《迷宮宿屋~空間魔法駆使して迷宮奧地で宿屋を開きます~》22

慌ててエプロンを置いて駆け寄るとぽんと頭に手を乗せられた。

「仲が良いな。なにか手伝えることはあるか?」

「大丈夫ですよ、ゆっくり休んでてください」

そのまま頭をでられつつ、休息すべきと言えば何故かトールさんは廚房を見回した。

そして何故かハッとする弟妹。ちょっと待ってお姉ちゃんはついていけないよ。

「義兄さん、晩飯追加で出すステーキの串刺しを手伝ってくれませんか?」

「姉さんが切ったおフォークでいっぱい刺すだけです」

「ちょ、義兄さんって…」

「洗濯、回収いってきまーす」

「ネロの手伝い行ってきマース」

あっという間に弟妹は廚房から逃亡した。

無駄な気の遣い方に後で怒ろうと思いつつも、トールさんと並んで立つと何も言えなくなっておを切り分ける。

トールさんは何も言わずに穏やかな表でとんとんとおを刺し始めた。

切り分け終わると私も一緒にフォークでを刺し出す。

靜かに一緒に料理をする空間が、とても心地よかった。

「あ」

不意にトールさんが変な聲を出すのでそちらを見上げるとトールさんはバツの悪そうな顔をしていた。

首を傾げると、苦笑いのトールさんにまな板を指さされる。

「悪い」

「……あらまあ」

まな板はフォークのだらけだった。刺す力が強すぎたので。

それを見て、ふふふと笑いがこぼれる。

「今度買って返す」

「良いですよ、これくらいの備品なら予算で買います」

「いやでも……」

「代わりに今度、暇な時に手伝ってください」

「………ああ」

その後逃亡した弟妹を捕獲して、一気に晩飯の支度を整えた。二人で準備したおはスパイスが効いてとても味しいおだった。

その夜、みんなが寢靜まり出すと口の水場と男別シャワールームと廚房を見回って設置したマジックバッグ貯水量を點検していく。

どこも貯水量はかなり潤沢に殘ってた。當然だ、一日やそこらで底が見えては困る。

最後に口近くの水場を見に行くと……そこには玄関の扉を開けてぼんやりと迷宮を見る『ツバサ』のリーダーシンさんが居た。

「こんばんは。どうかしましたか?」

「……ああ。結界と違うから本當に魔ってこないか気になってな。それよりも子供は早く寢た方がいいぞ」

「貯水量の點検です。これが終わったら寢ますよ」

そう言って水場に固定されたマジックバッグにれて中の様子を見る。抜きや解をしたせいか他の場所よりも減っていたが、容量はまだまだ余裕がありそうだった。

「水は平気か?」

「問題ありません」

「そうか………なあ、マリーロズ。隨分悪い噂を聞いたけれど君の彼氏は大丈夫なのか?」

「……あれは酔っ払いたちの暴走です。トールさんは本當に優しい人ですよ?」

「そうか。大丈夫ならば本當に早く寢なさい。君も護衛も朝は早いのだから」

そう言ってシンさんが指さすと隣の部屋からそっとトールさんが現れた。

護衛をしていてくれたのか。もっと早い時間に點検をすればよかったと後悔をしつつーーーーシンさんの傍らにあったものに気づく。それはお酒だった。

お酒を飲みながら見張りをしていたのか。

ふと考えて、乾燥を出してそっと隣に置いた。

「なんだ?」

「つまみです。見張り、ありがとうございます」

必要はないと私はわかっていても、初めての人にとっては空間魔法は胡散臭いだろう。

そういえばシンさんはそっと無言で謝を示すように手を振った。それを見てからトールさんに送られて自分の部屋に行く。

「送ってくれてありがとうございます」

「あまり夜に出歩かないように」

「はい」

いつもみたいに頭をでてくれるのだけど

いつもと違って、こう、扱いをじる。

ドキドキしつつも、そっとトールさんの服を摑んで見上げると

トールさんがを屈めてーーーーーー

「治癒魔法が必要なら夜中でも言えよー」

「ちょっとガバウ!」

すっと2人揃ってを離した。廊下の向こうで扉がうっすらと開いている。

「おやすみ、マリィ」

「おやすみなさいトールさん」

そして生真面目に挨拶をしたトールさんは迷わずハルティの部屋にっていった。

それを見てふっと笑ってから私もベッドに潛り込んだ。

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