《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》39 王都到著

無事モンスターを退治したあと、馬車は再び進み出す。

無鉄砲冒険者アレオくんが負った足の怪我は案外と深かったが、スェルが傷薬を塗っただけですぐさま回復した。

あとが殘らぬほどに。

「すげえッ! もしかしてエリクサーか!?」

「いえ、ただの傷薬ですよ」

こともなげに答えるスェル。

そのあと付け足すように小聲で『……ママに教わった分がっていますけど』と言うのを耳に捉えたのは多分僕だけ。

いや案外パックリした深手だったはずなのに、完全に塞がっている。

副作用が心配になってくるレベルの覿面の効き目。

「すげぇやキミたち! エピクはモンスターを一発で消せる滅茶苦茶なスキルを持ってるし、そっちの彼は一流の調合師か!? 王都でも絶対通用するレベルじゃないか!?」

「喜んでないでお禮言いなさい! アナタもうしで命がなかったのよ!」

人の魔導士さんが叱りつけるが本人あんまり堪えていないご様子。

危機の欠如と取るべきか大嘆すべきか……!?

「なあやっぱりオレたちと一緒に組まないか!? そして一緒に冒険者の頂點まで駆け上がろうぜ!!」

すっかり興してしまった同乗者に熱烈勧けながら、王都までの道のりを進まなければいけないのかとしげんなりしてしまったが、その日の晝過ぎには王都に到著した。

なんで?

「お父さんの話では、王都まで行くのに二十日はかかるんでは……!?」

「まだ十日そこそこしか経ってないのに……!?」

予想外の出來事に呆然としていると、一仕事終えた馬車馬を廄舎へれようとしていた者さんが……。

「アンタたちアレだろ? 一日も休憩挾まずに來たんだろ?」

「どういうことです?」

「馬車に一日中揺られてたら腰がガタガタになるぜ。だから大抵一日ずつ休憩して回復させるもんなんだよ。連日乗り続けるなんてよっぽど急ぎの用事でもあるんじゃないかと思ってたぜ?」

「マジで!?」

くっそ……! それで休憩抜いた分早くつけたってわけか?

しかし予定が早まったところで全然嬉しくない、この腰の痛みが。

スェルだってここ數日ずっとおを押さえて、椅子に座る時なんかひな鳥にるように慎重なきだった。

あの苦痛の意味は何だったんだ!?

「……帰りはゆっくり移しましょうね」

「一移につき二日の休養を取ろう」

スェルと心が一つなって、まあ気を取り直してさっそく王都にやって來た目的を果たそうと思ったが、やっぱりその前に休みたい。

早めに宿を取って二日三日は寢たきりになってガタガタの腰を回復させる。

そう思ったのに……。

「ようし! すぐに王都ギルドで移籍屆をするぞ! エピクも行こうぜ! 助けてくれたお禮に案してやるよ!」

とめっちゃ押せ押せ気味のアレオくんに引っ張られる僕だった。

待って! やめて!

だから僕たちは先に休みたいの!!

抵抗虛しく、引きずられて著いた先は王都にある冒険者ギルド前。

どうしてこんなにトントン拍子に進む?

僕らそんなに生き急いでいるわけでもないのに。

「うわあああああッッ!! でっけえええええええッッ!?」

くたびれてる僕らの橫で、無鉄砲アレオくんがただひたすら嘆の聲を上げた。

「王都になるとギルドの建も豪華になるんだなあ! まるでお城じゃないか!?」

「ホントに。ここまで大きくしてちゃんと使えてるのかしらねえ?」

同行(?)のカップル冒険者がまさしく観客そのものな想を述べている。

それを一歩引いたところから観察し……。

「王都のギルドは理事會の運営本部も兼ねているらしいから、それゆえのこの大きさじゃないのかな? 僕らの街の総督府より大きい……!」

「じゃあ、まずはエピクさんの用事の方から済ませるじですね。エピクさんならきっと合格できますよ!!」

明るく勵ましてくれるスェルだが、うむまあどうだろうなあ?

A級でしょう?

全世界數千數萬といる冒険者のうちでたった數十人といわれる最上階級に、僕が果たしてなれるのかなあ?

「まあなれなくてもガッカリなんかしませんよ。街の皆はエピクさんが大好きなんだかられてくれます」

「ありがとう……!」

の溫かみを再認識した上で、僕たちはギルドにった。

何故かって言うと、あのアレオくんとその彼がガンガン先に進んでしまうから。

急いで追わないと引き離される!!

いやでも別に引き離されたってよくない? と思いつつ追っちゃう僕らは人がいいんだなと改めて思い知らされた。

王都の冒険者ギルドにり、早速移籍申請を屆け出るアレオくんとその人。

しかし非な現実が彼らに襲い掛かった。

「當ギルドでは現在移籍をけ付けていません。速やかにお帰り下さい」

付のお姉さんから告げられる事実。

それにアレオは持ち前のかなでオーバーリアクションを取る。

「どどど、どうしてっすか!? 元の所屬ギルドからの移籍許可証はあるっすよ!? これがあるなら移籍OKじゃないんすか!?」

「……はあ、これだからモノがわからない田舎者って嫌よねえ」

王都のギルド付嬢は、いかにも迷そうにしながら。

「田舎で勘違いしちゃった? 狹い世界で最強になって自分の実力が中央で通用するとでも? そういう可哀想な子に教えてあげる。ここは王都の冒険者ギルド。世界中の強者が集まる最高峰のギルドなのよ。僻地の力自慢程度が生きていけるぬるい世界じゃないの」

付嬢からの歯に著せない言葉にアレオは怯んだ。

僕はその背後からり行きを見守る。今は言いたいだけ言わせるターンだ。

「実際アンタらみたいな田舎者は毎日のようにやってくるのよ。『オレはどこそこの村で最強だったんだ』『王都でもすぐにトップに立ってやる』ってね。でもそういうヤツらのほとんどが中央のハイレベルにぶち當たって、乗り越えられずに落していくの。所詮田舎のレベルなんてその程度なのよ」

完全に相手を見下す口調。

その舐めきった口ぶりに、かつて僕たちの街でギルドマスターだった男が思い出される。

「移籍手続きやら案やらで無駄な手間をかけさせられる私たちの苦労も考えなさいよ。ってわけで、現在王都の冒険者ギルドでは田舎街からの冒険者移籍は一切け付けをお斷りしていまーす。どうぞお引き取りくださーい」

アレオが提出した移籍許可証と思われる紙をビリビリと破る。

それを目の前で見せられる彼は、けっこうなショックだろう。

「そんな……、そんな……!?」

「ここは選ばれた者だけが所屬できる王都冒険者ギルド。アンタらみたいなイモ臭い田舎者はいちゃダメなのよ。……そっちのアンタもわかったらさっさと帰りなさい」

と言うのは僕に対してかな?

どうやらそのようだ。王都付嬢の侮りきった視線がこちらを向いている。

アレオは涙目で俯くばかり。それを人のエリーさんが気づかわしげに寄り添っている。

「エピクさん……!」

「わかっている」

僕はアレオに替わり、この傲慢付嬢の前に進み出た。

「申請を行いたいんですが、この様子じゃけ付けてもらえなさそうですね」

「わかってるじゃない。田舎者が現実を思い知るお手伝いなんてやってるほど王都のギルド職員は暇じゃないの。わかったらとっととお帰り下さる? アンタたちのいるべき臭い田舎にね」

「わかりました」

別にそこまでする必要はないが……。

僕は、ヘリシナさんや都市議會の皆さんから預かった一枚の書類を突きつけ言った。

「エフィリト街の冒険者エピク。同街のギルドマスター代行および都市議會の承認をけてA級冒険者の承認審査をけに來ましたが、付嬢から不理されたので帰ります」

「え?」

途端、王都傲慢付嬢の顔が変わった。

「A級冒険者? 都市議會からの承認? え? え?」

「単なる移籍申請と違い、A級への承認審査は理事會にしっかり話が通っているものと聞きました。つまりアナタは理事會が決めたことを、アナタの一存で卻下したってことですよね。よくわかりました」

よくわかりました。

「このことは街に帰ってシッカリと報告しておきます。それでは、さようなら」

僕は、項垂れるアレオの肩を抱きかかえて出口へと向かう。

その人のエリーさんはスェルの方が引っ張っていく。

「スェル、あの付嬢の名前控えた?」

「バッチリ、名前だけでなく顔つきも服裝も、付時間帯もバッチリメモっておきました。今日の顛末と一緒に都市議會に報告しておきましょう」

そんだけの報あれば本人特定はバッチリだね。

まあ、今日のことが伝わったら僕らの街の議員さんたちはどれだけ怒り狂うやら。

自分たちのメンツに泥を塗られたようなものだからね。

前任ギルドマスターの件も合わせれば充分ブチギレ案件となるだろうし、いっちょ田舎街の意地を見せつけてもらおうじゃないか。

「待って……、ちょっと待ってよ!! A級冒険者の審査資格持ちを門前払いにしたなんて、そんなこと知られたらギルド職員をクビになっちゃう!? 待ってください! 今擔當者に引き継ぎますんで!!」

「いいえ僕は付拒否されたんで諦めて帰りまーす」

「待ってってばああああッッ!! せっかくの高給職がなくなるうううッ! 上級冒険者と結婚して悠々自適に暮らすアタシの人生プランがああああああッッ!?」

カウンターを乗り越えて追いすがってくる付嬢だがまったく取り合わない。

薬師協會長さんからの教えだ。

対人関係、信用を築くことも大事だが、それと同じくらいに舐められるのを絶対に許してはいけない。

舐めてくるヤツは、いとも簡単に他人の持ちを奪い、無駄にして、それで悪びれることはない。

もし自分のことを舐めてくるヤツがいたら徹底的にやり返さなければいけない。

一番調子に乗っているところでドン底まで叩き落し、他人を舐めることの危険さを教えてやらねばならない、と。

僕はその教えを忠実に守るので、もう以前のように理不盡なことがあっても黙り込んではいない。

自分一人我慢していればすべて丸く収まる。

そんな考えは間違いだということを、僕は學んだ。関係ない人々へ被害が広がる前に、トラブルの元となりそうな人はを叩き直させてもらう。

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