《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》27 追いつめられたギルドマスター
「都市議會、議長、あわわわわわわ……!?」
「お久しぶりですのうギズドーン殿。ギルドマスター就任の挨拶以來ですかな?」
言葉遣いは丁寧な議長さん。
しかし僕は初めて知る。
偉い人が下手に出ると卻って凄い圧が掛かるものだと。
息を潛めて忍び寄ってくる猛獣のようだ。
「あれから一度も訪ねてくれることはありませんでしたが、アナタのご向は人の口を通じて伝わってきましたぞ。大層なご活躍だそうで」
「たははははは……、お褒めに預かり栄……!?」
「ギルドでの人事権を濫用し、気にらない人員は片っ端からクビにし、余所の組織とめ事を起こしては街の流通生産を滯らせる。見事なご活躍ですな」
「ぐひッ!?」
「我らとしては、街の営みに必要だからと冒険者ギルドの活を認可しているのです。期待に応えてくれないのであれば議會としても方針を変更せざるをえませんなあ」
淡々と事実を述べてギルドマスターを追い詰めていく。
そのやり口はまさに老練だった。
僕も傍から見ていて怖い。
「ですがワシは、この場で短絡的にアナタをクビにしたりはしません。冒険者ギルドとしても外部から人事に口出しされるのは不快でしょうし、何よりアナタと同じ過ちは犯せませんからな」
「エフィリト都市議會にアナタの解任議が提出された。この議案は速やかに検討され決議がされたのち冒険者ギルド理事會に申し送りされる。そこで冒険者ギルドの善意が問われることだろうな」
薬師協會長さんも併せて通告する。
その容にギルドマスターは顔を真っ青にした。
「解任!? バカな! そんなことはありえぬ!!」
「だったらどっしりかまえて待っていることだな。お前が信じる通りの世の中なら解任案は卻下されるだろう」
「そうだ! そうなるに決まっている!!」
「ちなみに教えておくが、この街の都市議會は議長含めて十八人の議員によって構される。そのうちの一人が私だ」
「ぎぇッ!?」
薬師協會長さん、都市議員を兼任しているの?
偉い人ならありそうだが、バイタリティ高いな。
「生まれも育ちもこの街の私を舐めるなよ。赴任組のお前と違って、私の人生のすべてはこの街のためにあるんだ。街を脅かしたお前を絶対にのさばらせたりはしない。私はお前の解任賛に一票れてやるからな」
「これでギズドーン氏のマスター解任まで、あと九票ですかな? いやワシもれますんで殘り八票ですかのう?」
「議長は二票分の権限を持っていますから、あと七票でしょう?」
著々と追い詰められていくギルドマスター。
そう、本來なら誰かをクビにするって、こんなに難しいものなんだ。
たとえ議會で決議がなっても、それに対してギルド理事會が同意しなければ、ギルドマスターを辭めさせることはできない。
誰かの一聲だけで一人の人生が崩される、そういうことがあってはならないんだ。
もどかしいことだがしっかりとした手続きの上に責任を取ってもらってこそ、あの人を罰する意味がある。
「理事會が……、理事會が絶対承認せんわい! こんな田舎町から人事の口出しをされるなどけれるわけがない!!」
「何の理由もなければそうだろうが、既にアンタのやらかしはギルドも庇いきれんだろう。商売相手でもある各都市と対立してでも守りたい、そんな価値がお前にあるか、よくよく考えてみるんだな」
宣告は終わりとばかりに踵を返し、もはやギルドマスターなど視界にもらぬという風の議長。
しかしそんなおじいさんと僕の目が合った。
ビクッとした。
「最後にエピクくん、ワシからも禮を言わせてくれ」
「そんな……ッ!?」
「キミの活躍で街は危機を避けられた。きくところではキミは長年、冒険者ギルドで不當な扱いをけていたそうな。ワシは議長職に就いてもう十二年になるがまったく気づくことができなかった。耄碌したワシを許してほしい」
そう言って深々頭を下げてくるので、僕も大混!
「謝らないでください! ギルドでの小さなことなんて議長さんが気づけるわけありませんし! ……それに、僕も悪いんです。無能な自分がげられるのは當然だって諦めていましたから」
それで聲も上げなかった。
抵抗することもしなかった。
「今は違うかね?」
「はい」
どん底に落ちてから出會った多くの人々が、僕に価値を與え、僕に自信を與えてくれた。
彼ら彼らのおで、こんな僕にもできることがあり、世のため人のために役立てると教えてくれた。
その人たちに恩返しができて、僕はとても嬉しい。
「若者は活気があっていいのう。バーデング殿、アナタの若い頃を思い出しますな?」
薬師協會長さんは話を振られて取りす。
「ご冗談を。あの年頃の私に比べれば、今のエピクくんの方がよっぽど人間が出來ていますよ。當時の私は、まだまだガキ大將気分が抜けていませんでしたから」
「そんなガキ大將が今ではこんなに立派になって。やはり若者の長を見ることがジジイの何よりの楽しみですのう」
「ぐふ……!?」
薬師協會長さんがタジタジになっている。
やはりこの議長さん、一筋縄ではいかない……!?
「わ、私のことなどよりも今日の英雄を讃えようではないですか。……皆さん、彼の名はエピク! 魔の森の火事を最小限にとどめてくれた功労者です!」
群衆に向けて言い放つ薬師協會長さん。
いまだ百人以上の住人が詰めかけ、その視線が一に集中している。
「どうか彼に惜しみない拍手を! 謝の言葉を! 彼はこれまで報われることのない若者でした! 今こそ我々全員で力いっぱい讃えようではありませんか!!」
その呼びかけと同時に割れんばかりの拍手が巻き起こった。
「ありがとうー!」
「お兄ちゃんカッコいい!」
「この街に新たな英雄が誕生じゃ……!」
「アタシのお店に飲みに來てー! タダにしとくからーッ!!」
こんなに多くの人が、僕のことを認めてくれる。
して泣きそうになってしまった。
これまで皆のために働いてきて本當によかったと思える。
今まで味わったことのない充実と共に、魔の森炎上事件は想定の被害よりも遙かにないまま幕を閉じた。
冒険者ギルドにも今回ばかりは各方面からのツッコミがって無事に済ますことはできないだろう。
放火を実行した冒険者たちも、指示したギルドマスターも相応の償いが求められることだろう。
僕としては街から不安要素が取り除かれて、より住みやすくなることを願うばかりだ。
◆
が。
僕たちは油斷していた。
鎮火して、その犯人を追い詰めて、それで終わりだと思ってしまった。
直近の教訓を何も活かせていなかった。
愚者とは、賢者には想像もつかないほど愚かなことをするから愚者だということを。
ついさっきその実例を見せつけられたのに、もう忘れてしまっていた。
兇報がもたらされたのは薬師協會本部。
帰宅しても特に何もないので、お疲れ様會ということでスェルたちと一緒に夕食をとっていた時だ。
街の衛兵さんが駆け込んできて、急事態というから詳しく聞くと、拘束されていたはずの冒険者が逃亡したという。
「ガツィーブという名の冒険者で……!?」
「あの人が!?」
ここまでならばまだ話は簡単だった。
もはや放火犯として紛れもない罪を持ったガツィーブ。彼が姿を消したところでただの逃亡犯にすぎず、いずれは再び逮捕されて余罪が増えるだけにすぎなかった。
しかしそんな悠長なことを言っていられない報が追加された。
「彼はどうやら……魔の山を目指しているようなのです」
「魔の山!?」
魔の森よりさらに奧にあるという最兇の魔域。
そこに住む怪はいかなるモンスターよりも恐ろしいとか。
「ガツィーブとやらは去り際に言ったそうです。『魔の山の主を狩り、オレこそが最強冒険者だと証明する』と。さらには同時期にギルドマスターまでもが行方をくらませて……!」
「マズい……! マズいぞ!!」
一緒に報告をけていた薬師協會長さんが立ち上がった。
「もしソイツが、山の主のところまで辿りついたら……。百パーセント討伐は不可能だろう。しかしそれによって山の主の怒りを買うことになる!」
「そ、そうなったら……!?」
「たった一人の愚か者の報復のため、街が全滅することもあり得るぞ! それだけは絶対にいかん! エピクくん!!」
薬師協會長さんから呼ばれた。
「すまないが今すぐ追ってくれないか! 魔の山までの途中にある魔の森の地理に今もっとも詳しいのはキミだ!」
「わかりました!」
斷る理由もない。
あの薬師協會長さんが死ぬほど慌てているんだ。本當にヤバい事態だとでじた。
「これを持っていきなさい」
そう言って渡されたのは……何?
このカサカサした、生きの皮みたいな……!?
「蛇の、抜け殻?」
「魔の山に住まう主の一部だ。これを持っていれば道中モンスターに襲われることはない。主の気配をじ取って怖気づくからだ」
そんな大層なものを、何故薬師協會長さんが!?
「この街の実力者は何人か持っている。何かの理由で、主に挨拶しなければならなかったりするからだ。いわば主へのお目見えのための通行証と言ったところだ」
そんなものがあるってことは、この街と山の主の関係は僕の想像する以上にってこと?
「そしてここからが問題だが……ギルドマスターも、これを持っている」
「どうして?……いやギルドマスターもこの街の実力者か」
「そういうことだ。ギルドマスターも同時に消えたということは繋がりのある可能が高い。たとえD級の小僧でも通行証を持っていたら容易に主の下まで辿りつけてしまう。そして即死級の無禮を働くことだろう」
恐るべきはガツィーブが山の主を倒すかどうかじゃなく、山の主の怒りを買うこと。
それは確実に街の滅亡に繋がる。
それを阻むために、今は全力で魔の山に向かわなければ!
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