《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》43 橫槍

こうして王都にて古代竜退治のクエストが発生した。

僕とスェルは二人して、その難業に挑戦することとなる。

「それでスェル、何か必要なものある?」

「はい! 々ありますので準備が整うまで待っていてもらえますか!?」

といってスェル、今朝からあちこち駆け回っている。

古代竜攻略のプランは完全にスェル持ちなので、僕は彼のすることを黙って見守るしかない。

これじゃどっちが本業の冒険者かわからねえ……。

補給や手続きなどはギルドで行った方がいいとして、ギルドに移してきた。

そこで手持ち無沙汰にしていると……。

「……おい」

聲を掛けられた。

誰かな? と思って見やると見知らぬ男が立っていた。

まったく見覚えがない。

確実に初対面。

そんな人にいきなりケンカ売られる覚えはないんですが。

だってこの険しい表、明らかにこっちへ好ましからざるを持っている。

「オレの名はビリリュート。『橙鉄』の二つ名を持つA級冒険者だ」

「はあ、どうも」

「単刀直に言う。お前たちのクエストをオレに譲れ」

本當に単刀直な人だなあ。

A級冒険者か、たしかに著ている鎧は高級そうで、にもかかわらず使い込まれている。

顔つきも整っていて端正なイケメンの部類。

こんなに形でかつそれなりの強者オーラをまとっているのだから、よくいる新人いびりの類では斷じてなかろう。

しかし、その割に言っていることが……!?

「聞こえなかったのか? ならばもう一度言ってやろう、お前たちが注したクエストをそっくりそのままオレに譲れと言っている。お前たちごときに責任重大すぎる役割だ。このオレが代わってやるということだ」

「嫌ですが?」

深く考えないでとりあえず拒否。

それを予測していたのか相手も特に取りさず……しかし凄い不快そうな表はしたけど……。

「お前たちのことは既にギルドで噂になっている。訪問した初日に早速付嬢を一人退職に追い込んだこととかな」

「あれ、もしかしてお気にりました?」

冒険者と付嬢じゃ仲間意識があってもおかしくないし、よそ者にシマを荒らされたという印象もありえない話じゃなかろうしな。

「いいや、あの付嬢は態度は悪いわ仕事は遅いわでオレたち冒険者側からも評判は悪かった。むしろ追い出してくれて助かったと思うぐらいだ」

「そうですか……!?」

「相手の冒険者ランクで骨に対応を変えたりしてな。オレなどには目まで使ってきて食事におうとしてくるんだぞ。本當にいなくなってくれて助かった」

こちらとしては波風が立っていないようで何よりです。

「しかしそれとは関係なしにオレはお前のことが気にらない。お前がけたクエストは本來オレがけるべきものだった。A級冒険者であるこのオレがな」

「はあ……?」

「等級を笠に著て圧力しているわけではないぞ。冒険者等級は飾りじゃない。本人の実力に応じてクエストを割り振るための大事な目安だ。それを無視することは冒険者の死亡率を徒に上げるだけでなく、冒険者ギルドの本を揺るがすことになりかねない」

はい。

「お前が今回、A級昇格の審査に上っていることも人伝に聞いた。そうなるだけの実力があることも一目見てわかる。しかしだ、A級昇格の予定がある者よりも、実際に今A級にある者が優先して危険に挑むべき、ではないのか?」

どうしよう、主張がちゃんと理屈で通っていて反論の余地がない。

今まで一方的に絡んでくる人って、大自分勝手な理屈にもなっていないオレルールを振りかざして會話もり立たないレベルだった。

それはそれで対応に困るんだが、まったく逆にキッチリと正當を主張してくる人も扱いづらいんだなってことを今知る。

「…………」

僕はしだけ思案して……。

「えーと、そんなこと言われても僕たちはギルド理事さんから直接依頼をけたので、文句は向こうに言ってもらえませんかね?」

こんな抗弁がいっぱいだった。

「そのギルド理事殿が調不良で面會不可となっているからお前に言うしかないのだろう? お前からの進言があればクエスト挑戦権はつつがなく移譲されるはずだ。オレとしてはこれが唯一の手段なのだ、わかったか?」

「う、うす……!?」

ヤバい。

俄か仕込みの反論なんて即座に正論で封殺される。

僕ごときの言論力ではまだまだ彼には対抗できない。これでは言われるままにクエストを掠め取られてしまいそうだが……!

「クエストを譲ってもアナタじゃ絶対クリアできませんよ」

「何ぃ!?」

そこへ現れたのが、クエストの準備で忙しそうだったスェル!?

救いの神!

「まず目標まで行くには私がいないとダメです。エンシェントドラゴンへの辿りつき方は私だけが知っているので」

「そ、そうなのか!?」

「そして私はエピクさんと一緒でなければ一切きませんから、アナタたちの獨力じゃ目標を見つけることすら無理ってことです。はい論破」

「んなぁ!? だ、だったらキミ、我がパーティに加わってくれないか!? 充分な報酬と安全を保証しよう!」

「YESと言うと思いますか?」

「ですよねー!」

スェル強い。

あんな堂々と正論かましてくる人を、別の正論で正面砕してくるなんて。

父親である薬師協會長さんの指導もあるんだろうが、日々薬師として厄介な患者さんとやりあっている果か?

「そもそもギルド理事さんから指名でけた依頼を橫取りしようなんて仁義破り以外の何者でもないじゃないですか。A級であることをひけらかすんなら、ちゃんと模範になってくださいよ」

「ひ、ひけらかしてなんかないやーい!!」

スェルが現れた途端、劣勢に追い込まれるA級の人。

「し、しかしアンパョーネン理事は、オレがB級に上がった頃からお世話になってきた人なんだ! あの人の危機にジッとしているわけにはいかない!!」

「今度はに訴えてきた……!」

手に変え品を変えてくる人だなあ……!?

しかしギルド、報が簡単にれまくってない?

「理事を必ず救い出すためにも、お前らのような子どもだけに任せるのは不安で仕方がない! ここは実力も実績もあるこのA級冒険者ビリリュートに任せるべきだ! アンパョーネン理事のためにも!!」

「本當に理事さんのためですか?」

「何をッ!?」

スェルからの鋭い問いかけに相手のA級さんが固まった。

「ど、どういう意図での質問かな……?」

「ギルド理事の命を救うクエストです。それを達したら大手柄、報酬もたんまり貰えるでしょうしギルドからの評価もうなぎ上りでしょう?」

「そ、そうだとして何が?」

「そうした実利を狙った行ではないと天地神明に誓えますか? まったく微塵も下心はないと? 恩返しのためならクエストの報酬も必要ないと言えますか?」

「ば、バカな! 冒険者はクエストの報酬でを立てているのだ! それを『いらない』などと抜かすのは冒険者失格だ!!」

「やっぱり下心あるんじゃないですか」

「ぐぁあああああああああッッ!?」

スェル強い。

こんなに頼もしいと思える彼は初めてだ。

「何でだよ!? そんなに純粋な一つだけの目的でくことなんてないだろうよ! いいじゃないか無償の人助けで自分がしは得をしても! 何だ!? ほんの一欠片でも私じれば偽善とでも言うつもりか!?」

「そんな極端な話していませんって……!! とにかくクエストに臨む私たちの邪魔しないでほしいんですが」

「いいや、それでも出しゃばらせてもらう! とにかくお前たちのような子どもだけで困難なクエストをクリアできるとは到底思えない! 理事殿の命がかかった絶対失敗できないクエストだからこそ、もっとも功率の高い道を選択すべきだ!!」

実力云々の話になったら僕らも強く言い返せないよなあ。

所詮は正式にはA級にもなっていない、海のものとも山のものともわからないよそ者だから。能力に疑問を持つのも仕方がない。

「目標は、伝説上の生きエンシェントドラゴンだと聞いた。仮にもソイツを倒すことができればA級を飛び越えてS級に昇格できるとも! だったら現A級のオレだって倒せば昇格のチャンスだよな!?」

「やっぱり下心マシマシだった」

「お前らだってたった二人で古代竜に挑むのはいかにも戦力不足だろう!? このオレがパーティに加わってもいいぞ? 力を合わせてクエストを乗り越えようじゃないか!!」

たしかにそう言われればたった二人は心もとない気がしないでもない。

故郷の街ではずっとこの二人で行していたから當たり前に思っていたんだが、ここは土地勘もない王都。

せめて道案でもできる人に同行してもらわねば、クエストの本筋でもないところで余計な時間を取られかねない。

それを目の前にいるA級に頼むか?

それは目上に対してかなり失禮な気がする。

その時、ギルドへってきた男の姿があった。

今朝一旦分かれたアレオくんとエリーさんの新人冒険者カップルだ。

「王都での初クエスト終了~、思ったよりずっとしんどかった~」

「でも無事クリアできたじゃない。この意気で頑張っていきましょうよ」

どうやら無事移籍手続きを完了し、王都でのクエストをこなしてきたらしい。

って言うことは、もう経験者。なくとも僕らよりは王都について知識があるはず。

「お願いだッ! 一緒に僕らのクエストに參加してくれない!?」

「ええッ!? いきなり何!?」

僕らよりは王都での冒険者活経験富のアレオたちを加えて、僕らのパーティに死角はなくなった!

「いや待て! そんな新人よりオレの方が頼りになるだろう間違いなく! オレを選べ! その方が絶対いい! なんでオレを選ばないんだぁあああッ!!」

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