《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》52 を守る者たち

そして夜になった。

薬師結社の加儀式をけるために僕とスェルは改めて王都の薬師協會本部へ訪問する。

裏に。

薬師結社はの組織であるため、その存在もでなくてはならない。

よって泊っている宿にも外出の目的は明かしてはならないため適當に誤魔化しておいたが、そのために『夜のデート』とでも誤解されたのかもしれない。

互いの好意が通じ合ってからイチャつき度が段違いに増した僕たちなので。

また『昨夜はお楽しみにでしたね』とか言われそうだった。

そういう懸念もなんのそので、僕らはいざ薬師協會本部へとやってきました。再び。

「夜だと大分雰囲気変わるなあ……」

「表向き閉まっていますしね」

薬師協會としてはとっくに営業時間外。

なのにろうとする僕らは、なんだか泥棒の気分になってしまった。

悪いことをしてないはずなのに後ろめたい。

「裏口からるように指示をけてます」

だもんね」

益々後ろめたい。

そうしていざ訪問したところ……。

「ようこそ、新たに知の門を叩く者よ」

「うわぁ怪しい」

出迎えてくれたアニムスさんは黒いマントを羽織っていた。

怪しい。

「それが薬師結社の制服なんですか?」

「ただの雰囲気作りですよ」

「怪しいからやめましょうよ」

そのうち本當にテロ組織として認識されかねん。

たとえでも平和的な活をしているとアピールした方がいいんでは?

「さて、本格的に儀式へる前に、薬師結社の活とその意義について改めて説明しておきましょう」

「もう充分なんでは?」

「薬師の調合する薬の中には危険なものもある。その取扱いを萬全とするためにもできる限りにしておかなくてはならない。そのを管理するための組織が薬師結社です」

「知ってます」

知ってます。

「薬師結社の構員は、必然薬師協會の所屬者と重なります。薬師協會も、薬の売買のために必要な組織であって、単なる薬師結社の隠れ蓑などではありません。ただ薬師結社の上位構員……グランドマスターは、引退した薬師協會長によって構され、協會に順ずる以上に薬師への帰屬心を求められます」

「ずっと言うまい言うまいとしてきたんだけど……」

……やっぱりカルトじゃない?

「カルトじゃないです」

「そうかなあ?」

「今夜スェルさんの儀式に參加して加の是非を問うのも、歴代王都で薬師協會長を務めた長老方です。職業としての薬師をこよなくする方々ですので、けっして失禮のないように」

「うす……!」

聞くからになんか気難しそうな人々なんだろうなとわかる。

対人だと途端に気の小さくなるスェルが、そんな古老らに囲まれてちゃんとやっていけるだろうか。

新婚夫婦としては心配で仕方がない。

「大丈夫! 僕がついているからね!!」

「エピクさん!!」

抱き合う二人。

互いの好意を自覚し合ってから、遠慮が『消滅』スキルで消滅してしまった。

「挙式前からイチャ付き合うのやめてくれませんかねえ?」

「何言ってるんです! 今が一番楽しい時期じゃないですか!!」

「そうですか……!!」

アニムスさんのちょっとイラっとしたが伝わってきた。

「本當に冒険者というのはその時ので生きていますね……!? まあ長老たちを待たせてはいけないのでちゃっちゃと進みましょう」

そうしてアニムスさんに案されて進んだ先、そこは広くて開けた大部屋だった。

何やら特別めいた祭壇が築かれていて、その周りをやはり黒マントを羽織った數人が取り囲んでいる。

「今宵、新たに知の門を叩く者が現れた」

「「「「今宵、新たに知の門を叩く者が現れた」」」」

「試すべし、大いなる知の守り手として」

「「「「試すべし、大いなる知の守り手として」」」」

子よ、神にされる資格ありしや」

「「「「子よ、神にされる資格ありしや」」」」

「人類の至寶をけ継ぎ繋ぐ擔い手なりしや」

「「「「人類の至寶をけ継ぎ繋ぐ擔い手なりしや」」」」

……。

怪しい。

「やっぱり衛兵さんに通報するべきなのでは?」

「心配ないですよ。儀式を始める際の決まり文句みたいなものなので」

まあ、形を大事にするのは必要かもね。

そうして怪しさ大発の黒マントたちが一斉にこちらへ向く。

中央に位置する一人が、とりわけ老いているけれども存在の濃厚な男だった。

「よくぞまいった新たなる叡知の擔い手よ。先々々々々々代王都薬師協會長にして現、薬師結社の最長老エニシダツタが歓迎しよう!!」

先々々々々……。

偉い昔の人がまだご存命なんだなあ……!?

「こういうシステム柄か、表の薬師協會はポストのれ替わりが早いんですよ。薬師協會長も大三~四年で代してしまうので」

いかにもまだ三十代前半っぽいアニムスさんが王都薬師協會長なのもそういう気風のせい?

組織のフレッシュさが保たれるにはいいかもしれんが……。

「生粋の薬師なら面倒な組織管理より、調合に打ち込める方がいいからのう」

「そうじゃそうじゃ、協會長なんて三年も務めれば充分じゃわい!」

「それに比べて結社のグランドマスターは、たまにこうしたイベントでお祭りがあるからいいのう」

「良い気分転換じゃ!」

この歴代協會長のジジイども……!

「さてエフィリト薬師協會長バーデングの娘スェルよ! おぬしの希により、薬師結社への加儀式を執り行う! 薬師のさらなる叡知へと踏みるために避けて通れぬ道、乗り越える覚悟はあるか!!」

「ひゃひッ!」

また張して噛んでいる。

大丈夫かなスェル? 張が極まって肝心なところで大ポカやらかしたりしないだろうか?

「その意気やよし! しかしながら儀式が行われてもまだおぬしの結社加が確定したわけではないぞ!」

「ぬしが薬師として必要なだけの知識を……心意気をちゃんと持ち合わせているか、それを示さねばならん」

「薬師暦平均四十年以上のワシらの眼をもって納得させてみよ!!」

「さすれば汝は、正式な薬師結社の一員と認められ、さらなる叡知へと踏み出す階を得られるであろう」

「さあ、お前さんに儀式をける覚悟はあるかな!?」

口々に唱え合う薬師結社の長老たち。

前もって練習していたのかな?

「覚悟はありまぁす!!」

そして元気に答えるスェル。

その意気だ頑張れ。

「ではやる気に満ち溢れた若人に早速試練を與えようではないか」

「我ら薬師結社からの試練、それは……!!」

……!?

この怪しい雰囲気、まさかカルト的なエログロチックな試験が……!?

「ペーパーテストじゃッッ!!」

実に普通だった。

おどろおどろしい祭壇セットの橫に、何とも簡素な機椅子セットに筆記が並んでいる。

「テストの容は、薬師なら大知っていて當然の調合知識ばかり! キミが薬師として日頃真面目に勵んでいるなら簡単にわかる問題ばかりじゃ! さあ、果たして百點満點を弾き出せるかな!?」

「わかりました、私やります!!」

迷わず即座に椅子に座るスェル。

問題用紙と向かい合う。

「きっちりS級冒険者に昇格したエピクさんと故郷に錦を飾るためにも、必ず合格してみせます! エピクさんがS級で、私が結社に加、そして二人の結婚と祝い事をコンプリートしてみせます!!」

「おめでとうがやたら多めじゃのう」

盆と正月がいっぺんに來てもまだ足りないじ。

も、王都くんだりまで來たからには果を上げて帰りたいよね。

頑張れスェル! 難しい問題でもキミならきっと解けると信じているぞ!!

「エリクサーの作り方……、大丈夫だわかるわ!」

おお、調子よさそうだ!

そのまま全問正解する勢いでひた走れスェル!!

そしてスェルはどうやらすべての回答欄を埋め終えたようで……。

「採點の結果が出ました」

「スェル嬢は百點満點中……!」

「……九十七點!」

おおッ!? これは高得點!!

合格ラインが何點かは聞いていないが、これはもう確実に試験をパスしたんじゃないのか!?

「見事じゃ、ここまでの高得點を弾き出せたものは、過去の験者の中でも早々おらん」

「だからこそスェル、キミは……!」

「「「「「不合格ぢゃッッ!!」」」」」

なんだって!?

まったく予想外の展開に僕もスェルも表が凍った。

僕らの前途に暗雲立ち込める……!?

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