《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》88 勇気を取り戻した獅子

僕はエピク。

今見事にクエストを達しました。

宰相ブランセイウス様が若き日に別離した最……。

王ティターニアをここに連れて來てございます!!

「ブラちゃん!!」

ブラちゃんとな!?

僕がここまで連れてきたは、実に若々しい。

も張り艶あって、顔つきもあどけない。

長い髪は朝日を絹糸にしたかのように艶めかしい金髪で、その煌めきだけでも人外の者と決めつけるのに充分だった。

著ている服は末な作りだったが、それゆえに野趣があって魅力に拍車をかける。

既に三十代の半ばを過ぎ、ナイスミドルとして完しつつあるブランセイウス様と並べると犯罪臭くなるほどだ。

「ティア……本當にティアなのか!? あの時とまったく変わらない……!?」

ブランセイウス様は、みずからのに飛び込んできたを『ティア』と呼んだ。

ティターニアの稱?

「妖は歳を取らないのよ。アナタはこんなに立派になって……もう完璧な大人ね……」

「そんなことはない。私はあれからしも長していない。キミを失ったあの時から」

十數年の時を経て再會した人同士は固く抱き合って、二人だけの世界を作り上げていた。

……僕が『消滅』スキルで、時の止まったティターニア様の呪いだけを綺麗に消し去り、彼の時間を再始させた。

を失った彼が妖の在り方として、その場で消え去ってしまわないかという懸念もあったが、その辺僕は心配していなかった。

人を離してしまった今でも、肝心のブランセイウス様が未だに深いを捨てきれずにいることを知っていたから。

時間を取り戻したティターニア様に、僕から丁寧に説明を加え、必ず守ると約束した上で、王都まで來てもらうことを承諾していただいた。

『木霊の森』に棲むスプリガンは、終始口を挾むことなく見守るのみで、いよいよ森を出るとなった時も止めたりせず、快く僕たちを送り出してくれた。

――『ぬしがついているなら何の心配もあるまい』

と言って。

醜い妖は、心の中まで醜いわけではないということが説かれるまでもなくわかった。

「待て! 待て待ちなさい!!」

対して心の中までドロドロに醜悪なぶ。

大聖イリエリヒルトだ。

「それは妖ではないですか! 妖など悪魔の手先の邪悪な生! そのような汚を神聖なる王都にれてはなりません! 今すぐ火刑に!」

「黙って」

バシュン、と空気のぜる音が鳴る。

僕が『消滅』空間を、大聖の鼻先に一瞬だけ発生した。

かまわず進み出ていたら今頃大聖はこの世界のどこにも存在していなかっただろう。

「ひぃい……ッ!?」

理屈はわからずとも、起こったことの尋常のなさは本能的に察しとったのだろう。

青い顔をして引き下がる。

その間も、再會を果たした人たちは二人だけの世界を展開中。

まるで十代のような甘酸っぱさ。

「ティア……、ティアよ。キミを失ったあの日からずっとキミに伝えたかったことがある。ただの言いわけにしかならないが、聞いてくれ……」

「大丈夫よブラちゃん、言わなくてもわかるわ」

カップルが二人だけの展開領域している。

僕はその世界を邪魔しないように、無粋な者たちに睨みを利かせる。

「アナタに迷いがあるのわかっていたもの。人の心の迷いを楽しむのが妖よ。だからこそ知っている、迷いの奧に、どんなに揺さぶっても揺るがない確かな気持ちがあることを」

「ティア……!?」

「だから私は會いにきたの。アナタが與えてくれた揺るがぬ心が、私という不確かな存在にしっかりとした形を與えてくれたから……!」

見つめ合う人たち。

……これ思ってたより見守るのしんどいな。砂糖吐きそう。

「存在自が戯れの妖に真実をくれたのはアナタよ。アナタが心からしてくれたからこそ私は森を出て會いにこれた。アナタがしてくれたことは私には疑いなくわかるわ……」

「私は、キミを裏切ってからずっと自分が信じられなかったよ。だから王にもなれなかったし、教會の連中にも表立って対抗できなかった。本當にけない男だ。でもキミさえいてくれたら、私は弱くけない自分と決別できる……!」

今までにないほどの瞳に力強い輝きを宿したブランセイウス様が、高らかに言う。

人の肩を抱きながら。

「皆の者聞いてくれ! この不肖ブランセイウス、気高き王家のを引く者の義務として、こたび王位につくことを決意した!!」

おお!

ついに皆が待ちんだ賢王の誕生か!

「そして王妃に迎えるのはこのティア……ティターニアだ! 彼は私の心の支え、私の人生に意味を與えてくれる者! 彼の助けなくして私は王の重責に耐えることはできない! ……いいね、ティア?」

「もちろんよ、アナタの傍にいられるならどんなことでも務めてみせるわ」

ここに、新たなる王と王妃が誕生した。

一方はここ數百年に稀にみる才知と人徳を併せ持った賢人。

その連れ添いは幽玄なる妖族の王。

異と才に満ちた夫婦の世は、さぞかししく治まることだろう。

約束された明るい未來に、僕は惜しみない拍手を贈った。

祝福の拍手だ。

このやたらと人が多い城門前には城勤めの人や、ただのやじ馬などもいて、そういう人たちもつられて萬雷の拍手を贈る。

「お、おめでとー!」

「とにかくめでたい!」

「ワシは昔からブランセイウス様が王位につくべきだと思っとったんじゃ! その場面に直に立ち會えるとは長生きした甲斐があったわい!」

「同時にお妃まで決まるとは、めでたいが重なりますな!!」

群衆のティターニア様への反応は概ね良好だった。

いきなり得のしれないが王の伴に……となって反発もあるやと思われたが意外なほどれアッサリ。

それもティターニア様の貌のおだろう。

甦った彼の外見は誰が見てもうっとりするほどしく、ただの観衆といえども一目見ただけで心奪われ、彼を肯定してしまうのだった。男別なく。

さすが人をわすことに長けた妖……しかもその王と言うべきか。

存在するだけで人の心を摑み取るなんて凄まじい。ある意味、王の伴としてはこれ以上ない特なんでは?

益々この先の治世が楽しみの國王夫妻となりそうだった。

「待ちなさい! 認めません認めませんよ!」

しかし往生際の悪い者は、いつでもどこでもいる。

大聖イリエリヒルトは、髪を振りして幸せほやほやカップルに詰め寄る。

その形相は悪鬼のごとし。

アレが大聖などと呼ばれるなんて、とても信じがたかった。

むしろ大鬼だろう。

「こんな邪悪な婚姻は絶対に認めません! そのは妖ではありませんか! 妖とは悪魔の手先で、人をわし墮落させるらな生き! そんな妖を王妃に立てるなど、國を亡ぼすも同じではないですか!!」

「まるで自分自を語るような言葉だな」

ブランセイウス様は冷ややかに返す。

「とにかく我々大聖教會は、邪悪な妖が王妃となるなど絶対に認めません! 王妃になるならこのわたくし! 大聖イリエリヒルトより相応しい者はおりません! 神の意志をけ、この國に福音をもたらす大聖教會の重鎮を務めたこのわたくしこそ未來の王妃に相応しいではありませんか! 妖婦と教會の聖! どちらが正しい配偶者かなど考えるまでもありません!!」

勝手なことを言うだ。

冒険者としてのアフターサービスで僕が止めにろうかと思ったが、そうするまでもなかった。

誰よりもあのに憤懣を募らせていた、あの方が、ついにその怒りを行に移す。

らで邪悪な妖など娶ってはブランセイウス様は恥を曬します! 歴代一の愚かな王として名前を刻みますよ! わたくしと結婚すれば過去にも未來にも超える者のない究極最高の王となれますのに! さあ、今すぐその悪を火あぶりにし、このわたくしを正式な王妃として認め……!」

「火あぶりにするのは、お前だ」

「ひッ!?」

ブランセイウス様の抜いた剣が、その切っ先を元に突きつける。

突きつけられているのは當然、大聖イリエリヒルト。

「私は、この國の治世に攜わる者としてお前たちの暴をつぶさに見てきた。人としての良心から阻止できるものは力の及ぶ限り阻止してきたが、それでも至らずすべてを守れないこともあった。しかしそれも今日で終わりだ」

ブランセイウス様が剣を抜いたのは、僕としてもけっこうな驚きだった。

そもそも帯剣していたとは。彼の人當たりの良さからとてもそんな暴はすまいと思っていたのに。

今のブランセイウス様は、勇気を失ったライオンが、その勇気そのものを取り戻したかのような漲りに満ちている。

「兄上のに隠れてコソコソするような抗い方はもう終わりだ。私は王者として、この國の幸福を守る義務を負った者として、斷固としてお前たち教會と戦う!」

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