《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》74 舞臺は法廷

ペガサスさんとアリオン様は語る。

『しかしまあ「聖獣が生娘を好む」というデマが本當に広がっているな。それもこれも全部ユニコーンの変態のせいだ』

『むしろ大地母神の眷屬である私が、子を孕まぬ処を好むのは矛盾していますのにね。かといってあのような、貞り上がりのための道と見なしているは近寄せたくありませんが』

ヒサリーヌは、こちらの想像以上にがめついなのか、その本を白日の下にさらして神ブレイク狀態に追い込むことができた。

追い込まれてすっかり戦意をなくした聖兵たちも武資を取り上げて、追い散らした。

『今度斷りもなく侵してきたら容赦なく皆殺しにするぞ』という脅しをかけて。

今頃はヒィヒィ言いながら王都へと逃げ帰っていることだろう。

勇者も聖も一緒。

勇者の方は最初から最後までなんでいたんだろうというノリだったがけなくスタコラと。

の方は放心狀態だったのを聖兵の人たちが擔いでいった。しかし義務によるものとしか見えない挙で、あの聖はもう誰からも尊敬されていないし憧れもしないのだろう。

の聖としての人生は、確実に終わったのだ。

「甘すぎはせぬか? 無傷で解放など?」

それに不満げなのはイザルデさん。

「デメテール様が庇護する聖なる地面を、あのように腐り果てた連中ので汚さないというのはわかる。しかし命までは取らねども指を切り落とすか、耳なり鼻なり削ぎ落として我々を脅かした代償を痛みで支払わせるべきだったのでは?」

甘くするばかりでは舐められる。

ヒトを害してリスクが何もないのであれば、こちらを軽んじて再び攻めてくるかもしれない。

そういうことを不安視するのは、土地を守る戦士としては正常な思考だろう。

しかし僕らには僕らの考えがある。

けっして自分たちの手を汚す度がないから問題を先送りにしたわけじゃない。

「もしここでヤツら全員殺したって、問題は解決しませんよ」

イザルデさんを納得させるために、僕は言う。

「ヤツらは組織なんです。ヤツらがいなくなっても、ヤツらと同じようにしてこの土地を脅かす連中がまだまだたくさん來るんです」

「だから殺そうが殺すまいが同じだというのか!? 何度來ようとそのたび殺し盡くせばいつかは新手も盡きるだろう。それまで戦い続けるのが戦士の務め!」

「それも一つの手ですが、もっとローリスクローコストで解決する手段があるとしたら? しかも一挙に手っ取り早く」

「何?」

そのために組んだ予定の一部が、勇者たちの解放だとしたら。

彼ら厄介なモノたちの対処のために、僕の故郷で大人たちもいてくれて、組まれた策を僕はスェル経由でけ取っている。

ここですべきことはあらかた終わった。

次の新しい戦いの舞臺へと移ることだろう。

しかしその前に……。

「來てくれて、ありがとうスェル」

僕は、今回最大最後の功労者に聲をかけた。

が來てくれて本當によかった。

あらゆるものを消し去ることしか能のない僕では、エレシスを蝕む毒害を消し去ることはできなかったから。

母メドゥーサ様からけ継いだ超絶薬學を駆使して、毒に苦しむ人々を救ってくれた。

がいなかったら人々を助けるっていう本的問題を解決できなかったんだから。聖たちを追い詰めるのだってここまで速やかにはいかなかった。

「エピクさんが呼んでくれたらどこにだって駆けつけますよ。ペガサスさんも送ってくれますし」

『姫の縁が明らかになった以上、私にはあらゆる命令に拒否する権限がなくなったのでな』

姫?

『むしろスェル姫のお役に立てるならこのペガサス。聖獣としてこれほど栄譽なことはない。たとえそれが男を助けに行くという不本意なものでも』

ペガサスさん……?

やっぱりこの馬、好きの変態なのでは?

「どっちにしろ私とエピクさんは他人じゃないんです。家族になるんですからもっと頼ってもらっていいんですよ」

「うん、そうだな。そうだった……!」

「それで、いずれ家族になるエピクさんに質問があるんですが、そこの彼とはどういった関係で?」

「え?」

スェルが指し示す方向から、嬉々として駆け寄ってくる人がイザルデさんだった。

実にワイルドで、健康的な魅力を放つ戦士。

「ありがとうエピク! 貴殿こそ本當の戦士だ! どうだこのままエレシスの地にとどまらないか!? 貴殿とならどんな敵からもこの土地を守り抜けられる!!」

婚約者の前でなんてこと言ってくれるんです!?

ガッシリと手なんぞ握りおって、ニコニコ見詰めてくるスェルが怖い。

「大丈夫ですよエピクさん。男のわがままを許さないのはの罪だとお母さんも言ってましたし……」

『スェル姫のような量よしを娶りながら他のへ目移りするとは……。これだから男とは度し難い生きなのだ』

ペガサスさんまで!?

待って話を聞いて! これはただの人付き合いの範疇!

付き合いです! 付き合いなんです!

本格的な結婚前から節度ある人付き合いの難しさを知った僕だった。

こうしてエレシスの地の平和を守り、僕らは帰還した。

帰りは僕もペガサスさんに乗って帰ろうとしたが當人(?)から斷固拒否され、結局スェルだけ再び背に乗せて飛んでいったので、僕だけ徒歩で帰った。

故郷エフィリトに到著した頃には五日も経っていて、その間充分に事態はいていた。

「強制召喚ですか」

「はい、S級冒険者エピクさんに背信の嫌疑がかかっています」

帰って冒険者ギルドへ顔出しするなり、ヘリシナさんから言われた。

そもそも今回の場合ってクエストはどういう形での終了になるんだろう?

依頼容が『勇者を助けてその敵を倒せ』ってのだったんだから、逆に敵側について勇者をボコボコにしてしまったんだからクエスト未達どころの話じゃない。

僕的には大満足のミッションコンプリートだったが。

「王都に戻ったあと勇者が訴えたのだそうです。同行のS級冒険者が裏切り、敵に加擔したことで失敗したと。そうでなければ必ずや異教徒を制圧し、神の領土を増やすことができたと」

「言いわけ臭くて笑えてくるわね。失敗したのは全部ヒトのせい、だから自分は悪くないって?」

A級冒険者のリザベータさんが皮っぽく言う。

もはやギルドで話したら必ずと言っていいほど話にってくるな。

「勇者は王子でもありますので、彼が本気で働きかければ相當の権力がきます。それに加えて勇者の後ろ盾は大聖教會ですから、その二つから迫られたらギルド理事會も拒み切ることはできません」

「王権と神権のダブルパンチとか対抗できるヤツいないでしょ」

そうしてギルド理事もS級冒険者である僕を庇い立てできなかったらしい。

王都へ呼び寄せ、直接審議にかけることに同意せざるを得なかった。

「ってわけでエピクさん、王都へ行ってきてください」

「ノリ軽い」

「さすがにこれを拒否したら、ウチも存続が危うくなりますからね。私も就任早々ギルドマスターをクビになり、ギルド運営権も剝奪されてしまうことでしょう」

つまり拒否することはできないってこと。

権力者が自分の持つ力を何一つ制限しなかったら、大抵どんなことでもできてしまうと言うことだった。

「エピクさん、當ギルドの存亡はアナタにかかっています。皆さんのためにも、ここは王都へ出頭してください。生贄となるために」

「ハッキリ言いますね……」

「だってそれが元々の予定でしたものね」

僕とヘリシナさんは互いに見つめ合って悪い笑みを浮かべた。

恐らくここまで、大聖教會の思通りなのだろう。

大聖教會がどういった組織かはまだいまいちわからないが、とにかく各地に隠れ棲む神々を廃し、その力を奪い取るのが目的と思われる。

ヤツらにとっては僕らの土地におわすメドゥーサ様も、エレシスの地を庇護する大地母神デメテールも同じ獲なのだ。

メドゥーサ様に危害を加えたくない僕を利用し、エレシスの人々と戦わせる。

僕が素直に言うことを聞いてエレシスの人々を倒し、地母神デメテールの信仰を消し去れればそれでよし。

もし逆らえば、それを瑕疵にして僕のことを責め立てて、今度こそメドゥーサ様の討伐に協力させようという目論見なのだろう。

どっちに転んでも僕はヤツらに逆らえない。

教會と王家、この二つの巨大権力に対する限りは。

……と思ってるんだろうなアイツら。

「あちらさんもバカですよねえ。いくら権力で押し付けられると言っても、こっちに考える脳ミソがまったくないと思ってるんでしょうか?」

「僕がエレシスの地へ行っている間、対策はバッチリ立ててたんでしょう?」

「もちろん、都市議會の方々も連日會議で知恵を出し合い、相手側の思を読んでどう対処すればいいかを決めてあります。エピクくんは作戦に則っていてもらうだけでいいんですよ」

勇者め、その後ろにいる巨大な影め。

僕たちを侮ったな。

僕には一緒に戦ってくれる味方がたくさんいる。

それを無視して僕だけを潰し、言うことを聞かせられると思うなら、その思い違いの代償を支払うことになるだろう。

これから行われる王都での審議でな。

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