《【書籍化決定!】最強スキル持ちは、薬草採取しかできない》91 次の一手
大変お待たせして申し訳ありませんでした。
今日より再開します。またしばらくお付き合いください。
「ブランセイウス様、アナタは選択を誤りましたわ」
悔しさいっぱいの聲音でそういうのは大聖イリエリヒルト。
「わたくしと結婚すれば、アナタは空前絶後の大名君となられましたのに。大聖教會と手を結び、數百萬信徒を背景にあらゆる政策を推し進め、地上に理想郷を築くこともできましたのに」
「それはお前たちにとっての理想郷であろう。私はお前たちの傀儡にすぎぬ」
すぐさまブランセイウス様が反論する。
する者を取り戻した彼は気力充溢し、多の圧などはね返して微風にもならない。
「お前たちが野達のため、王家を利用せんとしていることはわかりきっている。私はこれより王として……國家を預かる者としてけっしてお前たちの橫暴を許しはしない。疾く去れ」
「後悔することになりますわよ」
捨て臺詞しか吐けないのか、大聖はそのまま踵を返し去っていく。
そうしてを翻した瞬間、一瞬だが僕と目が合ったような気がした。
その視線がやたらとネットリしていて、僕は背筋がゾクリとするのをじた。
「罪深い國王……そう、そんな罪人にはとっとと退場いただければよいのです。同じことが繰り返されるだけ……」
戦いはまだ終わっていない。
僕は心の奧底にたしかな確信をもってそう思った。
◆
大聖教會の暴徒たちを何とか追い返し、殘った僕たちは改めて話をする場を設けた。
王城の玉座の間で。
僕と、ブランセイウス様と、その妻となられたティターニア様。
初の家族団らん? の場で、卻って張が増す。
「あの……!?」
「何と言っていいか……、その、何と言っていいか……!?」
ブランセイウス様も言葉が見つからずに、同じことしか言っていない。
気持ちはわかる。
いきなり息子を紹介されたらな。
彼としては十數年ぶりに最のと再會しただけでもいっぱいの出來事だろうに、さらに重ねてキャパオーバーな事態となっておられる。
これまでを分けた息子がいるとすら思ってなかっただろうに、それがいきなり目の前に現れるってどんな心境だろうか?
若僧の僕には想像も及ばない。だからこそ心苦しい。
「いや……キミが気に病むこともないんだが……」
「ですかねえ?」
「むしろ責められるべきは全面的に私だろう。キミという息子の存在も知らず何年も放置してきた。親とは子どもを保護してしかるべきなのにな……」
そう言って自嘲の笑みをらすブランセイウス様。
「王になることを決意したばかりだというのに、早速みずからの不甲斐なさに打ちひしがれる……! 本當にこんな男に、萬民の主が務まるのかと……!」
「いえいえいえいえいえいえいえッッ!!」
ここで弱気になられては困りますホイ!
ブランセイウス様はたしかに立派な方であり、なくとも先代の王様よりは見事に國を治めてくれるはず!
これ以上大聖教會の橫暴を許さぬためにもブランセイウス様には全力で王様を務めてもらわないと!
「そうよ! ブラちゃんはスペシャルサプライズだわ!」
さらに言い募るのは、ここに同行する妖王ティターニア様。
この方がきっかけですべてがひっくり返ったのはたしかだが……。それでこのノリをずっと容認するのは……!?
「私とブラちゃんのベイビーならきっと生き抜いてくれると信じていたもの!! メドゥーサ様も仰っていたのよ! 人と妖の落とし子は運命を変える能力を持つから、きっと私たちのことも救ってくれるだろうと!」
「え? そんなことを?」
「そして予言は見事的中したわ!! ベイビーは私たちを再び出會わせてくれる懸け橋となったのよ!!」
だからベイビーって僕のこと?
ううむ、まいった。
ってことはメドゥーサ様はすべてを知った上で僕たちのことを見守っていたのか?
あの人はどこまでを理解して、どこまでを予見していたのか?
知れば知るほどに底知れない気持ちになる。
ティターニア様に関しては何の蟠りもなくニコニコとしているのが卻ってすべての毒気を抜いてしまう。
妖であるからには人としての覚との差異があるんだろうなとは思うが……。
もちろん人間的には違う覚にもなるわけで。
「エピクくん……。今さらおこがましいことだが、わかったからには親としての責任を全力で果たしたいと思っている。まずは私も國王に即位することだし、それならばエピクくんも王子としての……」
「いやあのその前に!!」
全力で話を遮る。
ブランセイウス様の言わんとしていることはわかるがその前にも放置してはいけないこともあるので。
「油斷してはいけません! あの大聖教會が、このまま引き下がるとは思えません!!」
「うむ、それはそうだな」
ここまでの流れで、一番の悪者であることがもはや明白の大聖教會。
神の権威の下にやらかし放題やらかしている上に、王の権威までし、自分たちの関係者を執拗に王と結婚させようとしている。
最初は王子兼勇者のタングセンクスに、聖ヒサリーヌを娶せようとした。
そのタングセンクス王子が失腳すると、次にお鉢が回ってきた王弟ブランセイウス様に大聖であるイリエリヒルトが猛烈アタック。
もし僕らが間に合わなければ押し切られていたろうというぐらいの際どいタイミングだった。
「しかし私は無事にティターニアと添い遂げることができた。それはヤツらの野が挫かれることとイコールだ。これでもう安心……」
「……とは思えませんよね?」
「うむ……!?」
僕の指摘に押し黙るブランセイウス様。
二の句が継げぬということは彼も理解しているのだろう。それくらいの危機がなくば王様は務まらない。
「……殘念ながら大聖教會の権力への執著は異常です。これくらいで諦めるとは到底思えない」
「うむ、……まったくその通りだな。ヤツらはすべての権力こそ自分たちのものと信じて疑わず、自分たちの思い通りになるべきだと決めてかかっている。なんともおかしい思考の持ち主だが……」
僕たちは、僕たちが狂人と相対していることをしっかり覚えておかなくちゃならない。
狂人には、常人の思考は適用されない。
自分たちがそうだと思って決めてかかっても相手には通じず、大丈夫だと思ったところをガブッと噛みつかれたら笑い話にもならない。
想像力の枠を広げて、に対処していかねば。
「大聖教會は、ここで諦めずにさらなる手段を打ってくる。自分たちが王室の中樞に食い込むために。……そう言うんだな?」
「はい」
僕は間を置かずに首肯する。
「僕が以前から世話になっていて、心から尊敬する人の言葉があります。『一度走り出したら最後まで走り抜け』と、止まることは無論、歩いてもならない。
一度始めたことを途中でやめることは愚か者のすることだ。
無論、手を緩めることも。
教會との敵対を表明したからには、ヤツらの息のを止めるまで全力で突き進めなければ。
暇を與えれば、ヤツらに反撃の機會を與える絶好の空白になってしまう。
反撃どころかそれを思いつく余裕も與えず、一気に攻め盡くすべきだった。
「私も大いに同だ。およそあらゆる世の中においても中途半端がいい結果を呼んだ試しはない。私もあそこまで堂々と教會との決裂を宣言したんだ。そこから何もしないのはバカでしかないな」
「そうですね」
大聖との婚姻を拒み、誤解の余地もない完全無欠の宣戦布告を行ったのはお城の真ん前。
多くの人々が王室と教會の全面戦爭を知ったはずだ。
「戦いは始まった。……いや、あるいはずっと以前から続いているのかもしれないが、それは教會からの一方的で、しかもな水面下からの攻撃だった。誰からも知られないような。そんな卑劣に対し王室は今日初めて反撃ののろしを上げたのだ。ならばそれだけで満足しているだけではダメだ」
「コテンパンにしてやりましょう!」
「キミは、知れば知るほどよくできた男だな。思いやりがあるのと同時に、戦う時の人間の振舞いをよく心得ている。よほどよく出來た男に鍛え上げてくれたんだろう」
「はい! 出會いに恵まれました!」
そう言って真っ先に浮かぶのは薬師協會長さん。
僕自、よい出會いといえばたくさん思い當たるが、世間の渡り方とかそう言ったのを叩き込んでれたのは、あの人だと言う他ないし。
「そういえばさっきも言っていたな。キミが昔から世話になっていて、心から尊敬している人がいると……」
「はいッ!」
「しかしながらその人も、王宮という権謀數がもっとも渦巻く場所での生き抜き方は知るまい。キミもこれから大聖教會とやり合っていくには、そうした機微も知っておかねばならん」
ん?
「もしわからぬことがあれば遠慮なく私に聞くといい。これでも宰相として十年近く國政の最前線にいたのだから、人をだまくらかす技には隨分と覚えがある。キミにならその全部を教えてあげよう」
「はあ……!?」
なんかブランセイウス様、會ったこともない薬師協會長さんに対抗意識を燃やしている?
なんで?
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