《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》34 冒険者ギルド再スタート

ともあれ魔の山騒も決著を見て平和が戻った。

今回大きな変化は冒険者ギルドマスターがいなくなったこと。

さらに前の魔の森炎上事件で、逃れようのない大きな責任を負ったギルドマスターは逃走。

今でも行方は知れない。

元から責められる立場にあった彼は、この逃げ出しでさらに印象を悪くし本人不在のまま都市議會にて解任議が可決。

ちなみに満場一致であったという。

この結果は直ちに世界中の冒険者ギルドを統括するギルド理事會へと送られ、さらなる審議の対象となる。

とはいえ肝心のギルドマスターが逃亡して不在なので、街側は日々の生活を守るためにも獨斷でギルドマスター代行を指名し、業務の保全に當たらせた。

そのギルドマスター代行というのが……。

「……本當に私でいいんでしょうか?」

ギルド付嬢を務めるヘリシナさんだった。

僕がギルド所屬していた頃から唯一優しくしてくれたお姉さん。

前ギルドマスターに反発し、その不正の証拠をひそかに集めていたことで都市議會から好印象を持たれたようだ。

「でも私は、結局直接的にギズドーンの暴走を止めることはできませんでしたし、エピクくんの不當な立場を改めることもできませんでした。むしろエピクくんを苦しめるのに加擔した面もあります。ギズドーンを排斥したらその責任を取って退職するつもりでいましたのに……!」

「今ヘリシナさんに辭められたら冒険者ギルドはそれこそ終わりですよ」

は冒険者ギルドに殘った唯一の良心。

これからの立て直し作業に必要不可欠な存在となる。

「冒険者ギルドは人間社會に必要な組織なのよ。だからこうして存在し続けられる」

そう言ったのはA級冒険者のリザベータさん。

何故か今日、僕と一緒に冒険者ギルドに顔出ししている。

「冒険者ギルドの活は何があろうと止めてはいけないの。たとえどんなに腐敗しようとも。腐った部分を切り落として自浄していく最中もクエストをこなして人々の生活を守らないといけないのよ」

「さすがA級冒険者のお言葉ですね。に染みます……!」

ヘリシナさん、まして神妙な顔つきとなり……。

「ここまで來たからには私も腹を括って、違った形で責任を取ろうと思います。いずれはギルド理事會から新たなマスターが派遣されてくるでしょうがそれまでは、ギズドーンのせいで評判がどん底となったこのギルド、私が全力で支えていきます」

「いいぞその意気ー」

無頓著にはやしたてるリザベータさんやめてくれないかな。

「そこでお二人をお呼びだてした用件ですが……」

ああ。

それで僕らここにいるの?

薬師協會ではイチャイチャする協會長さん&メドゥーサ様にやきもきするスェルをなだめるので大変なのに。

「冒険者ギルドの立て直しのためにお二人の力を是非借りたいと思っています。まずはエピクくんには正式に冒険者ギルドへ復帰していただこうと」

「え?」

でも僕は、前のギルドマスターによってギルドをクビになった。

冒険者の資格も剝奪されて……。

「本來ギルドマスターにも、気分次第で冒険者資格を剝奪する権限なんてないんですよ。ガツィーブのように重大な犯罪行為でもしでかしてたら別ですが。エピクさんは日々のクエストを失敗することなくこなし続けてきました。クビになる落ち度などありません」

「でも僕は最低のF級で……」

「F級だろうとS級だろうとクエストはクエストです。依頼者にとっては重要で失敗していいものなど一つもありません。それらを勤勉にし遂げてくれたエピクさんは、誰にでも誇れる一人前の冒険者ですよ」

そんなこと言われると涙が出てくるんだが……!

ヒトから認められたことなんて滅多にないので……!

「だから先のクビ宣言のギズドーンが勝手に言っていたことで、理事會も承認していなければエピクさんの冒険者記録もしっかり殘っています。何の手続きもなしに復帰可能ですよ」

「その、申し出は嬉しいんですが僕は今薬師協會さんの専屬になっていて、一人の判斷では……」

「薬師協會には既に話を通してあります。エピクさんの判斷に任せるということですよ」

「いつの間に!?」

「新婚協會長が新妻とイチャイチャして使いにならなくなる前にです」

そんな段階で!?

とはいえメドゥーサ様と薬師協會長さんは出會ったこと自隨分前の年夫婦なんだけどな!

しかしイチャつきぶりは新婚カップルのごとし!

娘のスェルが顔をしかめるレベル!

「そもそもギルドを抜きにして冒険者と直接契約を結ぶのは仁義破りだと、あちらもわかっていますからね。ギズドーンの目に余る勝手への急措置であるのはわかりますが、元兇が除かれたからには通常形態に戻さねば自分たちが不義理だとわかっているんですよ」

「多くの個人や組織が安全を守るため、貴重な素材を得るために冒険者を必要としている。それら依頼者たちを平等に捌ききるためにやはり冒険者ギルドは必要なの」

リザベータさんが補足して言う。

そうか。

すると僕はもう薬師協會さんで直接仕事はけ負えないってことか。

……。

なんか寂しい。

「薬師協會さんへの恩義を気にしているなら、あちらのクエストを率先してけてあげればいいんですよ。クエスト容を弄れば指名依頼、依頼主への直接納品なんてこともできますし」

「癒著が疑われて手放しでお勧めできないけれどね」

そんな方法があるのか!?

よぅし、そういうことならギルドに戻っても薬草採取たくさん頑張るぞ!!

「いえ、エピクくんには薬草採取以外も頑張ってほしいんですが……!?」

「ええッ!?」

「エピクくんの実力は大いに知れ渡りましたからね。スキルの応用法も覚えてモンスター素材も持ち帰れるようになったんでしょう? エピクくんには是非ともギルド主戦力として森の奧へり、B級A級相當の素材を持ち帰ってほしいんです!!」

ふんぬッ、と気合たっぷりに言われてもどうしていいか困る。

ギルドに復帰できたとしても僕、依然として最低辺のF級でしょう? そんな小者が大暴れして差し障りは……!?

「はい、ということでエピクくんの等級を上げることにしました」

「等級を上げる」

「ギルド復帰と共にエピクくんはD級冒険者です。私の権限ではここまでしか上げることができなくて申し訳ないですが」

いや、それでも充分外のことですよ!?

冒険者となってから早數年。

その間昇格なんて機會すらなかったというのに。それがいきなりEを飛び越えてD級に!?

「本當はA級ぐらいポーンとさし上げたかったんだけど。所詮ギルドマスター代行じゃこれがいっぱいで……」

「それでも代行ごときの獨斷でD級昇格はかなり無茶したわね。あとで査問なんかけても知らないわよ」

「知ったことではありません。今の立場に未練ありませんので」

きっぱり言い切るヘリシナさんカッコいい……!

「まあ私から見てもエピクくんはA級ぐらいが妥當だと思うけど……。ユニークスキル持ちだからね!」

……。

メドゥーサ様曰く、僕のスキルがユニークを超えた『神威』と呼ばれるものなんだってことは黙っておこう。

話を複雑にするだけだ。

「理事會からなんか言われたら私も弁護に回ってあげるわよ。A級冒険者の証言は中々効き目があるから」

「その時が來たら頼りにさせていただきます。ですが今もリザベータさんに頼みたいことは山積みですので」

「お、やっと私の方にも話が振られるのか?」

ここまでリザベータさん、何故いるのかわかんない狀態だったしなあ。

「リザベータさんにはA級冒険者の手腕でギルド立て直しの助力をお願いいたしたく。差し當たっては腑抜けきった冒険者たちの再教育ですね」

それは元々この街のギルドに所屬していた冒険者たちのこと?

僕がモンスターを『消滅』させまくったおで、そのおこぼれしか相手にせずすっかりぬるま湯に浸りきっている。

今じゃD級相當のモンスターが出ただけで瞬殺確定。

的にこんなじゃギルドの運営自が立ち行かない。

「そこでリザベータさんには指導役に就いていただきたいのです。A級にまでのし上がった経験と実績で、エピクくん以外の腑抜けた冒険者たちを一から鍛え直してください」

「予想通りのご要でいいけどさあ。でもこのギルドのヘッポコぶりって正直予想以上よ? 自分の無能さを隠すため狩り場に火を放つなんてさあ、叩き直す以前の問題なんじゃない?」

リザベータさんが話しているのは魔の森に火を放った事件のこと。

たしかにあれは街をも危険に巻き込みかねない狂気の所業で、もはや『心をれ替えやり直します』なんて文句も通じないだろう。

「ご心配なく。あの事件にかかわった冒険者は無論追求し、冒険者資格を剝奪してあります。いやー、さすがに犯罪に関わればサクサク進みますねー。街側の協力も得られますし」

「じゃあ最悪な連中は取り除けてるってわけね。でもそれはそれでヤバくない? 手に余るチンピラ同然の連中がまとめて失職したら治安の悪化に繋がるわよ」

「そう思って次の働き口はキッチリ紹介してあります。私をギズドーンなんかと一緒にしないでください。辭めさせて終わりなんて詰めの甘いことはしませんよ」

「……ちなみにどんな仕事紹介したの?」

「鉱山夫です。危険で自由も拘束されますがヘタすりゃE級冒険者辺りよりよっぽど稼げますから。紹介された人も喜んでいると思います」

「紹介という名の強制招集じゃないでしょうね……!?」

……と、とにかく治安が悪くなることはなさそうなので、よかった。

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