《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》47 S級冒険者エピク

『なんだ、その程度でよいのか?』

僕らのお願いを聞き、古代竜はむしろ拍子抜けしていた。

『我が生きだけでよいとは。「心臓をよこせ」というならしは困るところだったのだがな。あれは再生に手間がかかる』

「はあ……!?」

手間はかかっても再生できるんですかい。

改めて古代竜の超絶さを思い知らされた。

でも生きだって取られるのは嫌ではないのか?

だって失いすぎれば死んでしまう。いや竜はそうでもないのかもしれないけれど。

『人ずれが我がを使うというのであれば、どうせ霊薬作りであろう? 仮に無敵のを得るために頭から浴びようとて、それに必要な量といえば我にとっては一滴程度。なんの不都合もない』

「まあ……」

ですよね。

アナタのその巨からしてみれば……。

ドラゴンはそのあとすぐに、右手(右前足?)の鋭くびた爪で、反対側の手を傷つけた。

竜の巨から見たらとても小さな傷で、ほどの大きさもなかったであろう。

そこから搾り出された々一滴程度であったがそれも竜から見れば。僕ら人間から見たら桶をひっくり返したような量になる。

「うわぁ……!?」

一瞬で目の前がの池地獄となった慘狀。

スェルはすぐさま革袋を出して、その中に貴重な竜を掬いとる。

恐らく解呪薬を作るのにあれで充分なのだろうが、大部分の出が殘ったまま地面に蟠っている。

『別によいさ。放っておけば固まって土に還るであろう』

貴重なものであろうにこともなげに言う。

人と竜の覚の差異ってそんなもんだろうな。

「材料も手にりましたので早速戻って調合にりましょう!」

『おや、もう帰るのか? お前たちほどの者であれば他に何でも助けとなろうに。まあ気が向いたらまた來るがよい。いつでも歓迎しようぞ』

打って変わって打ち解けたムードのドラゴンだった。

『おお、出る時は封印を戻してもらいたい。お前たちならばそうかまわぬが、道理もわからん木っ端が押し寄せてくるのも、それをいちいち相手にするのも面倒で敵わぬゆえ』

「はいはーい」

長居は無用とばかりに踵を返す僕たち。

アレオたちはまだ失神したままなので、僕と、ビリリュートさんがそれぞれ背負っていくことにする。

「……本當に凄いヤツだったんだな、お前は……!?」

一応意識があって、戦いの一部始終を見守っていたビリリュートさんが言った。

「オレと同じユニークスキル持ちだったとは……!! いやスキル能自はオレの『貪呑』よりもずっと上。A級候補に挙げられるだけのことはあるな」

なんか急にしおらしくなった。

「このクエストの詳細は、オレからもギルドに報告を上げておく。そしてお前たちの昇格に賛の立場を表明しておこう。現役A級冒険者からの進言だ。なくともマイナス要素にはなるまい」

「お気遣い痛みります」

ここに來て急に親な態度になったのが、戸いながらも有り難かった。

思い通りにならないことであっても目の前の現実は素直にれる。

それが冒険者が生き延びるのに必要不可欠な能力なんだろう。

かつて、現実をれられずにどんどんドツボにハマっていったガツィーブという冒険者を思い出して、やっぱり上位に食い込むような手錬は意識からして違うんだなあと思った。

ダンジョン生還。

そして休む間もなく早速作業に取り掛かるスェル。

「エピクさんが頑張ってくれたんだから、今度は私が頑張る番です!!」

いや、ここまででもスェルは立派に役立ってくれたと思うけど?

特にダンジョンの隠し通路を見つけたり。

特に僕こそ、主だって役に立ったことといえば古代竜をわからせてやったことぐらいで、活躍の場面がなく心苦しいのだが。

「數種類の薬草を調合した清浄薬に、エンシェントドラゴンのを一滴。混ぜ合わせながらまじないを注。呪いの呪いの飛んでいけ~♪」

そして完

これがメドゥーサ様の呪いすら跳ねのけられるという解呪薬。

呪いをかけた本人から作り方を教わったんだから効き目は保証付き。

早速移し、病床に臥せったギルド理事さんに飲ませると……。

「効くZENAァアアアアアアアッッ!!」

メチャクチャ効いた。

効きすぎて恐ろしくなるぐらいだった。

でもおかげでギルド理事さんはまったくもって元気になり、呪いも消え去ったみたいだった。

が軽い! 節々の痛みも消え去り、むしろ呪いがかかる前よりも調子がいい!」

「ドラゴンのには強化の効能もありますからねー。全に被れば鋼のさを得て老いることもなくなるとか言いますから、一滴でも摂取したら相當な効き目です」

「ありがとう! キミらがいてくれなかったらワシはあのまま衰弱して死するしかなかった! 本當にありがとう!!」

いや、それを言うならアナタに呪いをかけた実行犯は我々の関係者なので、マッチポンプな気分が重々にするから謝された分だけ心苦しい。

「さあ元気になったからには今度は我々がキミたちに報いる番じゃ!! 他の理事どもにも解呪薬を飲ませ、すぐに急理事會議を開く! そこでエピクくんの昇格を決めようではないか!!」

「話し合うではなく?」

「エンシェントドラゴンを討伐したという果に今さら何の検討が必要であろうか。あるべきは認証の確認だけよ! 待っているがいい! 結論は今日中に出るであろうからな!!」

そう言って寢室から駆け出す理事さん。

急ぐのはいいですけど、寢間著から著替えたらどうですか?

そしてあれよと言う間にギルド理事さんらによる會議が始まった。

僕たちが直接面識を持ったアンパョーネンさんの他にも多くのギルド理事が呪いをけて寢たきりの生活を余儀なくされていた。

それが全快をけ、理事全からの心証も最高だと聞いた。

この分なら昇格は堅いが、何が起こるかわからないのが世の中で。

僕とスェルはギルドの一室で待たされ、いまだもたらされぬ結論に心底震えていた。

「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。エピクさんならきっと昇格できますって」

スェルは勵ましてくれるものの本當にどうなることやら。

そもそも僕自に昇格のモチベーションはないんだが、街の皆の期待を思うとどうか昇格しますように、と祈らざるをえない。

街の付嬢のヘリシナさんも都市議會の皆さんも薬師協會長さんも、他多くの街の仲間たちも僕が立派な冒険者となることを願っている。

皆の思いに応えたいし、あとここまで來て落ちてしまったら、今度はどんな報復をメドゥーサ様がやらかすか、これも不安で仕方がない。

『出來る限り円満に済みますように……!』と心の中で祈ること、早數日……ウソ、まあ一時間弱と言ったところであろうか。

僕たちのところへやって來た人影、アンパョーネン理事さんだった。

「待たせたのう。すぐに決まるとばかり思っていたのじゃが、思ったより決めることが多くて長引いてしもうた」

「で、あの……、結果は……!?」

「結論から言えば、まあ心配するまでもないことよ。キミのS級昇格は満場一致で採択された。今日からキミは正式なS級冒険者じゃ」

S級!?

A級を飛び越えてS級!?

そんな話は事前にされてた気はするものの、本當に実現してしまうとは!?

S級って最高の等級だったんでは!?

その上には何もないし、世界中でもS級冒険者は數人しかいないとも聞くのに。

そんな大層な人たちの一人に僕が含まれちゃっていいの!?

「當然であろう。キミがエンシェントドラゴンを圧倒したことはビリリュートからの報告でも確定じゃ。現役A級の証言はダメ押しの決め手となったぞ」

なんか勝手についてきたあの人が、回り回って有利に作用している!?

「やりましたねエピクさん!! S級ですって! 想像を超えて凄いですよ!!」

「そのあとのエピクくんの二つ名を決める議題で難航してのう。々候補が上がったが、最終的に『無空』と言うのが殘ったのだがどうじゃな?」

S級冒険者『無空』のエピク。

「なかなか決まった呼び名であろう?」

「いいです! 凄くカッコいいです! 言いらしたいです!!」

スェルまでもが興に浮かれまくっていた。

一人でこのテンションなのだから、故郷の街に還ったら一どうなることやら。

「さあ、ここで幸福を実するのもいいが一旦置いておいて新生S級のお披目を行おうではないか。他の理事たちもキミを一目見たがっておる。顔を出してやってくれんか」

そうしてアンパョーネン理事に手を引かれ、ギルド理事さん全員が待っている議事堂へとった。

そこには數十人の年経た男が列席していて、皆好意的な表で僕らを迎えてくれた。

彼らもメドゥーサさんの呪いに苛まれていたというなら、救い手である僕らに好意的なものわかるが……。

その中で、僕は見知った顔を見つけた。

こんなところであの人を再び見つけるなんて思ってもみなかった。

その人の名はギズドロビィー。

僕の生まれ育ったエフィリトの街でギルドマスターだった人。

かつて大問題を起こして逃走の果てに死亡した前ギルドマスター、ギズドーン。

そのさらに先代に當たる人だった。

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