《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》23 ギルドマスターの決斷【ギズドーン視點】
冒険者ギルドマスターのギズドーンは、勝利を確信していた。
薬師協會がギルド抜きで薬草を集められるようになったのは、冒険者ギルドをクビになったエピクと裏で結託していたからだった。
ギルド所屬時代にも薬草集めしか能のなかったエピク。薬師協會に取りるのはまさに適材適所と言ったところだろう。
しかしながら、それで自分を邪魔するとはの程知らずの極致……だとギルドマスターは考える。
ギルドマスターの行いは正義であり神の意志。
それに逆らう者は誰であろうと罰を下さねば。彼の手の者たちによる森の封鎖は手始めに過ぎず、すぐさまあらゆる手を使いどん底へと突き落とす。
「オレ様に逆らったヤツには地獄を見てもらわんとなあ! ヒャッハッハッハ……!」
あのエピクは役立たずの分際で、追放程度で済ませてやったのを恩だったと悟っていないようだ。
恩をじ取れないなら生かしておく価値もない、冒険者たちに命じて一人になったところを襲ってしまおう。
「次の朝には醜い土左衛門が川に浮かんでいるだろうて、ククククク……!」
さらにヤツを裏でっていた薬師協會長はさらに地獄を味あわせてやろう。
今ある地位も財産も奪い取り、路傍の乞いにまで貶めてくれる。そのあとトップのいなくなった薬師協會を自分が乗っ取るのもいい手だなと思うギルドマスターだった。
ともかく薬草の供給を再び斷たれて、薬師協會は窮地に陥るはず。
詫びをれてくるのは明日か明後日か。
確定した勝利に笑いの止まらぬギルドマスターではあった。
しかし彼は気づかない。
翌日にも、その笑顔が泣き顔に変わるのは、彼の憎い相手ではなく彼自だということに。
彼は荒くれの冒険者を束ねるギルドマスターとして、魔の森の恐ろしさをしもわかっていなかった。
そのツケを支払わされる日がとうとうやってくる。
◆
兆候が表れるのにさほど時間がかからなかった。
エピクたちとの対峙から早くも一週間後には、既にギルドには明確な変化が表れ始めていた。
クエストから戻ってきた冒険者が傷だらけであったからだ。
「な、なんじゃこれは……!?」
先日、執務室が全壊した事件のために落ち著き場所を持たなかったギルドマスターは奇しくもその景をしっかり目撃するハメになった。
ギルドロビーが野戦病院のような有様ではないか。
「誰も彼も怪我しおって……一どういうことじゃ?」
「森に出沒するモンスターが、いきなり強くなったということです。クエストから帰ってきた冒険者たちが口を揃えて言っています」
返答も期待していないギルドマスターの獨り言だったが、律義に答えるのはギルド付嬢だった。
怪我の介抱や事聴取のため負傷冒険者の溢れかえるロビーを忙しく行き來していた。
「目撃報を聞き取り、どんなモンスターが現れたかの特定作業を進めていますが、既にガリゴリグリズリーやグラップルウルフが出沒確定に挙がっています」
「な、なんじゃそれは?」
「知らないんですか? ガリゴリグリズリーはB級、グラップルウルフはC級モンスターですよ!」
「BとC!? なんでそんな上位モンスターが!?」
ギルドでの査定では、街の近辺に広がる魔の森の危険度はE判定であったはず。
彼が引き継ぎをした前ギルドマスターもたしかにそう言っていた。
それならば出てくるモンスターも々E級相當が々のはずなのに。
無論、ギルドマスターはわからない。
本來魔の森にいるはずのない兇悪モンスターが急に現れ始めた理由も、プロであるはずの冒険者がまったく太刀打ちできない理由も。
現狀、急速に増え始めた兇悪モンスターは、いつもならばエピクが駆逐しているはずのモノたちであった。
エピクは毎日、貴重な薬草を採りに森の中までり、それを遮るモンスターをであった端から『消滅』させてきた。
それによって適切な數を保ってきた奧部のモンスターたちだが、先日エピクが森にることを制限されたために俄かに事が変わってきた。
天敵がいなくなったのである。
そうなれば繋がる先はただ一つ、大繁であった。
増えまくった兇悪モンスターたちは棲息範囲を拡大させ、ついには奧部から溢れ森のり口辺りまで出沒し始めた。
エピクが消しらした弱く大人しいモンスターを狩ることしかせず、ぬるま湯にひたりきっていた下級冒険者には一たまりもなかったろう。
そう、現狀の冒険者たちが弛緩しきって、他街のギルドとは比べようもなく墮落していることはエピクにも一因があった。
ともかくも対応を迫られるのはギルドを率いるギルドマスターと、その補佐をするべきギルド職員であった。
それを弁えるギルド付嬢ヘリシナは言う。
「原因は不明ですが、魔の森の探索難易度急激上昇はもはや疑いようのない事実です。ギルドマスターの判斷が必要な事態と思われます、どうしますか?」
「ど、どうするとは……!?」
「対処です。いつも通りの対応では抑えきれないことは明白。ウチのギルドにはほとんどE級かF級しかいないんですから!」
その程度の下級冒険者がB級相當のモンスターに挑めば死あるのみ。
ただし、このギルドの冒険者たちは日頃真面目に取り組む者などほとんどおらず、それゆえに普段見慣れぬモンスターを見つけた瞬間、恐れをなして逃げ帰ってきたというので死者は今のところいない。
それでも追われただけで重傷に至った者は數え切れないほどいるが。
「もっとも順當なのは異常事態を発令し、近辺のギルドから上級冒険者を派遣してもらうことでしょう。それにはギルドマスターの裁可が不可欠です! 速やかな決斷をお願いします!」
「ちょ、ちょっと待て!? 他のギルドに助けを呼ぶというのか!? そんなことをしたらオレ様のメンツは丸潰れではないか!?」
ヒトが自分を助けるのは當たり前だが、ヒトに助けを求めるのは屈辱だとしかじないギルドマスターだった。
人の考えは人それぞれであろうと、人の目前にある事実は変わらない。
突如として現れた兇悪モンスターに対処を行わねば冒険者の活は再開できない。
寢て起きれば自然と消えている類でもないこの問題に、ギルドマスターは対処の方法を見つけ出せないでいた。
自分のプライドを傷つけることなく、綺麗に解決させる方法を。
「とッ、とにかく怪我人の治療が先決じゃ! ポーションをバンバン使って傷を治せ! そして改めて萬全の態勢を組んで攻略に向かうのじゃ!!」
「ポーションはもうありません」
「何ぃ!?」
「薬師協會から、冒険者ギルドへの販売止令が出されています。冒険者にもギルド職員にも、ポーション栄養剤それに狀態回復薬、すべての薬品は売ってもらえないそうです」
それは、かつて薬師協會からチラつかされた対抗手段の一つであった。
冒険者ギルドから兵糧攻めをされれば、薬師協會側にも同じような対抗手段があると。
「先日マスターは、薬師協會と完全敵対の意志を示しました。ならば薬師協會とてこれぐらいの対応をしなければ面子に関わるでしょう。ポーションがなければ冒険者は何もできませんよ」
「あの卑怯者があああああッッ!? こちらのもっとも困ることを躊躇なくするなど人の心がないのかぁあああああッッ!?」
「こちらがしたことをやり返されているだけですよ」
毆れば當然毆り返してくるのは予想すべきなので、事前通告までされていたポーション売り渋りへの対抗策を考えておくべきだったが、ギルドマスターは何も考えていなかった。
在庫分も、この一斉重傷によって出し盡くされた。
今すぐにでも何とかしなければ、明日にでも冒険者ギルドは活不全に追い込まれるだろう。
「こうなっては薬師協會に頭を下げる他ありませんね。これまでの無禮を詫びて敵対的措置のすべてを撤回すれば、販売止を解いてくれるでしょう」
「よしお前! 今すぐ薬師協會に行ってこい!」
「は? 何を言ってるんですか?」
付嬢の態度はこれまで以上に辛辣だった。
「アナタが行くに決まっているじゃないですか? 先方に無禮を働いたのはアナタなんですから、アナタの頭でなければ下げる意味がないでしょう?」
「なんでオレ様の頭を下げんといかんのだ!? 誰よりも高い位置にあるべきなのがオレ様の頭だぞ!!」
「その高い頭を下げなければ収まらないのが今の事態なんです。ギルドのためにそうすべきなら迷わずするのがギルドマスターではないんですか?」
ギルド中に負傷冒険者のうめき聲が響き渡る。
『煩い黙れ!』と怒鳴り散らしたかったが、さすがにそんなことはできないと空気を読めるギルドマスターであった。
代わりに目の前の付嬢へ苛立ちのすべてをぶつける。
「何だその生意気な口の利き方は!? 付嬢ごときがギルドマスターに無禮であろうが! そんな気概があるならお前が薬師協會に行け! そしてヤツらにすべての非を認めさせた上でポーションの販売を再開させろ! いや、これまでの迷料でただで納品させろ! それができなければお前もクビじゃあ!!」
「いいですよクビで」
冒険者と違い、ギルド職員はギルドに雇われた勤め人であるのでギルドマスター一人の裁量で解雇することはできる。
それを承知の上で一歩も引かずに押し出る付嬢ヘリシナ。
「私はギルド職員として正しいことを行い、上司に進言しています。それでクビになるというなら仕方がありません。間違ったことをしてギルドに殘り続けるよりはマシなことです」
解雇宣告にビクともしない相手に、ギルドマスターは困した。
クビになれば収を失い社會的な立場を失う。生活基盤がぐらつくというのに、それが恐ろしくないというのか。
だがそれ以上にギルドマスターを困させたのは、この解雇をチラつかせた脅しで怯まなければ、それ以上の手段が他にないということだった。
腹を括って脅しに屈さぬ相手がどれほど恐ろしいか、今さら実させられる。
目の前のは解雇などに怯えない。
かといって薬師協會に頭を下げるなど……いや誰に対してでも頭を下げるのは嫌だった。
崩壊か屈辱か。
どちらへ進んでも傷を負わない展開がない、ギルドマスターは打ち震える。
そんな極限狀態であったからだろう、普段なら絶対に思いつかないような破滅的一手が浮かんだのは。
「……森を焼け」
「は?」
「危険なモンスターどもを森と共に焼き払ってしまえばいいんじゃ! どんなに兇悪であろうと炎に焼かれれば一たまりもあるまい! これぞナイスアイデア! この急事態にこんな名案を思いつくなどオレ様はまさに英雄じゃあ!」
「何を言ってるんです!? そんなことをしたら山火事になるかもしれません! そうなった時の被害の甚大さがわからないんですか!?」
「モンスターが溢れかえればどっちみち危険じゃ! これは危険から街を守るために大膽な決斷! 皆もオレ様の決斷力に稱賛を送るはずじゃあ!!」
付嬢も慌てて止めるものの、ギルドマスターは既に目が走っており尋常な判斷ができる狀態ではないと一目でわかる。
しかし今はギルド全が非常事態であり、怪我と危険で苛まれた冒険者たちの神にも狂気は伝播した。
フラフラと幾人が立ち上がる。
「待ちなさいアナタたち! 皆止めて! 誰でもいいから! もうッ!!」
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