街を照らす朝日。

今のところ、赤いとか青いとか、変な朝日ではない。

この世界に降り立ったことを自覚してしばらくは、しだけ期待したのは緒だ。

SF映畫のような、不思議な朝……そんな景に。

「前より店が増えたかしら？」

「うん。野菜とか、食べのお店が増えたよ」

支給されたのであろう服裝で、なぜかを張る年。

痩せたじはしないから、カインの店でちゃんと働けているようだ。

「そう……周囲のミュータントや獣が減ったとかかしらね……」

「そうかも。それより、何を探すの？」

年も、わざわざ呼び出されたということは普通じゃないことに気が付いている。

であれば、私も子ども扱いせずに仕事のパートナーとして扱わないとね。

し周囲を伺い、適當に店のジュースを2つ買い、隅に。

邪魔にならないように飲んでいるという風で人込みから外れた。

「これを、こっそり売ってる奴がいるらしいのよ」

ちらりと、ポケットにしまったままの黃緑の結晶を見せる。

年にしか見えない角度で、ちょこっとだけだ。

「はついてるけど普通の水晶じゃん。力に使っても、この大きさじゃ出力が足りないんじゃないの？」

ほんのしなのに、年は的確に言い當ててて來た。

そのことに、個人的に満足しつつ、カップを口元に。

そうすることで、話す容を隠すのだ。

「そ。工房の人がつかまされちゃってね。お仕置きしに行くのよ」

「なるほどなー。この辺、未登録の店ばかりだもんね。俺もそうだったけど」

実際問題、店は自由に出せる。

登録をしておけば、場所の予約が出來たりするし、商品を預かってもらったりも出來る。

逆に言えば、ぱぱっときて売っていくのは自由なのだ。

「売ってる人は変わってるかもしれないから、見て回るしかないのよね」

「じゃあ俺が手伝えるのはそこなんだね。わかったよ」

自分の役目をしっかりとわかった様子の年に頷き、その手を握ろうとして、避けられた。

おお？と思ったけれど、小さくても男の子。

やっぱり恥ずかしいんだなと思い、その背中を軽く叩くことで答えにした。

「そういえば、名前は」

「トム。また今度家に來てよ。母さんたちに紹介したいんだ」

なくない借金を肩代わりした縁ではあるのだけど、どうやらその後は順調らしい。

たち、ということはお父さんも帰ってきたのかな？

「ええ、もちろん。じゃ、探索開始よ」

トムを従えて、人込みに戻りたくさんの店巡りを開始する。

大、店は売っているが近い人たちが固まっている。

最初は食べが多かったけど、すぐにその中が変わっていった。

「中古の銃かぁ……護にはいいけどねえ」

「カインさんが、俺は銃は持つなって」

し不満そうだけど、これはカインが正しいと思う。

銃は、それこそ引き金が引ければ子供でも、使えてしまう。

逆にそのせいで、何かあった時には始末されてしまう対象になるのだ。

「まずは、儲ける方で役立つのが一番よ」

それだけを言って、銃のゾーンを抜けていく。

そして、目當てのゾーンがやってきた。

「思ったよりあるわね……」

「でもさ、お姉さん。ばれたら……って考えると、大みんな正直な商売すると思うよ」

それもそうである。ジュエリスト、寶石から力を引き出せる人間は意外といる。

となると、売りが本かどうかを確かめられる人も、希ではないのだ。

馬鹿正直に商売する人もいないだろけど、噓ばかりの人もいない……それが日常。

そんな中、付き水晶を売っていた奴は、普通じゃないということだ。

「お姉さん」

「ん、どうしたの」

しいものがあった？なんてつぶやいて、さりげなく視線の先を見る。

一見すると、普通の店。

原石と、研磨後の両方を売っているようだ。

し道を逸れ、遠巻きにその店を確認……なるほど。

売っているは他と似ているように見えて、しだけ違う。

なんというか、需要のあるお手頃なものをそろえたじだ。

「右にある奴ほど、付きだよ」

「ええ、わかったわ。終わったら、ちょっとだけJAMの縦、教えてあげる」

最初に出會った時もそうだったけど、予想以上に目利きだ。

むしろ、彼の目には寶石たちが違う形で見えてるのかもしれない。

そういう特殊能力が、人間にはたまに備わっているのだ。

他の客と同じように流れに戻り、問題の店に。

さりげなく冷やかしのように眺めていくと……確かに。

似てるけど、違う。

「これ、この値段かしら？」

「一括なら端數をおまけしておくよ」

答えたのは、どこにでもいそうな普通のおじさん。

採掘してる風でもなく、商売をしてる風でもない……逆に怪しくない？

「あら、いいの？　アメジストがこの値段なら、お買い得よね」

「そうだろう？　ある分だけの特価さ」

本當にアメジストなら、この値段は実際にしいぐらい。

でも、を付けた水晶であれば、とんでもない。

「なるほどね。ところで、知ってる？　この街、寶石の詐欺行為は厳罰なのよ」

「なっ！？」

周囲の視線は承知のうえで、ホルスターからハンドガンを抜き放った。

左手には、安売りのアメジストもどき。

數歩踏み込み、天商の顎下に銃口を突き付ける。

「これがアメジストですって？　冗談、検査機にかけてもいいのよ」

「私は、アメジストだって買い付け……」

こうして騒げば、すぐに自警団がやってくる。

だから、聞こえるように言ってやるのだ。

この男が、ニセモノを売っていると。

実際に、どこかで騙されて仕れたのならそれはそれでよし。

もっとも、目利きに失敗しニセモノを売ろうとしたという風評はついて回る。

知らなかったとしても、こういうものには責任というのがあるのだ。

もちろん、わかって売っていたのとは違うけれどね。

そのまま、自警団に連れられて行く天商。

私はそれについていきながら、周囲の気配を探っていた。

そそくさと逃げるような奴がいたら、そいつも……！

「アナタ、そうそこの人、ちょーっと売り見せてほしいなー、駄目？」

後で、トムには別人みたいと評された貓なで聲で近寄ると、男は売りを蹴り飛ばす勢いで逃げ出した。

半ば予想していた私は、そのまま男を追いかけ、すぐに追いつく。

周囲の他の人が、手伝ってくれたのだ。

「何もないなら、逃げる必要ないでしょー？」

「くそっ……」

男を捕まえつつ、そんなことを呟いていれば、自警団のおかわりだ。

追加で男を連れていくことになり、私もつきそう。

結局、どちらもニセモノを売っていたということで処罰をけることになった。

ただ、1人は本當に買い付けの段階で騙されていた様子。

そしてもう1人は……し訳ありのようだ。

「まっ、そこまでは私は関係ないんだけどね」

「ありがとよ。出來てるぜ」

顛末を親方に報告し、トラックの出來合を確かめつつ、カタリナと合流だ。

綺麗なトラックに満足し、次はどういう旅をしようかと、考えるのだった。