《【第二部連載中】無職マンのゾンビサバイバル生活。【第一部完】》54話 秋月町役場突撃のこと

秋月町役場突撃のこと

「あそこはですね・・・」

花田さんが役場について話し始める。

「今でも運営されていると思います。役場は我々ではなく自治によって管理されているので、詳しくはわかりませんが。」

「自治が?警察や自衛隊が協力したりとかは・・・?」

「もちろんその計畫はありましたが、ゾンビや暴徒などの混により通信機能は壊滅、連絡要員も行方不明という有様で・・・」

「駐屯地からこの病院が一番近かったのもあり、ここの確保と環境整備にかかりきりになってしまったんです。」

なるほど。

の中、とりあえずの拠點確保と避難民の収容でもう手一杯だったと。

仕方ないよなあ、ここにもたくさん避難してきただろうし。

「あの、役場はここから近いんですか?ここらの土地勘はないのでわからないんですけど・・・」

初めてここに來た時もカーナビ頼りだったしなあ。

「ああ、役場はあそこに見える茶い屋ですよ。」

えっ!?アレ?

確かに目測で1キロくらい先に見える。

無茶苦茶近くない・・・?

「近いと思っていらっしゃいますね。」

「ええ、まあ。」

「田中野さんは以前來た時に、ここまでの道が封鎖されていたのを覚えてらっしゃいますか?」

「あ、はい。ここまで來るのにし苦労しました。・・・え?まさか・・・」

花田さんは頷く。

「何とか國道までの道の整備は終わらせましたが、ここから役場までの道はまだ全て車両で埋まっています。・・・ざっと見積もって、距離は2倍です。」

なんてこった・・・町中の人間が車で避難してたのか?

「しかも悪いことに、渋滯中にゾンビの大群に襲われたらしいのです。ここから役場までは3つのルートがありますが、そのすべてが・・・」

・・・お、おう・・・

つまりあれだ。

ここから役場までどうやったって徒歩で、しかも車&ゾンビの大群を越えていかなければならないってことか・・・

急にハードモードになったなオイ・・・

そりゃ自衛隊も二の足踏むハズだよ。

「花田さん、自衛隊が極開発してる個人用ジェットパックなんかありません?背負い式のポータブルヘリでもいいんですけど・・・」

「殘念ながら、そういった話は聞いていませんね。」

思わず世迷言をほざいてしまう程困った。

・・・ん?

なんか役場の方向に見えた気が・・・

単眼鏡を取り出して最大遠で確認。

「なんだありゃ・・・ライトの點滅?・・・何かの合図ですか?」

「信號燈を使ったモールス符號ですね、毎日決まった時間に送られてきます。」

モールス信號ってやつか!

「じゃあ、ある程度の容は読み取れてるんですか!?」

「いえ、向こうが詳しい信號を知らないようで・・・毎日『SOS』とだけ送られてきます。こちらから何を問い返しても『SOS』と。」

んあー!

助けてしかわかんないのかあ・・・

だが、とりあえず誰かがまだあそこにいることは確実ってことはわかったぞ。

「我々もなんとかあそこまで行こうとは思っているんですが、いかんせん撤去する車やゾンビのことを考えると・・・かなりの時間がかかります。」

うーむ、どうしたもんかなあ・・・

とりあえず、確認しとくか。

「花田さん、ここの屋上にっていいですか?」

許可をもらったのでひいこら階段を上り、屋上へ出る。

田舎の病院とはいえ8階建てだし、屋上にはヘリポートもある。

間違いなくこの町で一番高い建だ。

さてと・・・

懐から再び単眼鏡を取り出して街を見下ろす。

うーわ・・・どこもかしこもゾンビゾンビ車ゾンビ車ってなじだ。

道は・・・どこもサンバ・デ・ゾンビだな。

うーん・・・

お?

あそこがアレでああだから・・・

あっこをああしてその先を・・・

うん・・・うん・・・

殘念ながら行けそうだなあ・・・

またかよ・・・

「家々の屋上経由・・・ですか?」

憾ながら・・・」

自衛隊の本部・・・元は病院の中央ナースステーションらしい・・・で、花田さんに作戦を伝える。

「え?冗談でしょ?」みたいな顔をしている花田さんに、スマホの地図アプリを提示しながら詳しく話していく。

ちなみに神崎さんは「こいつまたか・・・」みたいな顔だ。

「この病院の敷地にあるこの倉庫、ここからフェンスを越えて、下にあるバス停の屋を登り、ここにあるバスの屋経由で・・・この橋の點検用通路に飛びつきます。」

「た、確かに可能と言えば可能ですが・・・」

「でしょ?それで通路からここのコンビニの屋上に下りて、そのまま商店街のアーケード上を歩いていけば・・・」

「・・・本當だ、道が繋がっている・・・道と言えるかは疑問ですが。」

「で、ここまで行けば役場の倉庫に直接登れるので、そこから役場の2階まで行けます!」

我ながら滅茶苦茶だしできれば行けない方が良かったが、ルートを見つけてしまったのでどうしようもない。

基本的に団く自衛隊には発見できないルートだし。

「というわけで、車をしばらく預かってください。ちょっと行ってきますんで。」

「・・・本當に行かれるんですか?」

「行けそうな道を見つけちゃったもんで、ここで行かなかったら後々後悔しそうですから・・・」

俺のめんどくさい分だ。

行かなくて後悔するなら、行って後悔した方がまだいい。

「それにホラ、失敗しても俺が死ぬだk」

「田中野さんッ!!!!!!!!」

「スイマセンッシタ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

恐ろしい形相の神崎さんに怒られた。

もうこの冗談は使わない方がいいな・・・

「ほ、本當についてくるんですか神崎さん・・・?」

「行きます!放っておくと田中野さんはすぐ命を末にしそうですから!!」

「あ、あのォ・・・花田さん・・・?いいんですか・・・?」

「はっはっは。・・・頼みましたよ田中野さん。」

はいはいわかってましたよもう。

・・・そういうことになってしまった。

ええいままよ、こうなったら行くしかねえ!

作戦名は『ライフだいじに!』だ!!

北小學校の時とは違い、今回は先が見えないので、ゾンビとの突発的な戦闘が予想される。

なので、木刀と剣鉈、それに手裏剣は持っていく。

木刀は背中に紐で結んで固定する。

日本刀とリュックは花田さんに預けていくことにした。

「柳生拵えとは・・・良い趣味ですな。確かにお預かりしました。どうか、お気をつけて。」

花田さんも武に造詣が深いようだ。

あの上司にしてこの部下ありってことか・・・

倉庫の屋に登り、フェンスへ。

フェンスを伝って敷地外へ出て、下にあるバス停の屋に飛び降りる。

結構な音がしたが、ここは自衛隊の皆様が掃除してくれているので問題ない。

後ろからは神崎さんが、俺の10分の1くらいの音を立ててついてくる。

・・・有能、有能でござる!

バスの屋上に飛び乗り、そのまま橋の上部にある點検用通路にアプローチする。

軽く助走をつけてジャンプ。

そのまま取り付く。

さあ、ここからはゾンビゾーンだ。

下には橋の上でひしめく大量のゾンビが見える。

奴らは登ってこれないが、萬が一認識されてそのままぞろぞろと付いてこられると困る。

持ってきたタオルをブーツに巻き、音を殺す。

細心の注意を払い、足音を立てないように歩き出す。

・・・神崎さんは何も巻いていないのに音が出ないな。

あれ?これ俺のいる意味ある?

・・・いやいやいや、何を考えてるんだ俺は。

神崎さんだけを行かせて、プカプカ休憩なんてしてられないだろう。

オリンピックは參加することに意味も意義もあるのだ。

・・・意味が分からんな。

ゾンビの上を歩き、橋の上からコンビニ目掛けてジャンプ。

距離は道一本分だが、高低差があるのでなんとか屆く。

足がついた瞬間に前転して

いでで!背中の木刀がゴリってなった!

・・・神崎さんのが綺麗すぎる。

銃を持ってるのにうまいこと當たらないようにしてるな・・・

帰りは飛び上がるわけにいかないが、橫転した車が道路でバリケード代わりになっているのでこれに登れば橋に戻れるな。

よし、これからが本番だ。

目の前には、商店街のアーケードが見える。

コンビニに隣接している八百屋の外壁にある梯子を上り、屋上へ。

ここからは屋上をつたって先に進めるはずだ。

屋上のへりからゆっくりと顔を覗かせる。

素早く屋上を確認。

ゾンビは・・・いないな。

屋上に上り、先の屋を確認する。

・・・三軒先の屋上に倒れた人影が見える。

ここからでは死かゾンビかわからない。

進むしかないか・・・

一軒進み、再度確認する。

・・・腐敗している。

ってことは死だな、よかった。

・・・よくはないのだけども。

に軽く手を合わせ、橫を通り過ぎ・・・上半ゾンビが影にいる!!

咄嗟に首を上からブーツで思い切り踏みつけると、鈍い手ごたえと共に折れる

吐息をらしてゾンビは停止する。

あぶねえ・・・木刀を抜く暇がなかった。

とりあえず木刀を背中から抜いておく。

・・・ニンジャじゃないから、し抜き辛いな。

練習しておこう。

後ろにいる神崎さんに視線をやってからまた歩き出す。

商店街の中ほどに到著した。

役場までは半分の距離まで來たな。

丁度いいのでし休んでおこう。

スポーツ用品店の屋上に腰を下ろす。

「ふう・・・し休憩しましょう、神崎さん。」

「はい。」

ゾンビはいないし、下方向への音はアーケードの屋が消してくれる。

懐から煙草を取り出して火を點け・・・點かねえ!?

何度かって試すも、出るのは火花ばかりだ。

・・・くっそ、オイル切れか。

「どうぞ。」

すでに火を點けていた神崎さんが、咥えたままの煙草を差し出してくる。

「えっあの・・・ライターを貸してくれれば・・・」

「私も今のでオイルが切れました。ですのでどうぞ。」

ええ・・・こんなん男友達としかやったことないぞ・・・

せ、セクハラにならんよな・・・?

恐る恐る咥えた煙草の先を神崎さんの煙草にくっつけ、何度か吸い込んで火を點ける。

うわあ、神崎さんのまつげ長ぁい・・・モデルさんみたぁい・・・

落ち著かないぃ・・・恥ずかしいぃ・・・

そうして吸った煙草は、いつもよりクラクラくる気がした。

男子中學生か俺のメンタルは・・・!

顔が真っ赤になってる気がする。

まったく、神崎さんは自分がという自覚が足りないんじゃなかろうか?

休憩していないような休憩を終え、再び歩き出す。

たまに高低差のある屋上を乗り越え、時には頼りないアーケードの屋をソロソロ歩いた。

幸いにもゾンビはいなかったので、俺たちは無事に商店街の端まで到達することができた。

目の前には3階建ての役場の姿がある。

敷地にはミチミチに詰まったゾンビたち。

正面のり口や1階の窓は、全て側から封鎖されている。

パッと見たところ破られた形跡はない。

これなら生存者はいそうだな。

先ほど発信號を送っていた窓は3階の端。

今はカーテンが閉められている。

商店街の端から助走し、跳ぶ。

役場の本館に隣接した倉庫の平たい屋に著地し、前転。

・・・よし!今度は背中をグギらずに済んだぞ!・・・長をじる!

見てくださいよ神崎さ・・・神崎さん落ちそうになってない!?

の足元にはビニール袋。

飛んできたもんをたまたま踏みつけてしまったのか!?

走り寄って咄嗟に神崎さんの右腕を摑み、こちらに引き寄せる。

ほぼ抱き寄せる格好になり、俺たちは屋上に倒れ込む。

すっごいいい匂いする!

うぎぃ!?木刀おォ!?グギった!!

天罰かこれはァ!!神よ!!!

「すっ、すすすすみません田中野しゃん・・・!」

「な、なんのなんのこれくらい軽いもんですよ軽い。」

顔を真っ赤にした神崎さんが慌ててを起こす。

恥ずかしかったけど、いつもお世話になってるからこれくらい問題ない問題ない。

むしろ役得でござるよ!!

・・・なんか今日の俺すげえ気持ち悪いな・・・

溜まってんのか?

・・・集中集中、雑念は捨てろ!

深呼吸をして落ち著き、立ち上がる。

々あったが、あとはこのまま屋を歩いて役場の2階部分の窓をノックするなりなんなりすればいい。

トマトのように顔を真っ赤にした神崎さんを見ないようにしながら、俺は歩き出した。

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