《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》54 謁見

さて、これでもうすべてが終わった。

僕は昇格審査を終えてS級冒険者になったし、スェルも無事薬師結社に加できた。

さらには結婚もした。

僕の當初の予定A級は一足飛び越えちゃったし、スェルに至ってはなんか崇め奉られていたし。

そもそも結婚する予定はなかったんだが……。

などといささかオーバーラン気味のところはあるが、とにかく王都で済ませるべき用のすべてを済ませた僕ら。

ならばもう王都には一秒だって留まる必要はない。

とっとと発って我が街エフィリトへ戻ろうじゃないか!!

薬師協會長さんやメドゥーサ様に結婚の報告をしないとだしな。

しかし短い間ながら王都でもお世話になった人ができたので、そういう人たちに挨拶を欠かしてはならないな。

そう言うことでまず會ったのが、新人冒険者のアレオくん。

人と一緒にクエストに出かけようとしているのを上手く捕まえることができた。

「ええッ!? エピクたち帰っちゃうの!?」

用件を告げると心底意外そうな反応をされた。

意外と思われたことが意外。

「だってエピク! お前S級に上がったんだろう!? だったら王都でこれから大活躍していくものだと!?」

「それは僕の予定にはっていないねえ」

「なんでだよ! S級の活躍する場として王都以上に相応しいとこはないだろ!?」

アレオくんは、僕がS級冒険者として邁進することに拘っているようだが、僕の冒険者人生はあくまで地元に貢獻することを主題としている。

等級がその助けになればと思い昇格にチャレンジしたので、けっして昇格はメインではないのだ。

「くっそー、エピクらと一緒に大冒険が待ってると思ったのになー」

「仕方ないわよ、ヒトにはヒトの人生プランがあるんでしょう? 私たちも焦らずに私たちなりのペースでいきましょうよ」

彼の人に當たる魔師エリーさんが言う。

突っ走り気味で不安なところのあるアレオくんだが、彼が手綱を引いているなら安心だろう。

も彼で、同であるスェルと別れを惜しみあっていたが……。

「さて、それじゃあ王都でお世話になった人との挨拶も済んだし、出発するか」

「えッ、もう? 他にも挨拶すべき人はいるんじゃ……?」

エリーさんが心配げに言うが、そんなこともないはず。

僕たちの挨拶ミッションはフルコンプだ。

「そんなわけないじゃろう?」

そう言って僕の肩をガッシリ摑んできた老人がいた。

さすがに唐突なのでビビったが、その老人をよく確認して一安心。

見知った顔だったので。

「アンパョーネン理事……」

「我ら理事會全、キミに多大な恩義があるというのに何も言わず去ろうというのは、ちと薄ではないか? ん?」

まさか一般冒険者の行きうこんなところにお出ましになろうとは。

いや違いますよ?

ちゃんと挨拶はしようと思いましたけど、ほら偉い人って忙しそうじゃないですか。

「危ないところであったわ。S級冒険者の昇格手続きがすべて終わらぬまま本人にどこかへ行かれてはギルドのメンツが丸潰れ……。まあ、実際はよくあることなんじゃがのう」

「え? 手続きってもう全部終わったんじゃないです?」

ギルドに認可されて、新しいバッジを貰えば終わりでしょう?

「S級を他の等級と一緒にしてはならん。何せ世界に數人しかおらぬ最上等級ゆえにな。一旦任命されればお祭り騒ぎは避けられぬのじゃ」

「そういうものですか……!?」

「なので新たにS級冒険者が輩出されれば他等級では行われないような催しも開かれる。お披目とかな。S級冒険者は國王に拝謁する権利を賜る、義務ともいえるが」

ふーん。

王様に。

「國王陛下にッ!?」

「はい! えつッ!?」

しかし周囲の方が過剰に反応した。

アレオくんとかエリーさんとか、目を真ん丸に見開いて驚愕している。

「冒険者って、王様に謁見できるんですか!?」

「S級ならばな。世界最高レベルの冒険者はダンジョンを踏破し、ドラゴンをも打ち倒し、影響の大きさは計り知れん。その存在は王家とて無視することはいかんのじゃ」

アンパョーネン理事は説明する。

「それゆえS級冒険者は國王への謁見が慣例となっておる。顔合わせして繋がりを深めようとな」

それで王様に挨拶しに行かねばならんと?

っていうか王様って、あの王様ですよね?

國で一番偉い人!?

王様が治めるから王國という!

「で、どうするエピクくん? 國王に會ってくるかね?」

「そんな気軽に!? っていうか聞くんですかそれを? YESかNOか答えていいんですか!?」

仮に『斷る』って言った場合通っちゃうものなんですかね!?

「斷ってもいいよ。冒険者は自由が本質じゃからのう。たとえ國家の主人とて、冒険者の自由を奪うことはできん」

「あッ、そうですか……」

「S級冒険者に登り詰める者ほど変わり者が多いでの。謁見などブッチぎって飛び回るような連中ばかりじゃ。エピクくんがそれに倣おうと全然問題にはならん」

意外と、僕の方に裁量が任されていた。

「とはいえ、S級冒険者に無視された王家の苛立ちは大抵ギルドに矛先が向かうがの。そうしたしわ寄せをけ止めるのもギルド理事の務めよ」

「それマズくないです?」

「まあ、現職ギルド理事の何人かが首を差し出せば済むことよ」

それって辭職って意味ですか?

まさか比喩表現なしでの正真正銘の打ち首ですか!?

僕としては會うのか會わないのかどちらが正解なのかはわからなかったが、結局會うことに決めた。

理事さんに遠回しに脅迫されたこともあるが、王様って言わずもがなで一番偉い人だし、そんな人を無視して後々問題になったら嫌だ。

僕の中にいつまでも殘り続ける小心者の心が、無難な方へと舵を切らせることとなった。

で、會うとなったらその日のうちに王城へ連れてこられた。

「これが王様の住むところ……!?」

「メチャクチャ豪華ですぅ~!?」

隣にはスェルも並んでいる。

既に結婚の申し込みをして、承諾もされてるんだから僕らは一心同、どこに行くにも一緒だった。

さらには冒険者ギルドのアンパョーネン理事も同行。

この人に一緒にいてもらわないと困る。

初めて訪れる王城という別世界に、案人が誰もいないというのは心細すぎる。

僕がこの王城から生きて出するまでアンパョーネン理事には手を引き続けてもらわねば。

「そんな心配せずとも、取って食われたりなどせぬさ。キミたちが日夜潛り続けているダンジョンの方がよっぽど危険であるぞ?」

「僕はダンジョンにはあんまり潛ってないので……」

「そうであった。キミの故郷にある魔の森はダンジョンよりも危険だがな」

ハッハッハ、と何故か冗談めかして笑う理事。

そのまま王城の豪勢な廊下を進んでいくと、これまた豪勢な人へと行き當たった。

見るからにじさせる存在が豪勢なのだ。

僕が今まで出會ってきた人の中でも、薬師協會長さんのような質実剛健さとも、メドゥーサ様のような深遠さとも種類の違う人格の凄みがあった。

「あ、この人が王様か!」

と一目見てわかった。

ここでヘマをするわけにはいかず、すぐさま膝を屈して平伏する。

「お初にお目にかかります國王陛下、このたび新たにS級の稱號を得たエピクと申します」

「いや……ッ!?」

自分なりにあらかじめ練習しておいた挨拶がちゃんとできたと思ったんだが……。

しかし國王陛下から卻ってきたリアクションは微妙だ。

それどころか隣に控えるアンパョーネン理事までいたたまれない表で……。

……どうです?

「……あのなエピクくん、こちらの方は宰相のブランセイウス卿じゃ」

「は?」

「王様ではないんじゃ。まあ勘違いしてしまうのも無理はないかもな」

いやぁ間違えた!?

一つのミスも許されないと言った傍から!?

「まあ勘違いするのもわからんではないがな。宰相殿は賢明にして優秀、今この國が平穏なのも宰相あってのことだと評判じゃ」

「やめてくださいギルド理事。誰が聞いているかわかりません」

冷靜にたしなめる宰相様の態度は、なるほど理知的なものをじた。

「こちらも予定にない場所で待ち伏せして悪かった。この國に新たに現れた俊英を一目見ておきたくてな。冒険者などという勇ましい肩書きの割には優しげな顔つきをしている」

「ははは……」

僕は苦笑した。

他の冒険者が聞けば侮辱されたとけ取り激昂したかもしれない。彼らにとって『優しい』とは『弱い』ということだ。

しかし僕自格も弱腰だから事実を突かれたというだけのことで、やっぱり苦笑するしかないということだ。

「優しい英雄は民にとっては有り難いものだ。強く勇ましいだけの英雄は、ただ周囲に破壊を振り撒くだけの場合もある。國政を與る宰相としては、新たなる英雄がどのような気かは重要だ」

「は、はあ……!?」

「不躾であったことに変わりないゆえ詫びよう。私などよりも國王陛下との謁見がメインであることだしな。さあ、ここからは私が案しようではないか」

そう言って王城の奧へと案される。

王様の待つ謁見の間へと。

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