《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》57 帰還と報告

僕はエピク。

ただのしがない冒険者。

……であった。

世の中ちょっとわからないもので、今はそうではない。

等級がね。

S級になりました。

A、B、C、D……と下っていくならSなんてどんだけ下なんだよ、と思うが。

実はS級はAの上。

最上等級なのです……!?

ついこの間まで最下級のFだった僕が何故!?

急激な変化すぎて僕自が戸う。

それでもまあ、ちゃんと試験をけて合格した結果ではあるんですが……。

その試験を終えて、それゆえに向かった王都から帰ってまいりました。

我が故郷、エフィリトの街へ。

街へるなり凄まじい歓迎をけた。

「S級冒険者の凱旋だぁああああああッッ!?」

「我が街の誇りッ!」

「キャーッ! こっち向いてーッ!!」

何事か!?

城門をくぐった途端に黒山の人だかりが!?

なんかのお祭りかと思うほどに結集しておる!?

めっちゃたくさん!?

「皆、新しいS級冒険者を一目見ようとしているんですよ」

その人だかりの中から抜け出し、代表するようにいうのはヘリシナさん?

我が街の冒険者ギルドに勤める付嬢さん。

「ギルド理事會からの先れは屆いています。S級昇格、おめでとうございます」

「ありがとうございます……?」

それでこんな大歓迎?

ちと大袈裟すぎやしませんかね?

「何言ってるんです! S級冒険者の輩出は都市にとって非常な名譽!! 歴史に殘るだけでなく、噂のS級を一目見ようと周辺都市からも人がやってきて儲けにもなるんです! 街中湧き起こるのも當然の話ですよ!」

僕、観資源となっていた。

待って。もしやこの人だかり、街の外からも!?

「私のこともギルドマスターに推薦していただいて……。おでエピクくんのS級昇格と共に、私への正式な辭令も屆きました。晴れて私は正式に、エフィリト街の冒険者ギルドマスターです」

「おお! それはおめでとうございます!!」

「エピクくんのおかげでしょう」

ヘリシナさんは、前ギルドマスター時代からギルドを支えてきた功労者。

かつて腐りきっていた冒険者ギルドにおける唯一の良識として、崖っぷちでギルドを支え続けてきた。

そんなヘリシナさんだからこそ新しいギルドの擔い手に相応しい。

……と思ってギルド理事さんたちにお願いしておいたんだが、承ったからには直ちに実行してくれたらしいな。

偉い人たちに良識があって実行力がある、組織が健全な証だった。

この街の冒険者ギルドも、これからそうなってくれればいいんだが……。

「前ギルドマスター、ギズドーンのおかげで崩壊寸前だったギルドですが、今は著々と立て直しが進んでいます。一番頑張ってくれているのはリザベータさんですね。彼が教役となって殘留した冒険者たちをビシバシと鍛えています」

「あの人まだいたんだ……」

A級冒険者のリザベータさん。

元々は前ギルドマスターが箔付けのために呼んだ上級冒険者。しかしながらヤツの思にはまったく乗らず、到著したその日から僕たちの味方に立ってくれた奇特な人だ。

本來よそ者であるはずの彼がもっともギルド再建に役立ってくれているというのも、なんだか心苦しい。

「ギズドーン制下でぬるま湯に浸りきっていた冒険者たちも地獄シゴキのおかげでなんとかD級程度まで平均戦力を上げています。それに加えてA級の客分一人にS級一人……。王都から遠く離れた地方ギルドとしては中々の過剰戦力ですねぇ……」

そこまで言ってヘリシナさん、フッと乾いたため息をついて……?

「かつて前マスターのギズドーンは、ウチのギルドを『最強にする』などとほざいては自分勝手に所屬冒険者を追放したり、クエストを一方的に破棄したりとてんやわんやでしたが……。そんなクソ野郎の求めてやまなかった狀況が、彼が失墜してまるきり方針転換した末に実現している。……何とも皮ですね」

も忍耐の時間が相當長かったので、心の奧底に溜め込んできた者があるんだろうな……。

「……過ぎ去った過去のことはどうでもいいでしょう。とにかくギズドーンの呪縛から解き放たれて我らがギルドは本格的に新生するんです! エピクさんもこれからはギルドの支柱としての活躍を期待しますね!!」

「まかせてください!!」

僕だって伊達にS級冒険者になったわけではないからな!

こうして僕が昇格したのも、すべてはこの街にいる人々の期待に応えて……いままで貰った恩をお返しするため。

晴れてS級となったからには、今こそ街に最大限の貢獻を!

そのためにも……。

「薬草採取を頑張ります!!」

「エピクさん!? それはF級相當のクエストですよ!?」

だって僕は薬草採取のクエストしかしたことないし……。

初心を忘れないことが大事だって誰かも言っていたよね!!

さて、そんなじで街への帰還を果たした僕なのだが……。

まだ最高最大のイベントを殘していた。

スェルと共に薬師協會へと帰還を報告。

主な報告相手は、スェルの父親でもある薬師組合長さんだった。

「ほう……、スェルと結婚を、ね……」

「事後報告になって申し訳ありませんですますが……!!」

ヤベェ、めちゃくちゃくちゃくちゃ張する……!?

僕と一緒に王都へと上京したスェル。

そこでとある事から、僕たちは即日結婚し、將來を誓い合う仲となった。

そのことを薬師協會長さんにお知らせしないわけにはいかない。

それに伴う僕の張を推し量ることはできるだろうか!?

ただでさえ結婚相手の父親というのはげにも恐ろしき相手。

加えて僕にとって薬師協會長さんは、世間の荒波の乗り越え方をじかに叩き込んでくれた師とも親ともいえる方……!

そんな恩人の娘を、本人の許可なく貰ってしまったんだから、僕のうしろめたさたるや想像にがたくないのではないか!?

心なしか、協會長さんの視線がうすら冷たい!?

「もうッ! お父さん意地悪しないでよ! こうなることがわかってて私たちを送り出したんでしょう!?」

僕の隣に座るスェル、ここにきて発言す。

「薬師組合長のお父さんが結社のシステムに不案なわけないもの! 家族以外が儀式に參加できないことも知ってて、それにエピクさんがどう対応するかまで計算づくなのよ! だからお父さんに怒る資格なんてないわ!!」

そこまでめき立つと、薬師協會長さんも苦笑じりに……。

「……そうだね、エピクくんならウチのスェルをちゃんともらってくれると信じて張った罠だ。事前の通告もなくエピクくんには悪いことをした……」

「いえいえ、そんな!」

「エピクくんも正式に冒険者ギルドへ戻り、ウチへの接點もなくなる。スェルなどは會う機會も俄然なくなるだろう。娘が寂しい思いをするのを親としては放っておけなくてね」

そう言うとスェルが脇から『お父さん!?』と弾かれたような悲鳴が?

「ともかくエピクくんはウチの専屬ではなくなったが、これからはれっきとした家族だ。よろしくお願いしたい」

「はい……!」

人と人の新しい繋りができる。

それもまた喜ばしいことだと思った。

僕が冒険者ギルドに復帰して殘念だと思えることは、この優しくて暖かい薬師協會の人たちと離れてしまうこと。

しかし僕が切り拓いた新しい道のおかげでこれからも一緒に行くことができる。

それがまずまず嬉しかった。

「こちらからも報告することがあるんじゃないの、アナタ?」

「ヒィ!? メドゥーサ様!?」

さらに現れたのは、メドゥーサ様。

山の主として人々に畏怖畏敬される超常の存在!

それが今スェルのお母さん兼、薬師協會長夫人として街に住んでおられるという珍事。

王都滯在中もギルド理事さんたちが呪われたり、王様が呪い殺されたり……。

ヤベー意味でのこの方の存在がひしひし伝わってくるんだよ!

「う、うむ……、そうだな……!? スェル、実はなんだが……!?」

「はい?」

唐突に歯切れの悪い薬師協會長さん。

いつもの彼らしからぬ態度に……どうした?

「おめでとうスェルちゃん、お姉ちゃんになるのよ」

「は!?」

もしや……。

自分のお腹をでさするメドゥーサ様に……、気まずそうにはにかむ薬師協會長さん。

まさか!?

やったのか!?

二人ともやったんですか!?

ご懐妊おめでとう!

僕のS級昇格より大事件じゃないですか!?

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