《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》49話 蟲の巣駆除のこと(※殘酷な描寫アリ)
蟲の巣駆除のこと
ぐっすりと睡眠を取った翌日。
家を出る前に、裝備の最終確認をしていく。
刀の柄糸はしらせて、すっぽ抜けたりしないようにする。
左手首の棒手裏剣と、右腰のバインダーにった十字手裏剣もフル裝填だ。
膝と脛のプロテクターもしっかり固定。
時刻は午前5時。
天気は晴れ。
・・・さあ、行こうか。
「おはようございます田中野さん、それでは行きましょう。」
避難所の校門前までくると、既に門の側に神崎さんと宮田さんがいた。
神崎さんが乗り込んでくる。
宮田さんはうつむきつつ、絞り出すように話しかけてきた。
「田中野さん・・・頼みます。どうか、ご無事で・・・」
「任されました!そちらも、防をよろしくお願いします!」
宮田さんに答えを返し、出発した。
民間人に攻撃を頼むのが心苦しいのだろう。
気にしなくていいのになあ。
「どう攻めますか、田中野さん。」
「うーん・・・とりあえず、現地を偵察してから考えましょう。」
移する車で神崎さんと話す。
地図で確認したところ、目的の建設會社は住宅街に隣接している。
前の市民會館の時と違って、狙撃してもらうポイントはなさそうだ。
「今回は、私もご一緒しますから!必ず!!」
「え、ええ。足手まといにならないように頑張ります・・・」
ジト目でこちらを見てくる神崎さん。
そんなに突撃したいの・・・?
建設會社の近所に著いたので、住宅街の目立たない所に軽トラを停める。
ここからは徒歩だ。
気を付けながら歩くが、周囲にゾンビの姿はない。
アイツらが面白半分に掃除したのかな?
ゴミクズのくせにいいことするじゃないか。
まあ全員駆除するけど。
住宅の隙間を抜けると、お目當ての場所が見えてきた。
『岸間建設』・・・ここだな。
會社の敷地はぐるりと石垣とフェンスに囲まれて、正門らしきところは分厚い門扉によって閉ざされている。
敷地には社屋と大きな倉庫が確認できる。
・・・奴らが寢泊まりしているのは倉庫だったな。
神崎さんと一緒に外周をぐるりと回る。
侵できそうなところは・・・裏口の門かな?
適當に針金で封鎖しているだけだ。
まだ朝も早いし、奴らの姿は見えない。
駐車場には何臺かのトラックやダンプと、パワーショベルやブルドーザーがある。
・・・マジでこれで攻めてくる気だったのか?
避難所に著く前にゾンビまみれになりそうだ。
そんなに速度出ないだろうし。
とりあえず、誰も見張りには立っていないのでこの隙に裏門を乗り越えて敷地に侵。
先に社屋の確認に向かう。
2階建ての小さい社屋を窓ガラス越しに確認していく。
やっぱりここには誰もいないようだ。
がらんとしていて、冷蔵庫だけ開け放たれているのが見える。
周囲を確認しながら倉庫まで向かう。
こちらから見える倉庫の正面には、大きい2つのシャッターと、左右に1つずつのドアがある。
余り近付きすぎないように気を付けつつ、裏側に回り込む。
裏側にはいくつかの配電盤のようなものがあり、ドアはない。
俺の長より高いところに換気扇と、上下に狹く橫に長い窓がある。
裏にはドアがないので誰か出てくる心配はない。
丁度いいので小聲で作戦の打ち合わせをする。
「出口塞いでガソリンでも流し込んでやろうかと思いましたが、発破用の薬があるんですよね・・・」
「発想がゲリラのそれですね・・・ああいう薬はきちんと手順を踏まないと起しないんですが、萬が一ということもありますしね。」
「あんな奴らが所定の保管方法を守っているハズもないですしねえ。」
とりあえず、1回中を確認しておきたい。
昨日のあいつの証言が正しければ、この中には19匹いるはずだ。
壁に耳をあてて中の音を聞く。
・・・何も聞こえないな。
寢ているのだろうか?
正面にあったドアから確認してみよう。
來た方向と逆から回り込んで正面に向かう。
こっちは塀と倉庫の壁のスキマなので結構狹い。
俺と神崎さんが並んで通れないほどだ。
ん?なんだこりゃ。
前方に大きい黒いゴミ袋の塊が散してるな。
殘飯とかかな・・・ひどい臭いだ。
鼻をつまんで橫を通り過ぎる。
うわ、足が引っかかって・・・
俺の目に飛び込んできたのは、破れた隙間からこちらを見る瞳だった。
ゾンビかと思い構えたが、やつらのように瞳孔が赤くない。
恐怖に見開かれた人間の目だ。
っていうことは、これは・・・
奴らの、被害者か。
面白半分に、嬲り殺しされた。
ここに転がってるのは、全部。
よく見れば、ゴミ袋の郭が人間の腕や足、頭の形になっているのがわかる。
昨日聞いた奴らの『武勇伝』がフラッシュバックする。
頭の芯が冷えていく。
溫すらも。
「田中野さん、どうしまし・・・っ!」
背後で息を呑む聲。
神崎さんもこれが何なのかわかったようだ。
知らずに握りしめた拳がぎちぎちと音を立てている。
奴らは、人間じゃない。
市民會館でもこうだったのだろう。
あの時は死がなかったから実がわかなかったが。
振り返ると、神崎さんがの目を閉じさせてやっているところだった。
噛み締めたが真っ白になっている。
「行きましょう・・・神崎さん。」
「はい・・・」
聲をかけて歩き出す。
冷えたが、心臓の所から熱く燃えているようだ。
吐く息すら熱気を孕んでいるような気がする。
けだものめ。
ぶち殺してやる。
正面側のドアにたどり著いた。
耳を當てて中の様子を探る。
かすかにいびきのような音が聞こえる。
音を立てないようにドアノブを回す。
俺の背後では、神崎さんがいつでも撃てる勢でライフルを構えている。
頼もしい。
ゆっくりと扉を開ける。
何人かのいびきが聞こえる。
立ち込める酒や煙草の臭い。
目の前には救難資の段ボール箱が山積みで、中が見えない。
靜かにき、段ボール箱の影から部を確認する。
倉庫の中には、そこかしこに段ボール箱が散し。床の上は食いかけや食い殘しが見える。
中心にはどこから持ってきたのか、畳が20畳ほど敷かれ、その上に寢袋や布などがある。
人の形に盛り上がったそれは、微かに聞こえる寢息やいびきと共に上下している。
寢床の周囲には酒瓶や菓子の袋がごちゃごちゃ置かれている。
布団や寢袋の中や傍らに転がっている黒い筒のようなもの。
猟銃か、あれは。
ざっと數えると6丁ほど見える。
影になっているかもしれないから、あと何丁あるかわからんな。
人型の數を數えると、19。
昨日聞いた人數と合致する。
ぐっすり眠っているようなので、そのまま周囲を見回す。
俺たちのいるドアのすぐ橫にキーボックスがあり、雑にいくつかの鍵がかかっている。
車や重機のモノだろうか。
不意に神崎さんに肩を叩かれた。
突き出された指の方向を見ると、反対側の壁に沿って茶の袋が並んでいる。
コメ袋みたいな形だ。
単眼鏡で見ると、『産業用薬』と印字してある。
・・・あれが発破用の薬か。
無造作に転がしやがって。
部の確認はできた。
さて、これからどう攻めるか。
正直このまま走り込んで片っ端から切り捨ててやりたいが、無策で突っ込むのは危なすぎる。
4、5匹ならそれでもいいが、ここには19匹いる。
布団の中に何を隠しているかわからない以上、神崎さんに銃撃してもらう作戦もためらわれる。
1発でもいいところを撃たれれば、行不能どころか死ぬかもしれないし。
考えろ・・・考えろ・・・
・・・いや待てよ、アレをああすれば・・・
「なんというか、隨分豪快な作戦ですね・・・」
「いやあ、これが一番効果的かと思いまして・・・上手くいけば一網打盡にできますし。」
いったん倉庫から外に出て、神崎さんと話す。
奴らはぐっすり寢ているが、いつ起きるかわからんからな。
速やかに行する必要がある。
「この鍵は・・・こいつのだな。」
駐車場に停めてあったトラックに乗りこむ。
中型トラックってやつだ。
燃料は満タン、故障もなし。
いけそうだ。
壁のキーボックスから拝借してきた鍵を差し込む。
他の鍵も殘らず回収してきた。
これで、もし奴らを打ちらしても逃げることが難しくなる。
倉庫の前にスタンバっている神崎さんを確認。
運転席から手を振ると、左手を上げて合図を返してくる。
準備OKだな。
「よし、行くぞ・・・!」
キーを回し、エンジンをかける。
重厚なエンジン音が響く。
いくらあいつらでもすぐに起きるだろう。
即座にアクセルを踏み込み、ギアチェンジしながら思い切り加速させる。
100メートル程の距離を瞬く間に走り抜け、倉庫正面のシャッターが間近に迫る。
「く、た、ば、れえええええええええええええええええぇ!!!!!!!!!!!」
歯を食いしばって衝撃に備える。
ガツンと全に衝撃が來る。
トラックがシャッターを突き破り、その破片もろとも奴らが寢ている所へ突っ込んだ。
飛び起きた何人かが、呆気に取られているのが一瞬見えた。
そのままぐしゃりぐしゃりとそいつらをなぎ倒し、トラックが轟音と共に反対側の壁に激突して停まる。
シートベルトとヘルメットのおかげで多目がちかちかする以外は問題ない。
すぐにドアから刀を摑んで飛び出す。
ここからはスピード勝負だ。
奴らが混から立ち直る前にカタを付けてやる!
ヘルメットのシールドを下ろし、刀を抜く。
奴らの寢床は、一直線に轍が橫切っており、かなりの數を無力化できたようだ。
轍は途中から塗れだ。
そこかしこからうめき聲や悲鳴が聞こえる。
寢袋や布団から手を突き出したまま死んだ奴らもいるようだ。
「あぐ・・・なにが・・・おきょっ!?」
無事な寢床からフラフラと立ち上がった奴のを切り裂く。
り口からライフルを構えた神崎さんが走ってくる。
「ひ!?やめっ!?」
反響する銃聲と共に、別のやつが脳天を撃ち抜かれて倒れる。
「線にはらないでください!」
「了解!そちらは前方を!!」
神崎さんが狙っている方向とは別にく。
「いぎ・・・!このヤロ・・・!死ねぅっ!?」
両足を轢き潰された男が、震える腕で猟銃を摑む。
一息で飛び込みつつ、逆袈裟に顔を切りつける。
そのまま空中で持ち手を変え、延髄を刺す。
「やめ・・・たすげぇっ!?」
神崎さんのいる方向からも斷末魔が聞こえる。
銃聲が聞こえないから銃剣でやったんだろう。
目の前でよろよろ立ち上がろうとした男を蹴り倒し、首筋を薙ぐ。
そいつの橫でもがいていた男にも、ついでにとどめを刺す。
きながら周囲を見渡す。
前方の寢袋から俺に向けて猟銃が突き出された。
そいつと差するように斜め前方へ飛び込むと同時に轟音。
弾は俺の背後の壁に命中して音を立てる。
橫切りながら、猟銃を持った右手首を切り付けて落とさせる。
「ぎぃっ!?おご!?!?」
顔面をつま先で思い切り蹴り飛ばす。
首がその可域を越えてのけぞった。
規則正しい銃聲と続くいくつかの悲鳴が聞こえる。
「クリア!」
神崎さんの方は全滅か。
俺の方も、かかってくる奴はもういなさそうだ。
トラック作戦の威力すげえ。
質量兵は何にも勝るのだ。
適當な布団で刀を拭って納刀する。
トドメ用に剣鉈を抜いておく。
こいつの方が暴にたたっ切れるから楽だしね。
神崎さんに、こちらも大丈夫だと返そうとした時、視界の隅にくものを見つけた。
壁際まで跳ね飛ばされた布団の山だ。
そこから男が出てくる。
クッションになったのか。
運のいいやつだ。
まあ殺すけど。
「くなァ!!!!」
その男は手に火のついたジッポライターを持っている。
後ろにあるのは・・・破れた発破用の火薬!?
噓だろそこにもあったのかよ!
偵察した時は段ボールの影で見えていなかったのか・・・
「武、捨てろォ!!ァ!!お前もだァ!!」
男は走った目でこちらを睨み、唾を飛ばして命令してくる。
「早くしろォ!!吹き飛ばすぞ!!」
ヤケクソになっているようだ。
アレがどのくらいの威力があるかわからないが、走り寄るには距離がし遠い。
こうなりゃ俺もヤケクソだ!
「わかった・・・よっ!!!」
「ごっ!?」
剣鉈を手放し、床に落とすと見せかけて蹴る。
南雲流奧伝が一、飛燕(マイナーチェンジ版)!!
一直線に飛んだ剣鉈は、男の腹部に突き刺さる。
蹴りの勢のまま前に出て一気に走り出す。
同時に銃聲。
男の右手がはじかれるように左側へ。
ライターが手を離れ、何もない床に落ちる。
「死っねぇ!!」
走る勢いのまま、腹部に刺さった剣鉈をさらに前蹴りで押し込む。
「ぐううううう!!ぐうううううううううううう・・・」
男はそのまま地面に倒れ、腹を押さえてうめく。
「・・・それ、お気にりだけどしばらく貸しといてやるよ。」
「いでぇ・・・いでぇ・・・しにたく、ない・・・いやだ・・・いや、だ・・・」
「知るか。ホラ死ねとっとと死ね早く死ねゴミクズ。」
剣鉈の先端は背中から突き抜けている。
どうあがいても助からないが、即死はしないという最悪の傷だ。
々後悔して苦しみぬいてのたうち回って死んでいけ。
「いやー助かりましたよ、神崎さん。」
しばらくのたうった後、男は永遠にかなくなった。
何人か息があるやつがいたので、返してもらった剣鉈でサックリあの世へ行ってもらった後、神崎さんと合流する。
「當たるかどうかは五分五分でした。いてくださって謝します。」
「俺も、技がああも見事に決まるとは思ってなかったので・・・お相子ですね。」
銃剣をに染めた神崎さんがほほ笑む。
うーん、返りが顔に飛んでいても絵になる。
人って得だなあ。
とりあえず片付いた、さて一服・・・
「田中野さん、火気厳ですよ。」
「うあー・・・」
締まらねえ。
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