《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》10 思いがけぬ再會
僕、エピク。
なんか最近絶好調です。
『消滅』スキルの応用法を覚えて、ちゃんとモンスターを原型殘して仕留められるようになった!
長年の夢が現実となったじ!
嬉しさのあまり森で獲する!
「ただいまーッ!! 素材を持ってきましたー!」
「きゃああああッ!? こんなにいっぱいぃいいいいッッ!?」
薬師協會本部で、スェルの悲鳴が上がる。
「多すぎる!? 多すぎますよこれ!? 一何匹いるんですか!?」
「二十七かな!?」
ご安心ください全部死んでおります。
『消滅刃』で首筋の深いところを斬ったり、他にもんな方法でモンスターのすべてを消さずに仕留めることができた。
一度に全部持ち込めずに何往復もしてしまったよ。勢い余った自覚はある。でもそれぐらいノリにノッてたんだ。
「困りますよ、こんなに無闇に持ち込まれても!? ウチで引き取れるのはあくまで薬の材料になるものだけなんですから!」
「あ、そうだった……!?」
薬師協會は冒険者ギルドじゃなかった。
街の多くの施設と繋がりを持っていて、冒険者の果を利益に変えられる。
薬師さんらが活用できるのは、薬にできるものだけだ。
「とりあえず味して、薬剤にできるものだけ引き取って……! 殘りはどうしましょう?」
「森に還す?」
「それもちょっと……!?」
もったいないけど仕方ないよね。
あるいは改めてすべて『消滅』してしまうか。
「また豪快に來たな……!?」
「あッ、お父さん」
「しのアドバイスでこれだけ大化けするとは。やはりエピクくんは稀有な才能を有していたようだな」
騒ぎを聞きつけたのか奧から出てきた薬師協會長さん、頬にたらりと冷や汗を浮かべる。
「見たところどれも兇悪な上級モンスターだ。コイツらの一匹でも生きたままなら街は壊滅の危機だね」
「大丈夫です。完全に息のが止まっているのは確認してるので……」
「こんな連中を狩ってくるということは、エピクくんやはりかなり魔の森の奧までっているということだな。いや紫霧草を摘んでくる時點でわかっていたことだが……」
「はい」
「念のために聞くが、魔の山にまで踏み込んではいないね?」
「もちろん!」
そのあと持ち込んだ素材の選り分け作業になった。
薬師協會長さんとスェルとで判別して、僕も手伝った。
「エピクくんは薬草の知識については充分だが、やはりモンスター由來の薬剤については門外漢だな。……スェル、どうせ外出止中で暇だろう、エピクくんに教えてあげなさい」
「はーい」
「お前が今まで學んできた知識で、彼の不足しているところを補ってあげなさい」
どんなモンスターのどの部位が薬になるか、スェルに聞けばいいわけか。
助かる。
それでも自分でなるべく覚えるようにしていかないと。
「エピクくんも、次からは必要なものだけを持ち帰るようにしてほしい。大きなものを大量に……というのは非常に目立つからな。今はまだ冒険者ギルドにキミのことを知られたくないのだ」
「すみません……!?」
先日、薬師協會長さんが赴いて冒険者ギルドに第一撃目を加えてきたらしい。
薬師協會はすべてのクエスト発注を差し止めた。薬草採取だけでなく、薬剤にすることのできるモンスター素材の納まで全部。
それが冒険者ギルドにとって、どれだけの損害になることか。
「実は薬師協會との取引は、冒険者ギルドが上げる利益の二割を占めますからね。それがいきなりなくなれば運営に支障をきたします。ギルドマスターは真っ青になっていますよ」
「え?」
などと説明してくれたのは誰か?
現れた新人に、僕は我が目を疑った。
見覚えがある。今日はギルド職員の制服を著ていなかったが、その整った誠実そうな人顔を見忘れようはずがない。
「ギルドの付嬢さん!?」
「お久しぶりですねエピクくん。アナタが新しい働き口に就いたこと……冒険者ギルドなんかとは比べにならない好條件であること嬉しく思います」
「どうして付嬢さんがここに!? いや、僕もまた會えて嬉しいです!!」
冒険者ギルドではクズだ無能だと言われ続けてきた僕だが、このお姉さんだけは丁寧な態度で、誠実に僕に対応してくれた。
彼がいなければ、僕は追放されるより早く心が潰れていたかもしれない。
そんな付嬢のお姉さんと手に手を取り合って再會を喜んでいると……。
「むぅ……!!」
スェルの不機嫌そうな唸り聲が聞こえてきた。
「ヘリシナ付嬢とは、先日の訪問の際に知り合った。ギルド側の対応を謝ってきた唯一の人だったのでね。これから本格的な反撃をするのに力を貸してもらおうと思ったのだ」
薬師協會長さんが説明する。
「今回のトラブルはすべてギルド側に非があります。現職ギルドマスターのやり方はあまりにも自分勝手で、このままでは冒険者ギルドの存続も危ぶまれますし、街全にかかる迷も計り知れません」
「私も実際に會って、あのギルドマスターのダメっぷりを実できた。エピクくんからの話で持った印象の五倍は最悪だったな。あんなヤツが同じ街に住んでいると思うだけで……危機が募るよ」
メチャクチャな言われようだったギルドマスター。
とにかく薬師協會長さんは、取引すべてを切っただけで話を終わらせるつもりはないってことか。
徹底的にやるってことだ。
「それでエピクくんに私から聞きたいことがあるんですが……!」
付嬢さん、一旦言い淀んでから意を決したように切り出す。
「冒険者ギルドでの報酬に不正があったというのは本當ですか? 正當な金額より遙かになく支払われていたと……!?」
そういう話は前にあった。
僕は冒険者ギルドに在籍時、薬草採取クエストしかしなかったんだが報酬は『最低位クエスト』ということで一律、ごく僅かな金額だった。
しかし薬師協會さんと知り合いになり、僕の納していた薬草が複數種あってその価値もピンキリ。一番いいものになれば金貨支払いになるほどだ、と衝撃の事実を知らされた。
「……今から言うのは言いわけでしかないのかもしれません。冒険者ギルドも業務は様々に分割していて私が擔當する付と、報酬を支払う財務部は別部署になっています。私の仕事は、冒険者さんにクエスト達証明書を渡すまでで、納品がいくらで買い取られ、その分からいくら冒険者に渡るのか、まったくタッチしていません……」
「たしかにただの言いわけだな」
薬師協會長さんの厳しい聲。
「金の流れにはノータッチでも納品チェックはギルド付の必須業務。紫霧草を始めとした特殊薬草の価値をキミが知らなかったとは言わせないぞ?」
「仰る通りです……。エピクくんにも相応金額が支払われているものとばかり思っていました。だから服裝や普段の生活を見ていればおかしいことには気づけたはずなのに……!?」
まあ、僕の生活極貧だって見ればわかるもんな……。
服は新しいのを買えずにヨレヨレだし、食事もめっちゃ質素だった。
F級冒険者のない報酬でやりくりしていたから……。
「私もギルド職員として、エピクくんを貶めた罪から無関係ではいられません。いずれはしかるべきところに出て裁きをけます。それで今の職を失うことになっても甘んじるつもりです」
「そんな……!?」
付嬢さんは、ギルドで唯一僕によくしてくれた人なのに。そんな人が僕のせいで窮地に陥ってしまうなんて納得できない。
「待ってください! 僕は全然気にしていません! 報酬もF級冒険者の適正額だと思っていましたから不満もまったくないんです!」
「エピクくん、クエスト報酬に等級は関係なく、その働きに応じるべきなのよ。その信義を裏切ったギルドには罰が必要なの」
でも、F級の僕ごときをそんな気に掛けなくても……!?
「やれやれ、長く不正が明るみに出なかった原因は、エピクくんにもありそうだな」
「協會長さん」
「キミが冒険者ギルドでどんな扱いをけてきたかは、その卑屈さから想像がつく。しかしもうキミは不正ギルドから解放された。その卑屈さはこれからキミの人生に邪魔にしかならんぞ」
「でも、僕はしょせん役立たずスキルしか持ってないし……!」
正直な気持ちを話したつもりだが、協會長さんはやれやれと肩をすくめて……。
「エピクくんには、ウチでの仕事を任せるのと合わせて意識の改革を行っていく必要がありそうだな。この薬師協會のトップに上りつめた私が、人の世の渡り方を直々に指導してやろう」
「えー?」
「どれだけ実力を備えようと、卑屈なままではまた狡賢いヤツに利用されて終わりだ。キミ自がそれでいいとしても、キミと一緒にいるものまで巻き添えで不幸になったらどうする?」
どういうこと?
「スェルとの將來も考えてくれなければ困るぞ」
「そちらはバーデングさんにお任せして、私も自分にできることを進めていきます」
ギルド付嬢さんが言う。
「エピクくんへの報酬を過にしていたのは間違いなく不正です。薬師協會との契約不履行の件もありますし、それらの不正が明るみになれば現ギルドマスターを辭職に追い込むこともできます。私はギルド付を勤めながら部で証拠集めを行います」
「頼む、こちらは訴訟の準備を進めておこう」
ギルドマスターを追い詰める算段は著々と進んでいるらしかった。
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