《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》32 英雄凱旋
そして僕らは戻ってきた。
この僕エピクのするエフィリトの街へ。
モンスターに出遭わないおかげで行きも相當楽だったが、帰りはさらに楽だった。
メドゥーサ様が転移の魔法で送ってくれたから。
頂上のお城から一瞬にして街の前だった。
転移の魔法は超上級で宮廷魔導士ですら使える人はごく僅かだと聞いたことがある。
そんなことを軽くこなせるなんてさすが山の主。
街の重役さんたちがあんなに恐れる理由が今の僕にはに染みてわかった。
衝撃の事実が判明して口數なくなったスェルもいるが、とりあえず彼より先に済ませておかねばならぬことがあった。
僕たちは街に戻るとすぐさま馬車に乗せられ、今まで近づいたこともない立派な建に通された。
「ここは一……!?」
「総督府だ。街の運営や法管理をここで擔っている」
薬師協會長さんが同行して一緒に廊下を歩いている。
「……エピクくんもスェルも、私に聞きたいことがあるのだろう? しかしそれはあとだ。まずは老人たちに起きたことを説明してほしい」
「はあ……」
「そのあとならば、いくらでもキミたちの疑問に答えよう」
その保留宣言は僕よりも娘であるスェルに向けられたものだろう。
彼は戸いながらも頷く。
進んだ先のドアを開けると、比較的大きな部屋の中央を占拠するように大きなテーブルが據えられていた。
それを囲むように十數人が座っている。
いずれも年齢を重ねた壯年の男だった。
一つだけ空いていた席に薬師協會長さんも座る。
「これにてエフィリト都市議員揃いました。重要な使命を果たして帰ってきた功労者も」
「うむ、では始めよう」
そう応えたおじいさんに見覚えがあった。
あれは都市議長さんではないか。
「まずはキミたちの働きをねぎらおう。エピクくん、それにスェル嬢。よく生きて戻ってくれた」
「そのようなことを言っている場合ではありませんぞ議長!!」
卓を囲む一人が荒々しく立ち上がった。
あの人は僕知らないなあ。初めて見る。
「これは我が街存亡の危機です!! 悠長なことを言わずすぐさま持てる報すべてを聞きだしてのちの対策に……!?」
「鎮まれドァイサク、今さら我らに協議できることなどあるか?」
議長さんからの鋭い聲。
その聲に荒ぶっていた人はすぐさま萎れる。
「我々が生き殘るに必要なことは、あの方がお許しになるか、ならぬのか。その回答のみ。それは彼らが告げるであろう。いわばエピクくんとスェル嬢はあの方の使者と言ってもいい。禮を失してはならん」
「は、はい……!?」
「さあ山から帰ってきて疲れたろうに。しかしもう一働き頼むぞ。とりあえずはそちらのソファに座るといい。立たせたままでは辛かろうての」
議長さんに言われるままにソファに座る。
スェルも並んで。
ちょうど議卓を囲む都市議さんたちと向かい合うような形になり、張する。
「では改めて聞かせてくれ。キミたちは魔の山に登ったのじゃな? そしてあの方に謁した?」
「その通りです」
「してどのような仕儀となった、聞かせてしい」
僕は問われるままに、魔の山の頂上のお城で起こったことを見たままに語った。
とりあえず僕たちが駆けつけた時にはガツィーブは既にメドゥーサ様に戦いを挑み、そして完なきまでにやられていた。
そのことを語るとまた激昂が上がった。
「何をしておるのだ! 不埒者を捕え何とか未遂に終わらせるしかなかったというのに、まんまとあの方の下まで行かせたというのか!? 何のための追手だ役立たずが!!」
「黙れドァイサク」
議長さんのより鋭くなった聲が飛ぶ。
「今は彼らの話を聞くのが先決といったはず。靜かにできんなら退出せよ。邪魔じゃ」
「私も議長に同意します」
「わたくしも」
議員の何人かが聲を上げることで、混はひとまず抑えられる。
気を落ち著かせて続きを語る。
魔の山で行われた、魔神にして神メドゥーサと取りわしたことすべてを。
「ひとまずメドゥーサ様は、今回のことは許してくれるそうです」
「それは……!」
場に安堵が広がった。
それからより詳しい事説明に移る。
メドゥーサ様が許してくれたのはまず、彼が従えているペガサスを僕たちが助けたから。
他にも理由はあったが、それは話がややこしくなりそうなので伏せておいた。
「ただし、冒険者ギルドに預けていた通行証は沒収するとのことです。害意ある者を差し向けながら再び與えるのはムシがよすぎると……」
「かまわんさ、その程度のこと。我々はあの方のお許しを得るため、ここにいる全員の首を差し出す覚悟だったのだ。それに比べればあまりにも軽い、あまりにも寛容な……!」
そこまでの覚悟で待ってたんです!?
そりゃ空気も重たくなるな……!?
「……あの方がいつからこの地に降り、鎮まっているか人間は誰も知らない。なくとも國が興るより以前のようだ」
沈黙を破るように薬師協會長さんが言う。
「あの方の神気によってかになり、あの方の魔気によって強力なモンスターが湧き出てくる。この地は他に二つとない実りの地だ。手にれようと多くの人間が攻め込んだが、いずれも勝利できなかった」
昔の話ですよね。
「何度挑んでもあの方の強大な力に蹴散らされ、人間側の慘敗。しかしある時一人の勇者があの方の興を引き、麓で住み暮らすことを許された」
「それがこの街の始まりだと言われている」
「その存在は國からも重要視されている。恵みをもたらす沃の土地としても、世界を滅ぼす荒神を鎮める地としても」
「だからこそ國から手を回してもらい、冒険者ギルドにE級相當の査定をつけさせた。下手に高い査定をつけると冒険者どもの注目を集めるからの」
「さすればどんなにじようと抜け駆けし、主に挑む者が出ようとする。まったく冒険者どもめ救いがたいバカどもよ」
「名を上げるためなら命も惜しみませんからな。それで死ぬのが自分だけならともかく、街の命運まで巻き込まれては堪ったものではない」
議員の方々が口々に言う。
とりあえずメドゥーサ様の許しが得られたということで気が緩んだようだ。口もらかになってきた。
「今回とて災いの始まりとなったのは冒険者ギルドです。いかに許されたとはいえ何もせぬで済まされぬのでは?」
議員の一人が剣呑なことを言い出す。
さっきから聲を荒げている人だ。
「特に今回の騒を教唆したギルドマスター、ギズドーンはいまだに行方知れず。速やかに追手を放ち、しかるべき落とし前をつけさせるべきです。ギルドに介させてはいけませんをかばう恐れがある。そうなる前にいっそ暗殺者でも雇い……!」
「滅多なことを言うでない」
一人白熱する議員を、議長さんが押しとどめた。
「ヤツについては我らが今さら騒ぐことでもない。ぬしはエピクくんの報告を聞いていなかったのか?」
ガツィーブが數時間の石化で神をズタズタにされたのち転移魔法によってどこかへ飛ばされたことは既に伝えた。
「あの方は、ソレをそのまま刺客に使われたのであろう。であればギズドーンにもはや生きる道理はない。どこぞでを曬しておることであろうよ」
確信めいた議長さんの口調は、恐れと、崇拝のを同時に含んでいた。
「それともぬしは、あの方から死を決められて生き延びられる自信があるのか?」
「それは……ぬぐ……!?」
反論できずに押し黙る。
「もはや亡き者にかかずらわる暇はない。黙禱も不要じゃ。それよりもまずやるべきことがあるではないか」
「それは……?」
「謝じゃ。我らの住む街を、我ら一人一人の命を救ってくれた英雄の、のう」
議長さんの目が真っ直ぐ向く先は……、僕?
「エピクくん、キミの存在はまさしく救世主であった。あの方は神の慈を持ちながら、同時に悪魔のごとき冷酷さを併せ持つ。もし敵とみなされれば容赦なくこの街そのものを消し去ったであろう」
「それは……はい……!」
メドゥーサ様を直に見た僕としては煙に巻くこともできず、曖昧に肯定するしかなかった。
「そんなあの方を鎮め、この街に下るはずの神罰を避けてくれたのはキミの働きに他ならぬ。かつて聖獣様をお救いしたというこの上ない善行。それがあの方の慈悲を呼ぶことになった。他にも理由はありそうだが……」
議員の視線が一旦、薬師協會長さんの方を向きすぐに戻った。
ペガサスの件についてはメインはスェルで僕は付き添いにすぎませんので、褒めるならスェルを!
「ワシは此度、何とかワシ一人の命で落とし前がつけられればと思っていた。にもかかわらず誰の命も失わずに済んだのは最高以上の果。それを遂げてくれたエピクくんには謝しかない」
議長、席を立ち直立の姿勢から……。
「改めて、この街の代表として禮を言わせてもらう。この街を救ってくれてありがとう」
次々と後に続いて席を立ち、議卓を囲んでいた大人が頭を下げる。
さっきまで煩くわめいていた議員さんも、薬師協會長さんも同様だった。
こんな偉い人たちが僕のような若僧に頭を下げてくれるなんて。
ギルドマスターなんかとはまるで違う、これが大人の振舞いなんだなと思った。
その一方で僕の隣で一言も喋っていないスェルが何を思うのか、これから避けられない問題だった。
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