだな。

連絡が取れないのは、通信機が故障したせいかな?

周囲にゾンビはいないようだし、直接コンタクトを取って確認を・・・

「・・・」

ん?神崎さんが難しい顔をしている。

なんか気になるところでもあるのかな?

「そこにいるのは誰だ!」

振り向くと、階段のり口に警が2人。

30代後半くらいと20代前半の男だ。

こちらにライトを當ててきている。

「あー、すいませんお巡りさん。俺たちは・・・」

「自衛隊のものです。詩谷基地から市の偵察に派遣されました。」

んん?急にどうしたんだろう?

まあいい、ここは神崎さんに任せよう。

何か考えがあるんだろう。

「おお、自衛隊か、ありがたい!」

「こっちも資が足りなくて困ってたんだよ!」

神崎さんは警2人の方に歩いていく。

お?後ろ手に何か・・・俺があげた棒手裏剣じゃないか。

俺の方にくいくいとかしている。

・・・まさか。

「私は神崎陸士長です。・・・あなた方のお名前と階級をお聞きしたい。」

手裏剣を目をかさず、視界の隅で追いながら俺も立ち上がる。

「・・・そっちの男は?自衛隊ではないようだが・・・?」

「災害時特別防衛法第2條7項によって現地招集した民間人です。ご存じですよね?」

「いや、わかっているが、こちらには人手がなくて・・・俺は後藤巡査長、こっちが木村巡査だ。」

「なるほど・・・。」

棒手裏剣の先端がこちらに向いた。

そのまま、すいっと橫に一文字。

アイアイサー!

「右っ」

小さくびながら十字手裏剣を右側の警・・・たしか後藤巡査長の方に投擲し、そのまま前に走る。

手裏剣が下腹部に刺さり、驚愕の表を浮かべる警

薄し、側頭部に重を乗せた木刀を叩き込む。

奴はそのまま地面に倒れ込んだ。

神崎さんの方を見ると、ちょうどすくいあげるような上段蹴りが木村巡査の顎を正確にとらえるところだった。

一瞬で意識を刈り取られた木村は、糸が切れた人形のように地面に倒れ込む。

うーん、俺と違ってスマート。

「・・・で、これでよかったんですよね?」

「はい。というか、よく信じてくれましたね・・・」

「そりゃあ、神崎さんのやることですもん。」

「そ・・・そうですか。」

自衛隊だし、俺の1000倍は頼りになるしな。

で、こいつらはなんなんだろう。

汚職警

マジで神崎さんが指示するからやっただけだしな。

神崎さんは、懐から取り出した結束バンドみたいなもんで失神している奴らを拘束すると、口にタオルを噛ませた。

はえー、すっごい手慣れてる・・・

「こいつらは警ではありません。」

「あ、そっちか。」

汚職警ではなかったか。

「ちなみに、なんでわかったんです?」

「理由は二つですね。まず、さっき私が言った法律は存在しません。」

え、そうなんだ。

普通にそんなのがあるのかと思っちゃったよ。

「まあ、知らなかったとしてもその次はいけません。後藤巡査長と名乗った彼の識別章ですが・・・」

ポッケについてる紋章みたいなやつか。

「これは巡査部長のものです。そして木村巡査がつけているのは巡査長・・・さすがにこれを間違える警察はいないでしょう。」

なるほど、確かにそれはおかしい。

こいつらが『他人の制服を著て』いなければそんな間違いは犯さないだろう。

納得したので、とりあえず2人から拳銃と銃弾を奪う。

こいつらには詳しく話を聞く必要があるな。

若い木村の方を殘し、後藤は近くに停まっていたワゴン車の中にぶち込んで隔離しておく。

さて、ここからが本番だ。

しばらくすると、木村が目を覚ました。

拘束されている狀況に驚き、暴れようとする。

「騒ぐな。・・・金玉切り取るぞ。」

抜いた刀の切っ先を軽ーく太に刺す。

だけに効果は抜群のようで、一瞬で靜かになった。

・・・嫌そうな顔しないでくださいよ神崎さん、切らないし切りたくないから。

「これからタオルを取ってお前にいくつか質問する。いいか?んだりしたら・・・わかってるな?」

木村はかわいそうなほどブンブンと頷いた。

拘束された狀態で刀とライフル向けられてりゃそうなるわな。

タオルを外す。

ぼうとしたらいつでもを掻っ切れるように、刀に添えた。

これから先は神崎さんに質問してもろう。

「死にたくなければ、こちらの質問にだけ答えなさい。」

「・・・っ」

「返事は?」

「は、はい・・・」

こっわ!神崎さんの低い聲こっわ!!

迫力が凄すぎる・・・。

「本の警ではないですね?」

「はい・・・」

「何故警に化けているのです?」

「あ、あの、しゃ、しゃちょうが・・・」

怯えながらつっかえつっかえ話す木村が話したことをまとめるとこうなる。

・こいつらは市にある土建屋の社員。

・初めに市民ホールに避難してきたが、扱いに不満を持った社長が社員を扇し、警を殺して制服を奪った。

・警數だったのと、ゾンビ騒で混していたこともあって避難所は楽に制圧できた。

・それからは警のふりをして避難民を引きれ、暴行や略奪などやりたい放題。

この・・・屑どもが・・・!

いきり立つ俺を止めるように、神崎さんが質問する。

「仲間は何人ですか?後で後藤さんにも同じ質問をするので、噓をつかないことをおすすめします。」

「じ、15人です・・・ほんとです・・・!たす、助けて・・・!」

「・・・誰が、聞かれたこと、以外、喋れと、言った?」

「ひっ・・・す、すいません・・・!」

・・・一瞬で冷靜になれた。

神崎さんもかなり怒っているが、必死にそれを抑え込んでいるのが分かったからだ。

一応ジャンル上は年長者な俺が真っ先にキレるわけにはいかない。

この後、木村ヘッドを強くノックして再び気絶させ、後藤とれ替える。

結果は木村と同じだった。

いや、なお悪い。

現在、市民會館にはこいつらニセ警以外の生存者はゼロだ。

全員こいつらが殺してしまったか、暴行の結果衰弱して死んでしまったようだ。

・・・こいつら、ゾンビより何倍もタチが悪い。

はらわたが煮えくり返りそうだ。

かみしめた口の中からの匂いがする。

しかも近いうちに『遠征』して、新しい獲を探しに行く予定だという。

近隣の避難民は全て『消費』したからだそうだ。

「な、なあ・・・もうこれで全部だ、全部喋ったよ・・・本當だ。」

「・・・」

「あそこにはもう戻らない・・・このまま別の場所に行く。い、行くから、見逃して・・・」

「・・・」

「し、質問には正直に答えたろ・・・?た、たすけてくれよぉ・・・」

「・・・こ、の・・・」

神崎さんの重心が前傾に移し始める。

そのまま銃剣を後藤の―――――

「がっ!?ご・・・ほ・・・」

「正直に全部話したな、えらかったから楽にしてやる。安心して地獄に墮ちろ。」

「田中野さん・・・!?」

後藤のを貫いたのは銃剣ではなく俺の日本刀だった。

捻りながら抜くと、ぶちぶちとしたの後、顔に生暖かいが降り注いだ。

シールド下ろしといてよかった。

後藤は全を弛緩させ、しばらくゴポゴポと不明瞭な音を立てた後、永遠に靜かになった。

ふん、こんなもんか。

人間を殺すってのは。

「おやぁ、死んでいる。オカシイナー、目を離したすきにゾンビにやられたみたいですねえ。」

「な、何故です・・・私、私が・・・!」

「・・・それじゃ、力み過ぎて的を外しますよ神崎さん。ばれでもしたら面倒だ。」

「あな、あなたが手を汚す必要は・・・」

震えている神崎さんの肩に手を置き、ポンポンと叩く。

若干青ざめ、目を潤ませた神崎さんと視線を合わせる。

玖ちゃんにするように頭をなでながら言う。

「落ち著きましょうよ、神崎さん。俺だって散々ゾンビをぶち殺してきたんです。今更こんなカスくらいなんですか?」

「しかし、ゾンビとこいつらは・・・」

「こいつらはゾンビ以下だ。・・・俺もね、こいつらには心底腹が立ってるんですよ。」

「田中野、さん・・・」

こいつらは超ド級の屑だ。

ゾンビと違って頭も若干いいから始末が悪い。

生かしておくと、いつか避難所のみんなに害があるかもしれない。

あの避難所モドキのように。

殺せるんだったら殺しといたほうがいいのだ。

さっきも言ったが、今まで散々ゾンビを仏させてきたんだ、今更ゾンビ以下の害獣に遠慮することはない。

それに今まで相手した生存者だって、大もう死んでいるだろう。

この手で直接殺すか、ゾンビに間接的に殺させるかの違いだけだ。

周囲にゾンビがいる狀況だったので、トドメまで刺している余裕がなかっただけだ。

しばらくすると、神崎さんは落ち著きを取り戻したようだ。

・・・さっきのナデナデはやりすぎだったな。

訴えないでください!!

「あの・・・田中野さん、さっきは見苦しいところを・・・」

「いやいやそれが普通でしょ、普通は俺みたいなののほうがヤバいんですから。」

返答に苦笑いすると、神崎さんは木村をれたワゴンの方へ歩き出す。

吹っ切れたような表だ。

背中に聲をかける。

「・・・俺がやりましょうか?」

「いえ、大丈夫です。」

神崎さんはワゴンに乗り込み、すぐに戻ってきた。

銃剣には赤黒いが付著している。

「目を離した隙にゾンビにやられたようです。まいりましたね。」

「最近騒ですねえ。コワイナー」

俺たちは目を見合わせると、お互いに笑った。

平時ならヤバい景だが、今は非常時だ。

これくらいの方が長生きできるってもんだよ。

「さあて、これから大仕事ですなあ。」

「ええ、あと・・・」

「・・・13匹殘ってる。」

アイツら全員、生かしておくものか。

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