《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》51 エピクに決意を促す依頼
王都の薬師協會本部で、なんか責任者らしき人と引き合わされる。
「私が王都の薬師協會長アニムスです」
と言ったのは、やたらピッシリした服裝の妙齢のお姉さん。
かけた眼鏡をクイッと上げて、幾帳面そうな印象がいかにも都會風のだった。
「アナタがスェルさんですね? 紹介者は……エフィリトの街の薬師協會長バーデングさん」
「はひッ! そうでっしゅ!!」
「張しなくても大丈夫ですよ」
スェルは、都會の重役を前にカッチコチになってしまっている。
ドラゴンの前ですら普通に話せていたのに!?
「バーデングさんとは面識があります。彼が結社の方にられた時、対応したのが私でしたから」
「そうなんですか?」
「あの時小さなの子を抱えていましたが、それがアナタですよね? こんなに大きくなって、みずから一人前の薬師となるために訪れるなんて……、月日の経つのは早いものです」
なんか遠い目をして言われた。
彼の見詰める先には何が映っているのだろうか。
「さてスェルさん、アナタ自はここへ訪問した用件をちゃんとわかっていますね?」
「も、もちろんです」
王都薬師協會の奧へ通されて、応接室のような場所。
そこで僕とスェル、そして応対してくれるアニムスさんの三人きりで話は進む。
「薬師結社に正式に加することです。一人前の薬師になるには薬師協會と薬師結社、両方に所屬しないとダメだって……!!」
「そうですね。薬師の保有する知識は、モノによっては簡単に人を殺して社會に混をもたらすものもあります。我々はそうした知識の暴走を許さぬために、表側の協會から獨立した薬師結社を設立しました。……ここまでの経緯はご存じですか?
「はい、お父さんから聞きました……!」
歴史の授業みたくなっている……!?
「薬師結社に加すれば、より深い調合の知識にれられ、アナタの薬師としての実力は飛躍するでしょう。ですがだからこそ、これから手にれる知識の取り扱いに多大な責任が発生します。一歩間違えば大量の死人が出るほどの危険。それを薬師から発生させるわけにはいきません」
「わかりまっしゅ!!」
また噛んだ。
「なので薬師結社への加には、『絶対にを守る』という誓いを立ててもらい、さらには誓いを守れるだけの意志、そして薬師としての適を計るための試験をけていただきます。それにパスして初めて正式な薬師結社への加が認められます」
「が、頑張ります!!」
「それでは儀式は今夜、結社のマスタークラスを集めて行われます。を守るための結社の行も裏に行われなければいけないので了承してください」
「わかりますたー!!」
だからな、。
「差し當たってその前に、聞いておきたいことが……。旦那様も儀式には參加されるので?」
「はい旦那様も……旦那様?」
はて?
一誰のことやら?
しかしながら王都の薬師アニムスさんの視線は真っ直ぐこちらを向いている。
……。
僕?
「こちらの男は、スェルさんの配偶者ではないのですな?」
「何でそうなるんですかッッ!?」
さすがに僕が堪らず絶した。
はなるべく小聲で話さなければいけないが、さすがに聲を荒げずにはいられない。
「違うのですか?」
「いや……僕はただの付き添いというか……ボディガードといいますか……!?」
都會は々と危ないので。
スェルのようなか弱い一人では危険がデンジャラスだろうと僕を同行させた。
そういう配慮をしたお父さんのですよ!!
「そういうことであれば、アナタの同伴は許可できません」
「なんでさッ!?」
「ここまでの話を聞いてわかりませんか? 薬師結社にまつわる活のすべては。そこに部外者の介を許可できるわけがないではないですか」
「ああぁッ!?」
言われてみればそうだ。
なんでそんな簡単なことに気づかなかったんだい僕!?
「薬師結社はの存在なのですから、當然無関係の輩が関わることは厳です。例外があるとすれば関係者の親族、親類縁者である場合。年頃から見てスェルさんとの関係を推測すると夫婦とするのがもっとも自然……」
「ナチュラル!?」
「スェルさんのを案ずる気持ちはわかりますが、薬師結社の存在理念と照らし合わせてもまったく無関係の人間を儀式に參加させるわけにはいきません。本番では席を外していただきますがよろしいですね?」
「よろしくありません!!」
ここまで來て肝心な時にスェルと離れ離れになるとは許容できぬ!
スェルのお父さんである薬師協會長さんから頼まれたんだ。僕は必ず片時も離れずスェルを守る。
「ですが、何度も言うように薬師結社の活に部外者は接止です。を守るために必要なことです」
「そこを何とかなりませんかッ!?」
「なりませんね、親族參加ですらこちらにとっては最大限の譲歩ですから」
たしかにそうだ!
本音なら薬師以外は完全シャットアウトしたいだろうからね、それが!!
「大丈夫ですよエピクさん。儀式の間ぐらい私一人でも……!?」
スェル。
僕を困らせまいと健気なことを言ってくれる。
しかしダメだ。
それでは僕の気が治まらない。
薬師協會長さんに頼まれたということもあるが、僕にとってスェルは最大の恩人、そんな彼の大切な時に立ち會えずしてどうする?
力になってやれずにどうする!?
かつての、狀況に流されるばかりで何の意思も持たなかった僕。
主張もせず抗おうともせず、ギズドーンやギズドロビィーにいいように利用されるだけだった僕が変わったきっかけは、森で彼と出會ってからだ。
スェルと出會ったからこそ僕の本當の人生が始まった。
つい先日、ギズドロビィーの破滅を目の當たりにし、すべてに決著がついたと安心できたのも、スェルが一緒にいてくれたからではないのか。
そう言うことをいろいろ考えていたら、腹が據わった。
「よし、じゃあこうしよう」
僕はスェルの手を握り……。
「スェル、結婚してほしい」
「ほるぇええええええええええええッッ!?」
スェル驚愕の絶。
「今ここで夫婦になれば僕も儀式に參加可能ですよね?」
「理論的にはそうでしょうが、結婚の目的としてはいささか不純ではないですか?」
「いいえ、僕は気づいたんです。スェルが僕の人生にどれほど重要な存在かを。これを機會に気づかされました……!」
僕はきっとこの先一生スェルを大事にしなければ、この人生報われないような気がする。
僕の人生の転機は、スェルが運んできてくれたようなものだから。
それに気づいたからには今ここで、彼との関係にキッチリとした形をつけたいのだ。
「スェル、僕と結婚してください」
「はい……!」
即答だった。
傍で第三者のアニムスさんがヒュウと口笛を吹いた。
「私だって、森で初めて助けてもらってからエピクさんが大好きでした! 運命の人みたいでした! だから……エピクさんと結婚します!!」
「スェル!!」
抱き合う僕たち。
その橫でアニムスさんがパチパチ拍手していた。
この瞬間まで気づかなかったが、僕たちがこうなることは出會った時から既に決まっていたのではないだろうか。
薬師協會長さんが僕らを一緒に王都へ行かせたのも、僕らがこの気持ちに気づいて覚悟を固まるように促したかったからなのか。
「わかりました。ではそちらの方は加希者スェルさんの親族として特別に儀式に參列することを許可しましょう。はー、しかし獨には目の毒な景ですねえ」
アニムスさんに呆れられてしまった。
すみません互いの好意が極まった直後なので。
「ですが、一応安全確認のために素を聞いておきたいのですが。エピクさんと言いましたか。職業は何をされていますか?」
「はい、S級冒険者です!!」
「はいはいS級……えッ? Sッ!?」
ビックリして二度見してくるアニムスさんであった。
將來を誓い合ったからには挙式とか指の換とか々することはあろうが、まずはスェルの薬師としてのランクアップのため、薬師結社の加儀式に挑もうではないか。
頑張れスェル!
僕も夫として、すぐそばで応援するぞ!!
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