《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》50 次なる課題
僕エピクは、引きずられていくギズドロビィーを眺めていた。
泣きわめき、助けを乞いながら誰からも聞きれられず、無様に引きずられていく。
そんな彼がドアの向こうへ消え、完全に姿が見えなくなったところで、何か不思議な覚に囚われた。
これで終わったんだ、と。
僕が冒険者ギルドで味わった苦難の時代。
『無能』『役立たず』と嘲られ、自分自でもそう思って疑うこともなかった。
本當はそれではダメだった。
常に疑い、自分を見つめ直すことで現実をしっかり把握しなければいけなかったのに。
その自発まで奪い取っていたのがギズドロビィーの洗脳だったのだろう。
『お前はダメだ』『お前は役立たずだ』と散々耳元で囁かれ、僕は可能を奪われていた。
ヤツこそがすべての元兇。
その元兇のけじめがついたことでやっと、自分からは何も言えない弱い過去の自分と決別できた気がする。
「エピクくんよ、本當に申し訳なかった」
そう遠慮がちに行ってくるのはギルド理事のアンパョーネンさんだった。
「一冒険者の自信を奪い、手駒として使おうなどギルド職員としてあるまじきことだ。……いや、何も知らぬ子どもに都合のいい事実を植え付け、自由を奪うなど人としてあってはならん……!」
「理事さん……!?」
「その外道の振舞いを我がギルドから許し、あまつさえ高い地位に就けてしまった。キミたちの住むエフィリト街に多大な迷をかけたことも、そもそもこの元兇に対処できていれば未然に防ぐことができたろうに……」
そして理事さんは深く頭を下げた。
「我らの不徳の致すところだ。本當にすまなかった」
「事実関係を正確に調べ、しかるべき処分をしてください。我が故郷エフィリトの街を代表し、冒険者ギルドの良心に期待します」
「必ずや」
他の理事さんたちも次々と頭を下げて、謝罪の意を表した。
冒険者ギルドの中樞が、けっして悪意だけで固まっていないということを確認できて一安心だ。
「ギズドーン及びギズドロビィーの悪行は、街全に影響を及ぼし一時は壊滅の危機にまで追い込んだと聞く。ギルドを統括する立場として大変憾じゃ。何らかの形で償おうと思うが、何かむことはあるか?」
「みですか……?」
ここで僕が勝手に言っちゃっていいのかな?
しかし一旦帰って話し合って……としても両者の距離からかなり面倒になるし……。
どうしようかと悩んだところでいい考えが浮かんだ。
「では、ヘリシナさんを正式なギルドマスターにしてください」
「ヘリシナ……とは?」
「今エフィリトの街でギルドマスター代行を務めている付嬢の人です。ギズドーンがいたころからヤツの勝手に不満を持ち、不正を暴くためにいてくれました」
そしてギズドーン亡きあとはギルド立て直しに邁進している。
彼の仮のものではなくしっかりとした権限を與えてギルドマスターとして認めてほしい。
そうすればきっと彼が、ちゃんとした冒険者ギルドを築き直してくれるだろうから。
「そのヘリシナ嬢とは、地元の出者ですかな?」
「はい、だからこそ街のためギルドのために盡くしてくれると思います」
しかし、理事たちは難しそうな表をした。
「どう思われます……?」
「原則としては地元出者をギルド要職に就けるのは推奨されません……!」
あまり前向きではない態度。
「エピクくん、我々も適當に人事を行っているわけではない。地元人をギルドマスターなどの上役に就けたらどうしても地元の利益を優先し、ギルド全との衝突が起こりかねん」
「そういうことでギルドマスターは、他からの出向者に任せることが原則になっているんだよ……!」
申し訳なさそうに言う理事たち。
「しかし」
そこへ……。
「そうした配慮の上に出向させたギズドーンやギズドロビィーのおで、彼らのギルドはメチャクチャにされてしもうたのじゃ」
そう厳しく言うのはアンパョーネン理事。
「原則だの配慮だの言うても結果が伴わなければ意味はあるまい。いや、その配慮のせいで迷をかけたのであれば、ワシらはむしろ償わねばならん。……ヘリシナなるがギルドを背負うに足る人材ならば、たとえギルドの原則から外れるとしても特例をもって認めようではないか」
「ありがとうございます」
彼に任せることができれば、これほど安心なことはない。
必ずや僕らの街のギルドは復活を遂げることだろう。
◆
こうして僕の昇格を巡るあれやそれやは無事終息した。
勢い余ってS級にまで昇格してしまったのはビックリだが大は小を兼ねると言うし、きっと最上位の方がよかったに違いない。
とにかく王都にやってきた目的は果たしたのであとは帰るだけなんだが……。
「いや、もう一つ目的があった」
何のためにスェルが同伴してきたのか。
理事さんたちの薬を作るためじゃないぞ。
彼は、薬師結社に會するために王都まで來たんだ。
部外者の僕はよく知らないが薬師の人たちは表の薬師協會、裏の薬師結社にそれぞれ所屬しないといかんらしい。
念のためにも繰り返し言うが、裏といってもイリーガルな存在ではなく薬師という職業柄、を守るために存在しているのが薬師結社なんだそうな。
薬も使い方によっては毒となる。
悪用すれば多くの人生が狂わされたり死人が出たりするということで、コンプライアンスには相當神経質となっているとのこと。
表側で顧客と向き合う薬師協會。
裏側で重要な薬の調合法などを管理保持する薬師結社。
この二つが互いを補い合って薬師という職業は立している。
スェルもい頃から薬師の道を進み、そろそろ一人前の年齢。
ということで僕が昇格をけに行くついでに同行しようという話になった。
それがここまでの話!
「あらゆることの後回しになって悪かったけれど、満を持して行こうか!」
「私としてはいつでもよかったんで気を回さなくてもいいですよー」
とスェルと二人連れ立って歩く。
王都の道を。
「……というかエピクさん付き添わなくても大丈夫ですよ? 薬師の話にエピクさんは無関係ですし……!」
「言うてもスェルだって関係ないはずの冒険者のゴタゴタに付き合ってくれたじゃないか」
僕だって頑張ってくれたスェルにお返しがしたい。
腕っぷししか能のない僕だが、彼の目的を果たす途上にもそんな僕が役立てる機會があるかもしれぬ。
どっちにしろ僕自王都での用をすべて果たしているので、ここでスェルに同行しなければ宿屋で寢ることぐらいしかすることがない。
だったら一緒にいる方が斷然いいじゃないか。
「この旅は、僕らの街に帰るまで常に離れることなく一緒だ。それでいいじゃないか?」
「は、はい……!?」
スェル、顔を真っ赤にして俯く。
そんな仕草を妙に可らしく思えてしまった。
「……で、僕たちはどこに向かっているのかな?」
「王都の薬師協會本部です。この大通りを真っ直ぐ進めば著くって……あれ? 大通り終わった?」
どうやら知らない間に通り過ぎていたらしい。
Uターンしてやっと王都の薬師協會本部へと到著。
「僕らの街の薬師協會本部より大きいな……!?」
「やっぱり王都ですから」
王都だもんね。
様々な慨を織りぜつつ中へる。
建には、薬を求めて訪れる人々や、それらの応対に忙しく立ち回る薬師たちでごった返している。
この空気は、僕らの慣れた故郷の薬師協會本部と変わらない。
「ちょっと待っててくださいねエピクさん」
そう言って駆け出すスェル。
ギルド理事會での出來事でもじたが、彼は常に行がテキパキとしている。
気風がいいというか……。
それを言うなら出會った時からそうか。
薬草の供給が斷たれたからって、冒険者じゃなければ無事に出りできない魔の森に一人飛び込むようなお嬢さんだからな。
あの頃からしは大人しくなったかと言えばそうでもなく、あの頃と同じように突撃していくスェル。
その先は王都薬師協會の付であった。
「すみません、私も薬師なんですが、これを見てもらえますか?」
といって差し出される書類。
何が書いてあるかは僕の眼からはわからないが……付の方はそれに一目落としただけでさっと表を変え……。
「かしこまりました擔當の者まで案いたします。また一人の薬師が、知恵の門をくぐることを歓迎いたします」
「連れの人がいますんで同行を許可してください。一人です」
かくして、冒険者ギルドと別の張で先へと進んでいく。
不死の子供たち【書籍販売中】
記憶を失った青年『レイラ』が目を覚ました世界は、 命を創造し、恒星間航行を可能とした舊人類が滅んだ世界だった。 荒廃し廃墟に埋もれた橫浜で、失われた記憶の手掛かりを探すレイラは、 人工知能の相棒『カグヤ』と共に、殘虐な略奪者がのさばり、 異形の生物が徘徊する廃墟の街に身を投じることになる。 【いずみノベルズ】様より 【不死の子供たち③ ─混沌─ 】が販売中です。 公式サイト https://izuminovels.jp/isbn-9784295600602/ 【注意】感想欄では、物語や登場人物に関する重要な要素について語られています。 感想欄を確認する際には注意してください。 サイドストーリー中心の『ポストアポカリプスな日常』も投稿しています。 ※カクヨム様でも連載しています。
8 93「気が觸れている」と王家から追い出された俺は、自説通りに超古代銀河帝國の植民船を発見し大陸最大國家を建國する。 ~今さら帰って來てくれと言っても、もう遅い! 超テクノロジーを駆使した俺の建國史~
ロンバルド王國の第三王子アスルは、自身の研究結果をもとに超古代文明の遺物が『死の大地』にあると主張する……。 しかし、父王たちはそれを「気が觸れている」と一蹴し、そんなに欲しいならばと手切れ金代わりにかの大地を領地として與え、彼を追放してしまう。 だが……アスルは諦めなかった! それから五年……執念で遺物を発見し、そのマスターとなったのである! かつて銀河系を支配していた文明のテクノロジーを駆使し、彼は『死の大地』を緑豊かな土地として蘇らせ、さらには隣國の被差別種族たる獣人たちも受け入れていく……。 後に大陸最大の版図を持つことになる國家が、ここに産聲を上げた!
8 64表世界で最弱だったが、裏世界では、最強そして、『二つの選択肢』
下弦 陽人は、いつもの日常を平和の日常を過ごしていたら、小規模の事件が起きた。その事件がきっかけで人類の裏世界を知ることになるが、「さぁ、選択の時間だ」君の選択はどれだ!!
8 51最強転生者の異世界無雙
勉強もスポーツもそくなくこなす高校生、悠馬。 そんな彼の人生は、唐突な事故で終わりを迎えてしまう。 だが、いろいろあって彼は異世界に転生することとなった。 悠馬の才能は異世界で発揮されるものだった! 悠馬改めユーマの二度目の人生が今、始まる! ※主人公は基本的に他人を助けようとするけど、どうでもいいことで面倒臭いと感じたら冷たくなることもあります。 ※殘酷な描寫は保険です。 ※アドバイスを下さるとうれしいです。 ※主人公は苦戦するかも怪しいレベルでチートにしたいと思ってます。苦手な方はご遠慮ください。 ※主人公はヘタレ系ではありません。
8 66初心者がVRMMOをやります(仮)
親の頭があまりにも固いため、ゲームはおろか攜帯すらもっていない美玖(みく)。このたびめでたく高校一年生になりましたので、今まで母方祖母に預かっていてもらったお金でVRMMORPGをやることに決めました。 ただ、周囲との兼ね合い上、メジャーなものはやりたくない。親の目を盜んですることになるから、ヘッドギアは小さなもの。そして月額料金は発生せず、必要に応じて課金するもの、と色々條件を絞ったら、「TabTapS!」というゲームにたどり著いた。 ただ、このゲーム初心者がやるにはかなり厳しいもので……
8 198男女比が偏った歪な社會で生き抜く 〜僕は女の子に振り回される
就職して戀愛・結婚をし子供が生まれる、これで普通の人生を歩めると思ってた……でも現実は、時間が過ぎるとともに幸せな家庭は崩れ去り、僕を苦しめるだけだった。 戀愛・結婚に臆病になった男が男女比の偏った世界に生まれ変わり、女性に振り回されながらも奮闘する。 ※申し訳ありませんが、感想の返信は停止しております。
8 156